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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1159514
審判番号 不服2005-2878  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-17 
確定日 2007-06-21 
事件の表示 特願2000-103613「電子写真用トナー、該トナーを収納した容器、該容器を搭載した画像形成装置及びトナーの補給方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月19日出願公開、特開2000-352840〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成12年4月5日(優先権主張 平成11年4月7日)の出願であって、平成17年1月6日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月22日付で手続補正がなされたものである。

II.平成17年3月22日付の手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成17年3月22日付の手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成17年3月22日付の手続補正には、特許請求の範囲の請求項1を次のように補正しようとする補正事項が含まれている。
「【請求項1】
トナーが収納された容器であって、該トナー収納容器が画像形成装置のトナー補給装置に着脱自在に取付けられ、少なくとも容器周壁内面に螺旋状のトナー案内溝を有する円筒形状であり、該トナーが、体積平均粒径が6.0μm以上、個数平均粒径の1/2倍径の累積値が10個数%以下、および体積平均粒径の1.5倍径以上の累積値が15体積%以下の、離型剤を含有するトナーであることを特徴とするトナーが収納された容器。」

上記補正事項は、補正前の請求項1の削除に伴い、請求項1に繰り上げられた補正前の請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である「トナー」について、「離型剤を含有する」との限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除及び同条同項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか、すなわち特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否かについて以下に検討する。

2.刊行物に記載された事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平8-160671号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(1a)「【請求項1】 少なくともトナーと磁性コートキャリアを有する二成分系現像剤において、…トナーは重量平均粒径が1?10μmであり、個数平均粒径(D1)の1/2倍径以下の分布累積値が20個数%以下であり、重量平均粒径(D4)の2倍径以上の分布累積値が10体積%以下であることを特徴とする二成分系現像剤。」
(1b)「【0069】本発明で使用するトナーは、重量平均粒径が1?10μm、好ましくは3?8μmの範囲であることが好適である。また、個数平均粒径の1/2倍径以下の分布累積値が20個数%以下であり、重量平均粒径の2倍径以上の分布累積値が10体積%以下であることが反転成分のない良好な帯電付与、潜像ドットの再現性等を満足させるために重要である。さらにトナーの摩擦帯電性を良好にし、ドット再現性を高めるには個数平均粒径の1/2倍径以下の分布累積値が15個数%以下であり、重量平均粒径の2倍径以上の分布累積値が5体積%以下であることがより好ましい。さらには個数平均粒径の1/2倍径以下の分布累積値が10個数%以下であり、重量平均粒径の2倍径以上の分布累積値が2体積%以下であることがさらに好ましい。」
(1c)「【0070】トナーの重量平均粒径(D4)が10μmを越えると、静電荷潜像を現像するトナー粒子が大きくなるためにいくら磁性コートキャリアの磁気力を下げても潜像に忠実な現像が行えず、また、静電的な転写を行うとトナーの飛び散りが激しくなる。また、重量平均粒径が1μm以下のトナーでは粉体としてのハンドリング性に不都合を生じる。」
(1d)「【0071】また、個数平均粒径の1/2倍径以下の分布累積値が20個数%を越えると微粒トナー粒子へのトナー帯電付与が良好に行えず、トナーのトリボ分布が広くなり、帯電不良(反転成分生成)や現像したトナーの粒径偏在化により耐久での粒径変化というの問題を生じやすい。また、重量平均粒径の2倍径以上の分布累積値が10体積%を越えると磁性コートキャリアとの摩擦帯電が良好に行えなくなるのに加え、潜像を忠実に再現しにくくなる。トナーの粒度分布の測定には、例えばコールターカウンターを使用する方法を挙げることができる。」
(1e)「【0080】トナーにはさらに熱ロール定着時の離型性を向上させる目的で…ワックス成分を添加しても良い。」
(1f)「【0113】以下に、トナー粒径の測定の具体例を示す。
【0114】電解質溶液100?150mlに界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1?5ml添加し、これに測定試料を2?20mg添加する。試料を懸濁した電界液を超音波分散器で1?3分間分散処理して、前述したコールターカウンターマルチサイザーにより17μmまたは100μm等の適宜トナーサイズに合わせたアパーチャーを用いて体積を基準として0.3?40μmの粒度分布等を測定するものとする。この条件で測定した個数平均粒径、重量平均粒径をコンピュータ処理により求め、さらに個数基準の粒度分布より個数平均粒径の1/2倍径累積分布以下の累積割合を計算し、1/2倍径累積分布以下の累積値を求める。同様に体積基準の粒度分布より重量平均粒径の2倍径累積分布以上の累積割合を計算し、2倍径累積分布以上の累積値を求める。」
(1g)実施例1には、重量平均粒子径が6.4?6.9μm、個数平均粒径の1/2倍径以下の分布累積値が6.7?9.9個数%、重量平均粒径の2倍径以上の分布累積値が0体積%であるイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナー、ブラックトナーが記載されている(【表1】)。

