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審決分類 |
審判 訂正 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 訂正する G01B |
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管理番号 | 1159176 |
審判番号 | 訂正2007-390052 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 訂正の審決 |
審判請求日 | 2007-04-26 |
確定日 | 2007-06-08 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3768688号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 特許第3768688号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3768688号の請求項1ないし12に係る発明についての出願は、平成10年7月29日に出願され、平成18年2月10日にその発明について特許権の設定登録がされ、平成19年4月26日付で、設定登録時の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)について訂正を求める審判が請求されたものである。 2.請求の要旨 本件審判の請求の要旨は、本件特許明細書を審判請求書に添付した訂正明細書のとおり、すなわち、下記訂正事項のとおり訂正することを求めるものである。 <訂正事項> 本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項7に記載される「前記被測定物表面上の点群を測定する工程の中心位置から前記被測定物の形状定義座標系の位置を計算する工程と、」を「前記被測定物表面上の点群を測定する工程と、前記3つの球の中心位置から前記被測定物の形状定義座標系の位置を計算する工程と、」に訂正する。 3.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否についての判断 平成17年7月29日付の手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項7には、被測定物の形状定義座標系の位置を計算する工程が「3つの球の中心位置から」計算するものであることが記載されている。また、平成17年12月6日付の手続補正によって補正された明細書(本件特許明細書)の段落【0023】には、請求項7に係る発明について、被測定物の形状定義座標系の位置を計算する工程が「3つの球の中心位置から」計算するものであることが記載されている。これらの記載および本件特許明細書及び図面における記載全般からみて、本件特許明細書の請求項7に記載の「前記被測定物表面上の点群を測定する工程の中心位置から前記被測定物の形状定義座標系の位置を計算する工程と、」における「・・・工程の中心位置から・・・」が「・・・工程と、前記3つの球の中心位置から・・・」の誤記であることは明らかである。そして、本件訂正事項は、本件特許明細書における当該記載箇所を、平成17年7月29日付の手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項7の当該記載箇所、及び、本件特許明細書の段落【0023】における当該記載箇所と同様に、「測定する工程と、前記3つの球の中心位置から前記被測定物の形状定義座標系の位置を計算する工程」に訂正するものである。してみれば、本件訂正事項は誤記の訂正を目的とするものであることは明らかである。 そして本件訂正事項は願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された事項の範囲内のものであり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 4.独立特許要件についての判断 本件訂正明細書を精査しても、平成16年10月18日付、平成17年1月21日付、平成17年4月21日付、平成17年10月14日付の各拒絶理由通知書に記載された理由及び証拠によっては、訂正後の請求項7に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができない発明であるとすることはできない。 また、他に、訂正後の請求項7に係る発明が特許出願の際独立して特許を受けることができない発明であるとする理由を発見しない。 5.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第126条第1項ないし第4項の規定に適合する。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 3次元形状測定装置及び3次元形状測定方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 先端に真球を有し被測定物の表面の凹凸に追従するプローブと、そのプローブをX,Y,Z方向に移動させて前記真球で被測定物の表面をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドとを有する3次元形状測定装置において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている3つの球と、この3つの球の中心位置を測定する中心位置測定部と、前記被測定物表面上の点群を測定する点群測定部と、前記3つの球の中心位置から前記被測定物の形状定義座標系の位置を計算する位置計算部と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する座標変換計算部と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する設計座標推定計算部と、前記推定した設計座標系位置を用いて被測定面の位置関係を求める相対位置関係計算部とを備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。 【請求項2】 先端に真球を有し被測定物の表面の凹凸に追従するプローブと、そのプローブをX,Y,Z方向に移動させて前記真球で被測定物の表面をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドとを有する3次元形状測定装置において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている3つの球と、この3つの球の中心位置を測定する中心位置測定部と、前記被測定物の表面上の点群を測定する点群測定部と、前記3つの球の中心位置から前記被測定物の形状定義座標系の位置を計算する位置計算部と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する座標変換計算部と、前記測定した点群から法線方向、または、設計形状から法線方向を推定する推定計算部と、前記プローブに関する補正部と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する設計座標推定計算部と、前記推定した設計座標系位置を用いて被測定面の位置関係を求める相対位置関係計算部とを備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。 【請求項3】 前記補正部は、あらかじめ測定しておいたプローブ先端球の真球度を補正する補正計算部と、前記プローブ先端球の接触点位置を補正する補正計算部とを備えたことを特徴とする請求項2記載の3次元形状測定装置。 【請求項4】 被測定物の表面の凹凸に追従する非接触プローブと、その非接触プローブをX,Y,Z方向に移動させて被測定物の表面をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドとを有する3次元形状測定装置において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている3つの球と、この3つの球の中心位置を測定する中心位置測定部と、前記被測定物の表面上の点群を測定する点群測定部と、前記3つの球の中心位置から前記被測定物の形状定義座標系の位置を計算する位置計算部と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する座標変換計算部と、前記測定した点群から法線方向、または、設計形状から法線方向を推定する推定計算部と、前記非接触プローブの追従誤差を補正する補正部と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する設計座標推定計算部と、前記推定した設計座標系位置を用いて被測定面の位置関係を求める相対位置関係計算部とを備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。 