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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B24B |
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管理番号 | 1159333 |
審判番号 | 不服2005-8195 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-05-02 |
確定日 | 2007-06-15 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第249241号「半導体ウェハ用研磨装置及び半導体ウェハの研磨方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 4月 6日出願公開、特開平11- 90818〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本件発明 本件出願は、平成9年9月12日の特許出願であって、その請求項1ないし請求項15に係る発明は、平成16年2月19日付の手続補正書によって補正された明細書、及び願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項15に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項13に係る発明(以下「本件発明」という。)は、次のとおりである。 「第1の定盤上の研磨布上で第2の定盤によって支持した研磨対象物である半導体ウェハを移動させることによって前記研磨対象物の研磨を開始し、 前記第2の定盤上に取り付けた振動検出素子によって検出された研磨振動の第1の出力信号を増幅器によって増幅し、 前記増幅器から出力された第2の信号の大きさに基づいて前記増幅器の利得の大きさの適否を判定して、前記利得が適正な大きさにない場合には前記増幅器の前記利得の大きさを変更し、 前記増幅器から出力された前記第2の信号の変化に基づいて研磨終点を判定して前記第1の定盤の移動を停止して研磨を終了させることを特徴とする半導体ウェハの研磨方法。」 第2 引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平9-150367号公報(以下「引用例」という。)の記載内容は以下のとおりである。 1 引用例記載の事項 引用例には以下の事項が記載されている。 (1)段落【0001】 「【発明の属する技術分野】本発明は、研磨装置及び研磨方法に関し、より詳しくは半導体素子を構成する絶縁膜や導電膜の表面などの平坦化に用いる研磨装置及び研磨方法に関する。」 (2)段落【0047】 「【発明の実施の形態】そこで、以下に本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。 (第1実施形態)図1は、本発明の第1実施形態の研磨装置の要部を示す構成図である。研磨装置は、モータMによって回転される円盤状の下側定盤2と、吸着パッド(不図示)を介して被研磨物Wを支持する円盤状の上側定盤3とを有している。下側定盤2と上側定盤3内にはそれぞれ1つ又は複数の空洞からなる共振部2a,3aが形成されている。また、下側定盤2上には、被研磨物Wと対向接触する研磨布1が張りつけられている。」 (3)段落【0050】?段落【0052】 「上側定盤3の上部又は側部には振動検出素子(以下、加速度素子ともいう)10が取り付けられ、その振動検出素子10の出力端は筐体8に取り付けられた送信機13に接続されている。・・・ また、送信機13は、振動検出素子10からの振動周波数、振動強度に関する情報の信号を無線で受信機14に送信し、受信機14で受けた振動情報を信号解析部15によって分析し、得られた振動周波数と振動強度のパワースペクトルから研磨以外の原因による固有振動成分(例えば、研磨装置固有の振動成分)を差し引き、その結果を例えば表示部16に表示したり、駆動制御部17を介してシャフト9やドレッサー12を移動したり駆動、停止したり、或いは駆動制御部17を介してノズル11から供給される研磨液給料量を制御したりしている。 研磨布1の表面はドレッサー12により目立てされる。ドレッサー12の上下動及び回転動作は、駆動制御部17によって制御される。下側定盤2を回転させるモータMの回転数は、駆動制御部17によって制御される。上述した研磨装置により研磨される被研磨物Wとしては、例えばシリコン、ゲルマニウムや化合物半導体などのウェハや、そのようなウェハに形成された導電膜、絶縁膜、金属膜がある。」 (4)段落【0059】 「振動周波数に対する振動強度のスペクトルを信号解析部15により積分すると研磨が進行するにつれて積分値は次第に減少するので、積分値の時間的変化が無くなった場合には研磨が終了したと判断して信号解析部15から研磨終了の信号を駆動制御部17に送り、駆動制御部17はシャフト9の回転を停止したり、シャフト9を上昇させたりして、半導体ウェハWと研磨布1の接触を断って研磨を終了させる。」 (5)段落【0082】?【0085】 「・・・ (第8実施形態)本実施形態では、研磨面の円周方向(又は回転方向)の振動によって研磨を制御する研磨装置について説明する。図17は、第8実施形態を示す研磨装置の側面図であり、図18は、ヘッドの底面図を示している。図17において、図1及び図15と同一符号は同一要素を示し、また、図示しない部分は図1及び図15の何れかと同じ機構となっている。 本実施形態において、エアバック式の筐体8と上側定盤3を接続する弾性体7は特に材料を限定されるものでないが、布を挟み込んだ多層構造のゴムシートを使用したり、そのゴムシートを複数枚重ねたものを使用すれば機械的強度の大きいものが得られる。上側定盤3の上には振動検出素子10Aが取付けられていて、図18に示すように上側定盤3の円周方向の微小振動を検出する向きとなっている。・・・ 振動検出素子10は、信号線を介して筐体8上の送信機13Aに接続されている。送信機13Aの信号出力端は筐体8外周面の環状の送信用アンテナ25に接続され、また、送信機13Aの電源端は図15で示した環状導電体28に接続されている。送信用アンテナ25から出力される無線信号を受ける側の機構は、図15で示した環状の受信用アンテナ26を含む構成となっている。 なお、図17中符号34は、後述する第1のアンプ34aとフィルタ34bと第2のアンプ34cを集積した回路を示している。その送信系と受信系の回路は図19のようになる。振動検出素子10Aは、第1のアンプ34aとフィルタ34bと第2のアンプ34cを介して送信機13Aに有線で接続されている。