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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F23D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F23D
管理番号 1159868
審判番号 不服2005-24996  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-26 
確定日 2007-06-29 
事件の表示 特願2001-376195「バーナユニット」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月27日出願公開,特開2003-176904〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1. 手続の経緯
本願は,平成13年12月10日の出願であって,平成17年11月29日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年12月26日に審判請求がなされるとともに,平成18年1月18日に手続補正がなされたものである。

2. 平成18年1月18日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成18年1月18日付け手続補正(以下,「本件補正」という。)を却下する。

[理 由]

(1) 本件補正による補正
本件補正により,特許請求の範囲の請求項1は,次のとおり補正された。

「並列に配置された複数の板状バーナと,それらの板状バーナの一端が共通的に取り付けられた前板とを備え,隣接する板状バーナの間に燃焼用空気流路が形成されているバーナユニットであって,
各板状バーナの内部にはガス流路が形成されており,そのガス流路の入口は板状バーナの前記一端に開口しており,
その前板は,そのガス流路入口に対応した位置にガス供給孔を有し,そのガス供給孔の周縁は板状バーナ側に延びてガス流路に挿入される筒状部を形成しており,その筒状部の根元外周には軟化点が90℃以上のホットメルト型粘着剤を塗布してなるシールパッキンが設けられており,そのシールパッキンによってガス流路とガス供給孔との接続部がシールされていることを特徴とするバーナユニット。」

上記補正は,補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ホットメルト型粘着剤」を「軟化点が90℃以上のホットメルト型粘着剤」と付加し限定するものであって,平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで,本件補正後の請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2) 引用例に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用した本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-182910号公報(以下,「引用例1」という。)及び実願昭56-110270号(実開昭58-17709号)のマイクロフィルム(以下,「引用例2」という。)には,それぞれ図面と共に以下の記載がある。

[引用例1について]

1a. 「【発明の属する技術分野】この発明は,主としてガス給湯器の加熱源に使用されるガス燃焼機器用の低NOxバーナに関する。」(段落【0001】)

1b. 「図面において,Aはバーナユニットで,図3?図6に例示されているように,上面に複数のスリット炎孔からなる淡炎孔1と,該淡炎孔1の両側には濃炎孔2,2が環流域3,3を隔てて形成されており,上記淡炎孔1には供給入口4からの淡ガスが混合室5,均圧室6を経て供給されるガス通路7が連通され,また,両側の濃炎孔2,2には供給入口8,8からの濃ガスが混合室9,9,均圧室10,10を経て供給されるガス通路11,11が連通されている。」(段落【0010】前段)

1c. 「Bは上記バーナユニットAを取付け設置するための取付枠で,複数個のバーナユニットAが一定の間隔を存して並列状に取付けうるようになっている。すなわち,上記バーナユニットAの前後両端のカシメ部16,16の上方部が挿入支持できる支持溝17,17とバーナユニットAの前部上方下部の受け部18が係合支持できる受段部19とを有し,前部下方部の前面壁20にはバーナユニットAの淡ガス用通路7の供給入口4が嵌め付け支持できるバーリング孔21とバーナユニットAの濃ガス用通路11,11の供給入口8,8が嵌め付け支持できる筒状バーリング22とを上下に備えており,底部には各々のバーナユニットAの底面カシメ部16を載せ,各々のバーナユニットA間には空気導入孔23を穿った底板24を備え,背面壁25の下部にバーナユニットAの背面のカシメ部16を嵌め付け支持する凹部26を備えた上部開口の箱状に形成されている。
上記構成の取付枠Bにおいて,上記筒状バーリング22は濃ガス用通路11,11の区画壁13の前端部に設けられた凹状の切り込み27に嵌め込み支持できるようになっており,各々のバーナユニットAの濃ガス用通路11,11の供給入口4,4と後述するノズル台Cの各々の濃ガス用ノズル28,28との正確な位置決めができるようになっている。なお,29は前面壁20の裏面と各々の供給入口4,11,11との間に介在したパッキングである。」(段落【0012】,【0013】)

なお,記載事項1c中の「各々のバーナユニットAの濃ガス用通路11,11の供給入口4,4と」との記載は,「各々のバーナユニットAの濃ガス用通路11,11の供給入口8,8と」との記載の,また,「29は前面壁20の裏面と各々の供給入口4,11,11との間に介在した」との記載は,「29は前面壁20の裏面と各々の供給入口4,8,8との間に介在した」との記載の誤記と認められる。

1d. 「Cはノズル台で,上記バーナユニットAの淡ガス用通路7と濃ガス用通路11,11とにガスを供給するためのもので,上記取付枠Bの前面壁20の前部に取付けられる。」(段落【0014】前段)

