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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性  G01M
管理番号 1159183
審判番号 無効2005-80338  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2005-11-25 
確定日 2007-06-15 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第3243432号発明「ドライバーズエイド」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第3243432号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3243432号は、平成9年7月16日に特許出願され、平成13年10月19日に特許権の設定登録が行われた。その後、無効審判請求人株式会社小野測器により無効審判の請求がなされ、被請求人より平成18年2月17日付けで訂正請求が行われたものである。

2.訂正請求について
2-1.訂正請求の内容
平成18年4月27日付け手続補正書で補正された平成18年2月17日付け訂正請求書によると、被請求人の訂正請求の内容は、特許請求の範囲を次のとおり訂正するとともに、特許明細書の発明の名称を「ドライバーズエイド」と訂正することを求めるものである。
「【請求項1】 運転席に座ったドライバーに対し、表示画面上にモード運転の走行速度パターンを表示するようにしたドライバーズエイドにおいて、前記表示画面に、汎用データをアナログおよびディジタル的に表示する表示部を設け、前記表示部によって必要な汎用データを選択的かつグラフィカルに表示できるようにし、更に、前記表示部は、様々なデータ項目について表示できるように区画されるとともに、前記表示画面は、走行速度パターンを表示するためのエリアと、汎用データを表示するための表示部を設けたエリアとからなり、それら2つのエリアの配置関係、大きさ、さらには、それらにおける表示項目については、コンピュータにおけるプログラムにしたがって任意に設定できるようにしたことを特徴とするドライバーズエイド。」(下線部は、訂正箇所である。以下、訂正後の請求項1に係る発明を「本件発明」という。)
すなわち、訂正事項は次のとおりである。
(訂正事項a)
請求項1において「車両運転モード表示装置」とあるのを、「ドライバーズエイド」と訂正する。
(訂正事項b)
請求項1において「表示画面上にモード運転の走行速度パターンを表示するようにした」とあるのを、「運転席に座ったドライバーに対し、表示画面上にモード運転の走行速度パターンを表示するようにした」と訂正する。
(訂正事項c)
請求項1に「アナログおよび/またはディジタル的に」とあるのを、「アナログおよびディジタル的に」と訂正する。
(訂正事項d)
請求項1に「前記表示部によって汎用データをグラフィカルに表示できるようにし、」とあるのを、「前記表示部によって必要な汎用データを選択的かつグラフィカルに表示できるようにし、」と訂正する。
(訂正事項e)
請求項1において「前記表示画面における走行速度パターンや汎用データの表示項目や表示形態については、」とあるのを、「前記表示画面は、走行速度パターンを表示するためのエリアと、汎用データを表示するための表示部を設けたエリアとからなり、それら2つのエリアの配置関係、大きさ、さらには、それらにおける表示項目については、」と訂正する。
(訂正事項f)
発明の名称において「車両運転モード表示装置」とあるのを、「ドライバーズエイド」と訂正する。

2-2.訂正の可否について
(訂正事項a)
この訂正は、「車両運転モード表示装置」という記載を「ドライバーズエイド」という記載にして明確にするものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、特許明細書の段落【0002】には「車両運転モード表示装置(ドライバーズエイドともいう)7」との記載があるから、特許明細書に記載した事項の範囲内における訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(訂正事項b)
この訂正は、走行速度パターンを表示する対象を「運転席に座ったドライバーに対し、」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、特許明細書の段落【0002】には「自動車4の運転席に座ったテストドライバー(図外)が、」及び「テストドライバーは、車両運転モード表示装置7の表示画面7A上に表示される走行速度パターン8が示す速度に合うように運転を行い、」との記載があるから、特許明細書に記載した事項の範囲内における訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(訂正事項c)
