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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E03D
管理番号 1159287
審判番号 不服2005-23337  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-02 
確定日 2007-06-13 
事件の表示 特願2001-169342「小便器用ステップ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月18日出願公開、特開2002-364058〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年6月5日の出願であって、平成17年10月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものであって、その請求項1に係る発明は、平成17年6月13日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 小便器の手前下のおだれ部に敷設されて小便器の使用者が乗るステップを薄箱型に形成するとともに、箱型本体の上面に一又は複数個の穴を穿設し、内部に液体用の吸収材を装填した小便器用ステップにおいて、
前記箱型の本体は、上部を開口とした内箱の上に下部を開口とした外箱を被せた構造であることを特徴とする小便器用ステップ。」
(以下、「本願発明」という。)
なお、「請求項1記載の」としている記載は明らかに誤記と認められるので、本願発明を上記のとおり認定した。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開昭47-28746号公報(以下、「引用例」という。)には、次の(イ)ないし(ハ)の事項が記載されている。
(イ)「・・・プラスチツク等の合成樹脂材等を以つて任意容積の受け函(1)を形成し、その背面中央位置に半円弧状等の凹部(2)を形成させ、両側壁板(3)(3')の外面に把手(4)(4')を附設し、前記受け函(1)の内面積と同一面積にして少許厚みを薄くしたスポンジ等吸水板(5)を形成して該受け函内へ収容し、その上面へ合成樹脂網(6)を嵌載して敷器(7)を構成すべくなして成る、小便器内敷器。」(2. 特許請求の範囲)
(ロ)「本発明は、・・・任意面積の受け函内へスポンジ等吸水板を収容し、さらにその上面に合成樹脂網を嵌載した敷器を小便器の下方床面に敷置し、小便時において敷器の上面に乗つて放尿をなさしめ、便器外に漏洩した小便を敷器で受けるとともに、収容したスポンジ等吸水板で吸収させて床面への漏出を完全に防止し、小便所内床面の汚染、腐敗等の発生をなからしめ、常に美観状態を保持させて使用者へ衛生感を与え、小用便を快適になし得る様になすとともに、敷器を至極簡易に分解して洗浄し得べくなしたことを特徴とする装置の創作に係るものである。」(第1頁右欄第3行?14行目)
(ハ)「本発明の敷器(7)を男性用の小便所に敷設使用するときは、該敷器を小便器(8)下方の床面へ敷設するとともに、背面に設けた半円弧等の凹部(2)を小便器から垂下設させた流下側の下端部に接嵌させて・・・装置するもので、放尿する場合においては敷器(7)の合成樹脂網(6)上面に立脚しながら適宜な姿勢によつて小便器内へ放尿することにより、便器外へ漏出した尿は下方床面に敷設された敷器(7)へ滴下、或は流下するとともに、内装されたスポンジ等吸水板(5)へ順次吸収され、床面への漏出しを完全に阻止するとともに網(6)より附着尿を吸除するものである。上記した様にして各人の放尿時において便器外へ漏洩した尿をスポンジへ吸収させることによつて、従来、非衛生的で不快感を与えていた男性用の小便所内の床面を常に美観的になし置くことが出来るもので、スポンジ等吸水板が適宜な量の漏洩尿を吸収含有した時点において、敷器を床面より外して把手(4)(4')を把手して適当な洗場に運搬するとともに、最上部の合成樹脂網(6)を脱嵌させ、次にスポンジ等吸水板(5)を取り出して完全分解し、これを水道等によつて順次受け函(1)スポンジ等吸水板(5)及び合成樹脂網を完全洗浄し、乾燥等をなさしめて後所定構造に組成して再び前記した様に小便所の床面に敷設し、放尿時において便器外へ漏出した尿の受溜吸収をなさしめて床板の汚れ、腐敗等の発生を防止するものである。また、合成樹脂網(6)上面へ立脚した場合にスポンジ(5)等が重圧を受けるものであるが、含有された尿が網上面へにじみ出ることは全くなく、スベリ止め作用をなして小用便者身体の安定作用をなさしむるとともに、快適に小用便をなすことが出来、しかも、便所内の清掃は敷器(7)を除去してなすことにより至極容易になすことが出来るものである。」(第2頁左上欄第7行?左下欄第1行目)