【請求項5】 先端に真球を有し被測定物の2つ以上の被測定面の表面の凹凸に追従するプローブと、そのプローブをX,Y,Z方向に移動させて前記真球で各被測定面上をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドを有する3次元形状測定装置において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている3つの球と、この3つの球の中心位置を測定する中心位置測定部と、前記被測定面上の点群を測定する点群測定部と、前記3つの球の中心位置から被測定面の形状定義座標系の位置を計算する位置計算部と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する座標変換計算部と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する設計座標推定計算部と、前記推定した設計座標系位置を用いて前記2つの被測定面間の相対位置関係を求める相対位置関係計算部とを備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。 【請求項6】 先端に真球を有し被測定物の2つ以上の被測定面の表面の凹凸に追従するプローブと、そのプローブをX,Y,Z方向に移動させて前記真球で各被測定面上をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドとを有する3次元形状測定装置において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている4つ以上の球と、その球の中心位置を測定する中心位置測定部と、前記4つ以上の球から選択された3つの球から定義される複数の座標系間の相対位置を計算する相対位置計算部と、前記2つ以上の被測定面のそれぞれに対し、被測定面上の点群を測定する点群測定部と、前記3つの球の中心位置から被測定物の形状定義座標系の位置を計算する位置計算部と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する座標変換計算部と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する設計座標推定計算部と、前記推定した設計座標系位置を用いて前記2つ以上の被測定面間の相対位置関係を求める相対位置関係計算部とを備えたことを特徴とする3次元形状測定装置。 【請求項7】 先端に真球を有し被測定物の表面の凹凸に追従するプローブと、そのプローブをX,Y,Z方向に移動させて前記真球で被測定物の表面をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドとを有する3次元形状測定装置を用いた3次元形状測定方法において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている3つの球の中心位置を測定する工程と、前記被測定物表面上の点群を測定する工程と、前記3つの球の中心位置から前記被測定物の形状定義座標系の位置を計算する工程と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する工程と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する工程と、前記推定した設計座標系位置を用いて前記被測定面の位置関係を求める工程とを経ることを特徴とする3次元形状測定方法。 【請求項8】 先端に真球を有し被測定物の表面の凹凸に追従するプローブと、そのプローブをX,Y,Z方向に移動させて前記真球で被測定物の表面をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドとを有する3次元形状測定装置を用いた3次元形状測定方法において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている3つの球の中心位置を測定する工程と、前記被測定物の表面上の点群を測定する工程と、前記3つの球の中心位置から前記被測定物の形状定義座標系の位置を計算する工程と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する工程と、前記測定した点群から法線方向、または、設計形状から法線方向を推定する工程と、前記プローブに関する値を補正する工程と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する工程と、前記推定した設計座標系位置を用いて前記被測定面の位置関係を求める工程とを経ることを特徴とする3次元形状測定方法。 【請求項9】 前記プローブに関する値を補正する工程は、あらかじめ測定しておいたプローブ先端球の真球度を補正する工程と、前記プローブ先端球の接触点位置を補正する工程とを経ることを特徴とする請求項8記載の3次元形状測定方法。 【請求項10】 被測定物の表面の凹凸に追従する非接触プローブと、その非接触プローブをX,Y,Z方向に移動させて被測定物の表面をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドとを有する3次元形状測定装置を用いた3次元形状測定方法において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている3つの球の中心位置を測定する工程と、前記被測定物の表面上の点群を測定する工程と、前記3つの球の中心位置から前記被測定物の形状定義座標系の位置を計算する工程と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する工程と、前記測定した点群から法線方向、または、設計形状から法線方向を推定する工程と、 前記非接触プローブの追従誤差を補正する工程と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する工程と、前記推定した設計座標系位置を用いて前記被測定面の位置関係を求める工程とを経ることを特徴とする3次元形状測定方法。 【請求項11】 先端に真球を有し被測定物の2つ以上の被測定面の表面の凹凸に追従するプローブと、そのプローブをX,Y,Z方向に移動させて前記真球で各被測定面上をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドを有する3次元形状測定装置を用いた3次元形状測定方法において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている3つの球の中心位置を測定する工程と、前記被測定面上の点群を測定する工程と、前記3つの球の中心位置から被測定面の形状定義座標系の位置を計算する工程と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する工程と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する工程と、前記推定した設計座標系位置を用いて前記2つの被測定面間の相対位置関係を求める工程とを経ることを特徴とする3次元形状測定方法。 【請求項12】 先端に真球を有し被測定物の2つ以上の被測定面の表面の凹凸に追従するプローブと、そのプローブをX,Y,Z方向に移動させて前記真球で各被測定面上をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドとを有する3次元形状測定装置を用いた3次元形状測定方法において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている4つ以上の球の中心位置を測定する工程と、前記4つ以上の球から選択された3つの球から定義される複数の座標系間の相対位置を計算する工程と、前記2つ以上の被測定面のそれぞれに対し、被測定面上の点群を測定する工程と、前記3つの球の中心位置から被測定物の形状定義座標系の位置を計算する工程と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する工程と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する工程と、前記推定した設計座標系位置を用いて前記2つ以上の被測定面間の相対位置関係を求める工程とを経ることを特徴とする3次元形状測定方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は例えばレンズ面やミラー面等の連続した曲面形状を有する被測定物の表面形状を座標点群として測定したときの測定データと設計形状との差(誤差形状)を求め、これより被測定物の表面形状を高精度に測定するようにした3次元形状測定装置及び3次元形状測定方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 従来、被測定物の表面形状を3次元的に測定する3次元座標測定装置としては、接触式プローブが多用されている。