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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1159450
審判番号 不服2000-11965  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-08-03 
確定日 2007-06-21 
事件の表示 平成10年特許願第356610号「遊戯命令データのエラーチェック方法および遊戯装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月27日出願公開、特開2000-176138〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年12月15日の出願であって、平成12年6月26日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成12年8月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成12年9月4日付けで明細書に係る手続補正がなされ、当審から平成16年12月17日付け及び平成18年11月2日付けで拒絶理由が通知され、平成18年12月26日付けで明細書に係る手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1乃至4に係る発明は、平成18年12月26日付けの手続補正によって補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された「遊戯命令データのエラーチェック方法および遊戯装置」にあると認められるところ、その請求項1に記載された発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。
「主制御部より受信した遊戯動作を指示する遊戯命令データから周辺機器である表示装置の駆動用の遊戯信号を生成する周辺制御部における遊戯命令データのエラーチェック方法において、
受信した前記表示装置に対する表示動作を指示する遊戯命令データが、予め記憶されている、各遊戯命令データとの異同を判断する照合データを該受信した遊戯命令データと照合することにより設計上存在するデータか否かの定義判定を行うと共に、
当該遊戯命令データが直前に主制御部から受信した遊戯状態を示す状態指示データに対して適合したデータか否かの状態判定を行い、
両判定結果に応じて前記遊戯命令データから遊戯信号を生成するか否かを決定するようにしたことを特徴とする遊戯命令データのエラーチェック方法。」

3.引用例及び引用発明
(1)当審拒絶理由通知
当審は、平成18年11月2日付の拒絶理由で、本願の請求項1乃至10に係る発明は、下記の第1引用例乃至第4引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨通知した。
第1引用例:特開平9-182850号公報
第2引用例:特開平6-47150号公報
第3引用例:特開平1-145733号公報
第4引用例:特開平5-293245号公報

(2)第1引用例及び引用発明
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である第1引用例〔特開平9-182850号公報〕には、以下の事項が記載されている。
【請求項1】 表示状態が変化可能な可変表示装置を有し、該可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様になった場合に遊技者にとって有利な遊技状態になる遊技機であって、前記遊技機の遊技状態を制御するとともに前記可変表示装置を表示制御するための指令信号を出力する遊技制御手段と、該遊技制御手段からの指令信号を受けて前記可変表示装置を制御する可変表示制御手段とを含み、該可変表示制御手段は、前記指令信号の変化が適正な変化パターンとなっているか否かを判別する指令信号判別手段を含むことを特徴とする、遊技機。
【請求項2】 前記遊技制御手段は、所定の順序で並べられた複数のブロックデータからなる指令信号を出力し、前記指令信号判別手段は、受信した前記指令信号の複数のブロックデータのうちの或るブロックデータを前回送られてきた指令信号の複数のブロックデータのうちの対応するブロックデータと比較して適正な変化パターンとなっているか否かを判別することを特徴とする、請求項1記載の遊技機。
【0002】【従来の技術】この種の遊技機において、従来から一般的に知られているものに、たとえば、遊技機の遊技状態を制御するとともに可変表示装置を可変表示制御するための指令信号を出力する遊技制御手段と、その遊技制御手段からの指令信号を受けて前記可変表示装置を制御する可変表示制御手段とが設けられたものがあった。そして、前記遊技制御手段が出力する指令信号は、可変表示装置を制御指令するための複数種類の制御指令データからなり、その複数種類の制御指令データが順次出力されるように構成されていた。
