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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T |
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管理番号 | 1159856 |
審判番号 | 不服2004-16588 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-08-09 |
確定日 | 2007-06-29 |
事件の表示 | 特願2001-192772「バックグランド干渉の除去により最適化された人間の存在検出」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 3月22日出願公開、特開2002- 83287〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成13年6月26日(パリ条約による優先権主張2000年6月29日、米国)の出願であって、平成16年5月6日付で拒絶査定がされ、これに対して、同年8月9日に拒絶査定不服審判を請求するとともに、手続補正がなされたものである。 2.平成16年8月9日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年8月9日付けの手続補正を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 イメージングシステムと、発動可能なエアバックとを含む、車両のための装置であって、 前記イメージングシステムは、 所定の関連した間隔でオンおよびオフにされるようパルス化される、赤外線ビームを発生させる赤外線源と、 前記赤外線ビームの進路にある対象からの、反射された赤外線放射に反応し、イメージ信号を発生させる赤外線検出器と、 前記検出器からの前記イメージ信号に反応し、赤外線源がオンにされる第一の時間期間に、第一のイメージを発生させ、前記赤外線源がオフにされる第二の時間期間に、第二のイメージを発生させ、周辺光が減算されたフィルタされたイメージを発生させるために、前記第一のイメージから前記第二のイメージを減算し、人の存在を示すパターンを認識するために前記フィルタされたイメージを使用するパターン認識アルゴリズムを使用するプロセッサと、 を含み、 前記プロセッサは、認識されたパターンに反応して、前記エアバックの発動を制御することを特徴とし、 前記周辺光は、光子ノイズを含み、前記イメージングシステムの前記赤外線源から放射された電子の数が、前記周辺光の光子ノイズの少なくとも10倍であることを特徴とする、装置。」と補正された。 上記補正は、本補正前の請求項1に係る発明の構成要件である「周辺光と赤外線」との関係を具体的に規定するものであるから、特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本補正後の前記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるか、すなわち、本補正が特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定を満たすものであるかについて以下に検討する。 (2)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-222285号公報(以下「引用例」という。)には、外光の変動があっても対象物体の画像を高精度に抽出可能とするために、発光手段による照明光の非照射時での対象物体の画像と、発光手段による照明光の照射時での対象物体の画像を受光手段によりそれぞれ得て、得られた両画像の差成分を求めることにより対象物体の画像を抽出することが記載されている。 より詳しくは、図面と共に、次の各事項が記載されている。 ア 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は注目すべき対象物体を発光手段により照明して得た像と、照明しない像とを撮影し、両画像の差の画像を求めてこれより当該対象物体を抽出する画像抽出装置に関するものである。」 イ 「【0033】 【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため、本発明は次のように構成する。すなわち、対象物体に照明光を照射する発光手段と、前記対象物体の画像を得る受光手段とを有し、発光手段による照明光の非照射時での前記対象物体の画像と、発光手段による照明光の照射時での前記対象物体の画像を前記受光手段によりそれぞれ所定の同一検出時間を以て得ると共に、得られた両画像の差成分を求めることにより、前記対象物体の画像を抽出する装置において、第1には、前記照明光の発生する波長成分の光を除去する除去手段と、前記対象物体の置かれる環境下での光量を前記除去手段を介して検出する検出手段と、この検出手段による検出出力から前記対象物体のおかれる環境の明るさの状態を判断して前記受光手段により得た前記差成分の画像の採否を決める手段とを備える。」 ウ 「【0065】検出の対象物体が人間の手である場合、発光手段101としては人間の目に見えない、近赤外光を分光する発光装置を用いるようにすると良い。この場合、人間には発光手段101からの光が見えないため、眩しさを感じずに済む。また、発光手段101を近赤外光発光の装置とした場合、受光光学系107には図示しない近赤外光通過フィルタを設ける。このフィルタは、発光波長である近赤外光を通過し、可視光、遠赤外光を遮断する。従つて、外光の多くをカットしている。」 エ 「【0072】発光制御パルス128は発光手段を制御する信号である。ここではパルス発光を行う。発光制御パルスのレベルが“HIGH”のとき発光手段101が発光し、“LOW”のときは発光しない。」 同じく原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-315906号公報には、「乗員認識方法と乗員認識装置及びエアバック制御方法とエアバック装置」と題する発明について、その要約書には、次の記載がある。 オ 「【課題】 車室内の乗員の体格や姿勢等を把握することのできる乗員認識方法及びその装置と、上記乗員の情報とシートベルトの着用の有無とに基づいてエアバックの展開時期やエアバックへのガス導入量及びガス導入方向を制御するエアバック制御方法及びそのエアバック装置を提供することを目的とする。 