この訂正は、「アナログおよび/またはディジタル的に」表示する表示部を、「アナログおよびディジタル的に」表示する表示部であるとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、訂正前の請求項1には「アナログおよび/またはディジタル的に」と記載され、アナログおよびディジタル的に表示する表示部が記載されているから、特許明細書に記載した事項の範囲内における訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(訂正事項d)
この訂正は、「前記表示部によって汎用データをグラフィカルに表示できるようにし、」という記載を、「前記表示部によって必要な汎用データを選択的かつグラフィカルに表示できるようにし、」と限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、特許明細書の段落【0008】【0014】には「必要な汎用データを合理的かつ見やすく表示することができる」と記載され、段落【0008】には「各ユーザごとに必要な汎用データを選択することができ、」と記載されているから、特許明細書に記載した事項の範囲内における訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(訂正事項e)
この訂正は、「前記表示画面における走行速度パターンや汎用データの表示項目や表示形態については、」という記載を、「前記表示画面は、走行速度パターンを表示するためのエリアと、汎用データを表示するための表示部を設けたエリアとからなり、それら2つのエリアの配置関係、大きさ、さらには、それらにおける表示項目については、」と限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そして、特許明細書の段落【0010】には「この車両運転モード表示装置15の表示画面16は、図1に示すように、走行速度パターン8を表示するためのエリア17と、汎用データDを表示するためのエリア18とからなる。これら2つのエリア17,18は固定的なものではなく、それらの配置関係や大きさ(面積)、さらには、それらにおける表示項目(内容)については、ユーザが適宜設定することができるものであり、コンピュータ6内のRAMなどの記憶部に書替え可能に記憶される。そして、その記憶された内容はコンピュータ6におけるプログラムにより適宜設定される。」との記載があるから、特許明細書に記載した事項の範囲内における訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
(訂正事項f)
この訂正は、特許明細書の発明の名称を「車両運転モード表示装置」から「ドライバーズエイド」という記載にして明確にするものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものに該当する。そして、特許明細書の段落【0002】には「車両運転モード表示装置(ドライバーズエイドともいう)7」との記載があるから、特許明細書に記載した事項の範囲内における訂正であり、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

したがって、平成18年2月17日付けの訂正請求は、特許法第134条の2第1項ただし書き、並びに同条第5項の規定によって準用する同法126条第3項及び第4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.無効審判請求人の主張
本件発明は、以下の無効理由により、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は同法第123条第1項第2号の規定により無効とされるべきものである。(無効審判請求書、弁駁書)
(無効理由1)
本件発明は、甲第1号証(「自動運転システムADS-1100」のカタログ、株式会社堀場製作所、平成6年11月8日)の発明と実質的に同一の発明であるから、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定により特許を受けることができない。
(無効理由2)
本件発明は、甲第2号証(特開平7-174671号公報)に記載された発明と実質的に同一の発明であるから、特許法第29条第1項第3号又は第2項の規定により特許を受けることができない。