【0003】【発明が解決しようとする課題】一方、この種の従来の遊技機においては、前記遊技制御手段に異常が発生したり制御指令データがノイズ等により正規の値でなくなってしまった場合には、前記複数種類の制御指令データの出力順序が狂ってしまう場合があり、その出力順序が狂った場合には、その狂った出力順序からなる指令信号を受信した可変表示制御手段は、それに従って狂った可変表示制御を行なうことになってしまい、適正な可変表示制御が行なわなくなる欠点が生ずる。
【0004】本発明は、係る実情に鑑み考え出されたものであり、その目的は、不適正な指令信号に従った不適正な可変表示制御が行なわれる不都合を極力防止できる遊技機を提供することである。
【0011】【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態においては、遊技機の一例としてパチンコ遊技機を取り上げる
【0033】図6は、コマンドデータCD0?CD7,INT信号の送信動作を示すタイミングチャートである。コマンドデータは8個のブロックデータから構成されており、その8個のコマンドデータより1セットの表示指令信号が構成される。そして、割込信号であるINT信号が2msec毎に送信され、それに合わせて前記各ブロックデータであるコマンドデータ1,コマンドデータ2,コマンドデータ3…が1ブロックずつ送信される。システムコントローラ51は、前記INT信号を受信すれば、プロセッサが割込状態となり、そのときに送信されてきたコマンドデータを取込む動作が行なわれる。このコマンドデータの送信は、切目なしに常に行なわれており、前回送ったコマンドデータに何ら変化がなくてもその同じコマンドデータを次回にも送信する。
【0034】図7,図8は、前記コマンドデータの内容を説明するための説明図である。コマンドデータは、前述したように8ブロックのデータから構成されており、その内訳は、comH,com0,com1,com2,com3,com4,com5,comCである。comHは、8ブロックからなるコマンドデータの最初であることを示すためのコマンドヘッダであり、0EFh(16進数)というデータに固定されており、システムコントローラ51がこのコマンドヘッダを受信すれば、8ブロックのコマンドデータの最初であることを認識する。com0は、メインステータスのデータである。可変表示装置1の可変表示状態は、遊技機の遊技状態に応じて変化するのであり、その遊技機の遊技状態に応じた可変表示装置1の大まかな可変表示状態を指令して特定するためのデータがこのメインステータスデータである。このメインステータスデータcom0は、00h?7Fhの範囲内のデータであり、80h?FFhは未使用の領域となっている。
【0035】com0のデータが0xh(xは後述するように0?Fの16進数のうちの任意の値である)の場合には、可変表示装置1のLCD表示器2の画像表示をオフ状態にする指令信号となる。1xhはデモモードを指定する指令信号である。このデモモードが指定されれば、可変表示装置1による可変表示動作が行なわれる以前における遊技とは無関係の画像がLCD表示器2によりデモ表示される。2xhの場合には、ゲームモードが指定されることとなる。3xhの場合には、可変表示装置の表示結果が予め定められた特定の表示態様(たとえば777)となり特定遊技状態(大当り状態)が開始した後の状態で、かつ可変入賞球装置4が第2の状態となっているインターバル期間中であることが指定される。4xhの場合には、特定遊技状態(大当り状態)が発生して可変入賞球装置4が前述した繰返し継続制御された場合のその繰返し継続回数(ラウンド回数)を表示するモードであることが指定される。5xhは未使用となっている。6xhは特定遊技状態(大当り状態)が終了したときのモード指定となっている。7xhは、エラーメッセージを可変表示装置1により表示する指令信号である。
【0163】図64は、図57(b)において、新コマンドが送信されてきた場合に実行されるホットスタートのサブルーチンプログラムを示すフローチャートである。034BHにより、スタックポインタを設定する処理がなされ、034EHにより、エラーフラグをゼロクリアし、退避フラグ(バックアップフラグ)をゼロクリアする処理がなされる。次に037AHに進み、送信されてきたメインステータスのコマンドデータであるcom0が「2dh」であるか否かの判断がなされる。com0が「2dh」の場合はに、図7で示したように、大当り動作のメインステータスであり、その場合には直接037AHに進むが、それ以外の場合には、0381Hにより、コマンド退避処理がなされる。
