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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C01G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C01G
管理番号 1159198
審判番号 不服2004-7974  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-04-19 
確定日 2007-06-14 
事件の表示 平成 5年特許願第322006号「酸化物超電導体の製造法」拒絶査定不服審判事件〔平成 7年 7月11日出願公開、特開平 7-172835〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は平成5年12月21日に特許出願されたものであって、平成16年3月16日付けで拒絶査定がなされ、それに対し、同年4月19日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
そして、その請求項1に係る発明は、平成15年8月13日付けで提出された手続補正書により補正された本願明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(以下、「本願発明1」という。)。
「加熱することにより酸化物超電導体になる酸化物超電導体前駆体と平板状超電導体結晶との混合粉体を成形、加熱処理して酸化物超電導体を製造する方法において、該混合粉体を湿式混合し生シートを成形後、加熱処理して結晶化させることを特徴とする酸化物超電導体の製造法。」

2.刊行物に記載された発明
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前に頒布された特開平1-157454号公報(以下、「引用文献1」という。)には次の事項が記載されている。
(2-ア)「板状構造を有する酸化物超電導体粉末と粒状構造を有する酸化物超電導体粉末との混合粉末を所定の形状に成形し、次いで得られた成形体を所定の温度で焼成することを特徴とする酸化物超電導焼結体の製造方法。」(特許請求の範囲第1項)
(2-イ)「前記混合粉末の成形が、プレス成形法により行われることを特徴とする特許請求の範囲第1項記載の酸化物超電導焼結体の製造方法。」(特許請求の範囲第4項)
(2-ウ)「次いで、前述の原料を充分に混合した後、酸化物超電導体の融点以上の温度に加熱して溶融させる。そして、この溶融物を冷却し、この冷却過程において酸化物超電導体を結晶化させる。なお、この溶融および冷却は充分に酸素を供給することが可能な雰囲気中で行うことが好ましい。
次に、この酸化物超電導体をボールミル、サンドグラインダ、その他公知の手段により粉砕する。このとき、このような条件下で作製したペロブスカイト型の酸化物超電導体は、へき開面から分割されて、C面方向の板状比に優れた微粉末となる。」(第3頁右上欄第14行?同左下欄第4行)
(2-エ)「そして、このような混合粉末を用いて、所要形状の成形体を作製する。この成形体の作製方法としては、たとえばプレス成形法、スリップキャスティング法、射出成形法などの各種手段を用いることが可能である」(第3頁右下欄第17行?第4頁左上欄第1行)
(2-オ)「(作 用)
本発明の酸化物超電導焼結体の製造方法においては、板状粉と粒状粉との混合粉末を用いているので、板状粉によって結晶のC面を配向させることが可能になる」(第4頁左上欄第12?16行)
(2-カ)「次に、この板状構造を有する酸化物超電導体粉末と粒状構造を有する酸化物超電導体粉末とを、第1表に示す混合比でそれぞれ混合し、これら混合粉末を用いて、それぞれプレス成形(プレス圧=200kg/cm2)により10mm×10mm×厚さ2mm形状の成形体を作製し、次いでこの成形体を酸素ガスを供給しながら950℃、8時間の条件で焼成して夫々酸化物超電導焼結体を作製した。」(第4頁左下欄第6?13行)

