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審決分類 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1159487
審判番号 不服2004-17316  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-20 
確定日 2007-06-21 
事件の表示 平成11年特許願第219782号「ディスプレイ装置及びディスプレイパネルの駆動回路」拒絶査定不服審判事件〔平成13年2月16日出願公開、特開2001-42827号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件は、平成11年8月3日にされた特許出願(以下「本件出願」という。)につき、拒絶査定が平成16年7月16日付けでされたところ、請求人が「原査定を取り消す、本願は特許をすべきものである」との審決を求めて拒絶査定不服審判を同年8月20日に請求するとともに同年9月21日に手続補正書を提出したものである。

第2 補正の却下の決定
1 補正の却下の決定の結論
平成16年9月21日付け手続補正書による補正を却下する。
2 補正の却下の決定の理由
(1)補正の内容
平成16年9月21日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について以下のように補正をし、これに対応して発明の詳細な説明についても補正をするものである。
ア 本件補正後の特許請求の範囲
「【請求項1】N個(Nは整数)の第1電極線と前記第1電極線各々に交叉して配列された複数の第2電極線との各交叉部に1画素を担う発光素子が形成されてなるディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネルを発光駆動せしめる駆動部と、からなるディスプレイ装置であって、
前記駆動部は、前記N個の第1電極線各々の内で夫々隣接して配列されているm個(m<N)の第1電極線の各位置に対応づけして配置されており且つ各々がベース端子に供給された電圧に応じた大きさの電流を発生しこれを前記発光素子を発光させる発光駆動電流として前記m個の第1電極線各々に供給するm個の駆動トランジスタと、前記m個の駆動トランジスタ各々のベース端子にそのベース端子が接続されている制御トランジスタと、を備えた複数の駆動回路からなり、
前記駆動回路各々の内の少なくとも1には、前記m個の第1電極線各々の内の一端部に配列されている第1電極線に前記発光駆動電流を供給する前記駆動トランジスタの近傍に形成されており且つ前記m個の駆動トランジスタ各々のベース端子にそのベース端子が接続されており前記ベース端子に供給された電圧に応じた大きさの電流を発生してこれを基準電流として他の駆動回路に出力する基準電流出力トランジスタと、所定基準電圧に対応した電流を前記制御トランジスタに流すべく前記制御トランジスタを駆動する手段と、が更に設けられており、
前記他の駆動回路には、前記基準電流を取り込みこの基準電流と同一の電流を前記制御トランジスタに流すべく前記制御トランジスタを駆動する手段と、が更に設けられていることを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項2】前記制御トランジスタを駆動する手段が、前記m個の第1電極線各々の内の他端部に配列されている第1電極線に前記発光駆動電流を供給する前記駆動トランジスタの近傍に形成されていることを特徴とする請求項1記載のディスプレイ装置。
【請求項3】前記第2電極線の各々に順次アース電位を印加して行くと共に前記アース電位の印加されていない他の前記第2電極線の全てに所定の高電位を印加する走査回路を備えたことを特徴とする請求項1記載のディスプレイ装置。
【請求項4】前記発光素子の各々は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1記載のディスプレイ装置。
【請求項5】前記駆動回路の各々が、夫々1つのICチップ内に含まれていることを特徴とする請求項1記載のディスプレイ装置。
【請求項6】N個(Nは整数)の第1電極線と前記第1電極線各々に交叉して配列された複数の第2電極線との各交叉部に1画素を担う発光素子が形成されてなるディスプレイパネルを発光駆動せしめる駆動回路であって、