図10は従来の接触式プローブを用いて被測定物1の表面形状を3次元的に測定する3次元形状測定装置の要部概略図である。 【0003】 同図において、被測定物101をベース102の上に取り付け、ベース102にY方向に移動可能にYスライド103を設け、Yスライド103にX方向に移動可能にXスライド104を設け、Xスライド104にZ方向に移動可能にZスライド105を設け、Zスライド105に接触式プローブ106を設けている。接触式プローブ106はその先端に球体106aを有し、被測定物表面101a上を球体106aがトレースするようにX,Y,Zスライド103,104,105の位置を制御する図示しない制御回路を設けている。 【0004】 X,Y,Zスライド103,104,105の位置はリニアスケールで測定している。このリニアスケール等で測定したX,Y,Zスライドの位置から球体106aの中心位置を座標データ取り込み手段107により計算し、これを点群Pi,jの測定データとしている。 【0005】 一方、フラグ設定手段111は動作の流れを制御するフラグを1にセットする。セッティング誤差計算手段108は座標データ取り込み手段107から点群Pi,jの測定データを導き、セッティング誤差を計算し、このセッティング誤差により補正した測定データを得て、この補正した測定データをもとに設計形状を差し引き、ブロック116で誤差形状Qi,jを得ている。即ち、設計形状と具体的な測定データとの差である誤差形状を求めている。又このときブロック117でセッティング誤差を計算する。この計算方法は前述した方法により行っている。セッティング誤差計算手段108からの誤差形状Qi,jはフラグ判定手段112により、フラグが0よりも大きければ、フラグ減算手段113によりフラグから1を引いた値にフラグを設定し直し、誤差形状を異常データ抽出手段114に導き、異常データを発見した点群にマークをつけ、全てのマークした位置(座標点)をマーク位置データ118として出力する。 【0006】 このマーク位置データ118を再びセッティング誤差計算手段108に導き、今度はマーク位置を除外した点群の測定データに対して再びセッティング誤差と誤差形状Qi,jを計算する。 【0007】 すると、今度はフラグ判定手段112のフラグが1引かれて0となっているので誤差形状Qi,jを抽出位置補完手段115に導き、マークされた点群の測定データを適当に補完する。その後、測定結果を記憶保存手段109や表示手段110に導いている。なお、図示例はフラグ設定手段111で1を設定しているが、2以上の数値をセットしても良く、その回数だけ手順を繰り返すことになり、更に計算精度を向上できる。 【0008】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、上記の従来例では次のような課題があった。 【0009】 (1)誤差形状が最小になるセッティング誤差を計算できる反面、測定した領域が被測定物のどこにあるか、すなわち被測定物の取付位置が測定できない。 【0010】 (2)そうかといってセッティング誤差補正を省略してしまうと、誤差形状が不当に大きくなる。なぜなら、被測定物の取り付けは一般に数ミクロン以上でばらつくのが通常であるので、本発明の目指す1マイクロメートル以下の形状測定には不都合である。 【0011】 (3)接触式プローブで形状測定する場合、接触球の真球度誤差が、形状測定精度を悪化させる。また、非接触プローブで形状測定する場合、プローブの追従誤差が形状測定精度を悪化させる。 【0012】 (4)被測定面が2つ以上ある場合その間の相対的な位置関係を測定することができない。被測定物の取付位置が不明だからである。 【0013】 本発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、被測定物の被測定面が該被測定物の取り付け基準に対し、どの位置、どの姿勢にあるのか測定でき、なおかつ形状誤差を小さくするセッティング誤差補正を行う3次元形状測定装置及び3次元形状測定方法を提供することを目的とする。 【0014】 また、接触式形状測定における、先端球の真球度誤差があっても、それに影響されない3次元形状測定装置及び3次元形状測定方法を提供することを目的とする。 【0015】 また、非接触形状測定における、プローブの追従誤差があっても、それに影響されない3次元形状測定装置及び3次元形状測定方法を提供することを目的とする。 【0016】 また、被測定面が2つ以上ある場合、被測定面間の相対的な位置関係が測定可能な3次元形状測定装置及び3次元形状測定方法を提供することを目的とする。 【0017】 また、被測定面が2つ以上あり、それぞれの被測定面の測定の際、位置のマークである3つの球が被測定面と同時に測定できない場合であっても、被測定面間の相対的な位置関係が測定可能な3次元形状測定装置及び3次元形状測定方法を提供することを目的とする。 【0018】 【課題を解決するための手段】 請求項1の発明の3次元形状測定装置は、先端に真球を有し被測定物の表面の凹凸に追従するプローブと、そのプローブをX,Y,Z方向に移動させて前記真球で被測定物の表面をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドとを有する3次元形状測定装置において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている3つの球と、この3つの球の中心位置を測定する中心位置測定部と、前記被測定物表面上の点群を測定する点群測定部と、前記3つの球の中心位置から前記被測定物の形状定義座標系の位置を計算する位置計算部と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する座標変換計算部と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する設計座標推定計算部と、前記推定した設計座標系位置を用いて被測定面の位置関係を求める相対位置関係計算部とを備えたことを特徴としている。 【0019】 請求項2の発明の3次元形状測定装置は、先端に真球を有し被測定物の表面の凹凸に追従するプローブと、そのプローブをX,Y,Z方向に移動させて前記真球で被測定物の表面をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドとを有する3次元形状測定装置において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている3つの球と、この3つの球の中心位置を測定する中心位置測定部と、前記被測定物の表面上の点群を測定する点群測定部と、前記3つの球の中心位置から前記被測定物の形状定義座標系の位置を計算する位置計算部と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する座標変換計算部と、前記測定した点群から法線方向、または、設計形状から法線方向を推定する推定計算部と、前記プローブに関する補正部と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する設計座標推定計算部と、前記推定した設計座標系位置を用いて被測定面の位置関係を求める相対位置関係計算部とを備えたことを特徴としている。 請求項3の発明は請求項2の発明において、前記補正部は、あらかじめ測定しておいたプローブ先端球の真球度を補正する補正計算部と、前記プローブ先端球の接触点位置を補正する補正計算部とを備えたことを特徴としている。 【0020】 請求項4の発明の3次元形状測定装置は、被測定物の表面の凹凸に追従する非接触プローブと、その非接触プローブをX,Y,Z方向に移動させて被測定物の表面をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドとを有する3次元形状測定装置において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている3つの球と、この3つの球の中心位置を測定する中心位置測定部と、前記被測定物の表面上の点群を測定する点群測定部と、前記3つの球の中心位置から前記被測定物の形状定義座標系の位置を計算する位置計算部と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する座標変換計算部と、前記測定した点群から法線方向、または、設計形状から法線方向を推定する推定計算部と、前記非接触プローブの追従誤差を補正する補正部と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する設計座標推定計算部と、前記推定した設計座標系位置を用いて被測定面の位置関係を求める相対位置関係計算部とを備えたことを特徴としている。 