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審決分類 審判 査定不服 特29条特許要件(新規) 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1159851
審判番号 不服2003-8060  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-08 
確定日 2007-06-29 
事件の表示 特願2000-73457「商品取引信用補完システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年9月28日出願公開、特開2001-266031〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成12年3月16日の出願であって、平成14年12月4日付けで拒絶理由通知がなされ、15年3月31日付けで拒絶の査定がなされたところ、この拒絶の査定を不服として、同年5月8日に審判請求がなされるとともに同日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成15年5月8日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年5月8日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1 本件補正
平成15年5月8日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、本件補正前の
「【請求項1】売り手と買い手の間での商品引渡し及び代金支払いを含む商品取引における安全を確保する商品取引信用補完システムにおいて、
銀行が、前記買い手から入金される資金を保管するための口座を設け、
前記売り手、前記買い手及び前記銀行との間で前記商品取引に係る情報を送受し処理しかつ保存するマーケット運営機関が、前記買い手からの購入申込みに応じて、請求金額情報を含む請求書及び明細データを作成し、作成された前記請求書及び明細データを前記買い手及び前記銀行に送り、
前記買い手により資金が入金されたことに応じて、該入金された資金が前記請求書及び明細データに含まれる情報と一致するか否かを判断する突合せ処理を実行し、
前記突合せ処理の結果、一致する場合は該資金が前記口座にて保管されると共に、前記マーケット運営機関が商品発送を指示し、
前記発送された商品の納品完了後、前記マーケット運営機関は、前記銀行に対し検収完了を通知し、
前記銀行は、前記検収完了の通知に応じて、保管している前記資金から前記売り手に対して商品代金を支払うことを特徴とする
商品取引信用補完システム。
【請求項2】前記マーケット運営機関が前記買い手へ前記請求書及び明細データを送る際に、前記買い手が前記銀行へ資金を入金するための口座番号情報を含めることを特徴とする請求項1に記載の商品取引信用補完システム。
【請求項3】前記突合せ処理が、前記銀行もしくは前記マーケット運営機関のいずれかにより、または、前記銀行行及び前記マーケット運営機関の双方により実行されることを特徴とする請求項1または2に記載の商品取引信用補完システム。
【請求項4】前記マーケット運営機関は、前記売り手及びその商品に関する情報を予め格納したデータベースを有し、該データベースから情報を取り出すことにより前記請求書及び明細データを作成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の商品取引信用補完システム。
【請求項5】前記銀行が保管している前記資金から前記売り手に対して商品代金を支払うに先立って、前記銀行または前記マーケット運営機関のいずれかが、該売り手への資金移動データを作成することを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の商品取引信用補完システム。
【請求項6】前記資金移動データと併せて該資金移動に関わる支払い明細データを作成することを特徴とする請求項5に記載の商品取引信用補完システム。
【請求項7】前記銀行が保管している前記資金から前記マーケット運機関へ手数料を支払うに先立って、前記銀行または前記マーケット運営機関のいずれかが、該マーケット運営機関への資金移動データを作成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の商品取引信用補完システム。
【請求項8】前記売り手から前記買い手への商品発送の際に物流業者に依頼する場合、該物流業者は該買い手への納品後に前記マーケット運営機関へ受取完了通知を送ることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の商品取引信用補完システム。
【請求項9】前記銀行が保管している前記資金から前記物流業者へ運賃を支払うに先立って、前記銀行または前記マーケット運営機関のいずれかが、該物流業者への資金移動データを作成することを特徴とする請求項8に記載の商品取引信用補完システム。