(無効理由3)
本件発明は、甲第3号証(特開昭62-276435号公報)に記載された発明並びに甲第4号証(「VisualBasic5.0入門-基礎編-」ソフトバンク株式会社、1997年6月5日初版発行、p.2-13)、甲第5号証(特開昭58-67536号公報)、甲第6号証(特開平4-273016号公報)及び甲第7号証(特開平9-166535号公報)等の周知・慣用技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(無効理由4)
本件発明は、甲第8号証(特開平8-189880号公報)に記載された発明及び甲第4?7号証等の周知・慣用技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(無効理由5)
本件発明は、甲第9号証(特開平8-170938号公報)に記載された発明及び甲第4?7号証等の周知・慣用技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.被請求人の主張(答弁書)
請求人が提出した各甲号証に記載された発明、すなわち、ドライバーズエイドとは全く異なる装置(自動運転ロボットのコントローラ等)であって単純に走行速度パターンやアナログメータ、ディジタルメータ等を一画面内に表示したもの(甲1、甲2)や、従来の走行速度パターン表示機能を有したドライバーズエイド(甲3、甲8、甲9)、あるいはアナログメータおよびディジタルメータを有するような他の装置の画面例(甲5、甲6、甲7)、OSにおけるウィンドウズの画面作成例(甲4)は、それぞれ単に本発明に係る画面表示の部分部分について記載されているだけである。
各甲号証には、ドライバーズエイド特有の課題を解決すべく、それらをどのように統合して配置したのか、という本発明の本質的なアイデア部分である画面配置構成に関して一切開示ないし示唆されていないし、もちろん、本発明の課題を解決し得るものでもない。
したがって各甲号証記載の発明から本発明に当業者が容易に想到することはできないし、ましてやそれらが本発明と実質的に同一であるはずもない。

5.無効理由3についての検討
以下に、無効審判請求人が主張する無効理由3について検討する。
5-1.甲第3号証、甲第5号証、甲第6号証、及び甲第7号証に記載された発明
[甲第3号証]
甲第3号証は、本件特許の出願日前に頒布された特開昭62-276435号公報であって、「完成車検査ステーションにおける表示装置」の発明が記載されており、以下の記載がある。
(ア)「本発明は、・・・検査ステーションに備える表示装置であって、時間軸と速度軸とから成る直交座標にテストモードを記録したフィルムを臨ませる表示部を備え、該フィルムを一定速度で時間軸方向に移動自在とすると共に、車両の駆動輪に連動して回転する該検査ステーションに配置したドラムに応動して速度軸方向に移動自在の指標を該表示部に設けたことを特徴とする。」(第1頁右下欄第14行から第2頁左上欄第2行)
(イ)「作業者が表示部を見ながらフィルムに記録したテストモードに指標が合致するように被検査車両を運転しつつ各項目の検査を行うことができ、従って被検査車両の運転状態のばらつきが防止され検査条件が統一される。」(第2頁左上欄第4?8行)
(ウ)「上記検査ステーション(1)に配置した制御ボックス(19)のパネル(19a)に、第3図に示す如く、前記速度検出器(9)からの測定値を表示する速度計(20)と、前記回転速度計(11)とダイナモメータ(12)とに接続される変換器(21)からの動力測定値を表示する動力計(22)とトルク計(23)と、前輪ブレーキ検査ドラム(6)に接続した前記トルク検出器(15)からの測定値を表示する前輪制動力計(24)と、更に後輪ブレーキ検査ドラム(7)に接続した前記トルク検出器(18)からの測定値を表示する後輪制動力計(25)とを設けた。
・・・・・
又、上記制御ボックス(19)のパネル(19a)に、時間軸と速度軸とから成る直交座標に第4図に明示するようなテストモード(35)を記録したフィルム(36)を臨ませる表示部(19b)を設け、該表示部(19b)に該フィルム(36)を一定速度で時間軸方向(第3図で上下方向)に移動自在に設けると共に、前記速度検査ドラム(4)に応動して速度軸(同図で横方向)に移動自在の指標(37)を該表示部(19b)に設けた。」(第2頁右上欄第16行から右下欄第7行)
また、第3図から、パネル(19a)には、テストモード(35)を記録したフィルム(36)及び指標(37)から成る表示部(19b)を設けるとともに、測定値をディジタル的に表示する速度計(20)、動力計(22)、トルク計(23)、前輪制動力計(24)及び後輪制動力計(25)を設けることが見て取れる。
