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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D |
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管理番号 | 1158683 |
審判番号 | 不服2005-14799 |
総通号数 | 91 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-07-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-08-03 |
確定日 | 2007-06-08 |
事件の表示 | 特願2002- 60959「ガラスびんのシール方法及びガラスびん」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月 3日出願公開、特開2003-160161〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成14年3月6日の出願であって、その請求項1乃至4に係る発明は、明細書の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載されたとおりのものと認られるところ、請求項1の記載は以下のとおりである。 「熱軟化性接着剤によってガラスびん口部にシール材を接着するガラスびんのシール方法において、ガラスびんの口部天面に糖類及び/又はその誘導体を含むコーティング液によるコーティングを行った後、シール材を接着することを特徴とするガラスびんのシール方法」(以下、「本願発明1」という。) 2.引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された特開昭60-183304号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「ガラス容器の密封方法」について以下の事項が記載されている。 (イ)特許請求の範囲(1)に、「ガラス容器の封止すべき口部にシランカップリング剤を塗布し、ついで加熱処理して該カップリング剤の接着強度を高めたのち、熱可塑性樹脂層を下層に施した多層フィルムからなる蓋体を以て該口部にヒートシールすることを特徴とするガラス容器の密封方法。」 (ロ)第1頁左下欄第20行?同頁右下欄第17行に、「従来、ガラス製の容器の口部にプラスチックフィルムを蓋材として用い、これをヒートシール(熱融着)によって接着させる方法が知られている。この場合・・・接着強度が十分でなく、密封性の点で問題があり、したがって、一般的にはシランカップリング剤をガラス側に予め塗布し、これを加熱処理してから上述の如き接着性フィルムをヒートシールする方法がとられている。しかし、シランカップリング剤を介在させて上記の接着性フィルムをヒートシールした場合、この接着性フィルムとガラス容器口部との接着が強くなりすぎて、開封性が悪くなるという問題があった。」 (ハ)第2頁左上欄第8?17行に、「本発明に用いられるシランカップリング剤としては特に制限はなく従来公知のものを適宜使用し得るが、封止用蓋体の下層に施される熱可塑性樹脂層の材質との関連で適当な種類のものを選択することが好ましい。たとえば、・・・熱可塑性樹脂がポリ塩化ビニル、ナイロンの場合はアミノシランを用いることが好ましい。」 (ニ)第3頁左上欄第5?11行に、「本発明によれば蓋体として熱可塑性樹脂層を含む多層フィルムを用いるようにしたから、蓋体をシランカップリング剤を介してガラス製容器口部に強固に接着させることができるとともに、・・・」 さらに、引用文献1には、上記密封方法を「清酒ワンカップ用ガラスビン」に適用した実施例が記載されている。 してみれば、引用文献1には、 ガラスビン口部に、下層に熱可塑性樹脂を施した封止用蓋体を接着する密封方法において、ガラスビンの封止すべき口部にシランカップリング剤を塗布した後、加熱処理して蓋体を該口部に接着することを特徴とするガラスビンの密封方法 の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されるということができる。 また、同じく引用された特開2001-11390号公報(平成13年1月16日公開、以下「引用文献2」という。)には、ガラスびんのコーティング剤に関して以下の事項が記載されている。 (ホ)【特許請求の範囲】【請求項1】に、「親水性物質を添加したことを特徴とするガラスびんの固体滑剤コーティング剤」 (ヘ)段落番号【0005】に、「親水性物質を添加する前の固体滑剤コーティング剤は、主にポリエチレンの微粒子を水の中に分散させた周知のものである。・・」 (ト)段落番号【0006】に、「コーティング剤に添加する親水性物質は可溶性物質及び/又は難溶性物質とすることができる。可溶性物質の例としては、界面活性剤、砂糖、食塩などがある。難溶性物質の例としてはデンプン、セルロース、セルロース誘導体、タンパク質などがある。これらの物質を混合して用いてもよい。」 (チ)[段落番号【0007】に、「固体滑剤コーティング剤に可溶性の親水性物質を添加した場合・・・水洗前においては固体滑剤と親水性物質が表面に露出している。