【0021】 請求項5の発明の3次元形状測定装置は、先端に真球を有し被測定物の2つ以上の被測定面の表面の凹凸に追従するプローブと、そのプローブをX,Y,Z方向に移動させて前記真球で各被測定面上をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドを有する3次元形状測定装置において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている3つの球と、この3つの球の中心位置を測定する中心位置測定部と、前記被測定面上の点群を測定する点群測定部と、前記3つの球の中心位置から被測定面の形状定義座標系の位置を計算する位置計算部と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する座標変換計算部と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する設計座標推定計算部と、前記推定した設計座標系位置を用いて前記2つの被測定面間の相対位置関係を求める相対位置関係計算部とを備えたことを特徴としている。 【0022】 請求項6の発明の3次元形状測定装置は、先端に真球を有し被測定物の2つ以上の被測定面の表面の凹凸に追従するプローブと、そのプローブをX,Y,Z方向に移動させて前記真球で各被測定面上をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドとを有する3次元形状測定装置において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている4つ以上の球と、その球の中心位置を測定する中心位置測定部と、前記4つ以上の球から選択された3つの球から定義される複数の座標系間の相対位置を計算する相対位置計算部と、前記2つ以上の被測定面のそれぞれに対し、被測定面上の点群を測定する点群測定部と、前記3つの球の中心位置から被測定物の形状定義座標系の位置を計算する位置計算部と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する座標変換計算部と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する設計座標推定計算部と、前記推定した設計座標系位置を用いて前記2つ以上の被測定面間の相対位置関係を求める相対位置関係計算部とを備えたことを特徴としている。 【0023】 請求項7の発明の3次元形状測定方法は、先端に真球を有し被測定物の表面の凹凸に追従するプローブと、そのプローブをX,Y,Z方向に移動させて前記真球で被測定物の表面をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドとを有する3次元形状測定装置を用いた3次元形状測定方法において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている3つの球の中心位置を測定する工程と、前記被測定物表面上の点群を測定する工程と、前記3つの球の中心位置から前記被測定物の形状定義座標系の位置を計算する工程と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する工程と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する工程と、前記推定した設計座標系位置を用いて前記被測定面の位置関係を求める工程とを経ることを特徴としている。 【0024】 請求項8の発明の3次元形状測定方法は、先端に真球を有し被測定物の表面の凹凸に追従するプローブと、そのプローブをX,Y,Z方向に移動させて前記真球で被測定物の表面をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドとを有する3次元形状測定装置を用いた3次元形状測定方法において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている3つの球の中心位置を測定する工程と、前記被測定物の表面上の点群を測定する工程と、前記3つの球の中心位置から前記被測定物の形状定義座標系の位置を計算する工程と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する工程と、前記測定した点群から法線方向、または、設計形状から法線方向を推定する工程と、前記プローブに関する値を補正する工程と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する工程と、前記推定した設計座標系位置を用いて前記被測定面の位置関係を求める工程とを経ることを特徴としている。 請求項9の発明は請求項8の発明において、前記プローブに関する値を補正する工程は、あらかじめ測定しておいたプローブ先端球の真球度を補正する工程と、前記プローブ先端球の接触点位置を補正する工程とを経ることを特徴としている。請求項10の発明の3次元形状測定方法は、被測定物の表面の凹凸に追従する非接触プローブと、その非接触プローブをX,Y,Z方向に移動させて被測定物の表面をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドとを有する3次元形状測定装置を用いた3次元形状測定方法において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている3つの球の中心位置を測定する工程と、前記被測定物の表面上の点群を測定する工程と、前記3つの球の中心位置から前記被測定物の形状定義座標系の位置を計算する工程と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する工程と、前記測定した点群から法線方向、または、設計形状から法線方向を推定する工程と、 前記非接触プローブの追従誤差を補正する工程と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する工程と、前記推定した設計座標系位置を用いて前記被測定面の位置関係を求める工程とを経ることを特徴としている。 請求項11の発明の3次元形状測定方法は、先端に真球を有し被測定物の2つ以上の被測定面の表面の凹凸に追従するプローブと、そのプローブをX,Y,Z方向に移動させて前記真球で各被測定面上をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定するX,Y,Zスライドを有する3次元形状測定装置を用いた3次元形状測定方法において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている3つの球の中心位置を測定する工程と、前記被測定面上の点群を測定する工程と、前記3つの球の中心位置から被測定面の形状定義座標系の位置を計算する工程と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する工程と、前記座標変換した測定結果に対して設計座標系位置を推定計算する工程と、前記推定した設計座標系位置を用いて前記2つの被測定面間の相対位置関係を求める工程とを経ることを特徴としている。 請求項12の発明の3次元形状測定方法は、先端に真球を有し被測定物の2つ以上の被測定面の表面の凹凸に追従するプローブと、そのプローブをX,Y,Z方向に移動させて前記真球で各被測定面上をトレースしてX,Y,Z位置座標を測定する3次元形状測定装置を用いたX,Y,Zスライドとを有する3次元形状測定方法において、 あらかじめ前記被測定物に直接、若しくは前記被測定物を保持する治具に設けられている4つ以上の球の中心位置を測定する工程と、前記4つ以上の球から選択された3つの球から定義される複数の座標系間の相対位置を計算する工程と、前記2つ以上の被測定面のそれぞれに対し、被測定面上の点群を測定する工程と、前記3つの球の中心位置から被測定物の形状定義座標系の位置を計算する工程と、前記被測定物の表面上の点群を形状定義座標系に座標変換する工程と、前記座標変換したソクテイ結果に対して設計座標系位置を推定計算する工程と、前記推定した設計座標系位置を用いて前記2つ以上の被測定面間の相対位置関係を求める工程とを経ることを特徴としている。 【0025】 【発明の実施の形態】 以下、この発明の実施の一形態を図面について説明する。 【0026】 実施の形態1. 