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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G03G
管理番号 1159236
審判番号 不服2006-6249  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-05 
確定日 2007-06-14 
事件の表示 特願2004-145749「トナー及び二成分現像剤」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 8月26日出願公開、特開2004-240459〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年12月28日に出願した特願平10-374048号(優先権主張 平成10年1月9日)をもとの出願とする特許法第44条第1項の規定による特許出願であって、手続の経緯の概要は、次のとおりである。
出願 平成16年 5月17日
拒絶理由通知 平成17年11月15日
意見書・手続補正書提出 平成18年 1月23日
拒絶査定 平成18年 3月 2日
審判請求 平成18年 4月 5日
手続補正書提出 平成18年 5月 2日
拒絶理由通知 平成18年 8月24日
意見書・手続補正書提出 平成18年10月24日
拒絶理由通知 平成19年 1月25日
意見書・手続補正書提出 平成19年 3月30日

2.本願発明
本願の請求項1ないし10に係る発明は、平成19年3月30日付けの手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし10に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 少なくとも結着樹脂、着色剤からなる母体トナーに、添加剤を添加してなるトナーにおいて、該トナーの、パーテイクルアナライザによる、C原子を基準とする該添加剤に由来するSi原子の遊離率が0.5?20%、同じくTi原子の遊離率が0.5?20%、さらに、該Si原子の遊離率と、該Ti原子の遊離率の合計が19%以下であり、該トナーの体積平均粒径が3?10μmであることを特徴とするトナー。」

3.刊行物に記載された事項
当審における平成18年8月24日付けの拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物1、3ないし9には、以下の事項が記載されている。

刊行物1(特開平9-319132号公報)
(1a)「【請求項1】 結着樹脂及び着色剤を含有するトナーと、芯材及び該芯材を被覆する樹脂被覆層を有するキャリアとからなる静電潜像現像剤において、該トナーには、該トナー100重量部に対し、シリコーンオイルで表面処理された疎水性シリカ0.05?2.0重量部、表面処理された二酸化チタン0.05?2.0重量部がそれぞれ添加され、且つ該樹脂被覆層はマトリックス樹脂中に熱硬化性樹脂微粒子が分散含有された樹脂被覆層であることを特徴とする静電潜像現像剤。」
(1b)「【請求項3】 前記シリカ対前記二酸化チタンの重量比が1:5.5?1:20であることを特徴とする請求項1に記載の静電潜像現像剤。」
(1c)「【0028】 該シリカの添加量はトナー100重量部に対し、好ましくは0.05重量部?2.0重量部、より好ましくは0.1重量部?1.0重量部、さらに好ましくは0.2重量部?0.8重量部である。該シリカの添加量が0.05重量部未満では帯電量の底上げ、流動性の効果が少なく、該シリカの添加量が2.0重量部を越えると帯電量の上昇等により画像の濃度が低下する等の不具合が発生する。なお、シリコーンオイル以外で表面処理されたシリカを併用してもよい。」
(1d)「【0035】・・・二酸化チタンの帯電低下を防止し、その維持性及び疎水性を良好にし、電荷交換性が良好でかぶりの少ない高画質を得られることから、シランカップリング剤を使用することが好ましい。」
(1e)「【0038】 また、該表面処理された二酸化チタンの添加量は、トナー100重量部に対し、好ましくは0.05重量部?2.0重量部、より好ましくは0.5重量部?1.5重量部、さらに好ましくは0.7重量部?1.1重量部である。該二酸化チタンの添加量が0.05重量部未満では電荷交換性向上の効果が少なく、該二酸化チタンの添加量が2重量部より多いとキャリアのインパクションによる画質の劣化が発生する。」
(1f)「【0039】 本発明において、これらのシリカ微粒子と二酸化チタン微粒子は所定の重量比でトナーに添加される。シリカ微粒子対二酸化チタン微粒子の重量比は、好ましくは1:5.5?1:20、より好ましくは1:5.5?1:10、さらに好ましくは1:5.5?1:7である。シリカ微粒子1に対して二酸化チタン微粒子が5.5未満では、シリカ微粒子の寄与が大きく帯電量が増加する。また、シリカ微粒子1に対して二酸化チタン微粒子が20を越えるとキャリアのインパクションによる画質の劣化が発生する。」
(1g)実施例では、ポリエステル樹脂とカーボンブラックとポリプロピレンワックスを溶融混練、粉砕して体積平均粒子径9.3μmであるトナー粒子を作製したこと、平均粒径15nm、水可溶性成分0.30重量%のルチル型二酸化チタン(テイカ(株)社製 MT-150A)を使用し、二酸化チタン添加剤a、bを製造したこと、
二酸化チタン添加剤aは、デシルトリメトキシシラン1.0gを溶解したメタノール-水(95:5)の混合溶媒に、水洗して水可溶性成分量を0.11重量%に減量した二酸化チタン微粉末10gを添加し、超音波分散し、分散液中のメタノール等を蒸発させ乾燥した後、120°Cに設定された乾燥機で熱処理し、乳鉢で粉砕してデシルトリメトキシシランで表面処理した二酸化チタンaとしたこと、
二酸化チタン添加剤bは、デシルトリメトキシシラン2.0gを溶解したメタノール-水(95:5)の混合溶媒に、水洗して水可溶性成分量を0.11重量%に減量した二酸化チタン微粉末10gを添加し、超音波分散し、その後、二酸化チタン添加剤aの製造と同様に処理して二酸化チタンbとしたこと(【0057】?【0058】)、
(1h)実施例1では、トナー粒子100部に対してシリコーンオイル処理したシリカ(キャボット社製、TS720)を0.2部、上記実施例において製造した二酸化チタン添加剤aを1.2部添加し、ヘンシェルミキサーで混合し、表面にシリカ微粒子と二酸化チタン微粒子とが付着したトナーを得たこと、このトナーとキャリアを混合して現像剤1を得たこと(【0058】?【0059】)、
実施例2では、トナー粒子100部に対してシリコーンオイル処理したシリカ(キャボット社製、TS720)を0.3部、また上記実施例において製造した二酸化チタン添加剤bを2部添加し、以下実施例1と同様にして現像剤2を得たこと(【0060】)。
これらの記載事項によれば、刊行物1には、次の発明が記載されていると認められる。
「少なくとも結着樹脂、着色剤を含有する体積平均粒子径が9.3μmのトナー粒子に、シリコーンオイルで表面処理された疎水性シリカ0.05?2.0重量部、シランカップリング剤で表面処理された二酸化チタン0.05?2.0重量部を添加したトナー。」