してみると、甲第3号証には、「作業者が表示部を見ながらフィルムに記録したテストモードに指標が合致するように被検査車両を運転しつつ各項目の検査を行うための完成車検査ステーションにおける表示装置において、制御ボックス(19)のパネル(19a)に、テストモード(35)を記録したフィルム(36)及び移動自在の指標(37)から成る表示部(19b)を設けると共に、測定値をディジタル的に表示する速度計(20)、動力計(22)、トルク計(23)、前輪制動力計(24)及び後輪制動力計(25)を設けた完成車検査ステーションにおける表示装置。」(甲第3号証記載の発明)が記載されていると認められる。

[甲第5号証]
甲第5号証(特開昭58-67536号公報)には、以下の記載がある。
(エ)「本発明は・・・、車両の特定の表示対象項目の状態を少なくとも2つの表示形態にて切替表示可能とする表示面を有する表示手段を用い、この表示手段にて表示する車両の特定の表示対象項目の表示形態を指示手段に設定された外部操作による指示に従って可変とするようにすることによって、車両の特定表示対象項目の状態の表示形態を使用者の好みに応じて自由に変化させることができる車両用表示装置を提供することを目的とするものである。」(第1頁右下欄第20行から第2頁左上欄第9行)
(オ)「4は予め定めた制御プログラムに従ってソフトウエアによるディジタル演算処理を実行するマイクロコンピュータで、・・・上記各構成要素からの信号を受けて車速表示などのための演算処理(センサを図示してないが、エンジン回転数、燃料残量、水温などを表示させるための演算処理を含む)を実行し、車速を表示させるための表示指令信号を含む各種表示指令信号を発生するものである。」(第2頁左上欄第18行から右上欄第8行)
(カ)「7は表示手段としてのCRT表示装置で、CRTコントローラ6よりの映像信号と同期信号によって各種表示項目を部分的に表示するものである。なお、車速の表示領域においては、車速を第2図(a)或いは(b)に示す表示形態にて表示している。」(第2頁右上欄第19行から左下欄第3行)
また、第2図(a)には、車速をディジタル的な表示形態で表示することが、第2図(b)には、車速をアナログ的な表示形態で表示することが示されている。

[甲第6号証]
甲6号証(特開平4-273016号公報)には、以下の記載がある。
(キ)「【発明が解決しようとする課題】 ・・・本発明は、・・・各種車両情報の表示項目、表示位置、表示像の大きさ、およびその変更具合いを各ユーザにて自由に設定、変更可能な車両用情報表示装置を提供することを目的としている。」(第2頁左欄第36?49行)
(ク)「【課題を解決するための手段】 上述の如き目的は、本発明によれば、車速、機関回転数、燃料残量等の車両情報をCRT、LCDの如き表示器の画面にディジタル画像にて複合表示する車両用情報表示装置に於いて、各種車両情報の表示画像のデータを格納した表示画像データ記憶手段と、外部信号により変更可能に設定された表示画像の画面表示位置に関するデータを記憶する画面表示位置記憶手段と、前記表示画像データ記憶手段に格納された表示画像のデータと前記画面表示位置記憶手段に記憶された表示画像の画面表示位置に関するデータとに応じて表示器に表示する画像を制御する画像表示制御手段と、前記画面表示位置記憶手段が記憶する表示画像の画面表示位置および表示画像の大きさの少なくとも何れか一方に関するデータの入力を行うタッチパネル、キーボードの如き手操作入力手段とを有することを特徴とする車両用情報表示装置によって達成される。」(第2頁右欄第1?16行)
(ケ)「図1は本発明による車両用情報表示装置の一実施例を示している。車両用情報表示装置は、自動車等の車両のインストルメントパネル等に取り付けられて車速、機関回転数、燃料残量等の車両情報の画面表示内容を運転者より視認される表示器1を有している。表示器1は、CRT、LCDの如きディジタル画像表示式の表示器により構成され、これの車速、機関回転数、燃料残量等の車両情報の画面表示はディスプレイ用コンピュータ2により制御されるようになっている。」(第2頁右欄第27?35行)
(コ)「CPU3は、システムメモリ4に格納されたシステムプログラムを実行し、車両情報表示モードに於いては、表示画像データメモリ5に格納された表示画像のデータと画面表示データメモリ6に記憶された表示画像の画面表示位置、表示倍率に関するデータとに応じて表示器1に表示する画像を制御し、制御信号をディスプレイコントローラ8へ出力し、表示画面ユーザ設定モードに於いては、タッチパネル10より表示画像の表示器1に於ける画面表示位置、表示画像の表示器1に於ける表示倍率に関するパラメータを取り込み、これらを画面表示データメモリ6に書き込むようになっている。」(第3頁左欄第11?21行)