ポリエチレンなどの固体滑剤は糊の接着性が悪いが親水性物質は糊の接着性がよいので、固体滑剤のみが露出している従来のコーティングに比べて接着性が大きく向上する。・・・」 (リ)段落番号【0008】に、「固体滑剤コーティング剤に難溶性の親水性物質を添加した場合・・・水洗前においては固体滑剤と親水性物質が表面に露出している。ポリエチレンなどの固体滑剤は糊の接着性が悪いが親水性物質は糊の接着性がよいので、固体滑剤のみが露出している従来のコーティングに比べて接着性が大きく向上する。・・・」 加えて、引用文献2には、上記の親水性物質を添加した固体滑剤コーティング剤を塗布したガラスびんにデンプン糊でラベルを接着した時、該親水性物質を加えないコーティングのびんよりその接着性が向上したことが実施の態様として記載されている。 3.対比・判断 本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と上記引用発明とを対比する。 引用発明における「封止」又は「密封」、及び「塗布」の用語は、本願発明1の「シール」及び「コーティング」と同義であり、引用発明の「封止用蓋体」は、本願発明1の「シール材」に、その最下層に施された「熱可塑性樹脂層」は、ヒートシールにより蓋体をガラス容器の口部に接着するもので、本願発明1の「熱軟化性接着剤」に、それぞれ相当し、引用発明においてシランカップリング剤は、ガラスビンの封止すべき口部への蓋体の接着性を向上するために塗布されるものであり、少なくとも口部天面にコーティングされるコーティング剤ということができる。 してみれば、両者は、 熱軟化性接着剤によってガラスびん口部にシール材を接着するガラスびんのシール方法において、ガラスびんの口部天面にコーティング剤によるコーティングを行った後、シール材を接着するガラスびんのシール方法 の発明である点で一致しており、本願発明1において「糖類及び/又はその誘導体を含むコーティング液によるコーティング」を行うのに対し、引用発明においては、「シランカップリング剤を塗布」する点で相違している。 そこで、上記の相違点について検討する。 本願明細書の記載によれば、本願発明1において、コーティングを「糖類及び/又はその誘導体を含むコーティング液」により行ったことの技術的意義は、シール材の接着力の向上とガラスの風化による接着性の低下の防止にあるとされている[段落番号【0007】【0008】]。上記引用文献2には、ガラスびんのコーティングに際し、ポリエチレンの微粒子を水の中に分散させたコーティング剤すなわちコーティング液中に親水性物質を添加することによりラベルの接着力が向上することが記載され、その親水性物質として例示されている砂糖、デンプン、セルロース、セルロース誘導体又はこれらの混合物は少なくとも本願発明1の「糖類及び/又はその誘導体」に相当するので、引用文献2には、「糖類及び/又はその誘導体を含むコーティング液」でコーティングを行うことより、ラベルのような接着手段を備えたシート状物の接着強度を向上することが記載されていることになり、上記引用文献2には、ラベルの接着手段としてデンプン糊が例示されているが、上記の糖類及び/又はその誘導体を含むコーティング液によるコーティングのラベルとの接着性の向上は、コーティング液中のカルボキシル基や水酸基の親水性によるものであり、それらが、熱可塑性樹脂からなる接着剤(本願発明1でいう「熱軟化性接着剤」)の接着性をも向上させることは、当業者であれば容易に推察しうる技術常識ということができる。 この点について、たとえば、特開2001-220179号公報には、ガラス被覆用ポリエステル樹脂の酸価が高い、すなわち、被覆樹脂中の遊離カルボキシル基が多い方が、被膜とラベルの接着性がよく、このことはラベルに用いる接着剤がでんぷん糊の場合にも、熱可塑性接着剤の代表的材料であるビニル樹脂の場合にも同様であることが示されている[段落番号【0016】、【0020】、【0047】等の記載参照]。 してみれば、熱可塑性樹脂層すなわち熱軟化性接着剤とガラスびん口部との接着性向上のために、引用発明のシランカップリングの塗布に代えて、上記引用文献2に記載されたような糖類及び/又はその誘導体を含むコーティング液によるコーティングを行うことは当業者が容易に想到しうる事項であり、本願発明1が、上記コーティングによる他の効果としてして掲げているガラス風化時の接着性低下防止の効果もこれに付随して生じるものであり、格別のものということもできない。 4.むすび 以上のとおり、本願請求項1に係る発明は、本願出願前周知の技術的事項を勘案すれば、引用文献1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、残余の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-16 |
結審通知日 | 2007-03-13 |
審決日 | 2007-03-26 |
出願番号 | 特願2002-60959(P2002-60959) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 川本 真裕、柳田 利夫 |
特許庁審判長 |
粟津 憲一 |
特許庁審判官 |
豊永 茂弘 石田 宏之 |
発明の名称 | ガラスびんのシール方法及びガラスびん |
代理人 | 川端 佳代子 |
代理人 | 神戸 真 |