図1はこの発明の実施の形態1による3次元形状測定装置の要部概略図であり、図において、被測定物1をベース定盤2の上に取り付け、ベース定盤2にY方向に移動可能にYスライド3を設け、Yスライド3にX方向に移動可能にXスライド4を設け、Xスライド4にZ方向に移動可能にZスライド5を設け、Zスライド5に接触式プローブ6を設けている。接触式プローブ6はその先端に球体6aを有し、被測定物表面1a上を球体6aがトレースするようにX,Y,Zスライド3,4,5の位置を制御する図示しない制御回路を設けている。 【0027】 上記被測定物1は、測定すべき面1aと3つの球面7a,7b,7cを有する。これらの球面7a、7b、7cの位置と、測定すべき面1aの面形状を定義している座標系の位置との相対的な位置姿勢は既知とする。また、上記ベース定盤2は被測定物1の水平方向の位置決めのために、つきあて用ピン8を3カ所設け、そのピン8に被測定物1を押し当てるため、2つの押しつけ用プランジャ9を設け、被測定物1の垂直方向の位置決めのため、3つのつきあて用突起10を設けており、このつきあて用突起10の上に被測定物1を固定する。 【0028】 なお、球面7a,7b,7cは被測定物1に接着固定するか、被測定物1を取付ける治具に固定する。 【0029】 まず、球面データの取り込み装置20により、3つの球面7a,7b,7cの表面をプローブで2次元的にトレースし、その座標を取り込む。その結果から球面カーブフィット装置21(中心位置測定部)により、その球中心位置{p1}、{p2}、{p3}を測定する。次に座標変換行列計算装置22(位置計算部)を用い、後記1?5式に従って被測定面1aの形状を定義している座標、すなわち面形状の定義座標[Cp]を計算する。次に、座標取り込み装置23(点群測定部)により、被測定面1aの表面をプローブで2次元的にトレースし、その測定データ、すなわちプローブ6の走査軌跡の途中における測定点である点群{pi,j}を取り込み、その点群を座標変換装置24(座標変換計算部)により後記6式により座標変換し、面形状の定義座標系で表した測定点群{qi,j}を得る。 【0030】 次に、法線ベクトル計算装置25(推定計算部)により、測定点群から法線ベクトル{ni,j}を推定計算し、その法線ベクトルと、プローブ球の真球度データ27を用い、接触点位置補正装置26(補正計算部)で後記13式のように接触点位置、すなわち、被測定面1a表面上の点{ri,j}を得る。次にセッティング誤差補正装置28(補正計算部)により上記点{ri,j}とブロック29の設計形状Z=f(x,y)を用いて形状誤差30(すなわち{ei,j})とセッティング誤差31(すなわち[Tp])を計算する。 【0031】 ところで、接触式の形状測定装置で形状を測定する場合、プローブと被測定物の間にゴミが混入することがある。その場合、例えば高さが数ミクロンもあるような大きな突起状の形状誤差が観測される。形状測定結果の信頼性を向上させるためには、このような、ゴミの影響を排除し、本来の被測定物の形状を推定する必要がある。そこで異常データの抽出装置32により、明らかにゴミの影響と判断できる点の位置にマークをつける。具体的には、となりあう測定点の差が急激に大きくなるかどうかを判定することにより、突起上の異常データを効率よく自動的に判別できる。 【0032】 次に異常データが検出されたかどうかの判定装置33により、異常データがあった場合にはその点を除いて再びセッティング誤差補正装置28に処理を移す。また、異常データが検出されなかった場合には抽出位置の補完装置34により、異常データを取り除いたあとをなめらかにつなげる。この計算操作はローパスフィルタや、移動平均を用いることにより容易に実現できる。最後に計算結果を記憶保存装置36により保存し、また、表示装置35により表示する。 【0033】 次に、以上説明してきた手順を数式で説明する。 【0034】 一般に、3次元形状測定装置で測定した座標点は測定装置のもつ誤差の他に、被測定物の形状誤差と被測定物を測定装置にセットするときの位置、姿勢の取り付け誤差、いわゆるセッティング誤差が含まれている。また、セッティング誤差はX,Y,Z方向の平行移動と、その軸まわりの回転移動が考えられるので6自由度がある。しかし、被測定物の形状によっては6自由度以下になることもある。たとえば、被測定物の形状が球面の場合は平行移動と回転移動が等価であり、区別できない。この場合、セッティング誤差の自由度は3であり、例えば独立な3つのパラメータを球中心の位置(X,Y,Z座標)と考えることができる。 【0035】 まず、図2に示すように、3つの球、第1、第2、第3の球の中心位置を形状測定装置で測定し、これを{p1}、{p2}、{p3}とする。この3点から座標系を次のように定義する。3つの点を含む平面に垂直な単位方向ベクトル{c}は次のように計算できる。 【0036】 【数1】 ここで、演算子xはベクトル外積を表す。上式において、分子は3つの球ではられる平面に垂直なベクトルであり、分母はその大きさなので、結局、3つの点を含む平面に垂直な単位ベクトルとなる。次にY軸の方向を第1から第2の点に向かう方向とすることとし(x軸を決定しても同様の手順である)、これを{b}とおくと 【0037】 【数2】 X軸の方向{a}は、右手系を採用すると次の式から決まる。 【0038】 {a}={b}x{c} (3) また、原点の位置を第1の点とする(3点のうち、どの点を原点としてもよい)。以上のようにして定義される座標系を次のように、4行4列の行列[Cq]で表現する。ここで、図2も参照。 【0039】 【数3】 このようにして3つの球から座標系[Cq]が定義できたが、被測定物の形状を定義している座標系、(以後、面形状の定義座標系と呼ぶ)はこれとは異なる。しかし、3つの球は被測定物に対して固定されているので、上記4行4列の行列[Cq]から被測定物の面形状定義座標系までの座標変換行列も定義できる(これを[Cr]とする)。すると、被測定物の形状を定義する座標系の位置[Cp]は、次のようにかける。 【0040】 [Cp]=[Cq][Cr] (5) 被測定面の測定データは、座標取り込み装置23が出力する3次元的な座標の集合、すなわち点群なので、これを{pi,j}で表す。ここで、括弧は列べクトルを表す。また添え字i,jは点番号を表し、面形状を測定する場合、測定点群は2次元的に配置されるので2つの添え字i,jで一つの測定点を示す。 この測定データは測定装置の座標系で表現されているので、これを上式で定義される座標[Cp]での表現に改める。すなわち、座標変換する。座標変換した後の測定点を{qi,j}とする。 {qi,j}=[Cp-1]{pi,j} (6) ここで、行列は4行4列のサイズなので、ベクトルはx、y、zに1を加えた4つの要素をもつ形に変形してから計算を行うこととする。 【0041】 次に測定点から、被測定物表面上の点を計算する。接触式プローブで形状をトレースする場合、測定データ{qi,j}はプローブ先端球の中心位置であり、球の半径だけずれた位置に被測定物表面がある。また、非接触プローブで形状をトレースする場合、測定データは非接触プローブ測定中心位置であるため、先端球の半径がゼロの球をもつ接触式プローブで形状を測定したのと、計算手順は等価である。よって、以後、非接触プローブの場合も同様に議論できる。先端球の半径をRpとすると、被測定物表面上の点は、測定点{qi,j}からRpだけずれた位置にある。 【0042】 このずれの補償方法には次の2つがある。 【0043】 第1の補償方法は、測定データ点群を補間し、法線方向を計算し、プローブ球と被測定面との接触点を計算する方法である。その法線ベクトルを{ni,j}とすると、接触点{ri,j}は次式で計算できる。 {ri,j}={qi,j}-Rp{ni,j} (7) この接触点と設計形状を用い、後述するセッティング誤差補正を行う方法である。 【0044】 第2の補償方法は設計形状から法線方向を計算し、プローブ球中心位置を計算する方法である。設計形状がz=f(x,y)で表現できるとすると、法線ベクトル{n}は次の式となる。 【0045】 【数4】 この法線ベクトル{n}を用い、球中心位置{q}は次式で計算できる。 【0046】 【数5】 この球中心位置{q}の計算値と、測定した位置(やはりプローブ球の中心位置)を用い、後述するセッティング誤差補正を行う方法である。また、この方法は別の見かたとして、上式を新たに設計値と考えることもできる。具体的には次式のように、設計値をz=g(x,y)と定義しなおすことである。 【0047】 【数6】 この場合、プローブ球半径Rpをゼロとセットしなおし、設計値gを新たにfとおきなおすことにより、以下同様に議論できる。 【0048】 次に、セッティング誤差補正を行う。前述したように、このセッティング誤差は一般に6つの自由度がある。それは例えば、XYZの平行移動と、XYZ軸回りの回転移動である。これらの移動は、座標変換で表現することができる。その座標変換を4行4列の行列である座標変換行列[Tp]で表す。セッティング誤差を含まない点、すなわちセッティング誤差を補正した測定点を{si,j}とすると、セッティング誤差補正は次の座標変換で表現できる。 