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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J |
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管理番号 | 1159478 |
審判番号 | 不服2004-13181 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-06-24 |
確定日 | 2007-06-21 |
事件の表示 | 平成10年特許願第 54492号「シート処理装置、搬送装置、シート搬送装置及び画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年11月 4日出願公開、特開平10-291307〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成10年2月19日の出願(国内優先権主張:平成9年2月20日)であって、平成16年5月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年6月24日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月26日付けで手続補正がなされたものである。 第2 平成16年7月26日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年7月26日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 上記手続補正は、特許請求の範囲の請求項1を、 「シート状処理媒体を搬送しながら該シート状処理媒体に画像を形成する画像形成処理を行う画像形成手段であって、搬送方向に所定の長さを有する画像を形成する毎に前記シート状処理媒体を前記所定の長さ分搬送して停止する画像形成手段と、 前記画像形成手段により画像が形成されたシート状処理媒体を一定の搬送速度で搬送しながら加熱することによって該画像形成手段により形成された画像を該シート状処理媒体に定着させる定着処理を行う加熱手段とを有するシート処理装置において、 前記画像形成手段によって画像が形成されたシート状処理媒体を所定の第1の方向に搬送し、シート状処理媒体の後端が前記画像形成手段を通過後、シート状処理媒体を前記第1の方向とは逆方向の第2の方向に搬送する搬送手段と、 前記搬送手段によって第2の方向に搬送されるシート状処理媒体を前記加熱手段に案内する案内手段と、 を有することを特徴とするシート処理装置。」 とする補正事項を含むものである。 (2)補正の適否について 上記補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「画像形成手段」について「搬送方向に所定の長さを有する画像を形成する毎に前記シート状処理媒体を前記所定の長さ分搬送して停止する」との限定を付し、また「加熱手段」が「シート状処理媒体を搬送しながら加熱する」について、「シート状処理媒体を一定の搬送速度で搬送しながら加熱する」との限定を付した表現に変更するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明1」という。)が特許出願の際に独立して特許をうけることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (3)引用例 原査定の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-73152号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (a-1)「【特許請求の範囲】 (1)画像信号に応じて記録ヘッドから被記録材へインクを吐出させて画像を形成するインクジェット記録装置において、光透過性記録物を出力する際に、不透明被記録材を透明化する透明化手段を、該インクの打ち込み量により制御することを特徴とするインクジェット記録装置。」(特許請求の範囲の請求項1) (a-2)「 第3図は、本実施例で使用されるフルカラーのインクジェット記録装置の記録後処理部の構成を示す側面図である。 このインクジェット記録装置の記録部には、ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各インク色の記録ヘッド1B、1C、1M、1Yが所定の位置関係で配列されている。」(第3ページ左上欄第3行?同欄第9行) (a-3)「 第3図において、被記録材(前記コーティング層を有する特殊フィルムを含む)は、搬送ベルト2によって搬送され、前記各記録ヘッド1B、1C、1M、1Yで各色ごとに記録される。 記録後の被記録材(記録物)は、プレートヒーター3上へ送り出され、ここで温められて透明化処理を施される。 