(サ)「表示画面のユーザ設定に際しては、先ずタッチパネル10の押圧により表示メータ名を選択する。すると、選択された表示メータ名に対応する車速計、機関回転数計、燃料計、トリップメータ等の表示画像がレイアウト表示画面に表示されるようになる。この状態にてタッチパネル10の押圧により位置設定キーが選択されると、タッチパネル10の押圧による上下左右のスクロールキーの操作によりレイアウト表示画面に於ける設定対象の表示画像が上下左右に移動してその表示位置が変化し、またこの状態にてタッチパネル10の押圧により倍率設定キーが選択されると、タッチパネル10の押圧による上下のスクロールキーの操作によりレイアウト表示画面に於ける設定対象の表示画像の倍率が変化する。設定対象の表示画像の位置、倍率、即ち大きさがユーザの好みのものに決まったならば、タッチパネル10の押圧により実行キーが操作されればよく、これにより設定対象の表示画像の位置、倍率が決定され、これのパラメータを画面表示データメモリ6に書き込むことが行われる。」(第3頁左欄第46行から右欄第14行)

[甲第7号証]
甲第7号証(特開平9-166535号公報)には、以下の記載がある。
(シ)「測定値表示装置は、表示器、制御回路及び設定操作器を有している。この表示器は指針表示とグラフ表示の両表示をするための表示域を有している。この表示面は液晶やブラウン管等のディスプレイが採用される。該制御回路は該表示器の該両表示の相対的な位置及び大きさを制御するためのもので該表示器に導結される。この制御回路は、表示面上で特定画面の拡大と縮小や、移動を行うためのもので、一般的に知られている構成である。そして、該設定操作器は該制御回路に導結され、その操作により該制御回路を介し該表示器の上記の表示を制御するようになっている。」(第2頁右欄第37?47行)
(ス)「図3、図4及び図5はこの測定表示装置2の正面概略図で、単一の表示器3と設定操作器4を有している。この表示器3は表示域5を備えている。図3はこの表示域5に指針表示6が強調されている状態、図4はグラフ表示7が強調されている状態、図5はグラフ表示が指針表示6内に重複してかつ両者共に強調されている状態の、各一例である。」(第3頁左欄第8?14行)
(セ)「図3、図4あるいは図5に示したように、指針表示6とグラフ表示7の両者の位置と大きさを可変設定により表示させることができる。」(第3頁左欄第45?48行)
(ソ)「図3の18は荷重測定値のデジタル表示部で、このような指針表示6とグラフ表示7以外で、測定に関連する数値や文字も同一表示内に表示される場合もある。」(第3頁右欄第1?4行)
(タ)「制御回路8は設定操作器4からの設定入力に基づいてその入力に相当する表示を表示器3に与えるための制御を行う他、材料試験に伴う荷重値や変位計測値等を取り組み、先の設定した表示へ、測定値を表示する制御も含まれている。これらを実行するため、制御回路8はマイクロコンピューター(CPU)及びインターフェース回路及びメモリー回路等の電子回路を中心に構成される。」(第3頁右欄第7?14行)

5-2.対比・判断
本件発明と甲第3号証記載の発明とを対比する。
甲第3号証記載の発明の「フィルムに記録したテストモード」が本件発明の「モード運転の走行速度パターン」に相当することが明らかであり、また、本件特許明細書には「車両運転モード表示装置(ドライバーズエイドともいう)7」(段落【0002】)と記載されているから、甲第3号証記載の発明の「作業者が表示部を見ながらフィルムに記録したテストモードに指標が合致するように被検査車両を運転しつつ各項目の検査を行うための完成車検査ステーションにおける表示装置」は本件発明の「運転席に座ったドライバーに対し、表示画面上にモード運転の走行速度パターンを表示するようにしたドライバーズエイド」に相当するものである。
また、本件特許明細書には「汎用データ」に関して「自動車4における速度、エンジン回転数、走行距離、エンジンブースト圧(マニホールド負圧)などの自動車に関するデータや、試験時における大気圧、周囲温度、湿度などの試験条件に関するデータなど所謂汎用データについては、」(段落【0004】)と記載されているから、甲第3号証記載の発明の「測定値をディジタル的に表示する速度計(20)、動力計(22)、トルク計(23)、前輪制動力計(24)及び後輪制動力計(25)」は本件発明の「汎用データ」に相当するものである。
