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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
管理番号 1159726
審判番号 不服2006-8146  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-27 
確定日 2007-06-21 
事件の表示 特願2003- 33085「監視システム及び監視方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月27日出願公開、特開2003-240318〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成10年2月13日に出願した特願平10-30859号の一部を分割して出願した特願2000-118481号の一部を更に分割して平成15年2月12日に出願したものであって、その請求項1に係る発明は、平成18年9月25日付けの手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認められる(以下、「本願発明」という。)。

「冷凍サイクルが用いられる空気調和機の監視システムにおいて、前記空気調和機は前記空気調和機の異常発生情報や運転状態を示す情報を遠隔監視装置に送信する監視装置を備え、前記異常発生情報や運転状態を示す情報は前記遠隔監視装置で運転情報データベースとして記憶され、前記運転情報データベースに記憶された空気調和機の異常発生情報や運転状態を示す情報は前記遠隔監視装置でWWWブラウザで見ることのできるHTML形式のデータに変換され、前記遠隔監視装置は前記変換されたHTML形式のデータをインターネットを介してTCP/IPによって端末装置に送信することを特徴とする監視システム。」

2.引用例

当審の拒絶の理由に引用した特開平9-26237号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の記載がある。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、居住用建築物および産業用建築物(総称してビルという)に設けられている複数の冷凍機を中央管理設備によって自動的に、かつ遠隔的に集中管理する方法、および、上記方法を実施するための装置に関するものである。」

・「【0008】
【発明の実施の形態】次に、図1ないし図3を順次に参照しつつ、本発明の実施例を説明する。図2は本発明に係る遠隔集中管理方法を実施するために構成した本発明装置の1実施例を示す全体的な系統図である。多数のビルBにはそれぞれ冷凍機が設けられている。本図においしては3つのビルB1,B2,B3を図示した。これらのビルに設けられている冷凍機のそれぞれに対して端末装置1が付設されている。これら多数の端末装置を管轄するために1基の中央監視装置11が設置されている。」

・「【0010】端末装置1は1分間ごとに運転データセンサ群2の出力信号a?g、および、運転状態信号群3の各信号r?zをサンプリングし、演算装置8に予めプログラミングされている診断式を用いて運転状態の良否を判定する。」

・「【0016】(中略)上記の診断式によって「故障」または「故障の兆候」が判定されたならば、初期登録された中央監視装置11の電話回線制御装置17の電話番号を自動的にダイアリングし、異常もしくは異常兆候の発生時刻、および、上記発生時刻から遡って所定期間分の運転データa?hと運転状態信号r?v、並びに、先に述べた抽気作動の集計回数、および積算起動回数や運転のべ時間などを、該中央監視装置11のコンピュータ12に送り込む。」

・「【0018】中央監視装置11のコンピュータ12には端末装置との通信手順および異常時対応手順がプログラミングされていて、冷凍機に異常もしくは異常兆候を生じた旨、または停電・復電の報告を受けたとき、上記のプログラミングに従って受信警告灯16を点灯させ、受信内容をディスプレー13に表示し、受信内容を補助記憶装置14に格納するとともに、冷凍機メンティナンスの担当技術者への通報等、一連の受信時動作を自動的に遂行する。(中略)さらに、中央監視装置11のコンピュータ12は、端末装置1の演算制御部8よりも高度の解析を行なうことができ、メンティナンス担当技術者が故障の個所およびその程度を即座に判断し得る正確で詳細な技術資料を算出することができる。」

・「【0019】また、前記の中央監視装置11は端末装置1にデータを報告させる手順をプログラミングされており、該端末装置1と交信して、記憶装置部7が保持しているデータを読み出すことができる。前記の携帯用コンピュータ18は端末機1と直接に交信して、若しくは中央監視装置11を介して交信して、記憶装置7が保持しているデータを読み出すことができる。」