【0049】 {si,j}=[Tp]{ri,j} (11) セッティング誤差を含まない座標とは、設計形状を定義している座標のことであるから、上式は設計形状を定義している座標で表現した測定点を意味する。そして、測定点が設計形状から逸脱している量、すなわち、形状誤差を次のように計算できる。設計形状をz=f(x,y)と記述すると、誤差形状{ei,j}は、 【0050】 【数7】 ここで、sxi,jは点{si,j}のx座標とする(Y,Zについても同様)。この座標変換行列[Tp]を計算する計算操作は、最小2乗法を用いた計算手順が知られている。この方法によれば、形状誤差である上式のZ座標、すなわち、szi,j-f(sxi,j、syi,j)の2乗和が最小になるセッティング誤差[Tp]が計算できる。他には形状誤差の最大最小の差を最小にするミニマックス法などが知られている。 【0051】 接触式プローブを用いた場合 3つの球面を被測定面に隣接して設け、まず、その中心位置を接触式プローブを用いて測定する。次に被測定面の形状をトレースして該被測定面の座標データを取得する。次に、先ほど測定した3つの球中心位置で決定される座標系[Cp]へ、被測定面の座標データを座標変換する。次に接触点位置の補正を行う。この時、あらかじめ干渉計などで測定しておいた先端球の真球度を補正する。先端球の真球度をh(φ,θ)とする。添え字のφ,θは2方向の角度である。法線ベクトル{ni,j}から先端球の接触する向き、すなわち2方向の角度φ,θが計算できるので、その場所の球面からのずれ、すなわち真球度h(φ,θ)が求まる。この真球度誤差を補正した接触点位置の補正計算は7式において、 {ri,j}={qi,j}-(Rp+h(φ,θ)){ni,j} (13) 次に、最小2乗法などを利用したセッティング誤差補正を行うが、以下の計算操作は前記と同じであるので説明を省略する。 【0052】 非接触プローブを用いた場合 3つの球面を被測定面に隣接して設け、まず、その中心位置を非接触プローブを用いて測定する。次に被測定面の形状をトレースし、被測定面の座標データを取得する。次に、先ほど測定した3つの球中心位置で決定される座標系[Cp]へ、被測定面の座標データを座標変換する。一般に、非接触プローブと、被測定物とは、接触しないため、その間の距離がいつも一定になるとは限らない。その距離が非接触プローブの追従誤差であり、その測定値をhi,jとかく。その値は測定点ごとに変化するので添え字も測定点と同じi,jを用いて表現する。この追従誤差を補正するため、まず、法線方向を計算する。その方法は前述したように、測定データ点群を補間し、法線方向を計算する方法、または、8式を用いて設計形状から法線方向を計算する方法がある。 【0053】 次に、次式を用い、追従誤差を補正する。 {ri,j}={qi,j}-(Rp+hi,j){ni,j} (14) 次に、最小2乗法などを利用したセッティング誤差補正を行うが、これ以降の計算操作は前記と同じであるので説明を省略する。 【0054】 以上のように、この実施の形態1によれば、3つの球中心位置で決定される座標系[Cp]は被測定物の被測定面があるべき位置姿勢、すなわち被測定面の設計位置を表し、被測定面の座標データをその座標系[Cp]に座標変換してから、セッティング誤差補正を行うので、セッティング誤差も座標系[Cp]での表現で計算される。座標系[Cp]は被測定面の設計位置であったので、得られたセッティング誤差は、設計位置からのずれを意味する。つまり、設計位置からのずれを計算できる。また、誤差形状が小さくなるようにセッティング誤差補正を行うので、被測定物の取り付け誤差の影響をうけて、誤差形状が不当に大きくなることを防止できる。 【0055】 また、先端のプローブが接触プローブの場合、その先端球の真球度の誤差があってもこれを補正し、精度の高い形状測定が可能となる。さらに、先端のプローブが非接触プローブの場合、プローブ球半径Rpを0とし、プローブ球の真球度データをプローブの追従誤差と読みかえると、本実施例とほぼ同じになるので省略する。 【0056】 実施の形態2. 図3は、この発明の実施の形態2による3次元形状測定装置の要部概略図であり、前記実施の形態1では法線ベクトルの計算に測定データを用いていたが、この実施の形態2では設計形状を用いて行う。 【0057】 図において、被測定物1をベース定盤2の上に取り付け、ベース定盤2にY方向に移動可能にYスライド3を設け、Yスライド3にX方向に移動可能にXスライド4を設け、Xスライド4にZ方向に移動可能にZスライド5を設け、Zスライド5に接触式プローブ6を設けている。接触式プローブ6はその先端に球体6aを有し、被測定物表面1a上を球体6aがトレースするようにX,Y,Zスライド3,4,5の位置を制御する図示しない制御回路を設けている。 【0058】 上記被測定物1は、測定すべき面1aと3つの球面7a,7b,7cを有する。これらの球面の位置と、面1aの面形状を定義している座標系の位置との相対的な位置姿勢は既知とする。また、上記ベース定盤2は被測定物1の水平方向の位置決めのために、つきあて用ピン8を3カ所設け、そのピン8に被測定物1を押し当てるため、2つの押しつけ用プランジャ9を設け、被測定物1の垂直方向の位置決めのため、3つのつきあて用突起を設けており、このつきあて用突起10の上に被測定物1を固定する。 【0059】 まず、球面座標データの取り込み装置20により、3つの球面7a,7b,7cの表面をプローブで2次元的にトレースし、その座標を取り込む。その結果から球面カーブフィット装置21により、その球中心位置{p1}、{p2}、{p3}を測定する。次に座標変換行列計算装置22を用い、1?5式に従って被測定面1aの形状を定義している座標[Cp]を計算する。次に、座標取り込み装置23により、被測定面1aの表面をプローブで2次元的にトレースし、その測定データ、すなわち点群{pi,j}を取り込み、その点群を座標変換装置24により座標変換(6式)し、面形状の定義座標系で表した測定点群{qi,j}を得る。 【0060】 次に、プローブ球の真球度データ27を用い、球中心設計形状計算装置37によって、設計値から8式を用い、法線ベクトルを計算し、9式を用い、球中心位置を計算する。 【0061】 この球中心位置の設計値と、さきほどの座標変換した点群を用い、セッティング誤差補正装置28により、形状誤差30(すなわち{ei,j})とセッティング誤差31(すなわち[Tp])を計算する。 【0062】 ところで、接触式の形状測定装置で形状を測定する場合、プローブと被測定物の間にゴミが混入することがある。その場合、例えば高さが数ミクロンもあるような大きな突起状の形状誤差が観測される。形状測定結果の信頼性を向上させるためには、このような、ゴミの影響を排除し、本来の被測定物の形状を推定する必要がある。そこで異常データの抽出装置32により、明らかにゴミの影響と判断できる点の位置にマークをつける。具体的には、となりあう測定点の差が急激に大きくなるかどうかを判定することにより、突起状の異常データを効率よく自動的に判別できる。次に異常データが検出されたかどうかの判定装置33により、異常データがあった場合にはその点を除いて再びセッティング誤差補正装置28に処理を移す。また、異常データが検出されなかった場合には抽出位置の補完装置34により、異常データを取り除いた後をなめらかにつなげる。この計算操作はローパスフィルタや、移動平均を用いることにより容易に実現できる。最後に計算結果を記憶保存装置36により保存し、また、表示装置35により表示する。 【0063】 以上のように、実施の形態2によれば、3つの球中心位置で決定される座標系[Cp]は、被測定物の被測定面があるべき位置姿勢、すなわち被測定面の設計位置を表す。まず、被測定面の座標データをその座標系[Cp]に座標変換してから、セッティング誤差補正を行うので、セッティング誤差31も、座標系[Cp]での表現となる。座標系[Cp]は被測定面の設計位置であったので、得られたセッティング誤差31は、設計位置からのずれを意味する。また、誤差形状が小さくなるようにセッティング誤差補正を行うので、被測定物の取り付け誤差の影響をうけて、誤差形状が不当に大きくなることを防止できる。 【0064】 また、先端のプローブが非接触プローブの場合、プローブ球半径Rpを0とし、プローブ球の真球度データをプローブの追従誤差と読みかえると、本実施の形態2とほぼ同じになるので省略する。 【0065】 また、本実施の形態2では、法線ベクトルを設計形状を用いて計算しているので、測定点群の位置に大きな測定誤差がのっている場合でも精度よく法線方向を計算することができる。 【0066】 実施の形態3. 図4はこの発明の実施の形態3による形状測定装置の要部概略図であり、図において、被測定物1をベース定盤2の上に取り付け、ベース定盤2にY方向に移動可能にYスライド3を設け、Yスライド3にX方向に移動可能にXスライド4を設け、Xスライド4にZ方向に移動可能にZスライド5を設け、Zスライド5に接触式プローブ6を設けている。