刊行物3(特開平5-346681号公報)
(3a)「【請求項1】 熱可塑性の樹脂と、この結着樹脂中に混合される着色剤と、外添剤としてランカップリング剤で疎水化処理された球状酸化チタンあるいは球状酸化チタン及びシリカがそれぞれシランカップリング剤で疎水化処理されたものを有したことを特徴とするトナー。」、
(3b)「【0026】 トナーの材料にポリエステル樹脂100重量部、赤色顔料着色剤5重量部、低分子量ポリプロレンワックス(ビスコール660P、三洋化成社製)2重量部及び帯電制御剤(E-82、オリエント化学社製)1重量部を用いる。外添剤には球状酸化チタン(IT-S:出光興産社)及びシリカ(#200:日本アエロジル社)それぞれヘキサメチルジシラザンで疎水化処理したものを用意する。これらの材料を用いて・・・体積平均粒径9μm、粒度分布5?14μmの粒子を得る。この粒子100重量部に対して、平均粒径40nmの上記球状酸化チタン0.3重量部(IT-S、出光興産社製)及び平均粒径12nmの上記シリカ0.2重量部(#200、日本アエロジル社製)をそれぞれヘキサメチルジシラザンで表面処理したものを混合しトナーを得る。このトナーを用いて複写を行ったところ常に良好な画像が形成された。」。

刊行物4(特開平8-184990号公報)
(4a)「【請求項1】・・・該磁性トナーが少なくとも結着樹脂,磁性体からなる磁性トナー粒子と有機処理された無機微粉体を外添混合してなる磁性トナーであって、該磁性トナーの体積平均粒径Dv(μm)が3≦Dv<6であり、重量平均粒径D4(μm)が3.5≦D4<6.5であって、個数粒度分布における5μm以下の粒子の存在割合Nm(個数%)が60<Nm≦90であり、かつ2≦Nf/Vf≦8、5≦Nf≦40を満足することを特徴とする磁性トナー。・・・」、
(4b)トナー製造例1として、磁性体、スチレン-アクリル酸ブチル-マレイン酸ブチルハーフエステル共重合体、モノアゾ染料の鉄錯体及び低分子量ポリオレフィン(離型剤)を溶融混練し、冷却粉砕したトナー粒子に、シリコーンオイルとヘキサメチルジシラザンで処理された乾式シリカを添加して、磁性トナーAを製造したこと(段落【0071】?【0072】)、
(4d)トナー製造例6として、無機微粉体としてシリコーンオイルとヘキサメチルジシラザンで処理された乾式シリカ1.7質量%とシリコーンオイルで処理されたチタニア0.5質量%と、を混合添加して用いる以外はトナー製造1と同様にして、体積平均粒径(DV)=4.8μmの磁性トナーFを得たこと(段落 【0077】、表1)。