【0164】次に037AHでは、送信されてきたコマンドデータのcom0が、0xH,1xH,2xH,3xH,4xH,6xHあるいはその他のうちのどれかを判別する処理がなされる。そして判別した結果それぞれに対応するコマンド処理サブルーチンプログラムにジャンプする。このcom0のデータとジャンプ先とが、コマンドテーブルにテーブルの形で記憶されており、このコマンドテーブルをルックアップすることによりジャンプ先が決定される。なお、com0が、0xHの場合には画面非表示のサブルーチンプログラムにジャンプし、1xHの場合には、デモ画面表示のサブルーチンプログラムにジャンプし、2xHの場合にはゲーム画面表示のサブルーチンプログラムにジャンプし、3xHの場合にはフィーバーインターバル画面の表示サブルーチンプログラムにジャンプし、4xHの場合にはフィーバーラウンド表示のサブルーチンプログラムにジャンプし、6xHの場合にはフィーバー終了画面のサブルーチンプログラムにジャンプし、それ以外のデータの場合にはコマンドエラーのサブルーチンプログラムにジャンプする。
【0168】com0が「2xH」の場合には、図66(a)に示すサブルーチンプログラムが実行される。0444Hにより、動作カウンタがゼロクリアされ、com0の値を判別して処理ルーチンテーブルをルックアップしてその値に応じたサブルーチンプログラムにジャンプする処理がなされる。そして、com0の値が「20H」の場合には、図柄変動前準備のサブルーチンプログラムにジャンプし、「21H」の場合には全図柄変動サブルーチンプログラムにジャンプし、「22H」の場合には左図柄停止サブルーチンプログラムにジャンプし、「23H」の場合には右図柄停止サブルーチンプログラムにジャンプし、「24H」の場合には中図柄停止サブルーチンプログラムにジャンプし、「25H」の場合には通常リーチ(2周)のサブルーチンプログラムにジャンプし、「26H」の場合には通常リーチ(3周)のサブルーチンプログラムにジャンプし、「27H」の場合には竜巻リーチのサブルーチンプログラムにジャンプし、「28H」の場合には三三七拍子リーチのサブルーチンプログラムにジャンプし、「29H」の場合には勝負リーチのサブルーチンプログラムにジャンプし、「2aH」の場合には双子リーチのサブルーチンプログラムにジャンプし、「2bH」の場合には短縮全図柄変動のサブルーチンプログラムにジャンプし、「2cH」の場合には短縮全図柄停止のサブルーチンプログラムにジャンプし、「2dH」の場合には大当り動作のサブルーチンプログラムにジャンプし、それ以外の場合にはコマンドエラーのサブルーチンプログラムにジャンプする。
【0169】図67(a)は、0444Hの判断の結果、「20H」の場合に実行される図柄変動前準備のサブルーチンプログラムである。047DHにより、処理中フラグをセットし、処理アドレスを図柄変動前であるrtn20hにセットして0347Hのコマンドウェイトへジャンプする処理がなされる。図67(b)は、0444Hの判断の結果「21H」の場合に実行され全図柄変動のサブルーチンプログラムであり、048BHにより、コマンドをコマンド退避エリアに退避させる処理がなされ、さらに、左図柄ナンバーを取得して退避させ、中図柄ナンバーを取得して退避させ、右左図柄ナンバーを取得して退避させる処理がなされる。次に04ADHに進み、全図柄変動すなわちrtn 21hの処理アドレスをセットする処理がなされて0347Hのコマンドウェイトへジャンプする。
【0170】図67(c)は、0444Hの判断の結果「22H」の場合に実行される左図柄停止処理のサブルーチンプログラムである。まず04B6Hにより、コマンド順序が正しいか否かの判断がなされる。コマンドデータのメインステータスであるcom0は、基本回路30による遊技制御動作によって進行制御される遊技機の遊技状態の進行に応じて変化するものであり、その変化のパターンは所定の順序となるように予め決められている。そしてその所定の順序になっているか否かがコマンド順序判定データに従って04B6Hにより判断される。com0が「2xH」の場合には、可変表示動作は、まず図柄変動前準備処理がなされ、次に全図柄変動処理がなされ、次に左図柄停止処理がなされ、その段階でリーチが成立していなければ中図柄停止処理がなされる。そして外れ図柄であった場合には打玉の始動入賞に基づいて再度図柄変動前準備処理から順次表示動作が繰返し行なわれる。一方、右図柄停止処理がなされた段階でリーチが成立している場合には、そのリーチの種類に応じて通常リーチ(2周)または通常リーチ(3周)のいずれかが表示動作される。そしてその後中図柄が停止され、その状態で外れの場合には再度前記図柄変動前準備処理に移行するが、当りの場合には、大当り動作処理が実行される。さらに、確率変動状態で短縮モードとなっている場合には、図柄変動前準備処理がなされた後、短縮全図柄変動処理がなされ、リーチ表示する場合には竜巻リーチ,三三七拍子リーチ,勝負リーチまたは双子リーチのいずれかが表示され、その後短縮全図柄停止処理がなされることとなる。