してみると、両者は「運転席に座ったドライバーに対し、表示画面上にモード運転の走行速度パターンを表示するようにしたドライバーズエイドにおいて、表示画面に、走行速度パターンを表示する表示部と複数の汎用データを表示する表示部とを設けたドライバーズエイド。」で一致し、次の点で相違すると認められる。
(相違点1)本件発明においては、表示画面が、走行速度パターンを表示するためのエリアと、汎用データを表示するための表示部を設けたエリアとからなり、それら2つのエリアの配置関係、大きさ、さらには、それらにおける表示項目については、コンピュータにおけるプログラムにしたがって任意に設定できるようにしてあるのに対して、甲第3号証記載の発明では、走行速度パターンを表示する表示部と汎用データを表示する表示部とは別々の表示部であって、このような構成を有していない点。
(相違点2)
汎用データを表示する表示部が、本件発明においては、汎用データをアナログおよびディジタル的に表示するものであり、必要な汎用データを選択的かつグラフィカルに表示できるものであり、更に、様々なデータ項目について表示できるように区画されているのに対して、甲第3号証には、複数の汎用データをディジタル的に表示することが記載されているのみであって、このような構成は記載されていない点。

上記相違点について検討する。
相違点1について、
複数の情報を表示する際に、1つの表示器の表示画面上にそれぞれの情報の表示エリアを設け、各情報の表示エリアの配置関係、大きさ、それらにおける表示項目をコンピュータにおけるプログラムにしたがって任意に設定できるようにすることは上記5-1.の甲第6号証や甲第7号証の記載にみられるように周知の技術であり、甲第6号証には車両用の情報表示装置においてこのような周知技術が用いられることも示唆されている。
してみると、走行速度パターンを表示する表示部と複数の汎用データを表示する表示部とを設けた甲第3号証記載の表示装置において、この周知技術を用いて、表示画面を1つの表示器の表示画面とし、走行速度パターンを表示するためのエリアと、汎用データを表示するための表示部を設けたエリアとからなり、それら2つのエリアの配置関係、大きさ、さらには、それらにおける表示項目については、コンピュータにおけるプログラムにしたがって任意に設定できるように構成することは、当業者ならば容易に想到し得たものと認められる。
相違点2について、
複数のデータを表示する際に、表示の必要性や見やすさなどを考慮して、アナログおよびディジタル的に表示すること、必要なデータを選択的かつグラフィカルに表示することは、上記5-1.の甲第5号証(アナログ表示とディジタル表示の選択)、甲第6号証(データ項目に応じてディジタル表示とアナログ表示を選択)、甲第7号証(アナログおよびディジタル表示)の記載にみられるように周知の技術であり、この周知技術を、甲第3号証記載の複数の汎用データの表示に用いることは当業者が適宜採用する事項である。そして、様々なデータ項目について表示できるように区画することも、多数のデータを表示する場合に、見やすさなどを考慮して、当業者が適宜採用する設計的事項である。
そして、本件発明の作用効果も、甲第3号証記載の発明及び上記周知技術から当業者であれば予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、甲第3号証記載の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、請求項1に係る本件特許は特許法第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ドライバーズエイド
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】運転席に座ったドライバーに対し、表示画面上にモード運転の走行速度パターンを表示するようにしたドライバーズエイドにおいて、前記表示画面に、汎用データをアナログおよびディジタル的に表示する表示部を設け、前記表示部によって必要な汎用データを選択的かつグラフィカルに表示できるようにし、更に、前記表示部は、様々なデータ項目について表示できるように区画されるとともに、前記表示画面は、走行速度パターン表示するためのエリアと、汎用データを表示するための表示部を設けたエリアとからなり、それら2つのエリアの配置関係、大きさ、さらには、それらにおける表示項目については、コンピュータにおけるプログラムにしたがって任意に設定できるようにしたことを特徴とするドライバーズエイド。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、自動車など車両をモード運転試験する際に用いる車両運転モード表示装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば自動車のモード運転試験は、一般に、次のようにして行われている。