刊行物5(特開平7-92727号公報 )
(5a)「【請求項1】 少なくとも結着樹脂、着色剤及び荷電制御剤からなる母体トナーと、該母体トナーの0.2?2.0重量%のシリカ微粉から成り、かつ該シリカ微粉のうち5?70%が上記母体トナーの表面に埋没し、30?95%が上記母体トナーの表面に付着し、0?10%のシリカ微粉は浮遊していることを特徴とする電子写真用現像剤。」、
(5b)「【0008】 (3)トナーの流動性は、母体トナーの表面に付着しているシリカ微粉によって向上するが、該表面に埋没しているシリカ微粉や浮遊しているシリカ微粉はトナーの流動性向上に寄与しない。・・・
(5)浮遊状のシリカ微粉は現像剤の担持搬送部材や潜像保持体に付着してフィルミング現象等の現像障害発生の原因となる。しかし、浮遊状のシリカ微粉量がシリカ微粉量全体の10%以下であれば問題となる程の現像障害を起さない。」
(5c)「【0010】 (1)添加したシリカ微粉の全量は、蛍光X線分析法で求める。すなわち、あらかじめシリカ微粉の添加量が明らかなトナーの蛍光X線分析で検量線を作成し、この検量線を使ってトナー中のシリカ量を蛍光X線分析法で求める。
(2)浮遊シリカ微粉量は、トナーを界面活性剤を含む水に浸漬して浮遊状のシリカ微粉を洗い流してから前記の方法で該トナー中のシリカ量を求め、(1)に記載したトナー中の全シリカ量との差から求める。」、
(5d)実施例1では、母体トナー100部に1.0部のシリカ微粉を添加し、ミキサーで30分間混合し、シリカ微粉の6%が浮遊シリカ、85%が表面付着シリカ、9%が表面埋没シリカとなっている一成分現像剤を得たこと、
実施例2では、母体トナー100部に0.5部のシリカ微粉を添加し、ミキサーで60分間混合してから更に0.5部のシリカ微粉を加えてミキサーで1分間混合し、シリカ微粉の8%が浮遊シリカ、表面付着シリカが82%、表面埋没シリカが10%となっている一成分現像剤を得たこと、
実施例3では、母体トナー100部に0.6部のシリカ微粉を添加し、ハイブリタイザーで混合してから更に0.4部のシリカ微粉を加えてミキサーで1分間混合し、シリカ微粉の6%が浮遊シリカ、表面付着シリカが33%、表面埋没シリカが60%となっている一成分現像剤を得たこと、
実施例4では、母体トナー100部に0.3部のシリカ微粉を添加し、ハイブリタイザーで混合してから更に0.8部のシリカ微粉を加えてミキサーで1分間混合し、これを分級して浮遊しているシリカ微粉を取り除き、シリカ微粉全体の1%が浮遊シリカ、69%が表面付着シリカ、30%が表面埋没シリカとなっている一成分現像剤を得たこと、
これらの現像剤使用時の初期画像濃度は1.25?1.35、10,000枚プリント後の画像濃度は1.19?1.34であり、劣化のない良好な画像が得られたこと(段落【0017】?【0020】)。

刊行物6(特開昭57-93352号公報)
(6a)「分散剤を表面に付着した着色粒子と、該着色粒子に付着しないで混在した0.1?2%の分散剤シリカとよりなる電子写真用現像剤」(特許請求の範囲)
(6b)「本発明の現像剤は、その使用に際し、最初からトナー表面に付着していたトナー(当審注:シリカの誤記と認められる)は・・・かなりのものはトナー内部に埋没していく。
一方、ホツパー内のトナーの運動により最初分離していたシリカがしだいにトナー中に分散していき、ついにはトナー表面に付着してくる。
そのため最後までトナーの流動性は保れ、ホツパー内でブリツジング等を起すことなく好ましい状態で現像処理を継続することができる。」(2頁右上欄10行?19行)、
(6c)トナーにシリカ0.5重量%を外添した十分攪拌混合した現像剤に対し、さらにシリカ0.1重量%を加えトナー粒子表面を被覆しないようにして混在させたところ、初期のトナー凝集度は10であり、2?3万枚現像後も凝集度は30%程度で十分に良好なコーティングが得られたこと(2頁右下欄4行?3頁左上欄6行)。