ところで,記載事項1c中の「各々のバーナユニットA間には空気導入孔23を穿った底板24を備え,」との記載及び図9から,隣接するバーナユニットAの間に燃焼用空気流路が形成されていることが認められる。

また,記載事項1c中の「前部下方部の前面壁20にはバーナユニットAの淡ガス用通路7の供給入口4が嵌め付け支持できるバーリング孔21とバーナユニットAの濃ガス用通路11,11の供給入口8,8が嵌め付け支持できる筒状バーリング22とを上下に備えており,」との記載,及び図1,図2,図7,図9から,バーリング孔21及び筒状バーリング22の周縁は,バーナユニットA側に延びてガス通路7,11,11に挿入される筒状部を形成していることが認められる。

したがって,記載事項1aないし1d及び図1ないし図3,図6ないし図9から,引用例1には次の発明(以下,「引用例1の発明」という。)が記載されていると認められる。

「並列に配置された複数のバーナユニットAと,それらのバーナユニットAの一端が共通的に取り付けられた前面壁20とを備え,隣接するバーナユニットAの間に燃焼用空気流路が形成されている低NOxバーナであって,
各バーナユニットAの内部にはガス通路7,11,11が形成されており,そのガス通路7,11,11の供給入口4,8,8はバーナユニットAの前記一端に開口しており,
前記前面壁20は,前記供給入口4,8,8に対応した位置にバーリング孔21及び筒状バーリング22を有し,そのバーリング孔21及び筒状バーリング22の周縁はバーナユニットA側に延びてガス通路7,11,11に挿入される筒状部を形成しており,該前面壁20の裏面と各々の前記供給入口4,8,8との間にパッキング29が介在して設けられており,そのパッキング29によってガス通路7,11,11とバーリング孔21及び筒状バーリング22との接続部がシールされている低NOxバーナ。」

[引用例2について]

2a. 「車体パネルに接する面にパッキンを備えた灯具において,発泡ホットメルトタイプの粘着体をノズルより塗着形成した弾性を有するシールパッキンをハウジングと車体パネルの間にて密着弾接させたことを特徴とする車両用灯具。」(実用新案登録請求の範囲)

2b. 「前記パッキンは緩衝及び気密・接着の役割を同時に果たすものであり,そのパッキンは従来天然ゴム又は合成ゴムを加硫されたゴムシートを必要な形状に打抜いたもの,或いは予め金型で所定の形に成形したものが使用されている。
・・・中略・・・
しかしながら,このような従来のものは,組付時やボルト締めの際にセットずれ等を防止するため,接着剤をぬったり,或いはハウジングの周縁部にコの字状のパッキンを挿着しなけらばならず,組付に手間がかかり,また接着剤のハガレが生じてパッキンがずれ,ボルト締付時車体面或いはハウジング面となじまず,その取付面から水が侵入する不都合が生じるなどの欠点がある。
上述の事情にかんがみ,本考案のレールパッキンは加工,組付工数と管理が簡略で,かつ車体パネルとハウジングの間の気密性,緩衝性にすぐれ,しかも如何なる設計にも対応できる経済的に有利な発泡ホットメルトタイプのシールパッキンを備えた車両用灯具を提供することを目的とするものである。」(1頁19行ないし4頁1行)

2c. 「以下,本考案の車両用灯具を添付図面を参照して説明する。
・・・中略・・・
1は発泡ホットメルトタイプのシールパッキンで,ホットメルトタイプの合成樹脂材を炭酸ガス又は窒素ガスにより発生させて微細発泡を形成する粘着性の加熱流動体とし,これをノズルより吐出させて塗着させて構成させたものである。すなわち,椀状のハウジング2の前面開口部6にはレンズ3を装着し,該ハウジング2の底部には光源バルブ4を配置された灯体を車体パネル5に取付固定するに当り,該ハウジング2の開口部6の周縁部22の背部の面に沿って,前記発泡ホットメルトをノズル7より吐出し塗着させ乍ら,輪廓に沿って移動させて全周にわたりシールパッキン1を固着させる。」(4頁2行ないし19行)

ところで,記載事項2aないし2c及び第2図,第3図の記載から,引用例2には,次の発明(以下,「引用例2の発明」という。)が記載されていると認められる。

「車体パネル5にハウジング2を有する灯体を取付固定する方法において,該ハウジング2の筒状開口部6の周縁部22すなわち根元外周に発泡ホットメルト型粘着体を塗着してなるシールパッキン1を設け,そのシールパッキン1によって前記車体パネル5とハウジング2の接続部をシールした,加工,組み付け工数と管理が簡略で,かつ車体パネルとハウジングの間の気密性,緩衝性にすぐれ,しかも如何なる設計にも対応できる経済的に有利な発泡ホットメルト型シールパッキンを用いた取付固定方法。」