すなわち、図3に示すように、シャシダイナモメータ1のローラ2に例えば後輪3を保持させた自動車4の運転席に座ったテストドライバー(図外)が、リモートコントロールスイッチ5を操作してスタート信号を、試験装置全体を制御する機能を備えた例えばコンピュータなどのデータ処理装置6に送る。これによって、データ処理装置6は、自動車4の外方前方の適宜位置に設けられた車両運転モード表示装置(ドライバーズエイドともいう)7にスタート信号を送るとともに、データ採取を開始する。そして、テストドライバーは、車両運転モード表示装置7の表示画面7A上に表示される走行速度パターン8が示す速度に合うように運転を行い、そのとき採取されるデータに基づいて分析を行うのである。
【0003】
そして、図3において、9は現在の車速を表すポインタ、10はデータ処理装置6からの指令にしたがってシャシダイナモメータ1を制御するダイナモコントローラ、11は自動車4のエンジンから排出される排ガスを分析する排ガス分析装置で、その出力はデータ処理装置6に入力される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、自動車4における速度、エンジン回転数、走行距離、エンジンブースト圧(マニホールド負圧)などの自動車に関するデータや、試験時における大気圧、周囲温度、湿度などの試験条件に関するデータなど所謂汎用データについては、それぞれ自動車4に設けられた各種のセンサ(図示してない)や、圧力計、温度計、湿度計などの計測器によって測定され、それらの汎用データは、インタフェース13を介してデータ処理装置6に入力されるが、従来においては、車両運転モード表示装置7に表示させるのではなく、これの近傍に別体で設けられる複数の表示部14a?14d(図示例では4つしか示してない)を有するデータ表示装置14に適宜表示するようにしていた。
【0005】
しかしながら、前記表示部14a?14dとしては、アナログ/ディジタルメータをパネルに取り付けたりする必要があるとともに、前記汎用データは、個々のユーザにおいて異なることがあり、必要な汎用データを表示するには、前記メータを取り替えなければならず、ユーザにおいて使い勝手がよくないといった不都合があった。
【0006】
この発明は、上述の事柄に留意してなされたもので、その目的とするところは、汎用データの表示を合理的かつ使い勝手よく表示することができる車両運転モード表示装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明は、表示画面上にモード運転の走行速度パターンを表示するようにした車両運転モード表示装置において、前記表示画面に、汎用データをアナログおよび/またはディジタル的に表示する表示部を設け、前記表示部によって汎用データをグラフィカルに表示できるようにし、更に、前記表示部は、様々なデータ項目について表示できるように区画されるとともに、前記表示画面における走行速度パターンや汎用データの表示項目や表示形態については、コンピュータにおけるプログラムにしたがって任意に設定できるようにしている。
【0008】
上記構成によれば、コンピュータなどデータ処理装置で処理されたデータを、ソフトウェア的に画面で表示させるだけであるので、従来と異なり、アナログ/ディジタルメータを設ける必要がなく、必要な汎用データを合理的かつ見やすく表示することができるとともに、表示のためのハードウェアコストを低減することができる。また、ユーザは表示する汎用データの種類やエリアを適宜設定することができるので、各ユーザごとに必要な汎用データを選択することができ、各ユーザごとに見やすい画面を実現することができる。
【0009】
【発明の実施の形態】
発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。図1および図2は、この発明の一つの実施の形態を示すもので、まず、図2において、15はこの発明の車両運転モード表示装置である。この車両運転モード表示装置15が従来の車両運転モード表示装置7と大きく異なる点は、その表示画面16に、走行速度パターン8のほかに、汎用データをグラフィカルに表示できるようにした点である。
【0010】
前記車両運転モード表示装置15は、データ処理装置としてのコンピュータ6からの信号によって制御されるもので、この車両運転モード表示装置15の表示画面16は、図1に示すように、走行速度パターン8を表示するためのエリア17と、汎用データDを表示するためのエリア18とからなる。これら2つのエリア17,18は固定的なものではなく、それらの配置関係や大きさ(面積)、さらには、それらにおける表示項目(内容)については、ユーザが適宜設定することができるものであり、コンピュータ6内のRAMなどの記憶部に書替え可能に記憶される。そして、その記憶された内容はコンピュータ6におけるプログラムにより適宜設定される。