前記駆動回路は、前記N個の第1電極線各々の内で夫々隣接して配列されているm個(m<N)の第1電極線の各位置に対応づけして配置されており且つ各々がベース端子に供給された電圧に応じた大きさの電流を発生しこれを前記発光素子を発光させる発光駆動電流として前記m個の第1電極線各々に供給するm個の駆動トランジスタと、前記m個の駆動トランジスタ各々のベース端子にそのベース端子が接続されている制御トランジスタと、が形成されているICチップの複数から構築されており、
前記ICチップ各々の内の少なくとも1には、前記m個の第1電極線各々の内の一端部に配列されている第1電極線に前記発光駆動電流を供給する前記駆動トランジスタの近傍に形成されており且つ前記m個の駆動トランジスタ各々のベース端子にそのベース端子が接続されており前記ベース端子に供給された電圧に応じた大きさの電流を発生してこれを基準電流として他の前記ICチップに出力する基準電流出力トランジスタと、所定基準電圧に対応した電流を前記制御トランジスタに流すべく前記制御トランジスタを駆動する手段と、が更に形成されており、
前記他のICチップには、前記基準電流を取り込みこの基準電流と同一の電流を前記制御トランジスタに流すべく前記制御トランジスタを駆動する手段と、が更に形成されていることを特徴とする駆動回路。
【請求項7】N個(Nは整数)の第1電極線と前記第1電極線各々に交叉して配列された複数の第2電極線との各交叉部に1画素を担う発光素子が形成されてなるディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネルを発光駆動せしめる駆動部と、からなるディスプレイ装置であって、
前記駆動部は、前記N個の第1電極線各々の内で夫々隣接して配列されているm個(m<N)の第1電極線の各位置に対応づけして配置されており且つ各々がベース端子に供給された電圧に応じた大きさの電流を発生しこれを前記発光素子を発光させる発光駆動電流として前記m個の第1電極線各々に供給するm個の駆動トランジスタと、前記m個の駆動トランジスタ各々のベース端子にそのベース端子が接続されている制御トランジスタと、を備えた複数の駆動回路と、所定基準電圧に対応した電流を発生してこれを基準電流として出力する基準電流発生回路と、からなり、
前記駆動回路には、前記m個の第1電極線各々の内の一端部に配列されている第1電極線に前記発光駆動電流を供給する前記駆動トランジスタの近傍に形成されており且つ前記m個の駆動トランジスタ各々のベース端子にそのベース端子が接続されており前記ベース端子に供給された電圧に応じた大きさの電流を発生してこれを基準電流として他の駆動回路に出力する基準電流出力トランジスタと、他の前記駆動回路又は前記基準電流発生回路から出力された前記基準電流と同一の電流を前記制御トランジスタに流すべく前記制御トランジスタを駆動する手段と、が更に設けられていることを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項8】前記第2電極線の各々に順次アース電位を印加して行くと共に前記アース電位の印加されていない他の前記第2電極線の全てに所定の高電位を印加する走査回路を備えたことを特徴とする請求項7記載のディスプレイ装置。
【請求項9】前記発光素子の各々は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項7記載のディスプレイ装置。
【請求項10】前記駆動回路の各々は、複数のICチップ内に夫々構築されていることを特徴とする請求項7記載のディスプレイ装置。」
イ 本件補正前の特許請求の範囲
平成16年6月14日付け手続補正書による補正は、同年7月16日付けで補正の却下の決定がされているので、本件補正前の特許請求の範囲は、平成15年9月19日付け手続補正書及び同年12月22日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲であり、その記載は以下のとおりである。
「【請求項1】複数の第1電極線と前記第1電極線各々に交叉して配列された複数の第2電極線との各交叉部に1画素を担う発光素子が形成されてなるディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネルを発光駆動せしめる駆動部と、からなるディスプレイ装置であって、