【請求項10】前記売り手が複数であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の商品取引信用補完システム。
【請求項11】前記突合せ処理の結果、一致しない場合は、前記入金された資金を、前記銀行と前記マーケット運営機関の間で予め取り決められた口座に移すと共に前記買い手への照会を実行することを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の商品取引信用補完システム。
【請求項12】前記買い手が、納品された商品を返品する場合は、前記マーケット運営機関へその旨を通知し、該マーケット運営機関は前記銀行へ前記資金の返却を依頼し、前記銀行は該資金を該買い手へ返却することを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の商品取引信用補完システム。
【請求項13】前記売り手または前記買い手のいずれかが、海外に所在することを特徴とする請求項1乃至12のいずれかに記載の商品取引信用補完システム。
【請求項14】前記買い手から前記銀行へ入金する際に、銀行振込、クレジットカード、コンビニエンスストア支払い、口座振替、代引き、郵便振替または電子マネー等の支払いのいずれかを利用することを特徴とする請求項1乃至13に記載の商品取引信用補完システム。
【請求項15】前記銀行が、前記買い手の債務を引き受けることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の商品取引信用補完システム。
【請求項16】前記銀行が、前記買い手からの入金を信託管理することを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の商品取引信用補完システム。」
から、本件補正後の
「【請求項1】売り手と買い手の間での商品引渡し及び代金支払いを含む商品取引における安全を確保する商品取引信用補完システムにおいて、
銀行処理装置が、前記買い手から入金される資金を保管するための口座を設け、
前記売り手、前記買い手及び前記銀行との間で前記商品取引に係る情報を情報通信ネットワークにより送受し処理しかつ保存するマーケット運営企業処理装置が、前記買い手からの購入申込みに応じて、請求金額情報を含む請求書及び明細データを作成し、作成された前記請求書及び明細データを前記買い手及び前記銀行に送り、前記買い手により資金が入金されたことに応じて、該入金された資金が前記請求書及び明細データに含まれる情報と一致するか否かを判断する突合せ処理を実行し、
前記突合せ処理の結果、一致する場合は前記銀行処理装置が該資金を前記口座にて保管し、
前記マーケット運営企業処理装置が商品発送を指示し、前記発送された商品の納品完了後、前記銀行処理装置に対し検収完了を通知し、
前記銀行処理装置は、前記検収完了の通知に応じて、保管している前記資金から前記売り手に対して商品代金を支払う処理を実行する場合に、
前記マーケット運営企業処理装置が前記買い手へ前記請求書及び明細データを送る際に、前記買い手が前記銀行へ資金を入金するための、当該件の入金のためにのみ用いられる口座について採番された口座番号情報を含めることを特徴とする商品取引信用補完システム。
【請求項2】前記突合せ処理が、前記銀行処理装置もしくは前記マーケット運営企業処理装置のいずれかにより、または、前記銀行処理装置及び前記マーケット運営企業処理装置の双方により実行されることを特徴とする請求項1に記載の商品取引信用補完システム。
【請求項3】前記マーケット運営企業処理装置は、前記売り手及びその商品に関する情報を予め格納したデータベースを有し、該データベースから情報を取り出すことにより前記請求書及び明細データを作成することを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の商品取引信用補完システム。
【請求項4】前記銀行処理装置が保管している前記資金から前記売り手に対して商品代金を支払うに先立って、前記銀行処理装置または前記マーケット運営企業処理装置のいずれかが、該売り手への資金移動データを作成することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の商品取引信用補完システム。
【請求項5】前記資金移動データと併せて該資金移動に関わる支払い明細データを作成することを特徴とする請求項4に記載の商品取引信用補完システム。
【請求項6】前記銀行処理装置が保管している前記資金から前記マーケット運営企業へ手数料を支払うに先立って、前記銀行処理装置または前記マーケット運営企業処理装置のいずれかが、該マーケット運営企業への資金移動データを作成することを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の商品取引信用補完システム。
【請求項7】前記銀行処理装置が保管している前記資金から物流業者へ運賃を支払うに先立って、前記銀行処理装置または前記マーケット運営企業処理装置のいずれかが、該物流業者への資金移動データを作成することを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の商品取引信用補完システム。
