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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A47F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A47F
管理番号 1159859
審判番号 不服2004-21286  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-14 
確定日 2007-06-29 
事件の表示 平成11年特許願第335772号「情報伝達冊子の陳列構造」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月 5日出願公開、特開2001-149192〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年11月26日の出願であって、平成16年9月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し同年10月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月10日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成16年11月10日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年11月10日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「複数種類の情報伝達冊子が陳列されてなる情報伝達冊子の陳列構造であって、地下鉄やビル等の建造物の壁面に設けられた既設の電飾看板から広告が印刷された樹脂板を取り外した上記壁面に設けられ上記壁面よりも凹んだ凹部内に、情報伝達冊子が差し込まれるとともにそれぞれ差し込まれた情報伝達冊子の表紙の略全面が見えるポケットが複数設けられ、上記ポケットが壁面より前に突出していないことを特徴とする情報伝達冊子の陳列構造。」と補正された。

(2)補正の目的の適否
上記補正は、平成付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲(以下、「拒絶査定時の特許請求の範囲」という。)の請求項1に記載された発明の特定事項である「凹部」について、「上記壁面に設けられ上記壁面よりも凹んだ」という限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(3)独立特許要件
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反しないか)について以下に検討する。

ア.引用例
原査定の拒絶の理由に引用した刊行物である、登録実用新案第3057566号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
(ア)「 【課題を解決するための手段】
上記のような課題を解決するために、本考案の電飾看板一体型カードボックスは、駅の連絡通路や地下街などに設置される内部に照明具を有する電飾看板において、郷土料理店、飲食店、ホテル、お土産店などの店舗のカラーコルトン部3を一区画に多数個並べて、各店舗のカラーコルトン部3の下部には地図、営業時間、定休日、交通手段、おすすめ料理、値段等を記載した情報カード6を入れるカードボックス7を一体に形成したものである。
さらに、上記電飾看板は、正面から見た形状が四角形の電飾看板であり、上部に観光案内ガイドのタイトル表示部2を設け。その下方には、多数個に区画されたカラーコルトン部3が設けられ、該カラーコルトン部3は、店舗の外観、店内、料理などを撮影したカラー写真陽画を透明アクリル板に貼り付け、このカラー写真陽画を貼り付けた透明アクリル板のカラーコルトン4をコルトンガイド5の溝に沿って挿入したものである。
また、前記カードボックス7は、各カラーコルトン部3の下部に透明アクリル板を加工した断面L字形とし、コルトンガイド5間に跨って接着固定されて、断面L字形の左右両端部分を側板12で塞いでボックスを形成し、中間部のコルトンガイド5には隣接するカードボックス7の仕切りとなる仕切り板13を接着固定したものである。」(段落【0004】)
(イ)「 【作用】
本考案の電飾看板一体型カードボックスは、駅の連絡通路や地下街などに設置され、郷土料理店、飲食店、ホテル、お土産店などの店舗のカラーコルトン部3を一区画に多数個並べて、各店舗のカラーコルトン部3の下部には地図、営業時間、定休日、交通手段、おすすめ料理、値段等を記載した情報カード6を入れるカードボックス7を一体に形成しておくことにより、カードボックス7から自由に情報カード6を持ち帰ることができるようにしたので、必要に応じてカードボックス7から情報カード6を持ち帰り、情報カード6を案内地図として利用することができると共に、電飾看板(コルトン)1により店舗の外観、店内、おすすめ料理などの写真情報を得ることができ、しかも情報カード6により地図、営業時間、定休日、交通手段、あすすめ料理、値段等の多くの情報を得ることができる。」(段落【0005】)
(ウ)「また、図2の縦断面図および図4のB-B矢視拡大断面図に示すように、電飾看板(コルトン)1の背面側には、すなわち駅の連絡通路や地下街などの壁に固定される側にはアルミ複合板からなる背面板8を設け、該背面板8の4周辺には開口が内側を向くようにして断面コ字形の額縁9を固着し、図3のA-A矢視拡大断面図に示すように、前記背面板8及び額縁9を連結すると共に壁に固定するネジ25を設けている。
さらに、該額縁9の前面にはアクリル乳半透明板からなるベース板10を設けて、該ベース板10を額縁9及び固定部材11とにより挟持固定する。
そして、前記ベース板10には多数区画されたカラーコルトン部3が配置されて多数のカラーコルトン4が配列できるようになっており、該カラーコルトン部3の両側にはコルトンガイド5が配置固定されており、アクリル板を加工してカラーコルトン4が挿入できる溝を形成したコルトンガイド5を設けて、上方向からコルトンガイド5に沿ってカラーコルトン4を挿入できるようになっている。」(段落【0007】)