前記駆動部は、各々が前記発光素子を発光させる発光駆動電流を発生して前記第1電極線に供給する駆動トランジスタを備えた複数の駆動回路からなり、
前記駆動回路各々の内の少なくとも1には、前記発光素子を発光させる発光駆動電流を発生してこれを基準電流として出力する基準電流出力トランジスタと、
前記駆動トランジスタ及び前記基準電流出力トランジスタ各々のベース端子にそのベース端子が接続されている第1制御トランジスタと、所定基準電圧に対応した電流を前記第1制御トランジスタに流すべく前記第1制御トランジスタを駆動する手段と、が更に設けられており、
前記駆動回路各々の内の他の1には、前記駆動トランジスタのベース端子がそのベース端子に接続されている第2制御トランジスタと、前記基準電流を取り込みこの基準電流と同一の電流を前記第2制御トランジスタに流すべく前記第2制御トランジスタを駆動する手段と、が更に設けられていることを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項2】前記第2電極線の各々に順次アース電位を印加して行くと共に前記アース電位の印加されていない他の前記第2電極線の全てに所定の高電位を印加する走査回路を備えたことを特徴とする請求項1記載のディスプレイ装置。
【請求項3】前記発光素子の各々は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項1記載のディスプレイ装置。
【請求項4】前記駆動回路の各々が、夫々1つのICチップ内に含まれていることを特徴とする請求項1記載のディスプレイ装置。
【請求項5】複数の第1電極線と前記第1電極線各々に交叉して配列された複数の第2電極線との各交叉部に1画素を担う発光素子が形成されてなるディスプレイパネルを発光駆動せしめる駆動回路であって、
前記駆動回路は、各々に前記発光素子を発光させる発光駆動電流を発生して前記第1電極線に供給する駆動トランジスタが形成されている複数のICチップにて構築されており、
前記ICチップ各々の内の少なくとも1には、前記発光素子を発光させる発光駆動電流を発生してこれを基準電流として出力する基準電流出力トランジスタと、前記駆動トランジスタ及び前記基準電流出力トランジスタ各々のベース端子にそのベース端子が接続されている第1制御トランジスタと、所定基準電圧に対応した電流を前記第1制御トランジスタに流すべく前記第1制御トランジスタを駆動する手段と、が更に形成されており、
前記ICチップ各々の内の他の1には、前記駆動トランジスタのベース端子がそのベース端子に接続されている第2制御トランジスタと、前記基準電流を取り込みこの基準電流と同一の電流を前記第2制御トランジスタに流すべく前記第2制御トランジスタを駆動する手段と、が更に形成されていることを特徴とする駆動回路。
【請求項6】複数の第1電極線と前記第1電極線各々に交叉して配列された複数の第2電極線との各交叉部に1画素を担う発光素子が形成されてなるディスプレイパネルと、前記ディスプレイパネルを発光駆動せしめる駆動部と、からなるディスプレイ装置であって、
前記駆動部は、各々が前記発光素子を発光させる発光駆動電流を発生してこれを前記第1電極線に供給する駆動トランジスタを備えた複数の駆動回路と、所定基準電圧に対応した電流を発生してこれを基準電流として出力する基準電流発生回路と、からなり、
前記駆動回路には、前記発光素子を発光させる発光駆動電流を発生してこれを基準電流として出力する基準電流出力トランジスタと、前記駆動トランジスタ及び前記基準電流出力トランジスタ各々のベース端子にそのベース端子が接続されている制御トランジスタと、他の駆動回路又は前記基準電流発生回路から出力された前記基準電流と同一の電流を前記制御トランジスタに流すべく前記制御トランジスタを駆動する手段と、が更に設けられていることを特徴とするディスプレイ装置。
【請求項7】前記第2電極線の各々に順次アース電位を印加して行くと共に前記アース電位の印加されていない他の前記第2電極線の全てに所定の高電位を印加する走査回路を備えたことを特徴とする請求項6記載のディスプレイ装置。
【請求項8】前記発光素子の各々は、有機エレクトロルミネッセンス素子であることを特徴とする請求項6記載のディスプレイ装置。
【請求項9】前記駆動回路の各々は、複数のICチップ内に夫々構築されていることを特徴とする請求項6記載のディスプレイ装置。」
(2)本件補正の適否について
