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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16K 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16K 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16K 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16K 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16K 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F16K |
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管理番号 | 1159323 |
審判番号 | 不服2003-19327 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-10-02 |
確定日 | 2007-06-15 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第161934号「可変絞り弁」拒絶査定不服審判事件〔平成10年12月15日出願公開、特開平10-331996〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1手続の経緯 本願は、平成9年6月3日の出願で、平成15年8月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年10月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、その後当審における平成18年5月25日付け拒絶理由通知に対して平成18年8月18日付けで補正書が提出されるが、新規事項を含むものであるため、平成18年9月15日付けで特許法第17条の2第3項の要件を満たしていない旨の最後の拒絶理由通知がなされ、それに対して平成18年12月11日付けで再度補正書が提出されたものである。 2平成18年12月11日付け手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成18年12月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。 [理由1] 本件補正により請求項1は、 【請求項1】 「ハウジングと、 そのハウジングに形成される挿入孔に変位可能に挿入されるスプールと、 そのスプールの変位に伴い開度が漸次変化する主絞り部とを備える可変絞り弁において、 そのスプールの軸方向変位に伴い開度が漸次変化する補助絞り部が、前記主絞り部とタンクとの間に、主絞り部の開度増加により開度が増加すると共に主絞り部の開度減少により開度が減少するように設けられ、 その補助絞り部の開度は、常に主絞り部の開度よりも大きくされ、 前記挿入孔は前記スプールの一端面と前記挿入孔の一端を閉鎖するプラグとの間の内部空間を有し、前記内部空間に連なる流路が前記ハウジングに形成され、前記流路の一端開口の周縁と前記スプールの一端の外周縁との間が前記補助絞り部とされ、 前記スプールに、径方向孔と、その径方向孔と前記内部空間とに連通する通孔とが形成され、 前記主絞り部と前記補助絞り部は、前記径方向孔と前記通孔と前記内部空間とを介して連通され、 前記内部空間において、前記流路の一端開口の周縁よりも前記スプールの一端面寄りの領域に、前記挿入孔の一端を閉鎖する前記プラグが配置されていないことを特徴とする可変絞り弁。」と補正された。 そこで、上記補正について検討すると、同日付けで提出された意見書で主張しているように「ハウジング」に関する事項、「補助絞り部」に関する事項、「スプール」に関する事項、「主絞り部とタンクとの間」に関する事項を限定するものであり、一見特許請求の範囲を減縮しているものともみられる。 しかしながら、本件補正前は、径方向孔を設けることにより、「主絞り部と径方向孔との間の中間圧をキャビテーション防止に必要な圧力に維持した上で、径方向孔と補助絞り部との間の中間圧を低下させることができる。」としていたところ、本件補正により新たに加入された「挿入孔」、「プラグ」、「内部空間」及び「通孔」は、平成18年8月18日付け手続補正書の請求項1に示されていない構成であって、本件補正により特にプラグの配置を特定することで、主絞り部と補助絞り部との間における圧油の流れが挿入孔の一端を閉鎖するプラグにより阻害されることがないものとなり、結果として課題が変化したというべきであり、本件補正の目的は特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮には該当しない。 