透明化処理のための温度は、インク輸送層33の融点80°C付近の温度になるように設定されている。 この熱を記録物へ効率良く伝達するために、前記プレートヒーター3上の2箇所には紙押さえローラ4が配設されている。 前記プレートヒーター3の後流側(排出側)には一対の加圧加熱ローラ5、6が配設されており、前記プレートヒーター3を通過した記録物は、該加圧加熱ローラ5、6によって加圧・加熱され、平滑化を含めた透明化処理が施される。 ここで、一方の加圧加熱ローラ5は、肉厚4mmのHTUシリコンゴムローラを母体とし、その表層に200μm厚さのHTUシリコンゴムをコーティングし、その周面を鏡面仕上げした2層構造になっている。 他方の加圧加熱ローラ6は、肉厚1mmのフッ素樹脂ローラである。 これら2個の加圧加熱ローラ5、6は約40kgのバネ圧で互いに圧接され、その間に約9mmのニップ(接触部)が形成されている。 前記1対の加圧加熱ローラ5、6で平滑透明化された記録物(インクを打ち込まれた被記録材)は排紙駆動ローラ8および排紙従動ローラ9によって排紙トレイ11上へ排紙される。 下側の加圧加熱ローラ6にはヒーターが内蔵されており、該ローラ6の表面温度はサーミスタ7によって検知される。」(第3ページ左下欄第15行?第4ページ左上欄第9行) (a-4)「第1図は、本実施例(第1実施例)による記録物の透明化処理を行なうための制御部の構成を示すブロック図である。 なお、第1図中の透明化条件とは、透明化処理時の速度、温度、あるいは風量、圧力等である。 この透明化条件は、操作盤で設定された信号によって決定したり、あるいは、被記録材を検知または選択する信号に基づいて透明化条件判定テーブルから決定したりすることができる。 第1図において、先ず、記録物の材質構造を示す信号、すなわち、被記録材選択信号S2が画像記録量判定回路41へ入力される。 該画像記録量判定回路41では、画像信号等に基づいて、記録量に対応するインク打ち込み量または打ち込み色量等が判定され、前記被記録材選択信号S2とともに記録量信号が被記録材透明化条件判定テーブル42へ出力される。 前記被記録材透明化条件判定テーブル42で読み出された条件信号は透明化条件設定回路43へ入力される。 一方、操作盤から入力された透明化条件設定信号S1は、直接前記透明化条件設定回路43へ入力される。 この透明化条件設定回路43は、操作盤からの設定信号S1が無い場合は、前記被記録材選択信号S2に基づいて透明化条件を設定するが、該設定信号S1がある場合はこれに基づいて透明化条件を設定する。 こうして設定された透明化条件に基づいて、透明化手段44の動作が制御される。 この透明化手段としては、例えば、記録物の送り速度に関与する記録物搬送モーター、記録物の前乾燥を行なう前記プレートヒーター3、記録物の平滑化および透明化を行なう加圧加熱ローラ5、6、並びに、インク輸送層33からインク保持層32へのインク吸収を促進させのに適正な温度に維持するための温調ファンなどがある。 ・・・・ 以上説明したインクジェット記録装置においては、インクの打ち込み量に応じて記録後処理部(透明化処理部)での記録物の搬送速度が制御される。」(第4ページ右上欄第14行?第4ページ右下欄第17行) (a-5)「第3実施例: 本実施例は、第3図に示すインクジェット記録装置において、インク打ち込み量に応じて、前記プレートヒーター3上での前乾燥処理の速度を制御することにより、加圧加熱ローラ5、6の温度制御を省略するものである。 すなわち、第3図のインクジェット記録装置においては、インク打ち込み量に応じてプレートヒーター3上の前乾燥処理速度を適宜制御し、その速度で加圧加熱ローラ5、6を通して透明化処理すれば、該加圧加熱ローラ5、6の温度を可変にしなくても、記録物に対して適正な透明化処理および平坦化処理を施すことができ、安定した透明化フィルムを出力することができる。 したがって、本実施例によれば、加圧加熱ローラ5、6の温度制御を省略する分制御系を簡単化することができた。 さらに、本実施例においては、前乾燥処理の速度変換手段(記録物の送り速度変換手段)をヘッド温調用冷却ファンと同期させ、該ファンがオンの時、すなわち、インク打ち込み量が多い時に送り速度を低下(例えば、10mm/秒)させるなど、インク打ち込み量を反映する間接的なパラメーターによって制御することも可能であり、このような構成によって制御系とともに動作手段の簡略化を図ることも可能である。」(第5ページ右上欄第9行?同ページ左下欄第14行) (a-6)「 なお、以上の実施例では、本発明を、被記録材の紙幅方向記録領域をカバーするライン型の記録へッド1B、1C、1M、1Yを用いるライン型のインクジェット記録装置に適用する場合を例に挙げて説明したが、本発明は、記録ヘッドがキャリッジに搭載されたシリアルスキャン型のインクジェット記録装置など、他の型式のインクジェット記録装置に対しても同様に適用でき、同様の作用効果を達成し得るものである。」(第5ページ右下欄第5行?