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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A01G
管理番号 1159281
審判番号 不服2005-5608  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-03-31 
確定日 2007-06-13 
事件の表示 平成 7年特許願第 81764号「有機質基盤の改良方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 9月24日出願公開、特開平 8-242684〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成7年3月14日の出願であって、平成17年3月1日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月31日に拒絶査定に対する審判請求がなされたもので、当審において、平成18年12月22日付で拒絶理由を通知したところ、平成19年2月8日付で意見書及び手続補正書の提出がなされたものである。

本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年2月8日付の手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

(本願発明)
「有機質材料を主材料とする有機質基材を含む緑化基材を法面に吹付け有機質基盤を造成する少なくとも木本植物の種子を用いた法面緑化工において、該有機質基材に対して粒径が3mm以下のゼオライトを5乃至15%容量添加することを特徴とする有機質基盤の改良方法。」

2.引用例
当審で拒絶の理由に引用した特開平2-256718号公報(以下、「引用例」という。)には、「岩盤法面緑化材および岩盤法面緑化方法」に関し、第1?5図とともに以下の記載がある。
(イ)「(2)人工培地の材料として少なくとも土壌と有機質資材と浸食防止用の粒子結合剤と化学肥料と植物種子とを混合して・・法面に吹付ける・・法面緑化方法において、・・・大きい陽イオン交換容量を有する鉱物質土壌改良材を有機質資材に対して容量比0.05ないし0.1とを配合し、その配合された材料を・・・法面に吹付けることを特徴とする・・・法面緑化方法。」(第1頁左欄第16行-右欄第6行)
(ロ)「有機質資材としてはピートモスまたはバーク堆肥等が用いられる。」(第3頁右上欄第6,7行)
(ハ)「・・・本発明では・・・、例えばゼオライト、バーミキュライト、ベントナイト等が混合されている。有機質資材に対する配合容量比が0.05以下では10eq/m2以上の陽イオン交換容量が得られず、充分な植物養分の保持能が得られない。容量比が0.1以上では経済的に好ましくない。したがって、容量比は0.05?0.1とする。」(第3頁右上欄第18行?左下欄第6行)
(ニ)「・・・例えばゼオライトを有機質資材に対して0.05?0.1の割合で配合すると、・・・人工培地の養分保持能力が保障される。」(第3頁右下欄第6?13行)
(ホ)「・・・緑化材を法面2に吹付けて培地3を形成する。・・・」(第4頁左下欄第20行-右下欄第1行)

そうすると、上記記載事項、対応する図面及び技術常識によれば、引用例には、以下の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
「有機質資材と植物種子を含む岩盤法面緑化材を法面に吹付け培地を形成する法面緑化において、該有機質資材に対して、ゼオライトを0.05?0.1の容量比で配合する培地の改良方法」

3.対比・判断
本願発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「有機質資材」「を含む岩盤法面緑化材」、「培地を形成する」、「法面緑化」及び「培地の改良方法」は、本願発明の「有機質基材を含む緑化基材」、「有機質基盤を造成する」、「法面緑化工」及び「有機質基盤の改良方法」にそれぞれ相当し、本願発明の「該有機質基材に対してゼオライトを5乃至15%容量添加する」と、引用例記載の発明の「該有機質資材に対して、ゼオライトを0.05?0.1の容量比で配合する」とは、「有機質基材」の容量に対する割合で「ゼオライト」を添加しており、その割合が5乃至10%容量の範囲で共通する。
また、引用例記載の「有機質資材」としては、ピートモスまたはバーク堆肥等が用いられていることを考慮すれば、有機質材料を主材料としているものであるといえる。
さらに、本願発明の「植物の種子を用いた」と、引用例記載の発明の「植物種子を含む」とは、ともに、法面緑化工において、植物の種子を使用している点で共通している。
そうすると、両者は
「有機質材料を主材料とする有機質基材を含む緑化基材を法面に吹付け有機質基盤を造成する植物の種子を用いた法面緑化工において、該有機質基材に対してゼオライトを5乃至10%容量添加することを特徴とする有機質基盤の改良方法。」
の点で一致し、下記の点で相違している。