また、本件補正の目的が、請求項の削除、誤記の訂正又は明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないことは明らかである。 したがって、特許請求の範囲についてした本件補正は、特許法第17条の2第4項各号に規定する事項のいずれを目的とするものとも認められない。 [理由2] 仮に、本件補正の目的が同法第17条の2第4項第2号に該当するとしても、本件補正は、以下に示すとおり平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものである。 (1) 本件補正に係る発明 本件補正に係る発明は、平成18年12月11日付け手続補正書における特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定されるものと認められるが、そのうち請求項1に係る発明(以下、「補正発明」という)は、前記【請求項1】に記載したとおりである。 (2) 刊行物及びその記載事項 当審において平成18年5月25日付けで通知した拒絶理由で引用した本願出願前に頒布された刊行物は、以下のとおりである。 以下記載中の下線指標等は当審にて加入したもの。 また、〈 〉内は、補正発明の相当する構成である。 [刊行物] 特開平 8-159323号公報(以下、「引用例」という) 特開昭61- 31772号公報(以下、「周知例1」という) 特開昭51- 25838号公報(以下、「周知例2」という) 特開平 3- 56782号公報(以下、「周知例3」という) [引用例] 特開平 8-159323号公報 可変絞り弁および油圧パワーステアリング装置に関するものであって、 【特許請求の範囲】【請求項1】には、 「ハウジングと、このハウジングに軸方向移動可能に挿入されるスプールと、このスプールにねじ合わされるネジ部材と、このネジ部材を回転駆動するアクチュエータと、そのネジ部材の回転によるスプールの軸方向移動によって開度が変化する絞り部とを備える可変絞り弁において、そのスプールの軸心とネジ部材の軸心とが偏心していることを特徴とする可変絞り弁。」と記載され、 【0041】には、 「そのスプール62の外周に周溝62aが形成され、その挿入孔66の内周に周溝66aが形成され、両周溝62a、66aの間が絞り部67とされている。その絞り部67の開度は、高速になってスプール62が図中下方に変位すると大きくなり、低速になってスプール62が上方に変位すると小さくなる。」と記載され、 【0042】後段?【0043】には、 「スプール62の通孔62dとを連通する径方向孔62cがスプール62に形成されている。そのスプール62の通孔62dはスプール62の上方空間に連絡する。その【A】スプール62の上方空間と第1出口ポート36とを連通する流路76が、バルブハウジング7と第2バルブハウジング7′とに亘り形成され、その連絡流路76からの圧油の漏れを防止するため、そのバルブハウジング7と第2バルブハウジング7′との間にリング状のシール部材98bが配置されている。これにより、ポンプ70から供給される圧油は、前記弁間流路27および第2出口ポート61から連絡流路58に導かれ、この【B】連絡流路58から絞り部67に至り、この絞り部67から第1出口ポート36を介しタンク71に至る。なお、スプール62には通孔62dと平行にドレン流路62hが形成され、スプール62の上方空間と下方空間とを接続する。 【0043】上記プラグ68の端面とスプール62の端面との当接位置を基準位置として、そのネジ部材64の軸方向移動距離に対応するネジ部材64の回転角度に応じて、その絞り部67の開度が制御されている。そのプラグ68の第2ハウジング7′に対するねじ込み量を変化させることで、その基準位置は調節可能とされている。」と記載されている。 第2実施例の【0057】【0058】には、 「【0057】その挿入孔66の内周の周溝66aと第2出口ポート61とを連通する連絡流路58がバルブハウジング7に形成され、そのスプール62の外周の周溝62aと【C】スプール62の通孔62dとを連通する径方向孔62cがスプール62に形成され、そのスプール62の通孔62dはスプール62の上方空間に連通し、そのスプール62の上方空間と第1出口ポート36とを連通する流路76がバルブハウジング7に形成されている。上記第1実施例では、第2出口ポート61は、入口ポート34、第1ポート37、第2ポート38よりもピニオン15側に配置されているが、本第2実施例においては、ピニオン15とは反対側に配置されている。 