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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A61F
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A61F
管理番号 1159858
審判番号 不服2004-20946  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-07 
確定日 2007-06-29 
事件の表示 平成10年特許願第 83611号「音声入出力による視覚障害者用誘導案内システム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年10月12日出願公開、特開平11-276516号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年3月30日の出願であって、平成16年8月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年10月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年10月21日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年10月21日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年10月21日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
本件補正後の請求項1は、補正前の請求項1に記載された発明における、タグについての特定事項である「危険領域に対応して配置され、該危険領域の経路となる場合には、危険であることを報知し、危険領域への視覚障害者の進行を回避するようにした」を、その発明特定事項に含んでいないので、本件補正は、特許請求の範囲の限定的減縮を目的としたものとは認められない。
また、本件補正は、請求項の削除、誤記の訂正、あるいは明りょうでない記載の釈明の、いずれを目的としたものとも認められない。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、拒絶査定時(平成16年6月10日付け手続補正書)の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「音声入出力による視覚障害者用誘導案内システムであって、
(a)音声を認識する音声認識手段と、該音声認識手段からの情報に基づいて目的地を探索するナビゲーション機能を持った処理装置と、該処理装置から探索された目的地を音声合成して報知する報知手段と、受信装置とを有する携帯端末装置と、
(b)タグリーダーと送信装置とを有する案内用杖と、
(c)前記目的地に至るまでの所定の位置に配置される位置情報を記憶するとともに、危険領域に対応して配置され、該危険領域の経路となる場合には、危険であることを報知し、危険領域への視覚障害者の進行を回避するようにしたタグとを具備することを特徴とする音声入出力による視覚障害者用誘導案内システム。」

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用した特開平8-190688号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【産業上の利用分野】本発明は、たとえば道路や建屋内、鉄道の駅構内において一般に設置される看板による案内情報を得にくい歩行者、たとえば視覚障害者や高齢者(以下、利用者とする。)に対して、自己の所在場所や目的とする行き先までの案内情報を伝達する歩行者案内装置に関するものである。」(段落【0001】)

イ.「【発明が解決しようとする課題】本発明は、道路や建屋内、鉄道の駅構内において自己の所在位置や目的地への案内情報を得にくい歩行者、に対して自己の目的地の情報、あるいは言語、あるいは身体障害の場合には障害の程度の情報(以下、特情とする。)に応じて音声等により適切な誘導案内情報を提供することを目的とする。」(段落【0008】)

ウ.「本装置は図1に示したように、利用者によって、その行く先等の特情が入力される利用者情報設定部(1)と、駅構内や道路上に設置された電波反応装置(2)から場所情報を受信する情報読み取り部(3)と、受信した情報と利用者情報とから適切な誘導案内情報を生成する案内情報生成部(4)と、生成された案内情報を音声等で利用者に伝える案内情報伝達部(5)とから構成される。また必要により、電波反応装置の内蔵情報を変更する、内蔵情報変更装置(6)も使用される。
【0014】利用者情報設定部(1)は利用者がキー操作や、予めデータを入力しておいたメモリカードを挿入すること等で指定する目的地、あるいは使用する言語、あるいは身体障害の程度等の特情を受取り、内部にデータとして登録する。
【0015】電波反応装置(2)は、道路や駅構内の必要箇所に設置され、外部からの特定の電波に反応して、その内蔵情報を送信する機能を備えている。
【0016】情報読み取り部(3)は、利用者の杖に内蔵する、あるいは体に装着する等の方法で携帯されており、常時特定の電波を発信している。そして、駅構内や道路上の電波反応装置に接近すると、そこから場所等の情報を電波により読み込む。
【0017】案内情報生成部(4)は、前記の利用者情報設定部で登録された情報と、駅構内や道路上の電波反応装置から読み込んだ場所情報等から、その利用者に必要適切な誘導案内情報を生成する。
【0018】案内情報伝達部(5)は、上記で生成された案内情報を利用者に応じた方法、例えばイヤフォンや携帯型のスピーカー、あるいは点字を生成する装置等により伝達する。」(段落【0013】?【0018】)

上記記載事項アないしウから、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「その行く先等の情報が入力される利用者情報設定部(1)と、駅構内や道路上に設置された電波反応装置(2)と、電波反応装置(2)から場所情報を受信する利用者の杖に内蔵された情報読み取り部(3)と、案内情報生成部(4)と、案内情報伝達部(5)とから構成され、
利用者情報設定部(1)はキー操作や、メモリカードの挿入を入力手段としており、
案内情報生成部(4)は、前記の利用者情報設定部で登録された情報と、駅構内や道路上の電波反応装置から読み込んだ場所情報等から、その利用者に必要適切な誘導案内情報を生成し、
案内情報伝達部(5)は、生成された案内情報を音声で利用者に伝えるようにした視覚障害者用誘導案内装置。」

同じく、実願平5-45045号(実開平7-12133号)のCD-ROM(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が記載されている。
エ.「歩行する使用者を目的地に向けて誘導するための歩行誘導装置であって、
使用者の地理上の位置を検出するための位置検出手段と、進行方向前方の障害物を検出するための障害物検出手段と、使用者の音声による命令を認識し、かつ音声メッセージを出力するための音声入出力手段と、前記各手段に接続された制御手段とを有し、
前記音声入出力手段から入力された命令に応じて、または所定のタイミングで前記位置検出手段及び前記障害物検出手段による検出結果を前記処理手段にて処理し、かつ使用者を誘導する音声メッセージを出力することを特徴とする歩行誘導装置。」(【実用新案登録請求の範囲】の【請求項1】)
上記記載事項エから、引用例2には、使用者を目的地に向けて誘導するための歩行誘導装置において、入力手段として使用者の音声入力を用いる技術手段が記載されていると認められる。