(2)原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平10-39549号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されている。
(2a)「【請求項32】 トナーは重量平均粒径が1?10μmであり、個数平均粒径(D1)の1/2倍径以下の個数分布の分布累積値が20個数%以下であり、重量平均粒径(D4)の2倍径以上の体積分布累積値が10体積%以下であり、かつ形状係数SF-1が100?140である請求項31の二成分系現像剤。」
(2b)「【請求項35】 トナー粒子はコア/シェル構造を有する請求項31乃至34のいずれかの二成分系現像剤。
【請求項36】 コア部が低軟化点物質で形成され、該低軟化点物資の融点が40?90℃である請求項31乃至35のいずれかの二成分系現像剤。
【請求項37】 低軟化点物質はトナー粒子中に5?30重量%含有されている請求項36の二成分系現像剤。」
(2c)「【0075】トナーは、重量平均粒径が1?10μm、好ましくは3?8μmの範囲であることが好適である。さらに、トナーは個数平均粒径の1/2倍径以下の個数分布累積値が20個数%以下であり、重量平均粒径の2倍径以上の体積分布累積値が10体積%以下であることが反転成分のない良好な帯電付与、潜像ドットの再現性を満足するために好ましい。さらにトナー帯電性を良好にし、ドット再現性や転写効率を高めるには個数平均粒径の1/2倍径以下の分布累積値が15個数%以下であり、重量平均粒径の2倍径以上の分布累積値が5体積%以下であることがより好ましい。さらには個数平均粒径の1/2倍径以下の分布累積値が10個数%以下であり、重量平均粒径の2倍径以上の分布累積値が2体積%以下であることがより好ましい。」
(2d)「【0076】トナーは重量平均粒径が10μmを越えると、潜像を現像する粒子1個が大きくなるために磁性キャリアの磁気力を下げても潜像に忠実な現像が困難になり、また、静電的な転写を行うとトナーが飛び散りやすい。また、トナーの重量平均粒径が1μm以下では粉体としてのハンドリング性に不都合を生じやすい。」
(2e)「【0077】トナーは、個数平均粒径の1/2の倍径以下の個数分布累積値が20個数%を越えると微小トナー粒子への帯電付与が良好に行えず、トナーのトリボ分布が広くなり、帯電不良(反転成分生成)や多数枚耐久中で現像器内のトナーの粒径変化が生じやすい。また、トナーは重量平均粒径の2倍径以上の体積分布累積値が10体積%を越えるとキャリアとの摩擦帯電が均一におこないにくく、潜像を忠実に再現できにくくなる。トナーの粒度分布の測定には、例えばレーザー走査型粒度分布計のCIS-100(GALAI社製)を使用する方法を挙げることができる。」
(2f)「【0157】以下に、トナーの粒径測定の具体例を示す。純水100?150mlに界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸塩)を0.1?5ml添加し、これに測定資料を2?20mgを添加する。資料を懸濁した電解液を超音波分散器で1?3分間分散処理して、レーザースキャン粒度分布アナライザーCIS-100(GALAI社製)を用いて粒度分布を測定する。本発明では0.5μm?60μmの粒子を測定して、この条件で測定した個数平均粒径、重量平均粒径をコンピュータ処理により求め、さらに個数基準の粒度分布より個数平均粒径の1/2倍径累積分布以下の累積割合を計算し、1/2倍径累積分布以下の累積値を求める。同様に体積基準の粒度分布より重量平均粒径の2倍径累積分布以上の累積割合を計算し、2倍径累積分布以上の累積値を求める。」
(2g)重合トナーの製造例Bには、モノマー、着色剤、荷電制御剤、極性レジン、低軟化点物質(離型剤)を材料として生成したシアントナー粒子Bは、重量平均径(D4)が約7.9μmであり、個数平均粒径(D1)が6.2μmであり、個数平均粒径の1/2倍径以下の粒径のトナー粒子の個数分布累積値が9.0個数%であり、重量平均粒径の2倍径以上の粒径のトナー粒子の体積分布累積値が0.1体積%であることが記載されている(【0162】?【0164】、【0168】?【0169】)