刊行物7(電子写真学会年次大会(通算第79回)、"Japan Hardcopy'97”論文集、65?68頁、鈴木俊之、高原寿雄「新しい外添評価方法-パーティクルアナライザによるトナー分析」電子写真学会主催、1997年7月)には、パーティクルアナライザをトナー粒子の分析に応用することについて記載され、母材であるレジンにSiO2を外添したトナー粒子を測定すると、レジンに付着していない遊離SiO2の情報を得ることが出来ることが記載されている(67頁右欄)。

刊行物8(横河電機株式会社カタログ「Instruction Manual PT1000トナー解析ソフトウエア(バージョン2.00)」1998年5月)には、横河電機株式会社の「パーティクルアナライザPT1000」を使用したトナー解析について記載され、データの解析により遊離添加材(非同期添加材)の個数を検出できること、「遊離添加材の検出数/添加材の全添加数×100」から遊離率を計算できること(5-5頁)、遊離率を計算する際の基準となる元素を基準元素といい、例えばCに対するSiの遊離率を計算する場合にはCが基準元素となること(5-10頁)が記載されている。

刊行物9(特開平5-188637号公報)
(9a)実施例3として、トナー材料100部に、流動化剤として疎水性シリカ0.3部を外添した、体積平均粒径が6.5μmの非磁性一成分トナーを得たこと(段落【0027】?【0029】、【0033】、表1)。

4.対比、判断
請求項1に係る発明と刊行物1記載の発明を対比すると、刊行物1記載の発明における「シリカ」はSi原子、「二酸化チタン」はTi原子を有することが明らかであるから、両者は「少なくとも結着樹脂、着色剤からなる母体トナーに、添加剤を添加してなるトナーにおいて、該トナーが添加剤に由来するSi原子とTi原子を有するトナー。」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:請求項1に係る発明は、トナーの、パーテイクルアナライザによる、C原子を基準とする該添加剤に由来するSi原子の遊離率が0.5?20%、同じくTi原子の遊離率が0.5?20%、該Si原子の遊離率と、該Ti原子の遊離率の合計が19%以下であるのに対し、刊行物1記載の発明は、Si原子とTi原子の遊離率が不明な点。
相違点2:請求項1に係る発明は、トナーの体積平均粒径が3?10μmであるのに対し、刊行物1記載の発明は、外添剤添加前のトナー粒子の体積平均粒子径が9.3μmであるものの、外添剤添加後のトナーの体積平均粒径は不明な点。

相違点1について検討すると、刊行物5には、実施例に外添剤としてシリカ微粉を0.3?1.0重量%添加したものにおいて、遊離のシリカ微粉が1?10%存在するものが記載され、遊離シリカの存在により繰り返し使用後も画像の濃度が高く劣化が少ないこと、遊離シリカの割合を10%以下とすることで浮遊する微粉のフィルミング現象等の現像障害の発生を抑制することが示されている。
また、刊行物6には、トナーにシリカ0.5重量%を外添した後、遊離のシリカを0.1重量%程度(シリカ全体の約17%)添加すると、繰り返し使用後もシリカのトナー表面への埋没が少なく、トナーの凝集率が低く維持できることが示されている。
外添剤のトナー中への埋没や浮遊は、外添剤が微粉であることにより生じるものであり、トナー表面に存在する二酸化チタンについても、シリカと同様に、繰り返し使用によりトナー表面へ埋没すると、外添剤としての機能が低下すること、浮遊量が多いと現像障害を発生することが考えられるから、刊行物1記載の発明において、繰り返し使用後も良好な画像を得、現像障害の発生を抑制るために、シリカに限らず二酸化チタンについても遊離のものが一定の割合で存在するようにすることは当業者が容易に想到しうることである。
そして、遊離の外添剤の割合をパーテイクルアナライザによる、C原子を基準で測定することは刊行物7、8に記載されているように公知であるから、繰り返し使用後も良好な画像を得られ、現像障害発生が生じない遊離の外添剤の割合を、パーテイクルアナライザで、シリカについてはSi原子、酸化チタンについてはTi原子の割合として測定して許容の範囲を求めることは当業者が容易になしうることである。