本件補正は、請求項の数を9から10に増加するものであって、特許法17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものに該当しない。
したがって、本件補正は、特許法17条の2第4項の規定に違反するものであり、同法159条1項において準用する同法53条の規定により却下しなければならないものである。

第3 本件出願に係る発明
本件補正は上記のとおり却下したので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年9月19日付け手続補正書及び同年12月22日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、前記本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

第4 引用刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物の一部である特開平3-125205号公報(以下「刊行物1」という。)には、図面とともに、以下のような記載がされている。
1 「〔産業上の利用分野〕本発明は、LEDプリンタ、DC形プラズマディスプレイ等に使用される多数の定電流出力端子を備えた多出力型電流供給用集積回路に関する。」(1頁左下欄17?20行)
2 「〔発明が解決しようとする課題〕上記のLED駆動用集積回路には電源VDDから基準電流I0を生成する定電流源2が含まれており、この定電流源2は抵抗等で構成されているが、半導体集積回路毎に基準電流値のバラツキが生じ易い。即ち、製造プロセス上、定電流源2の素子作り込みにバラツキが生じるため、基準電流値のバラツキが不可避的に生じる。したがって、基準電流値を補正する必要が生じるが、その補正は半導体集積回路に抵抗を外付けするもので、煩雑な調整作業を余儀なくされていた。そこで、本発明は上記問題点を解決するものであり、その課題は、外部定電流源から供給される基準電流に基づいてそれと相等しい電流を次段の集積回路に出力する基準電流生成手段を設けることにより、各集積回路毎の定電流補正を不要とした多出力型定電流供給用集積回路を提供することにある。」(2頁左上欄3?20行)
3 「〔課題を解決するための手段〕上記課題を解決するために、本発明の講じた手段は、基準電流を内部的に多出力の定電流を得るために生成するのではなく、外部から付与される基準電流を多出力の定電流の生成のために用い、しかもその基準電流に基づいてそれと相等しい電流を出力端子を介してカスケード接続されるべき次段の集積回路の基準電流入力端子へ供給する基準電流生成手段を設けたものである。例えば、この基準電流生成手段としてはカレントミラー回路で構成される。〔作用〕かかる構成によれば、外部定電流源と定電流入力端子とを接続し、次段用基準電流出力端子と次段の集積回路の基準電流入力端子とを接続したカスケード接続構造とすると、各集積回路内では入来する基準電流に基づいてカレントミラー回路等の定電流生成手段によって各定電流出力端子を介して定電流がLED等の被駆動素子に供給される。また、各集積回路内では入来する基準電流に基づいて次段の集積回路のための基準電流がカレントミラー回路等の基準電流生成手段によって生成される。特に基準電流生成手段がカレントミラー回路の場合には、入来した基準電流と出力される基準電流との値の同等性が保証される。このため、基準電流を得るための定電流源が集積回路内に作り込まれていないので、集積回路毎の定電流源による基準電流のバラツキが少なく、ただ基準電流の生成のための外部定電流源を調整するだけで済む。」(2頁右上欄1行?左下欄10行)
4 「第1図は本発明の一実施例を示す回路図である。なお、第3図に示す部分と同一部分には同一参照符号を付しその説明は省略する。本実施例に係るLED駆動用集積回路には、外部定電流源から供給される基準電流I0を受ける基準電流入力端子SINが設けられている。また、この基準電流入力端子SINを介して入来する基準電流I0と等しい定電流を得るカレントミラー回路3と、定電流出力端子T1?Tnに対して1対1に多数の定電流出力を生成するカレントミラー回路4とを備えている。トランジスタQc、Qd、Qeはカレントミラー回路5を構成しており、これは基準電流I0に基づいてそれと同等の定電流I0を生成する。生成された定電流I0は次段の集積回路の基準電流として用いられ、次段用基準電流出力端子SOUTを介して出力される。