これらの記載から、引用例には、「小便器(8)下方の床面へ敷設するとともに、プラスチツク等の合成樹脂材等を以つて任意容積の受け函(1)を形成し、スポンジ等吸水板(5)を該受け函内へ収容し、その上面へ合成樹脂網(6)を嵌載し、該合成樹脂網(6)上面に立脚しながら小便器内へ放尿することにより、便器外へ漏出した尿が滴下するように構成された小便所内敷器。」という発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(3)対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「小便器(8)下方の床面へ敷設する」、「小便所内敷器」、「受け函(1)」、「スポンジ等吸水板(5)を該受け函内へ収容し」は、本願発明の「小便器の手前下のおだれ部に敷設され」、「小便器用ステップ」、「上部を開口とした内箱」、「内部に液体用の吸収材を装填し」に相当する。
なお、引用発明の「上面に立脚しながら小便器内へ放尿することにより、便器外へ漏出した尿が滴下するように構成された」との表現は、本願発明の「小便器の使用者が乗る」ということと実質的に同じことを言い表しているものと認められる。また、引用発明の「小便器用敷器」も、プラスチック等の合成樹脂材等を以つて形成した受け函(1)と上面へ嵌載した合成樹脂網(6)とにより「薄箱型の本体」を形成しているものである。そして、引用発明の「任意容積の受け函(1)を形成し、・・・その上面へ合成樹脂網(6)を嵌載し」と、本願発明の「箱型の本体は、上部を開口とした内箱の上に下部を開口とした外箱を被せた構造」は、ともに「箱形の本体は、上部を開口とした箱の上に開口を覆う部材を被せた構造」である点で技術的に共通する。
よって両者は、
「小便器の手前下のおだれ部に敷設されて小便器の使用者が乗るステップを薄箱型に形成するとともに、箱型本体の内部に液体用の吸収材を装填した小便器用ステップにおいて、前記箱型の本体は、上部を開口とした箱の上に開口を覆う部材を被せた構造である小便器用ステップ。」である点で一致し、以下の点で相違している。
〈相違点1〉
箱型本体の上面が、本願発明では、一又は複数個の穴を穿設したものであるのに対して、引用発明では、合成樹脂網(6)を嵌載したものである点。
〈相違点2〉
箱型の本体に関して、上部を開口とした箱の上に開口を覆う部材を被せた構造が、本願発明では、内箱の上に下部を開口とした外箱を被せた構造であるのに対し、引用発明では、そのような構成ではなく、合成樹脂網(6)を嵌載したものである点。

(4)判断
〈相違点1について〉
引用発明の「合成樹脂網(6)」は、「網」と表現されていることから、上面に(漏洩した小便をスポンジ等吸水板(5)へ導くための)複数の穴を有する構造のものであることは明らかであるとともに、「合成樹脂網(6)上面へ立脚した場合にスポンジ(5)等が重圧を受けるものであるが、含有された尿が網上面へにじみ出ることは全くなく、スベリ止め作用をなして小用便者身体の安定作用をなさしむるとともに、快適に小用便をなす」(上記2.(ハ)参照)としていることから、引用発明の「合成樹脂網(6)」は、小用便者が「合成樹脂網(6)上面へ立脚した場合」に、「重圧を受け」ても「快適に小用便をなす」ことができる程度の十分な(耐圧力)強度を有した構造のものであるということができる。
そうすると、引用発明における「合成樹脂網(6)」と、本願発明における「箱形本体の上面に一又は複数個の穴を穿設」したものとは、その機能において、特段の差異はないものであるということができるので、引用発明の「合成樹脂網(6)を嵌載したもの」に代えて、本願発明の構成である「箱形本体の上面に一又は複数個の穴を穿設したもの」を採用することは、当業者ならば容易になし得ることである。
〈相違点2について〉
一般的に、上部を開口とした内箱の上に下部を開口とした外箱を被せた構造のものは、内部にものを収容しかつ開閉可能な各種の容器やケース等の構造としては広く知られたものである。そして、この上部を開口とした内箱の上に下部を開口とした外箱を被せた構造のものを、小便器用ステップに用いるようにすることは、当業者ならば容易になし得ることであるということができる。
また、本願発明が奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(5)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-26 
結審通知日 2007-04-03 
審決日 2007-04-16 
出願番号 特願2001-169342(P2001-169342)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E03D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河本 明彦  
特許庁審判長 伊波 猛
特許庁審判官 小山 清二
宮川 哲伸
発明の名称 小便器用ステップ  
代理人 広瀬 文彦  

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