【0171】コマンド順序判定データは、図柄変動前準備処理の段階で図78の0AC2Hにより00000010b(bは2進数を表わす)にセットされている。そして、04B6Hにより、前記コマンド順序判定データに対し00000010bの論理積が演算される。コマンド順序が正しければ、00000010bと00000010bとの論理積になるために、その演算結果は、00000010bとなる。その場合には、04B6HによりYESの判断がなされ、04BEHにより、コマンド順序判定データを左回転させる処理がなされる。その結果、00000010bだったコマンド順序判定データが、00000100bとなる。次に、04C7Hにより、左図柄停止制御用のアドレスすなわちrtn 22hが処理アドレスとしてセットされ、0347Hのコマンドウェイトへジャンプする。一方、コマンドデータの送信順序が正しくない場合には、コマンド順次データに対し00000010bの論理積を演算すれば、その答えが00000000bとなる。その場合には04B6HによりNOの判断がなされて、コマンドエラーのサブルーチンプログラムにジャンプする。
【0172】図67(d)は、0444Hにより「23H」と判断された場合に実行される右図柄停止処理のサブルーチンプログラムである。まず04D0Hにより、コマンド順序は正しいか否かの判断がなされる。この判断は、コマンド順序判定データに対し00000100bの論理積を演算し、その演算結果が000000000bになったか否かで判断し、00000000bの場合にはコマンドエラーにジャンプする。そして、コマンドデータの送信順序が正しければ、00000100bと00000100bとの論理積になるために、その演算結果は00000100bとなる。その場合には、04D0HによりYESの判断がなされて04D8Hにより、コマンド順序判定データを左回転させる処理がなされ、その結果、コマンド順序判定データは、00001000bとなる。次に、04E1Hに進み、右図柄停止処理のアドレスすなわちrtn23hが処理アドレスとしてセットされ、0347Hのコマンドウェイトへジャンプする。
【0173】図68(a)は、0444Hにより「24H」と判断された場合に実行される中図柄停止処理のサブルーチンプログラムである。04EAHにより、コマンド順序は正しいか否かの判断がなされる。この判断は、コマンド順序判定データに対し00001000bの論理積を演算し、その演算結果が00000000bになったか否かにより行なわれる。そして00000000bになった場合にはコマンドエラーのサブルーチンプログラムにジャンプする。送信されてきたコマンドデータの順序が正しければ04EAHの段階では、コマンド順序判定データは00001000bとなっているために、00001000bと00001000bとの論理積を演算することとなり、その演算結果は00001000bとなるはずである。その場合には、04EAHによりYESの判断がなされて、04F2Hにより、コマンド順序判定データを左回転させる処理がなされる。その結果、コマンド順序判定データは、00010000bとなる。次に、04EBHに進み、中図柄停止処理のアドレスすなわちrtn24hが処理アドレスとしてセットされ、0347Hのコマンドウェイトへジャンプする。

前記摘示の記載及び図面によれば、第1引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「遊技制御手段から可変表示装置における遊技状態の表示を制御する指令信号として、8個のブロックデータ(comH,com0,com1,com2,com3,com4,com5,comC)により構成されるコマンドデータを順次に受信する可変表示制御手段が、
今回受信した指令信号が前回受信した指令信号に対して適正な変化パターンとなっているか否かを判別するために、今回受信した指令信号の種類及び可変表示状態の指令を特定するコマンドデータのメインステータスcom0を識別して一義的に定まるコマンド識別データと、前回受信した指令信号のコマンド順序が正しい場合に今回受信すべき指令信号の種類及び可変表示状態の指令に対応するものとしてセットされたコマンド順序判定データとの論理積演算を行い、
両データが一致すると判別された場合には、今回受信した指令信号のコマンド順序が正しいとして当該コマンド順序判定データを左回転させて次回に受信すべき指令信号に対応するコマンド順序判定データとしてセットするとともに該指令信号に基づいて前記可変表示装置に対する表示制御を行い、両データが一致しないと判別された場合にはコマンドエラーと判断して当該指令信号を破棄するようにした、指令信号の順序判別方法。」

4.対比判断
(1)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明における「遊技制御手段」、「8個のブロックデータ(comH,com0,com1,com2,com3,com4,com5,comC)により構成されるコマンドデータからなる指令信号」、「可変表示装置」、「可変表示制御手段」、「順序判別方法」は、それぞれ、本願発明における「主制御部」、「遊戯動作を指示する遊戯命令データ」、「周辺機器である表示装置」、「周辺制御部」、「エラーチェック方法」に相当する。
また、引用発明における「指令信号(遊戯命令データ)」は、可変表示装置における遊技状態の表示を制御するものとして、その種類及び可変表示状態の指令を特定するメインステータスcom0を含むものであるから、本願発明における「遊戯状態を示す状態指示データ」に相当する。