第2図は同実施例のLED集積回路の使用態様を示す回路図である。本使用例においては、3個のLED集積回路40、50、60がカスケード接続されている。第1番目の集積回路40の基準電流入力端子SINには外部の定電流源2が接続され、第1番目の集積回路40の基準電流出力端子SOUTと第2番目の集積回路50の基準電流入力端子SINとが接続されている。また第2番目の集積回路50の基準電流出力端子SOUTと第3番目の集積回路60の基準電流入力端子SINとが接続されている。外部の定電流源2から集積回路40の基準入力端子SINへ基準電流I0が供給されると、これに基づいてカレントミラー回路4が各定電流出力端子T1?Tnを介して各LEDに定電流を供給すると共に、カレントミラー回路5が次段集積回路50のための基準電流I0を生成し、これが集積回路40の基準電流出力端子SOUTを介して次段の集積回路50の基準電流入力端子SINへ供給される。このため、集積回路50も各LEDに定電流を供給すると共に、集積回路60に基準電流I0を供給する。このように、LED駆動用集積回路内には、それ自身に必要な基準電流を生成するためのカレントミラー回路ではなく、次段の集積回路に必要とされる基準電流を生成するためのカレントミラー回路5が形成されているため、各段の基準電流出力端子SOUTには相等しい値の基準電流が出力される。このため、集積回路毎の基準電流のバラツキがなく、必要な場合、外部の定電流源の基準電流I0について補正を行えば良い。従来のように集積回路内に基準電流の生成のための定電流源2を設けた場合、その定電流値の温度特性は集積回路毎でバラツキを呈するが、入力される基準電流に基づいてそれと相等しい電流を出力するカレントミラー回路が内蔵されているため、初段に入力される基準電流が変動したとしても、各段から出力される基準電流値がそれに呼応して必ず一致するので、集積回路毎の温度特性のバラツキも生じない。」(2頁左下欄14行?3頁右上欄9行)
5 「〔発明の効果〕以上説明したように、本発明は、多数の定電流出力を得るに必要な基準電流を内部的に作成せず、その基準電流を外部から受容してつつ、しかもその基準電流に基づいてそれと相等しい基準電流を次段集積回路のために作成する点に特徴を有するものであるから、次の効果を奏する。即ち、基準電流値の抵抗トリミング等を集積回路毎に行う必要がない。基準電流生成手段としてカレントミラー回路で構成した場合には、基準電流値のバラツキはカレントミラー回路の素子特性のバラツキにのみ依存するので、基準電流値のバラツキを極力抑制することができる。また、初段の集積回路には外部定電流源を接続する必要があるが、それから生成される基準電流と相等しい電流が各集積回路から作成されるので、集積回路毎の基準電流の温度特性によるバラツキは殆ど発生しない。」(3頁右上欄14行?左下欄11行)

第5 本願発明についての当審の判断
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明は、LEDプリンタ、DC形プラズマディスプレイ等に使用される多数の定電流出力端子を備えるものであるから、本願発明の「第1電極線」、「発光素子」に相当するものを有する。刊行物1に記載された定電流源2及び集積回路40から60までは、駆動を行う点で、本願発明の「駆動部」に相当する。刊行物1に記載されたDC形プラズマディスプレイは、本願発明の「ディスプレイ装置」に相当する。
刊行物1に記載されたトランジスタQ1からQnまでは、駆動電流を発生して出力する点で、本願発明の「駆動トランジスタ」に相当し、刊行物1に記載された定電流源2及び集積回路40から60までは、本願発明の「駆動回路」にも相当する。
刊行物1に記載された集積回路40のトランジスタQeは、次段用基準電流を出力するものであるから、本願発明の「基準電流出力トランジスタ」に相当し、刊行物1に記載された集積回路40のトランジスタQ0は、トランジスタQ1からQnまでのベースにそのべースが接続され制御をする点で、本願発明の「第1制御トランジスタ」に相当し、刊行物1に記載された定電流源2及び集積回路40のトランジスタQa、Qbは、本願発明の「第1制御トランジスタを駆動する手段」に相当する。
刊行物1に記載された集積回路50又は60のトランジスタQ0は、本願発明の「第2制御トランジスタ」に相当し、刊行物1に記載された集積回路50又は60のトランジスタQa、Qbは本願発明の「第2制御トランジスタを駆動する手段」に相当する。