【0011】
この実施の形態においては、前記エリア17には、表示内容として、走行速度パターン8のほかに、WOT(Wide Open Throttle)を表示したり、ドライバーに対するメッセージ20を表示できるようにしている。
【0012】
また、汎用データDを表示するエリア18は、様々なデータ項目について表示できるように、例えば4つの18A?18Dに区画され、第1の区画18Aには、Temp(室温)、RH(湿度)、Boost(ブースト圧)、Ref.Pres(参照圧)、Engine Rev(エンジン回転数)などのデータDをそれぞれディジタル的に表示する表示部が設けられ、第2の区画18Bには、Rest time(残り時間)、Total Error Time(パターンから外れて走行した時間の総計)、Distance(走行距離)などの計算によるデータDをそれぞれディジタル的に表示する表示部が設けられ、第3の区画18Cには、Total Time(総時間)、Phase Time(フェース時間)などの時間データDをそれぞれディジタル的に表示する表示部が形成され、第4の区画18Dには、ブースト圧およびエンジン回転数などのデータDをそれぞれアナログ的に表示する表示部が形成されている。
【0013】
前記車両運転モード表示装置15の表示画面16は、LCD(液晶ディスプレイ)が用いられるが、これに限られるものではなく、CRTディスプレイであっても、また、ELD(エレクトロルミネッセンスを用いたディスプレイ)であってもよい。
【0014】
上記車両運転モード表示装置15においては、走行速度パターン8を表示するための画面16に、テストドライバーに必要な各種の汎用データDをディジタル的またはアナログ的に表示することができるので、従来と異なり、車両運転モード表示装置15のほかに、アナログ/ディジタルメータを設ける必要がなく、必要な汎用データを合理的かつ見やすく表示することができる。
【0015】
そして、前記表示画面16における走行速度パターン8や汎用データDの表示項目や表示形態については、コンピュータ6におけるプログラムにしたがって任意に設定できるので、ユーザの使用に最適の状態で表示項目や表示形態を設定することができ、従来に比べて使い勝手が大幅に向上するとともに、必要な項目のみを無駄なく表示でき、表示のためのハードウェアコストを低減することができる。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、同一画面内に走行速度パターンと汎用データとを並列的に同時に表示することができるので、アナログ/ディジタルメータを設ける必要がなく、必要な汎用データを合理的かつ見やすく表示することができるとともに、表示のためのハードウェアコストを低減することができる。そして、テストドライバーにとって必要なデータが見やすくなり、その疲れも低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
この発明の車両運転モード表示装置の表示画面における表示状態を示す図である。
【図2】
前記車両運転モード表示装置を用いた車両のモード運転試験装置の構成の一例を概略的に示す図である。
【図3】
従来の車両のモード運転試験装置の構成を概略的に示す図である。
【符号の説明】
8…走行速度パターン、15…車両運転モード表示装置、16…表示画面、18…汎用データ表示部、D…汎用データ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2006-05-24 
結審通知日 2006-05-26 
審決日 2006-06-08 
出願番号 特願平9-208610
審決分類 P 1 113・ 121- ZA (G01M)
最終処分 成立  
特許庁審判長 高橋 泰史
特許庁審判官 櫻井 仁
菊井 広行
登録日 2001-10-19 
登録番号 特許第3243432号(P3243432)
発明の名称 ドライバーズエイド  
代理人 佐藤 明子  
代理人 西村 竜平  
代理人 西村 竜平  
代理人 佐藤 明子  
代理人 角田 敦志  
代理人 小野 亨  
代理人 宮川 貞二  
代理人 伊原 友己  
代理人 國分 孝悦  
代理人 角田 敦志  
代理人 大須賀 晃  
代理人 桂巻 徹  
代理人 南林 薫  

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