【請求項8】前記突合せ処理の結果、一致しない場合は、前記入金された資金を、前記銀行処理装置が予め取り決められた口座に移すと共に前記マーケット運営企業処理装置が買い手への照会を実行することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の商品取引信用補完システム。
【請求項9】前記買い手が、納品された商品を返品する場合は、前記マーケット運営機関へその旨を通知し、該マーケット運営企業処理装置は前記銀行処理装置へ前記資金の返却を依頼し、前記銀行処理装置は該資金を該買い手へ返却することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の商品取引信用補完システム。」
と補正された。
本件補正前と本件補正後の特許請求の範囲の各請求項の記載からみて、本件補正後の請求項1は本件補正前の請求項2を補正したものと認められ、該補正は本件補正前の請求項2に記載された発明を特定する事項である「前記買い手が前記銀行へ資金を入金するための口座番号情報」を「前記買い手が前記銀行へ資金を入金するための、当該件の入金のためにのみ用いられる口座について採番された口座番号情報」と限定するものであるから、該補正を含む補正後の請求項1に係る本件補正は特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 特許法第29条第1項柱書について
本願補正発明は、「オープンな市場において任意の売り手と買い手の間で互いの信用度を把握できない場合であっても、代金の不払いや商品が引き渡されない等のリスクを極力回避でき、安全かつ効率的な取引を確保できる」(本願明細書の【発明の詳細な説明】の【発明が解決しようとする課題】の段落【0006】)ことを目的とした商品取引信用補完システムであり、機器等に対する制御又は制御に伴う処理を具体的に行うものではなく、また、対象の物理的性質又は技術的性質に基づく処理を具体的に行うものでもない。
そして、本願補正発明の「商品取引信用補完システム」を構成する「銀行処理装置」及び「マーケット運用企業処理装置」は実質的にはコンピュータであると認められるので、本願補正発明は、その実施にソフトウェアを必要とする発明、すなわち、コンピュータ・ソフトウェア関連発明である。
このコンピュータ・ソフトウェア関連発明が、特許法第2条第1項で特許法での「発明」の定義としていうところの「自然法則を利用した技術的思想の創作」であるのは、発明がそもそも一定の技術的課題を達成できる具体的なものになっていなければならないことから、ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されている場合であり、そのためには、ソフトウェアとハードウェア資源とが協働した具体的手段によって、使用目的に応じた情報の演算又は加工を実現することにより、使用目的に応じた特有の情報処理装置又はその動作方法が構築されていることが提示されている必要がある。

そこで、本願補正発明が、「ソフトウェアによる情報処理がハードウェア資源を用いて具体的に実現されたもの」であるかについて、本件補正後の請求項1の記載を便宜上以下のように分けて検討する。
(a)売り手と買い手の間での商品引渡し及び代金支払いを含む商品取引における安全を確保する商品取引信用補完システムにおいて、
(b)銀行処理装置が、前記買い手から入金される資金を保管するための口座を設け、
(c)前記売り手、前記買い手及び前記銀行との間で前記商品取引に係る情報を情報通信ネットワークにより送受し処理しかつ保存するマーケット運営企業処理装置が、前記買い手からの購入申込みに応じて、請求金額情報を含む請求書及び明細データを作成し、作成された前記請求書及び明細データを前記買い手及び前記銀行に送り、前記買い手により資金が入金されたことに応じて、該入金された資金が前記請求書及び明細データに含まれる情報と一致するか否かを判断する突合せ処理を実行し、
(d)前記突合せ処理の結果、一致する場合は前記銀行処理装置が該資金を前記口座にて保管し、
(e)前記マーケット運営企業処理装置が商品発送を指示し、前記発送された商品の納品完了後、前記銀行処理装置に対し検収完了を通知し、
(f)前記銀行処理装置は、前記検収完了の通知に応じて、保管している前記資金から前記売り手に対して商品代金を支払う処理を実行する場合に、
(g)前記マーケット運営企業処理装置が前記買い手へ前記請求書及び明細データを送る際に、前記買い手が前記銀行へ資金を入金するための、当該件の入金のためにのみ用いられる口座について採番された口座番号情報を含めることを特徴とする商品取引信用補完システム。

上記(a)は、本願補正発明の「商品取引信用補完システム」の奏すべき効果を記載しているが、「商品取引信用補完システム」の具体的な構成を提示するものではない。
上記(b)は、「銀行処理装置」が「前記買い手から入金される資金を保管するための口座を設け」るという業務上の処理を行うことを記載しているが、該業務上の処理がハードウェア資源をどのように用いてどのような情報の演算又は加工をして実現されるのか提示するものではない。