そして、引用発明における「今回受信した指令信号が前回受信した指令信号に対して適正な変化パターンとなっているか否かを判別する」ことは、前記指令信号のcom0を識別して一義的に定まるコマンド識別データと、前回受信した指令信号のコマンド順序が正しい場合に今回受信すべき指令信号の種類及び可変表示状態の指令に対応するものとしてセットされたコマンド順序判定データとの論理積演算を行い、両データが一致するか否かの判別を行うものであるから、本願発明における「遊戯命令データが直前に主制御部から受信した遊戯状態を示す状態指示データに対して適合したデータか否かの状態判定を行」うことに相当する。
さらに、引用発明における「コマンド識別データとコマンド順序判定データとが一致するか否かの判別」に応じて「表示制御を行うか、あるいは、指令信号(遊戯命令データ)を破棄する」ことは、本願発明における「判定結果」に応じて「遊戯信号を生成するか否かを決定する」ことに相当する。
そうすると、本願発明と引用発明の両者は、以下の点でそれぞれ、一致ならびに相違するものと認められる。
一致点「主制御部より受信した遊戯動作を指示する遊戯命令データから周辺機器である表示装置の駆動用の遊戯信号を生成する周辺制御部における遊戯命令データのエラーチェック方法において、
当該遊戯命令データが直前に主制御部から受信した遊戯状態を示す状態指示データに対して適合したデータか否かの状態判定を行い、
前記状態判定結果に応じて前記遊戯命令データから遊戯信号を生成するか否かを決定するようにした遊戯命令データのエラーチェック方法。」
相違点.本願発明は、状態判定と共に、受信した表示装置に対する表示動作を指示する遊戯命令データが、予め記憶されている、各遊戯命令データとの異同を判断する照合データを該受信した遊戯命令データと照合することにより設計上存在するデータか否かの定義判定を行って、両判定結果に応じてエラーチェックを行うのに対して、引用発明は、前記の如き定義判定を行うことなく、状態判定のみでエラーチェックを行う点。

(2)判断
i.相違点の検討
コンピュータの技術分野において、命令が予め定義されたものか否か定義判定を行って、定義されたものではない場合にエラーとして処理することは、周知技術(例えば、特開平1-145733号公報、特開昭55-110348号公報、特開昭60-207935号公報参照)である。
そうすると、本願発明及び引用発明は、いずれも、パチンコ遊技機にコンピュータを応用した技術分野に属するものであるところ、より正確で高度のエラーチェックを実現することを課題として、引用発明に示される、状態判定のみでエラーチェックを行う技術にとどまらず、前記周知技術に示される、コンピュータの技術分野において周知の前記定義判定によりエラーチェックを行う技術を付加することで、前記相違点に係る本願発明のように構成することは、当業者が容易に想到できるものである。
ii.審判請求人の意見について
審判請求人は、第1引用例に開示される技術事項について、「今回受信した指令信号の種類及び可変表示状態の指令を特定するコマンドデータのメインステータスcom0を識別して一義的に定まるコマンド識別データと、前回受信した指令信号のコマンド順序が正しい場合に今回受信すべき指令信号の種類及び可変表示状態の指令に対応するものとしてセットされたコマンド順序判定データとの論理積演算を行い」ということに関しては、何処に記載されているか不明である旨の主張をしている。
そこで、本願発明及びその実施例に則して、引用発明を認定した第1引用例の実施例に開示される技術事項について、以下敷衍して説明する。
第1引用例の段落【0168】乃至【0173】には、複数種類の指令信号が所定の順序で受信される実施例として、各指令信号のメインステータスであるcom0が「2xH」の場合における可変表示動作において、まず受信した指令信号のcom0の値が「20H」の場合に図柄変動前準備処理がなされ、次に受信した指令信号のcom0の値が「21H」の場合に全図柄変動処理がなされ、以下同様に、次にcom0の値が「22H」の場合に左図柄停止処理がなされ、次にcom0の値が「23H」の場合に右図柄停止処理がなされ、場合に応じて各種リーチの表示動作がなされ、次にcom0の値が「24H」の場合に中図柄停止処理がなされ、次にcom0の値が「2dH」の場合に大当り動作の処理がなされることが記載されている。