同欄第13行) (a-7)図3及び摘記事項(a-3)をみると、記録ヘッド1B、1C、1M、1Yにより記録された被記録材は、搬送ベルト2の搬送力により、プレートヒータ3と、プレートヒータ3上の2箇所に配設された紙押さえローラ4との間を搬送されることにより加圧加熱ローラ5、6に至ることがみてとれる。 ここで、引用刊行物1には、被記録材が、加圧加熱ローラ5、6の搬送力により搬送されながら加熱されることについては、明確な記載は存在しないが、上記摘記事項(a-3)にあるように、2つの加圧加熱ローラ5、6間には約40kgのバネ圧で互いに圧接されニップを形成していることから、搬送ベルト2の搬送力のみで加圧加熱ローラ間を被記録材が通過するとは考えられないので、当然このようになっているものと認められる。さらに、記録部により記録された未定着の画像を、一対の加圧加熱ローラのニップ部において加圧・加熱するものにおいて、被記録材面上を均一に加圧加熱するために、一対の加圧加熱ローラにより被記録材を一定の搬送速度で搬送しながら加熱することは、自明の技術的事項であり、(a-3)に摘記したように約9mmのニップ部(接触部)を形成している引用刊行物1の加圧加熱ローラも、一定の搬送速度で搬送されて加圧・加熱するものであるとすることができる。このことは、摘記事項(a-5)に「インク打ち込み量に応じてプレートヒーター3上の前乾燥処理速度を適宜制御し、その速度で加圧加熱ローラ5、6を通して透明化処理す」ると、加熱加圧ローラの速度制御を行う旨の記載が存在することからも確かめられる。 また、(a-5)において摘記したことからみて、第3図のインクジェット記録装置においては、透明化手段としての、プレートヒータ3上の前処理乾燥処理速度を、インク打ち込み量に応じて、記録物(被記録材)の送り速度変換手段(搬送ベルト2を制御することによると認められる。)により制御し、「その速度」で加圧加熱ローラ5、6を通して透明化処理をするのであるから、ここでは加熱加圧ローラ5、6による搬送速度も、インク打ち込み量に応じて制御していることは明らかである。 さらに、(a-6)において摘記したように、実施例1乃至3でのライン型の記録ヘッドを、シリアルスキャン型のインクジェット記録装置にも同様に適用できるのであるから、(a-5)において摘記した第3実施例において、シリアルスキャン型のインクジェット記録装置を適用した発明を認定できることも明らかであり、その場合、記録ヘッドがシリアルスキャン型である以上、搬送方向に所定の長さを有する画像を形成する毎に被記録材を前記所定の長さ分搬送して停止するものとなることも明らかである。その場合、シリアルスキャン型のインクジェット記録装置においては、画像形成の精度を維持するために間欠駆動する搬送手段の高い搬送精度が求められることから、記録ヘッドの上流側と下流側に搬送ローラ対(ラインフィードローラ)を設けることになるはずであり、この搬送ローラ対により加圧加熱ローラまでの搬送を行うものとなる。以下では、この間欠的に被記録材を搬送するものを「記録部搬送手段」と呼び、シリアルスキャン型のインクジェット記録ヘッドと合わせて「インクジェット記録手段」と呼ぶ。 そして、記録部搬送手段において被記録材を搬送する搬送ローラを駆動する駆動手段と、被記録材を間欠的に搬送しながら加圧加熱する加圧加熱ローラ5、6を駆動する駆動手段とが互いに独立に存在することも明らかである。 以上のことから、これら(a-1)?(a-7)の記載を総合的に勘案すると、引用刊行物1には、 「被記録材を搬送しながら該被記録材に画像を形成する画像形成処理を行うインクジェット記録手段であって、搬送方向に所定の長さを有する画像を形成する毎に被記録材を前記所定の長さ分搬送して停止するインクジェット記録手段と、 前記インクジェット記録手段により画像が形成された被記録材を一定の搬送速度で搬送しながら加熱することによって該インクジェット記録手段により形成された画像を該被記録材に加圧加熱させる加圧加熱処理を行う加圧加熱ローラ5、6とを有するインクジェット記録装置において、 前記インクジェット記録手段において被記録材を搬送する記録部搬送手段を駆動する駆動手段と、被記録材を搬送しながら加圧加熱する加圧加熱ローラ5、6を駆動する駆動手段とが互いに独立に存在し、 前記インクジェット記録手段によって画像が形成された被記録材を記録部搬送手段の搬送力により搬送し、プレートヒータ3と、プレートヒータ3上の2箇所に配設された紙押さえローラ4との間を搬送されることにより加圧加熱ローラ5、6に至り、さらに加圧加熱ローラ5、6の搬送力により被記録材は、インク打ち込み量に応じた一定の搬送速度で搬送されながら加熱されるインクジェット記録装置」 との発明(以下、「引用刊行物1記載発明」という。)が記載されていると認めることができる。 原査定の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平5-4384号公報(以下、「引用刊行物2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 (b-1)「【0017】図2,図3に本発明を適用した画像形成装置の主断面構造を示す。