上記(c)は、「マーケット運営企業処理装置」が、「前記売り手、前記買い手及び前記銀行との間で前記商品取引に係る情報を情報通信ネットワークにより送受し処理しかつ保存する」という機能をもち、「前記買い手からの購入申込みに応じて、請求金額情報を含む請求書及び明細データを作成し、作成された前記請求書及び明細データを前記買い手及び前記銀行に送り、前記買い手により資金が入金されたことに応じて、該入金された資金が前記請求書及び明細データに含まれる情報と一致するか否かを判断する突合せ処理を実行し」という業務上の処理を行うことを記載している。該業務上の処理の「作成された前記請求書及び明細データを前記買い手及び前記銀行に送」る処理は、「情報通信ネットワーク」を介した情報の送受信により行われることが明らかであり、通信手段を用いた情報の送信処理として具体的に把握される。しかしながら、「前記買い手からの購入申込みに応じて、請求金額情報を含む請求書及び明細データを作成し」という業務上の処理及び「前記買い手により資金が入金されたことに応じて、該入金された資金が前記請求書及び明細データに含まれる情報と一致するか否かを判断する突合せ処理を実行し」という業務上の処理は、ハードウェア資源をどのように用いてどのような情報の演算又は加工をして実現されるのか把握されるものではなく、上記(c)は、該2つの業務上の処理がハードウェア資源をどのように用いてどのような情報の演算又は加工をして実現されるのか提示するものではない。
上記(d)は、「銀行処理装置」が「前記突合せ処理の結果、一致する場合は該資金を前記口座にて保管し」という業務上の処理を行うことを記載しているが、該業務上の処理がハードウェア資源をどのように用いてどのような情報の演算又は加工をして実現されるのか提示するものではない。
上記(e)は、「マーケット運営企業処理装置」が、「前記突合せ処理の処理結果、一致する場合」に「商品発送を指示し」という業務上の処理を行い、「前記発送された商品の納品完了」のときに「前記銀行処理装置に対し検収完了を通知し」という業務上の処理を行うことを記載しているが、それらの業務上の処理がハードウェア資源をどのように用いてどのような情報の演算又は加工をして実現されるのか提示するものではない。
上記(f)は、「銀行処理装置」が「前記検収完了の通知に応じて、保管している前記資金から前記売り手に対して商品代金を支払う処理を実行する」という業務上の処理を行うことを記載しているが、該業務上の処理がハードウェア資源をどのように用いてどのような情報の演算又は加工をして実現されるのか提示するものではない。
上記(g)は、「マーケット運営企業処理装置」が「前記買い手へ前記請求書及び明細データを送る際に、前記買い手が前記銀行へ資金を入金するための、当該件の入金のためにのみ用いられる口座について採番された口座番号情報を含める」という業務上の処理を行うことを記載しているが、上記(c)の記載をあわせみても、該業務上の処理がハードウェア資源をどのように用いてどのような情報の演算又は加工をして実現されるのか提示するものではない。

以上(a)?(g)について検討したとおり、本願補正発明の「マーケット運営企業処理装置」による「情報通信ネットワーク」を介しての「作成された前記請求書及び明細データを前記買い手及び前記銀行に送」る処理が、通信手段を用いた情報の送信処理として具体的に把握されるとしても、該送信処理は、「オープンな市場において任意の売り手と買い手の間で互いの信用度を把握できない場合であっても、代金の不払いや商品が引き渡されない等のリスクを極力回避でき、安全かつ効率的な取引を確保できる」という目的を達成するために本願補正発明が行う処理の一部分の処理にしかすぎず、本願補正発明は、全体として、その目的を達成するための情報処理が、ハードウェア資源をどのように用いてどのような情報の演算又は加工をして実現されるのか提示するものではない。
したがって、本願補正発明は、全体として、ソフトウェアによる情報処理が、ハードウェア資源を用いて具体的に実現されたものとは認められない。

4 むすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、「自然法則を利用した技術的思想の創作」とはいえず、特許法第2条第1項に定義された発明に該当せず、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成15年5月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。
「【請求項1】売り手と買い手の間での商品引渡し及び代金支払いを含む商品取引における安全を確保する商品取引信用補完システムにおいて、
銀行が、前記買い手から入金される資金を保管するための口座を設け、
前記売り手、前記買い手及び前記銀行との間で前記商品取引に係る情報を送受し処理しかつ保存するマーケット運営機関が、前記買い手からの購入申込みに応じて、請求金額情報を含む請求書及び明細データを作成し、作成された前記請求書及び明細データを前記買い手及び前記銀行に送り、
前記買い手により資金が入金されたことに応じて、該入金された資金が前記請求書及び明細データに含まれる情報と一致するか否かを判断する突合せ処理を実行し、
前記突合せ処理の結果、一致する場合は該資金が前記口座にて保管されると共に、前記マーケット運営機関が商品発送を指示し、