接触式プローブ6はその先端に球体6aを有し、被測定物表面1a上を球体6aがトレースするようにX,Y,Zスライド3,4,5の位置を制御する図示しない制御回路を設けている。 【0067】 上記被測定物1は、2つの測定すべき面1aおよび1bと、3つの球面7a、7b、7cを有する。これらの球面の位置と面1aおよび1bの面形状を定義している座標系の位置との相対的な位置姿勢は既知とする。また、上記ベース定盤2は被測定物1の水平方向の位置決めのために、つきあて用ピン8を3カ所設け、そのピンに被測定物1を押し当てるため、2つの押しつけ用プランジャ9を設け、被測定物1の垂直方向の位置決めのため、3つのつきあて用突起10を設けており、このつきあて用突起10の上に被測定物1を固定する。 【0068】 まず、球面座標データの取り込み装置20aにより、3つの球面7a、7b、7cの表面をプローブで2次元的にトレースし、その座標を取り込む。その結果から球面カーブフィット装置21aにより、その球中心位置{p1}、{p2}、{p3}を測定する。次に座標変換行列計算装置22aを用い、1?5式に従って測定面1aの形状を定義している座標を計算する。このとき、被測定面は2つあるので、第1、第2の被測定面に対する座標変換行列[Cp1]と[Cp2]が計算できる。 【0069】 次に第1の被測定面形状を測定する。 【0070】 座標取り込み装置23aにより、被測定面1aの表面をプローブで2次元的にトレースし、その測定データ、すなわち点群{p1i,j}を取り込み、その点群を座標変換装置24aにより座標変換(6式)し、面形状の定義座標系で表した測定点群{q1i,j}を得る。 次に、法線ベクトル計算装置25aにより、測定点群から法線ベクトル{n1i,j}を推定計算し、その法線ベクトルと、プローブ球の真球度データ27aを用い、接触点位置補正装置26aにより、13式のように接触点位置、すなわち、被測定面1a表面上の点{r1i,j}を得る。次に設計形状29aと、セッティング誤差補正装置28aにより、形成誤差30a(すなわち{e1i,j})とセッティング誤差31(すなわち[Tp1]を計算する。 【0071】 ところで、接触式の形状測定装置で形状を測定する場合、プローブと被測定物の間にゴミが混入することがある。その場合、例えば高さが数ミクロンもあるような大きな突起状の形状誤差が観測される。形状測定結果の信頼性を向上させるためには、このような、ゴミの影響を排除し、本来の被測定物の形状を推定する必要がある。そこで異常データの抽出装置32aにより、明らかにゴミの影響と判断できる点の位置にマークをつける。具体的には、となりあう測定点の差が急激に大きくなるかどうかを判定することにより、突起状の異常データを効率よく自動的に判別できる。次に異常データが検出されたかどうかの判定装置33aにより、異常データがあった場合にはその点を除いて再び再びセッティング誤差補正装置28aに処理を移す。また、異常データが検出されなかった場合には抽出位置の補完装置34aにより、異常データを取り除いたあとをなめらかにつなげる。この計算操作はローパスフィルタや、移動平均を用いることにより容易に実現できる。次に計算結果を記憶保存装置36aにより保存し、また、表示装置35aにより表示する。 【0072】 次に第2の被測定面形状を測定する。 【0073】 座標取り込み装置23bにより、被測定面1bの表面をプローブで2次元的にトレースし、その測定データ、すなわち点群{p2i,j}を取り込み、その点群を座標変換装置24bにより座標変換(6式)し、面形状の定義座標系で表した測定点群{q2i,j}を得る。 このように、これ以降の計算操作は添え字を2に変えるだけで第1の被測定面の場合と同様である。座標取り込み装置23bにより、被測定面1bの表面をプローブで2次元的にトレースし、その測定データ、すなわち点群{p2i,j}を取り込み、その点群を座標変換装置24bにより座標変換(6式)し、面形状の定義座標系で表した測定点群{q2i,j}を得る。 次に、法線ベクトル計算装置25bにより、測定点群から法線ベクトル{n2i,j}を推定計算し、その法線ベクトルと、プローブ球の真球度データ27bを用い、接触点位置補正装置26bにより、13式のように接触点位置、すなわち、被測定面1a表面上の点{r2i,j}を得る。次に設計形状29bと、セッティング誤差補正装置28bにより、形状誤差30b(すなわち{e2i,j})とセッティング誤差31b(すなわち[Tp2])を計算する。 【0074】 ところで、上記いずれかの面を測定する場合でも、接触式の形状測定装置で形状を測定する場合、プローブ被測定物の間にゴミが混入することがある。その場合、例えば高さが数ミクロンもあるような大きな突起状の形状誤差が観測される。形状測定結果の信頼性を向上させるためには、このような、ゴミの影響を排除し、本来の被測定物の形状を推定する必要がある。そこで異常データの抽出装置32bにより、明らかにゴミの影響と判断できる点の位置にマークをつける。具体的には、となりあう測定点の差が急激に大きくなるかどうかを判定することにより、突起状の異常データを効率よく自動的に判別できる。次に異常データが検出されたかどうかの判定装置33bにより、異常データがあった場合にはその点を除いて再びセッティング誤差補正装置28bに処理を移す。また、異常データが検出されなかった場合には抽出位置の補完装置34bにより、異常データを取り除いたあとをなめらかにつなげる。この計算操作はローパスフィルタや、移動平均を用いることにより容易に実現できる。次に計算結果を記憶保存装置36bにより保存し、また、表示装置35bにより表示する。 【0075】 最後に相対位置の計算装置38(相対位置関係計算部)により、第1面と第2面の間の相対位置関係と、一方の面からみた他方の面の位置姿勢を計算する。 【0076】 次に上記の手順を数式で説明する。 【0077】 2つ以上の被測定面を有する被測定物の形状測定において、3つの球面を被測定面に対して固定して設け、まず、その中心位置を測定する。次に被測定面の形状をトレースし、複数の被測定面の座標データを取得する。次に、各測定面に対して、先ほど測定した3つの球中心位置で決定される座標系[Cp]を計算する。このとき、被測定面ごとにその形状を定義している座標系の位置、姿勢([Cr])が違うので、被測定面ごとにつけた番号を表す添え字mをつけて区別することとし、[Cpm]、[Cqm]、[Crm]などと表記する。次に、各測定面の測定点をその座標へ座標変換する。次に、最小2乗法などを利用したセッティング誤差補正を行い、セッティング誤差[Tpm]とする誤差形状{smi,j}を得る。 【0078】 ここまでの計算操作はこれまで説明してきた第1、第2、第3の計算手順と同じである。説明を簡単にするために被測定面を2つとし、m=1、2で区別し、基準となる面をm=2とすると、図5のようになる。装置座標1において、3つの球中心位置と第1の被測定面1aの形状を測定し、装置座標2において、3つの球中心位置と第2の被測定面1bの形状を測定する。 【0079】 次に、被測定面の相対的な位置姿勢を計算する。図5より、第2の被測定面(m=2)からみた第1の被測定面(m=1)の位置姿勢([Tr]とする)が次の式で求まる。 【0080】 [Tr]=[Tp2-1][Cr2-1][Cr1][Tr1] (15) 上式において、装置座標から3つの球で定義される座標系までの座標変換[Cqm]や[Cpm]が含まれていない。つまり、被測定面間の相対的な位置姿勢は各測定における装置座標がどこにあろうと関係ない。これは各測定において被測定物を着脱し(段取りを変え)、位置が測定装置に対してずれてもかまわないことを意味する。 【0081】 上記、構成において、3つの球中心位置で決定される座標系[Cpm]は被測定物の被測定面があるべき位置姿勢、すなわち被測定面の設計位置を表す。まず、被測定面の座標データをその座標系[Cpm]に座標変換してから、セッティング誤差補正を行うと、セッティング誤差も、座標系[Cpm]での表現となる。この座標系[Cpm]は被測定面の設計位置であったので、得られたセッティング誤差は、設計位置からのずれを意味する。また、誤差形状が小さくなるようにセッティング誤差補正を行うので、第2の従来例のように誤差形状が大きくなることもない。 【0082】 さらに、複数の被測定面間の相対的な位置姿勢も測定することができる。 【0083】 以上のように実施の形態3によれば、3つの球中心位置で決定される座標系[Cp1]あるいは[Cp2]は被測定物の被測定面があるべき位置姿勢、すなわち被測定面の設計位置を表し、まず、被測定面の座標データをその座標系に座標変換してから、セッティング誤差補正を行うので、セッティング誤差も、設計位置からのずれを意味する。また、誤差形状が小さくなるようにセッティング誤差補正を行うので、被測定物の取り付け誤差の影響をうけて、誤差形状が不当に大きくなることを防止できる。 