・・・」 (6)段落【0089】?【0091】 「次に、上記した構造の研磨装置を使用して研磨終点を検出することについて説明する。まず、下側定盤2と上側定盤3を回転させるとともに、下側定盤2の下に貼り付けた被研磨物Wを下側定盤2上の研磨布1に押しつけて被研磨物Wの研磨を開始する。・・・ 上側定盤3の円周方向の0?25kHzの振動の周波数とその振動の強度の関係が研磨時間によってどのように変化するかを調べたところ図21のような結果が得られ、研磨が進むにつれて振動周波数の帯域全体で振動強度が低下することがわかる。このことから、振動検出素子10Aによって検出された振動信号は、送信機13A、受信機14などを介して処理部35に入力する。処理部35では、基準値であるリファレンススペクトルと測定中の振動信号とを比較し、例えば、特定の周波数域における振動強度の積分値とリファレンススペクトルの積分値との比が所定の閾値以下になったとき、或いは、特定の周波数域の振動強度の積分値の時間変化量が所定の閾値以下になったときに、研磨の終了と判定する。 振動信号の検出精度は、無線送信機13Aの性能に大きく影響する。第1及び第2のアンプ34a,34cとフィルタ34bに要求される特性や送信する振動信号は次のような手順を踏んで決定される。まず、有線で上側定盤3の振動強度を測定する。次に、振動強度信号を増幅した電圧がフィルタ34bの許容入力電圧を越えないような値となるように第1のアンプ34aの増幅率を決定する。さらに、フィルタ34bを通過した振動強度信号を増幅して得られる電圧が送信機13Aの許容入力電圧を越えないような値になるように第2のアンプ34cの増幅率が決定される。」 2 引用例記載の発明 引用例記載の事項を技術常識を考慮に入れながら本件発明に照らして整理すると引用例には以下の発明が記載されていると認める。 「下側定盤2上の研磨布1上で上側定盤3によって支持した研磨対象物である半導体ウェハWを移動させることによって前記研磨対象物の研磨を開始し、 前記上側定盤3上に取り付けた振動検出素子10Aによって検出された振動信号をアンプ集積回路34によって増幅し、 前記アンプ集積回路34から出力された振動信号とリファレンススペクトルとを比較し、研磨の終了を判定して、シャフト9の回転を停止したり、シャフト9を上昇させたりして、研磨を終了させる半導体ウェハの研磨方法。」 第3 対比 本件発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「下側定盤2」、「上側定盤3」及び「アンプ集積回路34」は、それぞれ本件発明の「第1の定盤」、「第2の定盤」及び「増幅器」に相当し、また、引用例記載の発明の「振動板検出素子10Aによって検出された振動信号」は、本件発明の「研磨振動の第1の出力信号」に相当し、引用例記載の発明の「アンプ集積回路34から出力された振動信号」は、アンプ集積回路で増幅された振動信号であるので、本件発明の「増幅器から出力された第2の信号」と言い得るものである。 さらに、引用例記載の発明の「研磨の終了を判定」することは、本件発明の「研磨終点を判定」することに相当するから、結局、引用例記載の発明の「アンプ集積回路34から出力された振動信号とリファレンススペクトルとを比較し、研磨の終了を判定」することは、本件発明の「第2信号の変化に基づいて研磨終点を判定」することである。 以上の点から、本件発明と引用例記載の発明とは、以下の一致点及び相違点を有している。 1 一致点 「第1の定盤上の研磨布上で第2の定盤によって支持した研磨対象物である半導体ウェハを移動させることによって前記研磨対象物の研磨を開始し、 前記第2の定盤上に取り付けた振動検出素子によって検出された研磨振動の第1の出力信号を増幅器によって増幅し、 前記増幅器から出力された第2の信号の変化に基づいて研磨終点を判定して研磨を終了させる半導体ウェハの研磨方法。」 2 相違点 <相違点1> 本件発明では、増幅器から出力された第2の信号の大きさに基づいて前記増幅器の利得の大きさの適否を判定して、前記利得が適正な大きさにない場合には前記増幅器の前記利得の大きさを変更しているのに対して、引用例記載の発明では、そのようになっていない点。 <相違点2> 研磨を終了させるに際し、本件発明では第1の定盤の移動を停止しているのに対し、引用例記載の発明では、シャフト9の回転を停止したり、シャフト9を上昇させたりしている点。 第4 相違点についての検討 <相違点1>について 増幅器から出力された信号の大きさに基づいて前記増幅器の利得の大きさの適否を判定して、前記利得が適正な大きさにない場合には前記増幅器の前記利得の大きさを変更することは、例えば、拒絶理由において提示した特開昭63-29739号公報(特に、第1図及びその説明参照のこと。)、特開平9-113351号公報(特に、【図5】、【図6】及びその説明参照のこと。)に示されているように従来周知である。 そして、上記従来周知の事項は、増幅器を使用する種々の技術分野において必要に応じて適宜採用し得る事項であり、また、引用例記載の発明に適用することを妨げる特段の事由も見当たらない。 そうしてみると、上記従来周知の事項を引用例記載の発明に適用して本件発明のように構成することに格別の困難性はない。 <相違点2>について 半導体ウェハの研磨を終了することは、研磨装置を停止することであるから、本件発明においても、研磨の終了において研磨布のある第1の定盤の移動を停止することは、当業者が容易に想到し得るものである。 <作用・効果>について また、本件発明の採用する構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記従来周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。 第5 むすび したがって、本件発明は、引用例記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。 よって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-23 |
結審通知日 | 2007-03-20 |
審決日 | 2007-04-03 |
出願番号 | 特願平9-249241 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B24B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岡野 卓也、横溝 顕範 |
特許庁審判長 |
野村 亨 |
特許庁審判官 |
菅澤 洋二 中島 昭浩 |
発明の名称 | 半導体ウェハ用研磨装置及び半導体ウェハの研磨方法 |
代理人 | 岡本 啓三 |