5.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、後者の「案内情報生成部(4)」、「案内情報伝達部(5)」、「情報読み取り部(3)」、「杖」、「電波反応装置(2)」、「視覚障害者用誘導案内装置」は、その機能ないし構造からみて、それぞれ、前者の「処理装置」、「報知手段」、「タグリーダー」、「案内用杖」、「タグ」、「視覚障害者用誘導案内システム」に相当する。
そして、後者の「利用者情報設定部(1)」と、前者の「音声認識手段」とは、入力手段である限りにおいて共通している。
また、後者の「案内情報生成部(4)」は、「電波反応装置(2)」からの情報を受け取る手段を備え、「電波反応装置(2)」は情報を「案内情報生成部(4)」に送る手段を備えていることは明らかであり、該「受け取る手段」は、情報を受け取る手段である点で、前者の「受信装置」と共通しており、該「送る手段」は、情報を送る手段である点で前者の「送信装置」と共通している。
更に、後者の「案内情報生成部(4)」は、該入力手段である「利用者情報設定部(1)」より入力された情報から「その利用者に必要適切な誘導案内情報を生成」するものであるから、目的地を探索するナビゲーション機能を持ったものといえ、「利用者情報設定部(1)」と、「案内情報伝達部(5)」と、「情報読み取り部(3)からの情報を受け取る手段」とともに、「携帯端末装置」を構成しているといえる。
そして、後者の電波反応装置(2)は場所情報を持っているから、「位置情報を記憶」しているのは明らかであり、「電波反応装置(2)」が駅構内や道路上に設置されていることは、前者の「タグ」が、目的地に至るまでの所定の位置に配置されることに対応している。
また、後者の案内情報伝達部(5)は、目的地までの案内情報を音声で利用者に伝えるから、目的地を音声合成して報知する報知手段といえ、後者は、「音声出力」による視覚障害者用誘導案内システムといえる。
そうすると、両者は
「視覚障害者用誘導案内システムであって、
(a)入力手段と、該入力手段からの情報に基づいて目的地を探索するナビゲーション機能を持った処理装置と、該処理装置から探索された目的地を音声合成して報知する報知手段と、タグからの情報を受け取る手段とを有する携帯端末装置と、
(b)タグリーダーと情報を送る手段とを有する案内用杖と、
(c)前記目的地に至るまでの所定の位置に配置される位置情報を記憶するタグとを具備する音声出力による視覚障害者用誘導案内システム。」である点で一致しており、次の点で相違する。

相違点1:入力手段が、本願発明においては、音声入力による「音声認識手段」であるのに対し、引用発明においては、キー操作入力等による「利用者情報設定部(1)」である点。
相違点2:本願発明においては、タグリーダーで得た情報を、案内用杖の「送信装置」から携帯端末装置の「受信装置」に伝達すると認められるのに対し、引用発明においては、そのような「送信装置」、「受信装置」を有しているのか明らかでない点。
相違点3:「タグ」が、本願発明においては、「危険領域に対応して配置され、該危険領域の経路となる場合には、危険であることを報知し、危険領域への視覚障害者の進行を回避するように」しているのに対し、引用発明においては、その配置について特定されていない点。

6.当審の判断
[相違点1について]
引用発明と同様の機能を持つ、歩行誘導装置において、入力手段として使用者の音声を用いることは引用例2により公知の技術手段であるから、引用発明において、該技術手段を採用して本願発明の相違点1に係る特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

[相違点2について]
一般に、遠隔地で検出された情報を無線で送信、受信することは、慣用の技術手段であり、引用発明において、「杖」から、杖とは別体の「携帯端末装置」に情報を送るのに際し、このような送信装置と受信装置を設けることは、利便性を考慮して当業者が普通に行うことと認められるから、本願発明の相違点2に係る特定事項とすることも、当業者が容易に想到し得ることである。

[相違点3について]
視覚障害者用誘導案内システムである以上、危険領域への進行を回避することは当然の課題であるから、そのために危険領域に対応してタグを配置し、本願発明の相違点3に係る特定事項とすることも、当業者が容易に想到し得ることである。

そして、相違点1ないし3に係る本願発明の特定事項を総合して判断しても、その効果は、当業者が予測し得る範囲のものであって、格別のものではない。

7.むすび
したがって、本願発明は、引用例1及び2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-16 
結審通知日 2007-04-24 
審決日 2007-05-08 
出願番号 特願平10-83611
審決分類 P 1 8・ 571- Z (A61F)
P 1 8・ 574- Z (A61F)
P 1 8・ 573- Z (A61F)
P 1 8・ 572- Z (A61F)
P 1 8・ 121- Z (A61F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬戸 康平山口 直  
特許庁審判長 北川 清伸
特許庁審判官 一色 貞好
中田 誠二郎
発明の名称 音声入出力による視覚障害者用誘導案内システム  
代理人 清水 守  

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