【0058】その第1プラグ68aに、工具係合溝65aを有する調節ネジ(基準位置設定部材)65が、シール部材を介しスプール62と同軸心にねじ合わされている。その調節ネジ65の端面とスプール62の端面との当接位置を基準位置として、そのネジ部材64の軸方向移動距離に対応するネジ部材64の回転角度に応じて、絞り部67の開度が制御されている。その調節ネジ65のプラグ68aへのねじ込み量、すなわちハウジング7に対するねじ込み量を変化させることで、その基準位置は調節可能とされている。」と記載されている。 また、第3実施例である【図12】を見ると、流路76の一端開口の周縁とスプール62の一端の外周縁との間が絞り部となっている。 上記【請求項1】には、補正発明と同じハウジング,スプール,可変絞り弁が示され、【0041】の絞り部67は、補正発明の「主絞り部」に該当する。 また、【0042】後段の連絡流路76は補正発明の「流路」に該当し、また、その入口は、【図8】、【図11】、【図12】を見ると、スプールによって絞られる構造となっているから、補正発明の「スプールの軸方向変位に伴い開度が漸次変化する補助絞り部」と「流路の一端開口の周縁と前記スプールの一端の外周縁との間が前記補助絞り部とされ、」の構成が示されていることになる。 さらに、【図8】から、連絡流路76入口〈補助絞り部〉は、絞り部67〈主絞り部〉とタンクとの間に、絞り部67〈主絞り部〉の開度増加により開度が増加すると共に絞り部67〈主絞り部〉の開度減少により開度が減少するように設けられているものと認められる。 上記【0041】の挿入孔66と【0043】のプラグ68は、それぞれ補正発明の「挿入孔」と「プラグ」に該当し、【0042】のスプール62の上方空間は、補正発明の「スプールの一端面と前記挿入孔の一端を閉鎖するプラグとの間の内部空間」に該当する。 上記下線部【A】には、補正発明の「内部空間に連なる流路が前記ハウジングに形成され、」の構成が記載されている。 上記下線部【B】【C】と【図8】,【図11】,【図12】には、補正発明の「スプールに、径方向孔と、その径方向孔と前記内部空間とに連通する通孔とが形成され、 前記主絞り部と前記補助絞り部は、前記径方向孔と前記通孔と前記内部空間とを介して連通され、」の構成が示されている。 よって、図面とともにこれらの事項を総合すると、引用例には、 『ハウジングと、 そのハウジングに形成される挿入孔に変位可能に挿入されるスプールと、 そのスプールの変位に伴い開度が漸次変化する絞り部67〈主絞り部〉とを備える可変絞り弁において、 そのスプールの軸方向変位に伴い開度が漸次変化する連絡流路76入口〈補助絞り部〉が、絞り部67〈主絞り部〉とタンクとの間に、絞り部67〈主絞り部〉の開度増加により開度が増加すると共に絞り部67〈主絞り部〉の開度減少により開度が減少するように設けられ、 前記挿入孔は前記スプールの一端面と前記挿入孔の一端を閉鎖するプラグとの間の内部空間を有し、前記内部空間に連なる流路が前記ハウジングに形成され、前記流路の一端開口の周縁と前記スプールの一端の外周縁との間が前記連絡流路76入口〈補助絞り部〉とされ、 前記スプールに、径方向孔と、その径方向孔と前記内部空間とに連通する通孔とが形成され、 前記絞り部67〈主絞り部〉と前記連絡流路76入口〈補助絞り部〉は、前記径方向孔と前記通孔と前記内部空間とを介して連通される可変絞り弁。』に関する発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認める。 [周知例1] 特開昭61-31772号公報 可変オリフイス内蔵絞り弁に関する発明であって、 5頁右下欄下から2行?6頁左上欄6行には、 「各開度の各段の円形孔37の面積比を同一とすると共に下段側に行くに従って、円形孔37の通過面積を大きくし、これによって、減圧比を順次小さくするように構成することにより、各段、特に、最下段におけるキャビテーションの発生を確実に防止することができる。一般には、中空室を四段程度設けることが望ましい。」と記載され、 絞り部の開度を段階的に大きくし、キャビテーションの発生を防止することが示されている。 [周知例2] 特開昭51-25838号公報 高差圧の減圧ができると共に、絞り部での局部的な高差圧の発生を確実に防止しうる高差圧弁に関する発明であって、 2頁左下欄9行?17行には、 「前記大径孔部13aの径及び軸長は総て同一とされている。小径孔部13bは、その軸長は総て同一であるが、その径は最内周部に位置する中空円筒状セグメント91から最外周部に位置する中空円筒状セグメント94に向かうに従い順次大きくなる様に異なっており、これにより各中空円筒状セグメント91?94の一個当りの差圧比が即ち1段当りのオリフイス孔13の差圧比が夫々キヤビテーシヨン限界を越えない様に設定されている。」