図2および図3において、1は複写を行なう原稿を表わし、2は原稿のR、G、Bの画像情報を読み取る3ラインのCCDセンサで構成された原稿読み取りセンサである。同センサで読み取られた原稿の画像信号は画像処理装置3を経て画像形成部へ送られる。 【0018】一方、画像形成部に於ては記録材4がカセット5に収容されており給紙装置6により給紙される。記録材4は画像形成に同期したタイミングで記録材を搬送するためのレジストローラー7を経て、最初の画像形成部である電子写真画像形成部へ搬送される。 【0019】同部は像担持体である感光ドラム8、感光ドラム8上に潜像の形成を行なう露光部9、静電潜像に応じてトナー粉で顕像化を行なう現像装置10、感光ドラム8上のトナー像を記録材に転写するための転写帯電器11、感光ドラム上の残留トナーを除去するためのクリーニング装置12、感光ドラム8上の残留表面電荷を除去するための前露光装置13、感光ドラム8表面を一様に帯電させるための1次帯電器14、からなる。 【0020】一方、画像処理装置3を経た原稿4の画像信号は画像信号に応じたレーザー光を発する半導体レーザー15に導かれ、同レーザー光は回転する多面鏡16、ミラー17を経て感光ドラム8上に導かれ同ドラム上に静電潜像を形成する。記録材5上に転写されたトナー像は記録可能な最大記録材サイズよりやや長い搬送部19を経て定着装置18により、熱及び圧力を加えられ記録材4上に定着され、一連の良く知られた電子写真による画像形成プロセスを終了する。 【0021】電子写真による画像形成を終了した記録材4は記録面を合せるため排紙部で搬送路切り替え部材31を切り替えてスイッチバックした後、多色画像を形成するインクジェット記録部へと搬送される。 【0022】同部は画像処理装置3を経た画像信号に基づき記録材にインク液滴を発射して記録を行なう記録ヘッド20を有し、記録ヘッド20はイエローの記録を行なう記録ヘッド20-Y、同じくシアンの記録ヘッド20-C、マゼンタの記録ヘッド20-M、ブラックの記録ヘッド20-Bkの4つのヘッドからなる。前記記録ヘッドはキャリッジ21に搭載され、同キャリッジはレール22上を記録材4の搬送方向と直角方向(主走査方向)にシリアルスキャンして記録材4上に多色画像を形成する。」 (b-2)「【0025】排紙部でスイッチバックして搬送されて来た記録材は画像先端(同図に於て左側)が搬送ローラーの右側に達する迄搬送された後、再び搬送方向を逆転して同図に於て左側に間欠的に搬送されながら記録される。 【0026】即ち、インクジェット記録部では記録材に対して電子写真部と同様の方向から記録を行ない、記録ヘッド20に対向したプラテン24が配され、プラテン上の記録材4を搬送するための搬送ローラー25、プラテン上の記録材4の浮きやシワの発生を防ぐテンションローラー26が配され記録幅に等しい送り量で記録材4を間欠的に搬送する。同部で多色画像を形成された後、記録材4は排紙部まで搬送された後、排出ローラー27によって機外の排紙トレー28に排出される。」 (b-3)上記摘記事項(b-1)及び図2から、定着装置を通過した記録材4をスイッチバックする際に、排紙トレー28を利用して記録材を支持しながら行うことがみてとれる。 これら(b-1)?(b-3)の記載を総合的に勘案すると、引用刊行物2には、 「記録材上に転写されたトナー像を定着することにより電子写真による画像形成を終了した記録材を、排紙トレーを利用して搬送路切り替え部材によりスイッチバックした後、多色画像を形成するインクジェット記録部へと搬送し、搬送されてきた記録材をその画像の先端が搬送ローラ25の位置を越えるまで搬送し、インクジェット記録部においては、再び搬送方向を逆転して、プラテン上の記録材を搬送するための搬送ローラ25とプラテン上の記録材4の浮きやシワの発生を防ぐテンションローラ26により記録幅に等しい送り量で記録材を間欠的に搬送しながら、多色画像を形成し、記録材は排紙部まで搬送された後、機外の排紙トレーに排出する画像形成装置」 との発明(以下、「引用刊行物2記載発明」という。)が記載されていると認めることができる。 (4)対比 そこで、本願補正発明1と引用刊行物1記載発明とを対比すると、引用刊行物1記載発明における「被記録材」「インクジェット記録手段」「インクジェット記録装置」は、本願補正発明1における「シート状処理媒体」「画像形成手段」「シート処理装置」に各々相当することは明らかである。 また、「定着」の用語については、出願人自身、本願明細書において引用刊行物1を引用し「第1の処理部として画像形成手段を有し、第2の処理部として定着手段を有する画像形成装置」、「記録ヘッドの下流側に隣接して配置された定着手段としての加圧加熱ローラ対」(段落番号【0002】、【0004】)と、引用刊行物1記載発明の加圧加熱ローラ5,6による「加圧加熱」を「定着」と表現しているので、引用刊行物1記載発明における「加圧加熱」「加圧加熱処理」「加圧加熱ローラ5,6」は、本願補正発明1における「定着」「定着処理」「加熱手段」に各々相当することは明らかである。 