そして、前記可変表示動作の処理における、所定の順序で送信される指令信号のコマンド順序が正しいか否かを判定するエラーチェック方法について、該エラー判定に用いられる「コマンド順序判定データ」が、図柄変動前準備処理の指令信号を受信した段階で00000010b(bは2進数を表わす)にセットされ、全図柄変動処理を経て、次に左図柄停止処理の指令信号を受信した段階で、前記「コマンド順序判定データ」である00000010bに対して、当該左図柄停止処理の指令信号を識別して一義的に定まるコマンド識別データである00000010bとの論理積演算により両データが一致しているか否かをみて、一致しない場合にはコマンドエラーと判断する一方、一致している場合には前記「コマンド順序判定データ」としての00000010bを左回転させて00000100bとし、次に右図柄停止処理の指令信号を受信した段階で、「コマンド順序判定データ」である00000100bに対して、当該右図柄停止処理の指令信号を識別して一義的に定まるコマンド識別データである00000100bとの論理積演算により両データが一致しているか否かをみて、一致しない場合にはコマンドエラーと判断する一方、一致している場合には前記「コマンド順序判定データ」としての00000100bを左回転させて00001000bとし、以下同様に、中図柄停止処理及び大当り動作の処理の指令信号を受信した段階で、対応してセットされた「コマンド順序判定データ」と受信した当該指令信号の種類を識別して一義的に定まるコマンド識別データとが一致しているか否かをみて、一致しない場合にはコマンドエラーと判断するようにしたものが記載されている。
すなわち、引用発明のエラーチェック方法は、指令信号を受信する毎に、今回受信した指令信号が前回受信した指令信号に対して予め決められた所定の順序のものであるか否かについて、今回受信した指令信号の種類を示すメインステータスcom0を識別して一義的に定まるコマンド識別データと、今回受信すべき指令信号に対応するものとして予めセットされたコマンド順序判定データとに基づいて判定しており、その判定に用いられるコマンド順序判定データは、前回受信した指令信号のコマンド順序が正しい場合に今回受信すべき指令信号の種類及び可変表示状態の指令に対応するものとして設定され、今回受信した指令信号が予め決められた所定の順序のものである場合に限って次回受信すべき指令信号に対応するものとして順次更新されて設定されるものである。
また、本願発明の実施例である、第1データの値が「A0H」である通常変動状態を示す表示命令に対して、第1データの値が「80H」である左図柄の変動が低速度になることを示す表示命令が受信される場合のエラーチェック方法に則して、引用発明を認定した第1引用例の実施例と対比すると、該第1引用例の実施例においては、まず、可変表示状態の指令としてcom0の値が「20H」である図柄変動前準備処理の指令信号を受信したことによりコマンド順序判定データとして00000010bがセットされ、次いで、今回可変表示状態の指令としてcom0の値が「22H」である左図柄停止処理の指令信号を受信したことにより、該指令信号を識別して一義的に定まるコマンド識別データとして00000010bが導出され、前記図柄変動前準備処理の指令信号を示すコマンド順序判定データと前記左図柄停止処理の指令信号を示すコマンド識別データとが一致しているか否かをみて、一致しない場合にはコマンドエラーと判断するものであり、両者に実質的な相違がないものである。
さらに付言すると、前記第1引用例の実施例においては、その段落【0038】、【0039】、【0183】、【0184】の記載によれば、フィーバモードの指令としてcom0の値が「3XH」又は「4XH」である各指令信号を受信したときにはコマンド順序判定データとしていずれも大当たり動作状態を示す00000000bがセットされ、次いで、例えば今回可変表示状態の指令としてcom0の値が「22H」である左図柄停止処理の指令信号を受信した場合には、該指令信号を識別して一義的に定まるコマンド識別データとして00000010bが導出されるため、前記大当たり動作状態を示すコマンド順序判定データと前記左図柄停止処理の指令信号を示すコマンド識別データとが一致しないことによりコマンドエラーと判断されることになると解されるから、本願発明の実施例と相違がないものである。
よって、第1引用例に開示される技術事項に係る前記認定に誤りがない。

iii.作用効果について
本願発明の作用効果は、引用発明及び前記周知技術に基づいて、当業者が容易に予測できるものである。

(3)まとめ
したがって、本願発明は、引用発明及び前記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、第1引用例に記載された発明(引用発明)及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、特許請求の範囲の請求項2乃至4に係る発明について検討するまでもなく、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-19 
結審通知日 2007-04-24 
審決日 2007-05-08 
出願番号 特願平10-356610
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神 悦彦  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 小田倉 直人
藤田 年彦
発明の名称 遊戯命令データのエラーチェック方法および遊戯装置  
代理人 伊藤 孝夫  
代理人 植木 久一  
代理人 小谷 悦司  

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