・「【0020】中央監視装置11が端末装置から異常発生信号を受信して担当サービス技術者20に通報したとき、該技術者20が中央監視装置11から離れている場合は、例えばポケベル21で呼び出された技術者20は、携帯用コンピュータ19とモデム22とを用い、一般の電話回線5を介して、中央監視装置11からの交信と同様に端末装置1と交信して異常対応処置を補完することができる。(注)先に述べたように、中央監視装置11のコンピュータ12は高度の解析機能を有し、かつ、一般的な対応処理の手順をプログラミングされているので、上記の技術者20は、通常、中央監視装置11の処理結果を確認すれば足りる。」

・「0021】
【発明の効果】本発明の方法を適用すると、端末機に設けられている演算制御部の中へ、冷凍機を構成している機器類の主要個所、および作動流体の温度,圧力などの物理量が入力されて、これらの相関関係を自動的に判定される。判定の結果、異常有りとされた場合は、その旨、及び端末装置部に記憶されていた技術情報が中央監視装置に送られて解析され、表示されるので、担当技術者は即座に異常の発生を知るのみでなく、異常の個所、および異常の状態およびその程度を知ることができ、所要補給部品および補助資材の手配、および、携行すべき特殊工具・計測器類の準備を即座に決定することができる。」

また、「故障」または「故障の兆候」が判定されたとき、中央監視装置11のコンピュータ12に送り込まれる、「異常もしくは異常兆候の発生時刻、および、上記発生時刻から遡って所定期間分の運転データa?hと運転状態信号r?v」(段落0016)、もしくは、このような情報を中央監視装置11のコンピュータ12に送り込むこと自体が、異常発生情報や運転状態を示す情報といえる。

さらに、中央監視装置の補助記憶装置に格納される「異常もしくは異常兆候の発生時刻、および、上記発生時刻から遡って所定期間分の運転データa?hと運転状態信号r?v」は、運転情報データベースとして記憶されるものといえる。

加えて、この引用例に記載された「複数の冷凍機を中央管理設備によって自動的に、かつ遠隔的に集中管理する方法、および、上記方法を実施するための装置」(段落0001)は、空気調和機の監視システムといえる。

したがって、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用例発明」という。)。

「冷凍サイクルが用いられる空気調和機の監視システムにおいて、前記空気調和機は前記空気調和機の異常発生情報や運転状態を示す情報を中央監視装置に送信する端末装置を備え、前記異常発生情報や運転状態を示す情報は前記中央監視装置で運転情報データベースとして記憶されるとともにディスプレーに表示され、担当サービス技術者が中央監視装置から離れている場合はポケベルで呼び出し、ポケベルで呼び出された技術者は携帯用コンピュータとモデムを用いて中央監視装置や端末装置と交信する監視システム。」

3.対比

本願発明と引用例発明とを対比する。

引用例発明の「中央監視装置」は本願発明の「遠隔監視装置」に相当し、同様に、「端末装置」は「監視装置」に相当するから、

両者は、

「冷凍サイクルが用いられる空気調和機の監視システムにおいて、前記空気調和機は前記空気調和機の異常発生情報や運転状態を示す情報を遠隔監視装置に送信する監視装置を備え、前記異常発生情報や運転状態を示す情報は前記遠隔監視装置で運転情報データベースとして記憶される監視システム。」

の点で一致し、次の点で相違する。

[相違点]
本願発明では、「前記運転情報データベースに記憶された空気調和機の異常発生情報や運転状態を示す情報は前記遠隔監視装置でWWWブラウザで見ることのできるHTML形式のデータに変換され、前記遠隔監視装置は前記変換されたHTML形式のデータをインターネットを介してTCP/IPによって端末装置に送信する」のに対して、引用例発明では、「空気調和機の異常発生情報や運転状態を示す情報はディスプレーに表示され、担当サービス技術者が中央監視装置から離れている場合はポケベルで呼び出し、ポケベルで呼び出された技術者は携帯用コンピュータとモデムを用いて中央監視装置や端末装置と交信する」点。

4.判断

上記相違点について検討する。

各種の情報をWWWブラウザで見ることのできるHTML形式のデータに変換してWebサーバーに蓄積し、この蓄積されたHTML形式のデータをインターネットを介してTCP/IPによって端末装置から閲覧すること(以下、「インターネット技術」という。)は、本願の出願日である平成10年2月13日以前に広く行われていたことである。