(3)原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平7-20705号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。
(3a)「【請求項25】現像部への現像剤導入部と連通し、かつ現像剤収納容器を、その開口部を該現像剤導入部に向けて保持する容器保持手段と、該収納容器を回転駆動する駆動手段とを備えてなる画像形成装置の現像剤補給装置に用いる、現像剤収納容器おいて、該開口部を、該収容器の一端壁に、該一端壁における肩部内面の最大径よりも小さな径になるように形成し、該肩部内面の一部を、該開口部の径よりも大きい径の該肩部内面部分から該開口部の縁まで迫り出した迫り出し形状にしたことを特徴とする現像剤収納容器。」
(3b)「【請求項29】周壁内面に螺旋状の現像剤案内溝を備えた円筒形状であって、該現像剤案内溝に連続させて上記斜面形状又は上記凹形状の容器周壁内面部分を形成したことを特徴とする請求項27又は28の現像剤収納容器。」
(3c)【0004】?【0005】「本発明者らは、このような問題点を解決すべく、容器載置ホルダーを水平な状態にしたまま現像剤円筒状容器を交換する機構を検討した。…本発明は、現像剤収納容器の回転に基づいて、画像形成装置本体の現像器中へ、その中に充填された現像剤の全てを供給することかできる現像剤収納容器を提供することを目的とする。」
(3d)トナーボトル周壁に、図24(a)の周壁内面の部分断面図に示すような案内溝を設定すれば、トナーボトル21の回転時に内壁面部からトナーが落ち易く、内壁面部への付着によるトナー残りを減少させることができる(【0059】、図24(a)?(c))。
(3e)「【0112】また、請求項29の現像剤収納容器においては、…現像剤収納容器の回転によりこの螺旋状の案内溝で、上記肩部近傍に逐次現像剤が案内されるので、この開口部からの現像剤の吐出性を一層安定させることができる。」

3.対比・判断
上記摘記事項(3a)?(3e)より、刊行物3には、下記の発明(以下、「刊行物3発明」という。)が記載されている。
「画像形成装置の現像剤補給装置に用いる、現像剤が収納された現像剤収納容器おいて、当該補給装置は当該容器を交換する機構を有し、当該容器周壁内面に螺旋状の現像剤案内溝を備えた円筒形状である現像剤収納容器。」