【解決手段】 マトリックス型赤外線センサ12の出力から得られた熱画像の温度データから、第1の閾値Txを設けて車室内の乗員の人体部分Bを抽出し、第2の閾値Tyを設けて顔面領域Cを抽出し、更に乗員の顔面位置のマトリックス要素の位置から顔面位置高さHを算出するとともに顔面領域の基準位置を設けて顔面位置のずれ量Jを算出し、乗員の体格及び姿勢を推定し、エアバックへ導入されるガス導入量とガス導入方向とを制御するようにした。」 (3)対比 ア 引用例の発明は、画像を抽出するものであるから、画像であるパターンを認識して抽出するイメージングシステムということができ、パルス化された赤外線を発光して、対象物体を発光手段により照明して得た像と、照明しない像とを撮影し、両画像の差の画像を求めてこれより対象物体を抽出するものであることが理解できる。 そうすると、本願補正発明と引用例記載の発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 イ 一致点:イメージングシステムと、前記イメージングシステムは、所定の関連した間隔でオンおよびオフにされるようパルス化される、赤外線ビームを発生させる赤外線源と、前記赤外線ビームの進路にある対象からの、反射された赤外線放射に反応し、イメージ信号を発生させる赤外線検出器と、前記検出器からの前記イメージ信号に反応し、赤外線源がオンにされる第一の時間期間に、第一のイメージを発生させ、前記赤外線源がオフにされる第二の時間期間に、第二のイメージを発生させ、周辺光が減算されたフィルタされたイメージを発生させるために、前記第一のイメージから前記第二のイメージを減算し、パターンを認識するために前記フィルタされたイメージを使用するパターン認識アルゴリズムを使用するプロセッサと、を含み、前記プロセッサは、認識されたパターンに反応する、装置 ウ 相違点1:本願補正発明がエアバックを備えた車両のための装置であるのに対し、引用例記載の発明は、かかる用途が限定されていない点 エ 相違点2:本願補正発明では、対象物体として人の存在を認識しているのに対し、引用例記載の発明では、図2の記載から明らかなように人間の手の部分で説明がなされている点 オ 相違点3:本願補正発明では、周辺光と赤外線光の強さを具体的に特定しているのに対し、引用例記載の発明では、具体的な特定がない点 (4) 当審の判断 ア 相違点1について 前記原審で引用された特開平10-315906号公報には、人の存在を認識してエアバックの動作を制御する技術が示されており、引用例記載の発明である認識の技術思想が種々の分野に適用可能であることは当業者に明らかであることから、車両用のエアバックの制御に用いることも、当業者が格別の創意工夫を要することなく実施できる程度の事項にすぎない。 イ 相違点2について 引用例記載の発明を人の部分に限定して解釈する必要性はなく、当然に人の存在そのものの認識に利用できることは、当業者に自明の事項である。 ウ 相違点3について 引用例の段落【0178】には、距離が長くなると発光手段の発光強度を上げて反射光の量を増やすことが記載されており、対象物体の認識精度を上げるために、周辺の光が強ければ、赤外線光の強さを上げることは当業者が当然に考えることであり、周辺光に対して赤外線光をどの程度の強度とするかは、当業者が設計的に実施しうる事項で、当該相違点に格別進歩性は認められない。 したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本補正は、特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に違反するので、同法159条1項で準用する53条1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成16年8月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年3月1日付け手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。 「【請求項1】 イメージングシステムと、発動可能なエアバックとを含む、車両のための装置であって、前記イメージングシステムは、所定の関連した間隔でオンおよびオフにされるようパルス化される、赤外線ビームを発生させる赤外線源と、前記赤外線ビームの進路にある対象からの、反射された赤外線放射に反応し、イメージ信号を発生させる赤外線検出器と、前記検出器からの前記イメージ信号に反応し、赤外線源がオンにされる第一の時間期間に、第一のイメージを発生させ、前記赤外線源がオフにされる第二の時間期間に、第二のイメージを発生させ、周辺光が減算されたフィルタされたイメージを発生させるために、前記第一のイメージから前記第二のイメージを減算し、人の存在を示すパターンを認識するために前記フィルタされたイメージを使用するパターン認識アルゴリズムを使用するプロセッサと、を含み、前記プロセッサは、認識されたパターンに反応して、前記エアバックの発動を制御することを特徴とする、装置。」 (1)引用例 原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、周辺光と赤外線光の強さを具体的に特定した限定を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明を特定する要素をすべて含む本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項記載の発明について論ずるまでもなく本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-05 |
結審通知日 | 2007-02-06 |
審決日 | 2007-02-19 |
出願番号 | 特願2001-192772(P2001-192772) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06T)
P 1 8・ 575- Z (G06T) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 脇岡 剛 |
特許庁審判長 |
杉 山 務 |
特許庁審判官 |
伊知地和之 田中 幸雄 |
発明の名称 | バックグランド干渉の除去により最適化された人間の存在検出 |
代理人 | 増井 忠弐 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 千葉 昭男 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 西山 文俊 |
代理人 | 社本 一夫 |