そして、Webサーバーに蓄積されたデータを端末装置から閲覧すると、結果的にデータが端末装置に「送信」されるといえることから、前記インターネット技術において、「端末装置から閲覧する」は、「端末装置に送信する」と言い換えることができる。

しかも、本願明細書には、「異常発生情報や運転状態を示す情報」の「送信」に関して、「定時情報の送信あるいは異常発生情報を連絡する」(段落0012)としか記載されていないが、この「定時情報」は、「監視装置2は、定期的に空気調和機の運転情報(異常情報等を含む場合有り)又は不定期に異常発生情報(異常内容等を含む)を通信回線3を介して、遠隔監視装置5に送信する。」(段落0013)との記載等から、運転情報と同義であると認められるところ、この「運転情報」は、「監視拠点端末装置8から閲覧ソフト(WWWブラウザ機能のあるソフト)を使用して、遠隔監視装置5のWWWページ(ホームページ)にアクセスし認証を受けた後、運転状況を監視する空気調和機1を指定し、監視する運転情報を指示する。指示を受けた遠隔監視装置5は空気調和機運転情報データベース6aを検索し、対象のデータをWWWブラウザで見ることのできるHTML形式のデータに直接変換し、ホームページ上に表示する。」(段落0017)との記載等からして、WWWページ(ホームページ)に表示されたところを閲覧するものであることから、本件明細書においても、「送信」と「閲覧」とは同義で用いられているということができる。

また、引用例発明において、「携帯用コンピュータ18は端末機1と直接に交信して、若しくは中央監視装置11を介して交信して、記憶装置7が保持しているデータを読み出す」(段落0019)ように、ポケベルで呼び出された技術者が携帯用コンピュータとモデムを用いて中央監視装置や端末装置と交信することにより、中央監視装置から離れているため見ることのできない空気調和機の異常発生情報や運転状態を、必要に応じて入手しうることは、当業者にとって明らかなことである。

したがって、引用例発明において、中央監視装置から離れている担当サービス技術者を呼び出し、また、この技術者が空気調和機の異常発生情報や運転状態を示す情報を必要に応じて入手できるように、前記従来周知のインターネット技術を用いて、前記相違点に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

さらに、仮に、前記「送信」の意味が文字どおりの送信の意味であって、「閲覧」とは同義でないとしても、インターネット技術を用いて、異常発生情報や運転状態を示す情報を端末装置から閲覧することが容易に想到できるのであるから、インターネット技術を用いて、これらの情報を端末装置に送信することも、具体的な方法はともかく(本願明細書にもこれらの情報を送信する具体的な方法は記載されていない。)、当業者が容易に想到し得たことといえる。

そして、本願明細書には、「【0025】 さらに、遠隔監視装置5に収集した空気調和機1の運転状態を示す情報を各端末機(ユーザ端末装置7、監視拠点端末装置8)からインターネット4経由で共有化でき、情報の有効活用が図れるため、」、また「【0030】 さらに、遠隔監視装置は一箇所に集中して設けられていても空気調和機が設置された場所の近くにある各営業拠点などで空気調和器の運転情報を共有しながら運転制御を行うことができる。」と、本願発明の作用効果が記載されているが、多くの人々が同じ情報に同時にアクセスできるということが、インターネット技術の固有の作用効果として従来から知られていたことから、本願発明の前記作用効果は、インターネット技術を用いることにより予測できた範囲内のものということができる。

また、本願発明のその他の作用効果についても、引用例に記載された事項、及び従来周知のインターネット技術から、当業者が予測できた範囲内のものである。

5.むすび

本願発明は、引用例に記載された発明、及び、従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-19 
結審通知日 2007-04-24 
審決日 2007-05-08 
出願番号 特願2003-33085(P2003-33085)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 河野 俊二槙原 進荘司 英史  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 岡本 昌直
佐野 遵
発明の名称 監視システム及び監視方法  
代理人 井上 学  
代理人 井上 学  

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