相違点1:法面緑化工に用いられる植物の種子として、本願発明では、少なくとも木本植物の種子を用いているに対して、引用例記載の発明では、木本植物の種子であるかどうか明示されておらず、また植物の種子が緑化基材に含まれる形態を採用している点
相違点2:ゼオライトを、本願発明では、粒径が3mm以下のものとし、有機質基材に対して5乃至15%容量添加するのに対して、引用例記載の発明では、どのような粒径のものとするか明示されておらず、有機質基材に対して5乃至10%容量添加する点

そこで、上記相違点につき、以下検討する。

相違点1について。
本願発明では、木本植物の種子が用いられることは明示されているものの、本願発明において「木本植物の種子」を、緑化基材に混合して用いたのか、あるいは緑化基材に混合せずに別途播種するのか、定かでない。
上記事項に関して、【発明の詳細な説明】をみると、その段落【0023】には「本発明に係る方法によって造成された有機質基盤には、少なくとも木本植物の種子を含む種子を播種することが望ましい。」と記載されており、段落【0034】には「[実験3]・・・緑化基材を吹付けて有機質基盤を造成し、木本植物のヤマハギを播種して発芽、育成させ、・・・」と記載されている。またこの記載からすると、造成後の有機質基盤に播種しているといえるので、緑化基材には、木本種子が含まれないものと解される。
その一方で、平成19年2月8日付の意見書(第2頁第31-35行)には、「「緑化基材」:上述した「有機質基材」に、肥料、侵食防止材、種子等のその他の材料を混合したもの(狭義)で、実際に法面に吹付ける全ての材料を混合した最終的な基材のことをいう。正確には、用水や団粒化剤などのように、別に別送されてノズル先で混合される材料も含める場合(広義)もある。明細書中の表1?表5の配合例は、広義の緑化基材についてのものである。」と記載されており、緑化基材には、木本種子が含まれることを意図するような記載もみられる。ちなみに、出願当初の特許請求の範囲の請求項5には、「前記緑化基材が木本植物の種子を含む・・・」と記載されている。

そこで、まず本願発明が、「木本植物の種子」を、緑化基材に混合して用いたものとして検討すると、法面緑化工の吹付け材料である緑化基材に、木本植物の種子を混合して用いたものは、例えば特開昭63-277320号公報、特開昭58-123923号公報、特開昭58-17930号公報に記載されているように従来から周知である。
そして、引用例記載の発明の法面緑化工に用いられる種子として、従来から周知の木本植物の種子を採用し、本願発明のようにすることは当業者であれば容易になし得ることである。

また、仮に、本願発明が、「木本植物の種子」を、緑化基材に混合せずに別途播種するもの(例えば【発明の詳細な説明】に記載されたような、緑化基材により造成された有機質基盤に、木本植物の種子を播種するもの)として検討すると、まず種子を含まない緑化基盤を造成し、その後当該基盤に植物の種子を播種するという播種工は、例示するまでもなく従来から周知かつ慣用であること、また上記において説示したように法面緑化工において木本植物の種子を用いることが従来から周知であることを考慮すれば、引用例記載の発明において、種子を混合しない緑化基材により有機質基盤を造成し、しかる後、当該有機質基盤に木本植物の種子を播種し、本願発明のようにすることは当業者であれば容易に想到し得ることである。

相違点2について
植生基盤を造成する場合に用いられるゼオライトには、様々の粒径のものがあり、その中から、本願発明のように粒径が3mm以下のものを採用することは、当業者であれば適宜なし得ることであり、またゼオライトを有機質基材に対して5乃至15%容量添加することは、当業者であれば適宜なし得る。

そして、本願発明の作用効果も、引用例記載の発明及び周知慣用技術から、当業者が予測できる範囲のものであって、格別なものということができない。

4.むすび
以上のように、本願発明は、引用例記載の発明及び周知慣用技術から当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-27 
結審通知日 2007-04-03 
審決日 2007-04-16 
出願番号 特願平7-81764
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 郡山 順  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 西田 秀彦
宮川 哲伸
発明の名称 有機質基盤の改良方法  
代理人 小島 高城郎  

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