前記発送された商品の納品完了後、前記マーケット運営機関は、前記銀行に対し検収完了を通知し、
前記銀行は、前記検収完了の通知に応じて、保管している前記資金から前記売り手に対して商品代金を支払うことを特徴とする
商品取引信用補完システム。」

2 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由の概要は、平成14年12月4日付け拒絶理由通知書に記載された次のとおりのものである。
『A.この出願の下記の請求項に係る発明は、下記の点で特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。

「請求項1?16」
請求項1に係る「商品取引信用補完システム」は、「銀行」、及び「マーケット運営機関」が、おのおの「口座を設け」、「請求書及び明細データを」「作成し」等の行為を行うことを特定するものであるが、これらの事項により特定される「商品取引信用補完システム」は、コンピュータなどにより実現されるシステムではなく、商品の取引において信用を補完する社会的な仕組み(システム)として特定されているものである。このような社会的な仕組みは、自然法則を利用した技術的思想の創作とは認められないから、特許法第29条柱書の「発明」とは認められない。
また、請求項2?16に係る「商品取引信用補完システム」も、一部に「売り手及びその商品に関する情報を予め格納したデータベース」を有し、「データベースから情報を取り出す」などのステップを含むものではあるが、「マーケット運営機関」が「データベース」を備えるのみでは、全体として自然法則を利用した技術的思想の創作とは認められない。
(以下省略)』

3 当審の判断
本願発明は、「オープンな市場において任意の売り手と買い手の間で互いの信用度を把握できない場合であっても、代金の不払いや商品が引き渡されない等のリスクを極力回避でき、安全かつ効率的な取引を確保できる」(本願明細書の【発明の詳細な説明】の【発明が解決しようとする課題】の段落【0006】)ことを目的とした商品取引信用補完システムであり、機器等に対する制御又は制御に伴う処理を行うものではなく、また、対象の物理的性質又は技術的性質に基づく処理を具体的に行うものでもない。
そして、本願発明の「売り手と買い手の間での商品引渡し及び代金支払いを含む商品取引における安全を確保する商品取引信用補完システム」は、「商品取引信用補完システム」の奏すべき効果を特定しているが、「商品取引信用補完システム」の具体的な構成を特定したものではなく、
同じく「銀行が、前記買い手から入金される資金を保管するための口座を設け、前記売り手、前記買い手及び前記銀行との間で前記商品取引に係る情報を送受し処理しかつ保存するマーケット運営機関が、前記買い手からの購入申込みに応じて、請求金額情報を含む請求書及び明細データを作成し、作成された前記請求書及び明細データを前記買い手及び前記銀行に送り、前記買い手により資金が入金されたことに応じて、該入金された資金が前記請求書及び明細データに含まれる情報と一致するか否かを判断する突合せ処理を実行し、前記突合せ処理の結果、一致する場合は該資金が前記口座にて保管されると共に、前記マーケット運営機関が商品発送を指示し、前記発送された商品の納品完了後、前記マーケット運営機関は、前記銀行に対し検収完了を通知し、前記銀行は、前記検収完了の通知に応じて、保管している前記資金から前記売り手に対して商品代金を支払う」は、「銀行」又は「マーケット運営機関」の業務として行う行為を特定したものであり、コンピュータなどのハードウェアで構成されるシステム、いわゆるコンピュータ・システムとして特定したものではなく、
全体として、本願発明の「商品取引信用補完システム」は、商品の取引において信用を補完するための社会的な仕組みとして特定されたものであり、いわゆるコンピュータ・システムとして特定されたものではない。
したがって、本願発明は、社会的な仕組みにすぎず、全体として自然法則を利用していないものであり、「自然法則を利用した技術的思想の創作」とはいえず、特許法第2条第1項に定義された発明に該当しない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第2条第1項に定義された発明に該当せず、特許法第29条第1項柱書に規定する要件を満たしていないので、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-19 
結審通知日 2007-04-24 
審決日 2007-05-08 
出願番号 特願2000-73457(P2000-73457)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06Q)
P 1 8・ 1- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丹治 彰  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 坂庭 剛史
山本 穂積
発明の名称 商品取引信用補完システム  
代理人 小島 高城郎  

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