3.対比・判断
引用文献の上記記載事項(2-ア)?(2-カ)を本願発明1の記載に則って整理すると、「板状構造を有する酸化物超電導体結晶粉末と粒状構造を有する酸化物超電導体粉末との混合粉末を所定の形状にプレス成形法、スリップキャスティング法などにより成形し、次いで得られた成形体を所定の温度で焼成することを特徴とする酸化物超電導焼結体の製造方法。」(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。
そして、本願発明1と引用発明1を対比すると、引用発明1の「板状構造を有する酸化物超電導体結晶」が本願発明1の「平板状超電導体結晶」に相当し、粉末として引用発明1の「粒状構造を有する酸化物超電導体粉末」と混合粉末として用いられるから「板状構造を有する酸化物超電導体結晶粉末と粒状構造を有する酸化物超電導体粉末との混合粉末」が本願発明1の「加熱することにより酸化物超電導体になる酸化物超電導体前駆体と平板状超電導体結晶との混合粉体」に相当するということができ、引用発明1の「成形」が本願発明1の「成形」に相当することは明らかであり、記載事項(2-オ)から引用発明1においても「焼成」により結晶のC面を配向させるから当然「結晶化」しており、引用発明1の「所定の温度で焼成することを特徴とする酸化物超電導焼結体の製造方法。」は本願発明1の「加熱処理して結晶化させることを特徴とする酸化物超電導体の製造法。」に相当するものと認められる。
したがって、両者は「加熱することにより酸化物超電導体になる酸化物超電導体前駆体と平板状超電導体結晶との混合粉体を成形、加熱処理して酸化物超電導体を製造する方法において、成形後、加熱処理して結晶化させることを特徴とする酸化物超電導体の製造法。」である点で一致し、以下の点で一応相違する。
本願発明1が、混合粉体を「湿式混合し生シート」を成形するのに対して、引用発明1では、「スリップキャスティング法」で成形体を得ている点。
以下、相違点について検討する。
本願発明1における「湿式混合」とは、本願の明細書の段落【0013】にあるように「混合方法は特に制限する必要はないが、添加した平板状超電導体結晶が取扱中に非晶質化あるいは他の結晶に相転移しないような方法が好ましい。」というものであり、さらに「湿式混合した泥漿をシート状に乾燥したり、更には必要に応じ乾燥したシートを加圧、引き伸ばす方法が適用できる。」とされ、実施例においても前駆体粉末と平板状超電導体結晶粉末にポリビニルアルコール水溶液等を添加してペースト化したものをステンレス薄板にシート成形、乾燥、剥離して厚さが0.8mmの生シートを得るものである。一方、引用発明の成形体が記載事項(2-カ)にあるように「10mm×10mm×厚さ2mm形状の成形体を作製」し、板状と認められ、焼成前のいわゆる「生」であることを考慮すると「生シート」ということができ、「スリップキャスティング法」が審判請求人が平成16年6月24日付け手続補正書で自ら認めるように泥漿を型に注入する成形法であって、この成形法の型は、板状であっても何ら差し支えなく、本願発明1の実施例の記載「湿式混合した泥漿をシート状に乾燥」するものをも含むものと認められる。また、「湿式混合」は記載されているに等しい事項と認められる。従って、上記相違点は実質的な相違とは認められない。
そして、「スリップキャスティング法により得られる成形体が厚みの厚い超電導体となる可能性があり、結晶が一定方向に配向するかどうか疑問視されます。」という審判請求人の前記手続補正書における主張について検討すると、成形体の厚みは、本願の明細書の段落【0019】にあるように「0.8mm」であって、引用発明1におけるプレス成形法による「2mm」と格別相違するものでなく、原審の拒絶の理由において引用された特開平2-250217号公報(以下、「引用文献2」という。)の第2欄右上欄第4行?同左下欄第5行に記載されるように「板状結晶と微粉末を混合し酢酸エチルの溶媒の下で沈降法により銀テープ状に多段階・多層状態に沈殿させ、粉体が堆積した銀テープを乾燥し、圧延加工により0.1mmのテープ状線材とした後焼結する緻密配向化技術」(以下、「引用発明2」という。)が公知であり、当業者であれば結晶の配向状態に応じて適宜圧延加工等を採用しうるものと認められる。
従って、たとえ引用発明1が本願発明と同一でないとしても、当業者であれば引用発明1及び引用発明2に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1は、引用文献1に記載された発明であるか、引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号又は同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-11 
結審通知日 2007-04-17 
審決日 2007-05-01 
出願番号 特願平5-322006
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C01G)
P 1 8・ 113- Z (C01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平塚 政宏  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 板橋 一隆
宮澤 尚之
発明の名称 酸化物超電導体の製造法  
代理人 西澤 利夫  
代理人 西澤 利夫  

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