また、本願補正発明1の「前記画像形成手段によって画像が形成されたシート状処理媒体を所定の第1の方向に搬送し、シート状処理媒体の後端が前記画像形成手段を通過後、シート状処理媒体を前記第1の方向とは逆方向の第2の方向に搬送する搬送手段と、前記搬送手段によって第2の方向に搬送されるシート状処理媒体を前記加熱手段に案内する案内手段と、」を備えた点も、引用刊行物1記載発明の「前記インクジェット記録手段によって画像が形成された被記録材を記録部搬送手段の搬送力により搬送し、プレートヒータ3と、プレートヒータ3上の2箇所に配設された紙押さえローラ4との間を搬送されることにより加圧加熱ローラ5、6に至」る点も、「画像形成手段によって画像が形成されたシート状処理媒体を加熱手段まで搬送する搬送機構」を有している点で共通しているといえるから、両者は 「シート状処理媒体を搬送しながら該シート状処理媒体に画像を形成する画像形成処理を行う画像形成手段であって、搬送方向に所定の長さを有する画像を形成する毎に前記シート状処理媒体を前記所定の長さ分搬送して停止する画像形成手段と、 前記画像形成手段により画像が形成されたシート状処理媒体を一定の搬送速度で搬送しながら加熱することによって該画像形成手段により形成された画像を該シート状処理媒体に定着させる定着処理を行う加熱手段とを有するシート処理装置において、前記画像形成手段によって画像が形成されたシート状処理媒体を前記加熱手段まで搬送する搬送機構とを有しているシート処理装置」 の点で一致し、以下の点で相違する。 『相違点1』:「前記画像形成手段によって画像が形成されたシート状処理媒体を前記加熱手段まで搬送する搬送機構」について、本願補正発明1のものは、「画像形成手段によって画像が形成されたシート状処理媒体を所定の第1の方向に搬送し、シート状処理媒体の後端が前記画像形成手段を通過後、シート状処理媒体を前記第1の方向とは逆方向の第2の方向に搬送する搬送手段」を備え、さらに「前記搬送手段によって第2の方向に搬送されるシート状処理媒体を前記加熱手段に案内する案内手段」を設けた、すなわち、いわゆるスイッチバック搬送系を備えたのに対して、引用刊行物1記載発明のものはいわゆるスイッチバック搬送系を備えていない点。 (5)判断 『相違点1』について検討する。 まず、引用刊行物1記載発明において、画像形成手段は被記録材を間欠的に駆動しながら行うものであり、他方、加熱手段はニップ部を形成し一定の速度で搬送しながら定着処理をするもの、すなわち一定の搬送速度で搬送しなければならないものである。そうすると、両者間で搬送速度が異なり、両者間の干渉が生じうるところ、画像形成手段において精度の高い画像形成を行うためには、画像形成手段の搬送方向下流で、かつ加熱手段の搬送方向上流のいずれかの位置において、被記録材の搬送に関する何らかの緩衝機構を採用することが必要なことは当業者にとって明らかである。 次に、引用刊行物2には、電子写真による画像形成終了後に、記録材をスイッチバックさせてから、シリアルスキャン型の記録ヘッドにより記録するものが記載されており、このスイッチバックは、第一義的には、電子写真画像形成部とインクジェット記録部との画像形成面をそろえるための構成である(引用刊行物2の段落番号【0021】)と認められる。しかしながら、引用刊行物2記載発明は、電子写真画像形成部、とりわけ、電子写真工程における定着装置18が記録材を一定の速度により搬送しながら加熱加圧処理を行うという電子写真画像形成部における「一定の速度による搬送」と、インクジェット記録部における「間欠駆動による搬送」という互いに独立した搬送系を連結するものであるところ、このスイッチバック搬送系により、両者の搬送が互いに干渉することなく、両者において適切に画像形成に係る処理が行いうるという技術的意義は、その構造上、当業者にとって明らかに理解できる自明な技術的事項であるから、引用刊行物1記載発明において、互いに独立した搬送系である、「一定の速度による搬送」と「間欠駆動による搬送」とを連結するものにおいて、両者の搬送が互いに干渉することなく、両者において適切に画像形成に係る処理を行うための構成として、引用刊行物2に記載のスイッチバック搬送系を採用して、本願補正発明1の『相違点1』に係る構成のようにしようとすることは、当業者が適宜行いうることである。 ここで、引用刊行物2記載発明が、スイッチバック搬送系により被記録材をインクジェット記録部まで搬送(本願補正発明における「第2の方向」に搬送することに相当する。)した後に、再び搬送方向を逆転し、多色画像を形成するから、引用刊行物1記載発明に引用刊行物2記載発明を適用した際には、再び搬送方向を逆転した後に、プレートヒータ3及び加圧加熱ローラ5、6を通過しなければならず、スイッチバック経路上には、加圧加熱ローラ5、6の下流側に、さらに、プレートヒータ3を配置することとなり、これは大型化を来すことが予想される。