そうすると、本願発明は、刊行物1に記載された発明と以下の一致点で一致し、以下の相違点1から3までで相違する。
一致点 「複数の第1電極線」と「発光素子」が形成され、「駆動部」からなる「ディスプレイ装置」であって、「前記駆動部は、各々が前記発光素子を発光させる発光駆動電流を発生して前記第1電極線に供給する駆動トランジスタを備えた複数の駆動回路からなり、前記駆動回路各々の内の少なくとも1には、前記発光素子を発光させる発光駆動電流を発生してこれを基準電流として出力する基準電流出力トランジスタと、前記駆動トランジスタ」の「ベース端子にそのベース端子が接続されている第1制御トランジスタと」、「電流を前記第1制御トランジスタに流すべく前記第1制御トランジスタを駆動する手段と、が更に設けられており、前記駆動回路各々の内の他の1には、前記駆動トランジスタのベース端子がそのベース端子に接続されている第2制御トランジスタと、前記基準電流を取り込みこの基準電流と同一の電流を前記第2制御トランジスタに流すべく前記第2制御トランジスタを駆動する手段と、が更に設けられている」「ディスプレイ装置」である点。
相違点1 本願発明では、複数の第1電極線と「前記第1電極線各々に交叉して配列された複数の第2電極線との各交叉部に1画素を担う」発光素子が形成されてなる「ディスプレイパネル」を有し、「前記ディスプレイパネルを発光駆動せしめる」のに対し、刊行物1に記載された発明ではこれが明確でない点。
相違点2 本願発明では第1制御トランジスタのベースに「前記基準電流出力トランジスタ」のベースが接続されているのに対し、刊行物1に記載された発明では接続が異なる点。
相違点3 本願発明では第1制御トランジスタに流す電流が「所定基準電圧に対応した」ものであるのに対し、刊行物1に記載された発明ではこれが明確でない点。
相違点1について検討すると、プラズマディスプレイ等のディスプレイにおいて複数の電極線とこれに交叉して配列された複数の電極線との各交叉部に1画素を担う発光素子が形成されたパネルを用い、このパネルを発光駆動せしめることは慣用手段であり、刊行物1に記載された発明においてこのようなパネルを用い、相違点1のようにすることは当業者が適宜に行い得ることである。
相違点2について検討すると、カレントミラー回路等の制御用のトランジスタのベースに電流を出力するためのトランジスタのベースを接続することは慣用手段であり、刊行物1に記載された発明において基準電流出力用のトランジスタのベースをカレントミラー回路の制御用トランジスタのベースに接続し、相違点2のようにすることは当業者が適宜に行い得ることである。
相違点3について検討すると、所定基準電圧に対応した定電流を得ることは慣用手段であり、刊行物1に記載された発明において定電流を所定基準電圧に対応させ、相違点3のようにすることは当業者が適宜に行い得ることである。
本願発明の奏する効果についてみても、刊行物1に記載された発明及び周知慣用の技術手段から予測し得る範囲内のものであって、格別のものではない。
したがって、本願発明は、当業者が刊行物1に記載された発明及び周知慣用の技術手段に基いて容易に発明をすることができたものである。

第6 まとめ
以上のとおりであるから、本件出願の請求項1に係る発明である本願発明は特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、その余の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-10 
結審通知日 2007-04-17 
審決日 2007-05-07 
出願番号 特願平11-219782
審決分類 P 1 8・ 574- Z (G09G)
P 1 8・ 571- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
P 1 8・ 573- Z (G09G)
P 1 8・ 572- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 橋本 直明  
特許庁審判長 瀧 廣往
特許庁審判官 山川 雅也
小川 浩史
発明の名称 ディスプレイ装置及びディスプレイパネルの駆動回路  
代理人 藤村 元彦  

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