と記載され、 絞り部の開度を段階的に大きくし、キャビテーションの発生を防止することが示されている。 [周知例3] 特開平3-56782号公報 水量制御弁に関する発明であって、 3頁右上欄3行?17行には、 「第4図は本発明の第4の実施例を示し、弁体6l1は上流側より下流側にかけて次第に径大になる傾斜外面611aと径が変化しない等径外面61lbと上流より下流に向けて弁角度60?70°でしだい径小にした外周面611cとからなる形状にしている。また、弁受7lは内周面を弁角度90°の部分とこれに続くストレート部l1で構或する。したがって、高水圧の状態で入った水は弁角度60°?70°の弁体611と弁角度71aを90度にした弁受71を通過することにより、徐々に絞られた後弁受71のストレート部l1で整流され、弁体611のなめらかな形状と弁受71の弁開度7lbを60゜?70°の末広がりにして流れが開放されることにより噴流の衝突が緩和され、キャビテーション泡の発生を押さえることができる。」と記載され、 絞り部の開度を段階的に大きくし、キャビテーションの発生を防止することが示されている。 (3) 対比・判断 補正発明と引用発明とを対比すると、両者は、 「ハウジングと、 そのハウジングに形成される挿入孔に変位可能に挿入されるスプールと、 そのスプールの変位に伴い開度が漸次変化する主絞り部とを備える可変絞り弁において、 そのスプールの軸方向変位に伴い開度が漸次変化する補助絞り部が、主絞り部とタンクとの間に、主絞り部の開度増加により開度が増加すると共に主絞り部の開度減少により開度が減少するように設けられ、 前記挿入孔は前記スプールの一端面と前記挿入孔の一端を閉鎖するプラグとの間の内部空間を有し、前記内部空間に連なる流路が前記ハウジングに形成され、前記流路の一端開口の周縁と前記スプールの一端の外周縁との間が前記補助絞り部とされ、 前記スプールに、径方向孔と、その径方向孔と前記内部空間とに連通する通孔とが形成され、 前記主絞り部と前記補助絞り部は、前記径方向孔と前記通孔と前記内部空間とを介して連通される可変絞り弁。」 の点で一致し、以下の点で相違しているものと認められる。 <相違点1> 補正発明では、「補助絞り部の開度は、常に主絞り部の開度よりも大きくされている」構成となっているが、引用発明は、該構成を有していない点 <相違点2> 補正発明では、「内部空間において、前記流路の一端開口の周縁よりも前記スプールの一端面寄りの領域に、前記挿入孔の一端を閉鎖する前記プラグが配置されていない」のに対し、引用発明では、該構成とはなっていない点 これらの相違点について検討する。 <相違点1について> 絞り部の開度を段階的に大きくし、キャビテーションの発生を防止することが、周知例1?3に示されているように、絞り弁設計上の慣用手段であるから、「補助絞り部の開度は、常に主絞り部の開度よりも大きく」し、相違点1でいう補正発明の構成とすることは当業者なら容易に設計し得る程度の事項というべきである。 <相違点2について> 弁において、圧油の流れの阻害となるものを無くすることは当然のことであるから、引用発明の絞り弁において、スプール62の上方空間〈内部空間〉において、流路の一端開口の周縁よりもスプールの一端面寄りの領域に、挿入孔の一端を閉鎖するプラグを配置しないようにすることは、弁を設計する際に必要に応じて考慮すべき技術手段を採用したに過ぎないものであるから、相違点2でいう補正発明の構成としたことには創意は見いだせない。 そして、相違点1及び2で指摘した構成を併せ備える補正発明の奏する作用効果について検討しても、引用発明及び各周知例記載の技術事項並びに弁を設計する際に必要に応じて考慮すべき技術手段から予測できる程度のものであって、格別顕著なものではない。 したがって、補正発明は、引用発明及び各周知例記載の技術事項並びに弁を設計する際に必要に応じて考慮すべき技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 [むすび] 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項各号に規定する事項のいずれを目的とするものとも認められないし、また仮に、本件補正の目的が同法第17条の2第4項第2号に該当するとしても、本件補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3本願の発明について (1)本件審判請求に係る発明 平成18年12月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本件審判請求に係る発明は、平成18年8月18日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるものと認められるが、そのうち、請求項1に係る発明は次のとおりである。 