上記記載事項から、引用例には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「駅の連絡通路や地下街などに設置される内部に照明具を有する電飾看板(コルトン)1であって、
アクリル板からなるベース板10には多数区画された各店舗のカラーコルトン部3が配置され、各カラーコルトン部3の下部には透明アクリル板を加工してなる、各店舗の情報カード6を入れるためのカードボックス7が形成され、
該ベース板10は、額縁9及び背面板8を介して壁に固定するようにした電飾看板(コルトン)1。」

イ.対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、後者の「カードボックス7」は、その機能ないし構造からみて、前者の「ポケット」に相当する。
また、「情報カード6」と前者の「情報伝達冊子」は、ともに、「情報伝達媒体」である点で共通しており、後者の「各店舗の」は、前者の「複数種類の」に対応している。
そして、後者の「電飾看板(コルトン)1」は、駅の連絡通路や地下街などの壁に設置されるものであるから、「地下鉄やビル等の建造物の壁面に設けられ」るものであり、各店舗の情報カード6を入れるためのカードボックス7が形成されているから、「複数種類の情報伝達媒体が陳列されてなる情報伝達媒体の陳列構造」を備えているといえる。
更に、後者の「カードボックス7」は、透明アクリル板を加工して作られているから、そこに入れた情報伝達媒体の表紙の「略全面が見える」ものである。
したがって、両者は、
「複数種類の情報伝達媒体が陳列されてなる情報伝達媒体の陳列構造であって、地下鉄やビル等の建造物の壁面の所定位置に、情報伝達媒体が差し込まれるとともにそれぞれ差し込まれた情報伝達媒体の表紙の略全面が見えるポケットが複数設けられた情報伝達媒体の陳列構造。」である点で一致しており、次の点で相違する。

相違点1:「ポケット」が、本願発明においては、「情報伝達冊子」を入れるものであるのに対し、引用発明においては、「情報カード6」を入れるものである点。
相違点2:本願発明においては、「ポケット」を、既設の電飾看板から広告が印刷された樹脂板を取り外した壁面の、該壁面よりも凹んだ凹部内に設け、ポケットが壁面より前に突出しないようにしているのに対し、引用発明においては、電飾看板1の背面板8が壁面に取り付けられる構成である点。

まず、相違点1について検討すると、引用発明において、カードを入れるポケットを、冊子を差し込めるポケットとすることは、必要に応じて適宜なし得る事項にすぎず、相違点1に係る本願補正発明の特定事項とすることは当業者が容易に想到し得ることである。

次に、相違点2について検討すると、電飾看板の構造として、壁面に、壁面よりも凹んだ凹部を設け、その中に照明灯等を配置し、前面に樹脂板を配置して電飾看板としたものは周知であるから、引用発明において、電飾看板の背面板を壁面に固定する構造に代えて、そのような構造とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、そのような構造とする際に、凹部として、既設の電飾看板から広告が印刷された樹脂板を取り外した凹部を利用することは、ごく自然に思いつくことであり、カードボックス7即ちポケットを備えたベース板10の位置をどこに設定するかは、美観やカードの取り出しやすさ等を考慮して決定すべき設計的事項にすぎないから、ベース板のポケットが壁面より前に突出しないようにして、相違点2に係る本願補正発明の特定事項とすることも当業者が容易に想到し得ることである。
そして、上記相違点1、2に係る特定事項による効果も当業者が予測し得る範囲のものであって格別のものは認められない。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、拒絶査定時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「複数種類の情報伝達冊子が陳列されてなる情報伝達冊子の陳列構造であって、地下鉄やビル等の建造物の壁面に設けられた既設の電飾看板から広告が印刷された樹脂板を取り外した凹部内に、情報伝達冊子が差し込まれるとともにそれぞれ差し込まれた情報伝達冊子の表紙の略全面が見えるポケットが複数設けられ、上記ポケットが壁面より前に突出していないことを特徴とする情報伝達冊子の陳列構造。」

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用した引用例及びその記載事項は、前記「2.(3)ア.」に記載したとおりである。

5.対比・判断
本願発明は、本願補正発明の「凹部」について、「上記壁面に設けられ上記壁面よりも凹んだ」という限定を省略するものである。
そして、本願発明の特定事項を全て含み、更に上記限定を付加する本願補正発明が、上記「2.(3)」に記載したとおり、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-18 
結審通知日 2007-04-24 
審決日 2007-05-08 
出願番号 特願平11-335772
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A47F)
P 1 8・ 121- Z (A47F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 冨岡 和人  
特許庁審判長 阿部 寛
特許庁審判官 仲村 靖
一色 貞好
発明の名称 情報伝達冊子の陳列構造  
代理人 森本 直之  
代理人 森本 直之  

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