そこで、本願補正発明と刊行物3発明とを対比すると、後者における「現像剤補給装置」、「現像剤」、「現像剤収納容器」、「現像剤案内溝」は、それぞれ前者における「トナー補給装置」、「トナー」、「トナー収納容器」、「トナー案内溝」に相当する。
また、後者における「当該補給装置は当該容器を交換する機構を有」する点は、現像剤収納容器が現像剤補給装置に着脱自在に取付けられることを意味する。
してみると、本願補正発明と刊行物3発明は、
「トナーが収納された容器であって、該トナー収納容器が画像形成装置のトナー補給装置に着脱自在に取付けられ、少なくとも容器周壁内面に螺旋状のトナー案内溝を有する円筒形状であるトナーが収納された容器。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
トナーについて、本願補正発明では、「体積平均粒径が6.0μm以上、個数平均粒径の1/2倍径の累積値が10個数%以下、および体積平均粒径の1.5倍径以上の累積値が15体積%以下の、離型剤を含有するトナーである」と特定しているのに対して、刊行物3発明では、トナーについて具体的な特定がない点。

そこで、相違点について検討する。
そもそも刊行物3発明において、容器内に収納されるトナーは、画像形成装置の現像部に補給されて、画像形成に供されるものである。
そして、粒径の測定方法は、コールターカウンターであったり、レーザー走査型粒度分布計であったりするものの、良好な画像形成特性を示すトナーとして、重量平均粒径が1?10μmであり、個数平均粒径の1/2倍径以下の個数分布の分布累積値が15個数%以下であり、重量平均粒径の2倍径以上の体積分布累積値が5体積%以下である、いわゆるシャープな粒度分布のトナーが挙げられる点は、刊行物1,2に記載されているように、本願優先権主張日前に周知の事項であり(1b、1d、1f、1g、2c、2e、2f参照)、粒径の測定方法の相違や、平均粒径を重量平均粒径で表現するか体積平均粒径で表現するかによって、粒度分布がシャープであることに影響を及ぼすものではない。
また、このようなシャープな粒度分布のトナーに離型剤を含有させる点も、刊行物1,2に記載されており、特に刊行物2の実施例には、上記粒度分布の範囲内であって、離型剤を含有したトナーが具体的に記載されている(1e、2b、2g参照)。
一方、刊行物3発明の容器は、その中に充填されたトナーの全てを供給することができることを目的としている(3c?3e参照)。
よって、刊行物3発明において、容器内に充填されたトナーとして、画像形成特性が良いことに加え、排出性の良いものを選択することは、当業者が当然配慮すべきことである。
そして、刊行物1、2には、重量平均粒径が1μm以下のトナーでは粉体としてのハンドリング性に不都合を生じる点が記載され(1c、2d参照)、更に例えば、特開平3-172858号公報の第3頁右下欄第9行?第4頁左上欄第3行には、「本発明者らの検討によれば、5μm以下のトナー粒子が、潜像の微小ドットを明確に再現し、且つ潜像全体への緻密なトナーののりの主要なる機能を持つことが知見された。…しかしながら、トナー粒径を小さくして、5μm以下のトナー粒子を多くしていくと、トナー自身の凝集性が高まり、…トナーの流動性の低下という問題が発生してしまう。」と記載され、特開平4-42234号公報の第2頁左上欄第10行?同頁右上欄第5行には、「トナーには静電潜像を忠実に再現することが要求されるが、そのためには、トナーの平均粒径が小さく、かつ粒度分布が揃っていることが必要である。…しかしながら、この粉砕法で得られるトナーは、その形状が角の多い不定形であるため、得られるトナーが絶縁性トナーのときは、トナーの平均粒径が小さくなるにつれて、トナーの粉体としての流動性が極端に悪化し、平均粒径5μm以下では現像器内部での凝集やブロッキング、トナー補給時の詰まりなどが発生し事実上使用できなかった。」と記載され、特開平4-140758号公報の第2頁右下欄第4?13行には、「近年、複写機の高精細、高画質化の要求が市場では高まっており、当該技術分野では、トナーの粒径を細かくして高画質カラー化を達成しようという試みがなされているが、粒径が細かくなると単位重量当りの表面積が増え、トナーの帯電気量が大きくなる傾向にあり、画像濃度薄や、耐久劣化が懸念されるところである。加えてトナーの帯電気量が大きいために、トナー同士の付着力が強く、流動性が低下し、トナー補給の安定性や補給トナーへのトリボ付与に問題が生じてくる。」と記載されているように、小粒径のトナーは、良好な画像形成特性を示す一方で、あまり粒径が細かくなると、トナー補給が安定して行えない等の取り扱い性が困難になることは、本願優先権主張日前に周知の事項である。
してみれば、刊行物1,2に記載されたような、良好な画像形成特性を示すシャープな粒度分布のトナーにおいて、トナー補給の安定性を阻害する小粒径部分が少なくなるように、その平均粒径が比較的大粒径側のものを選択し、刊行物3発明の容器に収納するトナーを、体積平均粒径が6.0μm以上、個数平均粒径の1/2倍径の累積値が10個数%以下、および体積平均粒径の1.5倍径以上の累積値が15体積%以下の、離型剤を含有するトナーであると特定することは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願明細書記載の実施例・比較例を検討すると、比較例1,2には、小粒径側のトナーが比較的多いと、トナーの排出性が悪くなることが示されており、これは、上記刊行物1,2,及び周知技術により、容易に予測できる程度の効果である。
また、比較例3には、大粒径側のトナーが比較的多くても、トナーの排出残量が許容範囲の上限値50gよりも多い53gで、トナー排出性は実施例のものより若干悪くなることが示されているが、実施例5の排出残量49gに比較して、格段にトナー排出性が悪いものともいえない。
しかも、実施例には、同じ粒度分布のトナーであっても、流動性向上剤の添加量を増やすことによって、流動性が向上し、トナー排出性が良好になることが示されていることから、トナーの粒度分布のみを特定することによって、トナー排出性が決まるわけではない。
よって、本願補正発明において、容器に収納するトナーを、体積平均粒径が6.0μm以上、個数平均粒径の1/2倍径の累積値が10個数%以下、および体積平均粒径の1.5倍径以上の累積値が15体積%以下の、離型剤を含有するトナーであると特定したことによる効果は、格別顕著な効果ではない。