【請求項1】 「ハウジングと、 そのハウジングに変位可能に挿入されるスプールと、 そのスプールの変位に伴い開度が漸次変化する主絞り部とを備える可変絞り弁において、 そのスプールの軸方向変位に伴い開度が漸次変化する補助絞り部が、前記主絞り部とタンクとの間に、主絞り部の開度増加により開度が増加すると共に主絞り部の開度減少により開度が減少するように設けられ、 その補助絞り部の開度は、常に主絞り部の開度よりも大きくされ、 前記スプールに径方向孔が形成され、 前記主絞り部と前記補助絞り部は前記径方向孔を介して連通され、 前記径方向孔の開度は一定とされ、 前記補助絞り部の開度は、最小時に前記径方向孔の開度よりも小さくされ、最大時に前記径方向孔の開度よりも大きくされることを特徴とする可変絞り弁。」 (2)当審で通知した平成18年9月15日付けの拒絶の理由の概要 記 請求人は、平成18年8月18日付け手続補正書で、請求項1及び【0006】に「補助絞り部の開度は、最小時に前記径方向孔の開度よりも小さくされ、最大時に前記径方向孔の開度よりも大きくされる」という構成を加入し、同日付け意見書において、主絞り部の開度に相当する流路面積をS1、補助絞り部の開度に相当する流路面積をS2、径方向孔の開度に相当する流路面積をS3と定め、S1<S3<S2の状態が存在することを述べたうえで、「主絞り部と径方向孔との間の中間圧によりキャビテーションを抑制しつつ、径方向孔と補助絞り部との間の中間圧を低減できる。その径方向孔と補助絞り部との間の中間圧を低減できることにより、圧力損失を低減でき、また、径方向孔と補助絞り部との間の中間圧の作用による不具合を防止できる。例えば本願実施形態のネジ部材64のような可動部材の周りのシールの変形を小さくし、車速変化の大きな中速走行時にスプールの高速移動が摩擦の増大により抑制されるのを防止できる」効果がある旨主張している。 しかしながら、願書に最初に添付した明細書及び図面では、【0028】と第図1、8、9で径方向孔62Cの存在が認められるのみで、該径方向孔62Cがスプール62に2箇所のみ形成されているのか否か明らかでなく(例えば、特開平2-153255号公報の第2図、第4図の制御孔57にみられるように、径方向の2箇所に図示された孔が、実際に2箇所のみであるとは言い切れない。)、該径方向孔62Cが円形孔であるのか否かも明らかでない等、径方向孔62Cの開度の実際値はもとより、主絞り部,補助絞り部の開度との大小関係を示唆する記載もなく、かつ、これらの事項が願書に最初に添付した明細書又は図面の記載から自明な事項であるとも認められない。また、更には径方向孔62Cが齎す効果に関する記載も全くない。 よって、上記「補助絞り部の開度は、最小時に前記径方向孔の開度よりも小さくされ、最大時に前記径方向孔の開度よりも大きくされる」の補正事項は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものとは認められない。 (3)当審の判断 上記拒絶理由について改めて検討しても、平成18年9月15日付け拒絶理由通知書に記載した拒絶理由を覆す根拠は認められず、上記拒絶理由は妥当なものと認められるので、平成18年8月18日付け手続補正書で明細書又は図面にした補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められない。 (4)むすび 以上のとおり、平成18年8月18日付け手続補正書で明細書又は図面にした補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであるから、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-03-06 |
結審通知日 | 2007-03-27 |
審決日 | 2007-03-30 |
出願番号 | 特願平9-161934 |
審決分類 |
P
1
8・
572-
WZ
(F16K)
P 1 8・ 574- WZ (F16K) P 1 8・ 571- WZ (F16K) P 1 8・ 573- WZ (F16K) P 1 8・ 561- WZ (F16K) P 1 8・ 575- WZ (F16K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 三澤 哲也 |
特許庁審判長 |
藤井 俊明 |
特許庁審判官 |
永安 真 ぬで島 慎二 |
発明の名称 | 可変絞り弁 |
代理人 | 根本 進 |