【0084】 また、2つの被測定面間の相対位置関係も測定できる。また、先端のプローブが非接触プローブの場合、プローブ球半径Rpを0とし、プローブ球の真球度データをプローブの追従誤差と読みかえると、本実施の形態3とほぼ同じになるので具体的な説明は省略する。 【0085】 実施の形態4. 図6はこの発明の実施の形態4による形状測定装置の要部概略図であり、前記実施の形態3では、3つの球中心位置の測定を1回ですませたが、本実施の形態4では各面の測定ごとに、そのつど、3つの球中心位置の測定を行う。そうすると、被測定面と3つの球中心位置との相対関係が各面の測定ごとに決まるので、式15のところでも説明したが、各被測定面の測定ごとに被測定物1を着脱し、段取りを変えることができる。すなわち、各測定面ごとに、形状が測定しやすいように位置姿勢を変えて(段取りを変えて)測定することができる。 【0086】 例えば、通常のレンズのように、表面と裏面がある被測定物1の場合、段取りを変えずに形状測定装置で両面を測定することはできない。それに対して本実施の形態4のように、表面形状とともに3つの球中心を測定し、被測定物を上下逆さまにして裏面形状とともに先ほどと同じ3つの球中心を測定することにより、2つの被測定面、すなわち表面と裏面の相対的な位置姿勢が計算できる。 【0087】 手順の説明は球中心位置の測定を、各面の測定ごとに行うという点を除いて前記実施の形態3と同じなので重複説明を省略する。 【0088】 実施の形態5. 図7はこの発明の実施の形態5による形状測定装置の要部概略図であり、2つ以上の被測定面を有する被測定物の形状測定において、各面の測定に際し、被測定物の取り付け姿勢を変えなければならない場合、すなわち、段取り替えが必要な形状の場合、各面の相対的な位置を測定するために、前記実施の形態4では3つの球がすべての(被測定物の)取り付け姿勢で測定可能でなければならなかった。この制約条件を緩和するために4つ以上の球を被測定面に対して固定して設ける。まず、全ての球の相対的な位置関係を測定する手順を説明する。 【0089】 球のうち4つ以上の組を選択し、段取りを変えずにその組の球の中心座標を測定する。すると、前述したように3つの球で座標系が定義でき、残る球の位置はその座標を用いて表すことができる。言い換えると測定した4つ以上の球の相対的な位置関係が記述できる。 【0090】 次に、新たな4つ以上の球の組を選択し、球中心位置を測定する。このとき、前回の球の組と少なくとも3つは同じ球を選ぶようにする。そうすると、その3つの球を用いて前回測定した球中心位置と、新たに測定した球中心位置の相対的な位置関係が定まる。 【0091】 このように、4つ以上の組にわけて球中心位置を順次、測定することにより、全ての球の相対的な位置関係を測定することができる。 【0092】 あとは、ほぼ実施の形態4と同様であるが、3つの球で定義される座標系が一つではないところが異なる。被測定面が2つの場合を図8に示す。[Tc]は3つの球で定義される複数の座標系間の相対位置を表す座標変換行列である。これは、前述した方法であらかじめ測定した球の相対位置を用いて計算できる。3つの球中心位置から式1?4によって定義される座標系[Cqm](m=1,2)から [Tc]=[Cp2-1][Cq1] (16) で計算する。この[Tc]を用い、式15のかわりに次の座標変換を用いて、第2の被測定面(m=2)からみた第1の被測定面(m=1)の位置姿勢([Tr])を計算する。 【0093】 [Tr]=[Tp2-1][Cr2-1][Tc][Cr1][Tr1] (17) 上記、構成において、3つの球中心位置で決定される座標系[Cpm]は被測定物の被測定面があるべき位置姿勢、すなわち被測定面の設計位置を表す。まず、被測定面の座標データをその座標系[Cpm]に座標変換してから、セッティング誤差補正を行うと、セッティング誤差も、座標系[Cpm]での表現となる。座標系[Cpm]は被測定面の設計位置であったので、えられたセッティング誤差は、設計位置からのずれを意味する。また、誤差形状が小さくなるようにセッティング誤差補正を行うので、第2の従来例のように誤差形状が大きくなることもない。 【0094】 次に相対座標位置計算装置39(相対位置計算部)により、式16を用い、3つの球で定義される第1の座標系と、第2の座標系の間の座標変換行列[Tc]を求める。あとの手順は式15のかわりに式17を用いる点を除いて、実施の形態4と同じなので、重複説明を省略する。 【0095】 以上のように、この実施の形態5では、表面形状とともに測定する3つの球を、被測定面ごとに異なる球を使用できるため、球の配置の自由度が高い。図9に2つの被測定面を有する被測定物を測定する場合の例を示す。まず、(a)の段取りで、プローブ6を用い、球中心位置を測定する。被測定物1はベース定盤2に固定されたつきあて用ピン8に押しつけ用プランジャ9で押しつけられて、固定される。被測定物1には被測定面1a,1bと4つ以上の球が固定されている。この図では3つの球のみ示している(7a,7b,7d)。 【0096】 次に(b)の段取りで、面1aと3つの球中心を測定する。このとき全ての球を測定する必要はない。すでに(a)の段取りで球の間の位置を測定しているからである。この(b)の段取りでは球7bを測定するのが困難である。 【0097】 次に(c)の段取りで、面1bを測定する。このときも全ての球を測定する必要はない。このように、被測定面ごとに測定しやすい場所に球を配置することができる。 【0098】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明によれば、測定データをまず最初に3つの球中心位置で決定される座標系へ座標変換してからセッティング誤差補正するように構成したので、被測定面の設計位置からずれを測定することが可能となり、また、誤差形状が小さくなるようにセッティング誤差補正も行うので、被測定物の取り付け誤差の影響をうけて、誤差形状が不当に大きくなることを防ぐことが可能となる。 【0099】 また、接触式プローブを用いて形状を測定する場合、プローブの先端に取り付ける球の真球度誤差をあらかじめ測定し、補正するように構成したので、形状測定精度の向上が可能となる。 【0100】 また、非接触プローブを用いて形状を測定する場合、プローブの追従誤差を補正するように構成したので、形状測定精度の向上が可能となる。 【0101】 また、2つ以上の被測定面間の相対的な位置関係も同時に測定可能となる。 【0102】 また、さらに、位置のマークである3つの球が、すべての段取りで測定可能である必要がなくなるため、通用できる被測定物の形状の自由度が向上できる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の実施の形態1による形態測定装置の要部概略図である。 【図2】本発明における原理説明図である。 【図3】本発明における2つの被測定面を測定する場合の原理説明する図である。 【図4】本発明における4つ以上の球を用いて2つ以上の被測定面を測定する場合の原理説明図である。 【図5】本発明の実施の形態2による形状測定装置の要部概略図である。 【図6】本発明の実施の形態3による形状測定装置の要部概略図である。 【図7】本発明の実施の形態4による形状測定装置の要部概略図である。 【図8】本発明の実施の形態5による形状測定装置の要部概略図である。 【図9】実施の形態5における効果を説明する図である。 【図10】従来の形状測定装置の要部概略図である。 【符号の説明】 1 被測定物、2 ベース定盤、3 Yスライド、4 Xスライド、5 Zスライド、6 接触式プローブ、6a プローブ先端球、7a?7d 球体、21 球面カーブフイット装置(中心位置測定部)、22 座標変換行列計算装置(位置計算部)、23 座標取り込み装置(点群測定部)、24 座標変換装置(座標変換計算部)、25 法線ベクトル計算装置(推定計算部)、26 接触点位置補正装置(補正計算部)、28 セッティング誤差補正装置(補正計算部)、38 相対位置の計算装置(相対位置関係計算部)、39 相対座標位置計算装置(相対位置計算部)。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審決日 | 2007-05-29 |
出願番号 | 特願平10-228648 |
審決分類 |
P
1
41・
852-
Y
(G01B)
|
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 大和田 有軌 |
特許庁審判長 |
杉野 裕幸 |
特許庁審判官 |
上原 徹 岡田 卓弥 |
登録日 | 2006-02-10 |
登録番号 | 特許第3768688号(P3768688) |
発明の名称 | 3次元形状測定装置及び3次元形状測定方法 |
代理人 | 高梨 幸雄 |
代理人 | 高梨 幸雄 |