したがって、本願補正発明は、刊行物1ないし3に記載された発明、及び本願優先権主張日前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

III.本願発明について
1.本願の請求項に係る発明
平成17年3月22日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明2」という。)は、平成16年1月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項2】 トナーが収納された容器であって、該トナー収納容器が画像形成装置のトナー補給装置に着脱自在に取り付けれら、少なくとも容器周壁内面に螺旋状のトナー案内溝を有する円筒形状であり、該トナーが、体積平均粒径が6.0μm以上、個数平均粒径の1/2倍径の累積値が10個数%以下、および体積平均粒径の1.5倍径以上の累積値が15体積%以下であることを特徴とするトナーが収納された容器。」

2.刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平8-160671号公報(以下、「刊行物1」という。)、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平10-39549号公報(以下、「刊行物2」という。)、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平7-20705号公報(以下、「刊行物3」という。)には、前記II.2に記載したとおりの事項が記載されている。

3.対比・判断
本願発明2は、前記II.1で検討した本願補正発明から、「トナー」の限定事項である「離型剤を含有する」との構成を省いたものである。
そうすると、本願発明2の発明特定事項を全て含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記II.3に記載したとおり、刊行物1ないし3に記載された発明、及び本願優先権主張日前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明2も、同様の理由により、刊行物1ないし3に記載された発明、及び本願優先権主張日前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

IV.むすび
以上のとおり、本願発明2は、刊行物1ないし3に記載された発明、及び本願優先権主張日前の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-12 
結審通知日 2007-04-17 
審決日 2007-05-07 
出願番号 特願2000-103613(P2000-103613)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 575- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 淺野 美奈  
特許庁審判長 岡田 和加子
特許庁審判官 中澤 俊彦
福田 由紀
発明の名称 電子写真用トナー、該トナーを収納した容器、該容器を搭載した画像形成装置及びトナーの補給方法  
代理人 伊東 忠彦  

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