さらに、請求項1に係る発明における遊離率の数値範囲についてみると、Si原子の遊離率とTi原子の遊離率の合計が19%以下であり、Si原子及びTi原子の遊離率は、それぞれ0.5以上であるから、実際にはSi原子及びTi原子の遊離率は、それぞれ0.5?18.5%の範囲でなければならない。
請求人が平成18年1月25日付けで提出した実験成績証明書によると、刊行物5の実施例1(浮遊シリカ6%)の遊離シリカは、パーテイクルアナライザで測定すると0.34%であったとの結果からみて、刊行物5の測定法による浮遊率が10程度のものは、パーテイクルアナライザで測定すると0.5?18.5%の範囲に含まれると考えられ、また刊行物6の後から添加されるシリカ(シリカ全体の17%)は、ほとんどが遊離しているものと考えられるから、請求項1に係る発明の遊離率0.5?18.5%が従来の遊離外添剤を有するトナーの遊離率と比較し格別異なるものともいえない。

次に、Si原子の遊離率と、該Ti原子の遊離率の合計を19%以下することについて検討すると、発明の詳細な説明には、Si原子の遊離率とTi原子の遊離率の合計を規定することは何ら記載されていない。そこで実施例14、比較例1をみると、遊離のシリカ又は二酸化チタンの割合が大きいと、トナー飛散、地汚れが発生すると認められるが、このトナー飛散、地汚れの発生は、遊離のシリカ又は二酸化チタンの総量が多いと発生しているとも考えられる。
上述のとおり、シリカと二酸化チタンを添加したものについて、遊離のシリカ、及び二酸化チタンの合計の量を現像障害発生が生じない範囲とすることは当然考慮すべきことであるが、遊離率の合計が同じであっても添加したシリカ及び二酸化チタンの量により、遊離のシリカ及び酸化チタンの量は異なるから、Si原子の遊離率とTi原子の遊離率を合計したものは、遊離のシリカ及び酸化チタンの総量を表すものではなく、シリカ又は二酸化チタンのそれぞれの添加量を規定していない請求項1に係る発明において、遊離率の割合の合計を19%以下に限定したことに技術的な意義はない。

そうすると、相違点1に係る事項は、刊行物1記載の発明において、特定の量のシリカと二酸化チタンを外添剤として添加したトナーについて、刊行物3ないし8に記載の技術を適用し、繰り返し使用後も良好な画像を得られ、かつ現像障害の発生しないシリカ、二酸化チタンの遊離の外添剤の割合を、公知のパーテイクルアナライザでSi原子とTi原子の遊離率として測定して許容範囲を求めるとともに、そのときのSi原子とTi原子の遊離率の合計を計算したものにすぎない。

相違点2について検討すると、刊行物1記載の発明のトナーは体積平均粒子径9.3μmのトナー母体に外添剤を添加したものであり、外添剤である酸化チタンの平均粒径は15nm程度、シリカの粒径は16nm以下であるから、トナーの体積平均粒径は9.8?10μm程度であると認められる。
また、トナーが小径のもの程、高精細な画像が得られることは周知であり、外添剤を添加したトナーの体積平均粒径を3?10μmの範囲とすることは刊行物3、4、9に記載されているように普通に行われていることである。
さらに、本願明細書の実施例1ないし9、11ないし14は、体積平均粒径が11.0μmと、本願発明の上限を超えているにもかかわらず良好な画像が得られたことが示されているから、体積平均粒径を3?10μmの範囲に限定したことに臨界的意義は認められず、刊行物1記載の発明においてトナーの体積平均粒径を3?10μmの範囲とすることは、求められる精度に応じて当業者が適宜選択しうる程度のことである。

そして、請求項1に係る発明の効果は、刊行物1、3ないし9から予測できる程度のものであって、格別のものとは認められない。

したがって、本件請求項1に係る発明は、刊行物1、3ないし9に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-19 
結審通知日 2007-04-20 
審決日 2007-05-02 
出願番号 特願2004-145749(P2004-145749)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 磯貝 香苗  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 岡田 和加子
秋月 美紀子
発明の名称 トナー及び二成分現像剤  
代理人 小松 秀岳  
代理人 酒井 正己  
代理人 加々美 紀雄  

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