しかしながら、第2の処理がインクジェット記録であっても、引用刊行物2記載発明のように、再度搬送方向を逆転してから記録するのではなく、スイッチバック後の経路上で、インクジェット記録部を一回目に通過する際に記録してもよいことは自明なことである(画像の上下が反転するとしても、記録自体を反転した記録とする程度は容易いことであり、重大な障害があるとはいえない。)。さらに、引用刊行物1記載発明と引用刊行物2記載発明の組み合わせを想定した場合には、第2の処理は定着処理となるのであり、なおさらに、再度搬送方向を逆転してから定着処理を行う必要は存在しない。そうであれば、スイッチバック経路上に、プレートヒータ3、加圧加熱ローラ5、6をこの順に配置することが可能なのであり、この配置順とすれば、スイッチバック経路自体をプレートヒータ3の配置に利用できるのであり、直ちに大型化することにはつながらない。 以上に検討したように、引用刊行物1記載発明に引用刊行物2記載のスイッチバック搬送系を適用しようとする場合、インクジェット記録手段の下流側で、プレートヒータ3の上流側に、スイッチバック搬送系を設けることになるが、このことは当業者であれば適宜行い得る程度のことである。 そして、本願補正発明1の作用効果も、引用刊行物1記載発明及び引用刊行物2記載発明に基づいて、当業者が予測できる範囲内のものである。 従って、本願補正発明1は、引用刊行物1に記載された発明及び引用刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (6)まとめ 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 第3 本願発明について (1)本願発明の認定 平成16年7月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年10月27日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 シート状処理媒体を搬送しながら該シート状処理媒体に画像を形成する画像形成処理を行う画像形成手段と、 前記画像形成手段により画像が形成されたシート状処理媒体を搬送しながら加熱することによって該画像形成手段により形成された画像を該シート状処理媒体に定着させる定着処理を行う加熱手段とを有するシート処理装置において、 前記画像形成手段によって画像が形成されたシート状処理媒体を所定の第1の方向に搬送し、シート状処理媒体の後端が前記画像形成手段を通過後、シート状処理媒体を前記第1の方向とは逆方向の第2の方向に搬送する搬送手段と、 前記搬送手段によって第2の方向に搬送されるシート状処理媒体を前記加熱手段に案内する案内手段と、 を有することを特徴とするシート処理装置。」 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及び、その記載事項は、前記「第2 (3)」に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、実質的に前記「第2」で検討した本願補正発明1から、「画像形成手段」について「搬送方向に所定の長さを有する画像を形成する毎に前記シート状処理媒体を前記所定の長さ分搬送して停止する」との限定を省き、また「加熱手段」について「シート状処理媒体を一定の搬送速度で搬送しながら加熱する」から「シート状処理媒体を搬送しながら加熱する」と限定を省いた表現に変更するものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明1が、上の「第2」に記載したとおり、引用刊行物1記載発明および引用刊行物2記載発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用刊行物1記載発明および引用刊行物2記載発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物1に記載された発明及び引用刊行物2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-04-17 |
結審通知日 | 2007-04-24 |
審決日 | 2007-05-08 |
出願番号 | 特願平10-54492 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WZ
(B41J)
P 1 8・ 121- WZ (B41J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 後藤 時男 |
特許庁審判長 |
酒井 進 |
特許庁審判官 |
松本 泰典 長島 和子 |
発明の名称 | シート処理装置、搬送装置、シート搬送装置及び画像形成装置 |
代理人 | 世良 和信 |
代理人 | 和久田 純一 |
代理人 | 川口 嘉之 |