(3) 対比,一致点・相違点
本願補正発明と引用例1の発明を対比すると,引用例1の発明の「バーナユニットA」,「前面壁20」,「低NOxバーナ」,「ガス通路7,11,11」,「供給入口4,8,8」及び「バーリング孔21及び筒状バーリング22」は,それぞれ本願補正発明の「板状バーナ」,「前板」,「バーナユニット」,「ガス流路」,「ガス流路の入口(又はガス流路入口)」及び「ガス供給孔」に相当する。

また,「パッキング29」は本願補正発明の「シールパッキン」に対応し,いずれもシールパッキンとして共通である。

したがって,両発明は,

「並列に配置された複数の板状バーナと,それらの板状バーナの一端が共通的に取り付けられた前板とを備え,隣接する板状バーナの間に燃焼用空気流路が形成されているバーナユニットであって,
各板状バーナの内部にはガス流路が形成されており,そのガス流路の入口は板状バーナの前記一端に開口しており,
その前板は,そのガス流路入口に対応した位置にガス供給孔を有し,そのガス供給孔の周縁は板状バーナ側に延びてガス流路に挿入される筒状部を形成しており,シールパッキンが設けらており,そのシールパッキンによってガス流路とガス供給孔との接続部がシールされているバーナユニット」

の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点]
シールパッキンが,本願補正発明では,前記ガス供給孔の筒状部の根元外周に軟化点が90℃以上のホットメルト型粘着剤を塗布して設けられているのに対して,引用例1の発明では,前記前板の裏面と前記ガス流路の入口との間に介在して設けられる点。

(4) 相違点についての検討
引用例1の発明の「そのパッキング29によってガス通路7,11,11とバーリング孔21及び筒状バーリング22との接続部がシールされている」との構成は,図1,図2,図7及び技術常識からみて,ガス供給孔であるバーリング孔21及び筒状バーリング22の筒状部の根元外周をシールするためのものと認められる。

また,引用例2には,車体パネル5にハウジング2を有する灯体を取付固定する方法において,該ハウジング2の筒状開口部6の周縁部22すなわち根元外周に発泡ホットメルト型粘着体を塗着してなるシールパッキン1を設け,そのシールパッキン1によって前記車体パネル5とハウジング2の接続部をシールすることが記載されている(引用例2の発明参照)。

更に,軟化点90℃以上のホットメルト型組成物をシール材として用いることは,従来周知のことである(例えば,特開2001-81277号公報,特開2001-57065号公報,特開平11-323026号公報参照)。

加えて,本願補正発明において,ホットメルト型粘着剤の軟化点を90℃以上と数値限定した点に,臨界的意義を認めるに足る根拠も見当たらない。

したがって,引用例1の発明において,ガス供給孔であるバーリング孔21及び筒状バーリング22の筒状部の根元外周をシールするに際して,ホットメルト型粘着材を用い,前記相違点に係る本願補正発明の構成を採用することは当業者が容易に想到し得たことである。

そして,本願補正発明の効果は引用例1,2の発明及び周知技術から予測し得る程度のものであって,格別なものでない。

なお,審判請求人は,平成18年10月31日付け回答書で,本願補正発明は,ハイドロカーボンの排出量を劇的に低減できると主張するが,従来知られた塗布型のシール材との比較データもなく,その効果が格別であると認めることはできない。

(5) むすび
以上のとおりであるから,本願補正発明は,引用例1,2の発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

したがって,本件補正は,平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3. 本願発明について

(1) 本願の請求項1及び2に係る発明
本件補正は前記のとおり却下されたので,本願の請求項1及び2に係る発明は,出願当初の明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりの次のものと認められる。

「【請求項1】 並列に配置された複数の板状バーナと,それらの板状バーナの一端が共通的に取り付けられた前板とを備え,隣接する板状バーナの間に燃焼用空気流路が形成されているバーナユニットであって,
各板状バーナの内部にはガス流路が形成されており,そのガス流路の入口は板状バーナの前記一端に開口しており,
その前板は,そのガス流路入口に対応した位置にガス供給孔を有し,そのガス供給孔の周縁は板状バーナ側に延びてガス流路に挿入される筒状部を形成しており,その筒状部の根元外周にはホットメルト型粘着剤を塗布してなるシールパッキンが設けられており,そのシールパッキンによってガス流路とガス供給孔との接続部がシールされていることを特徴とするバーナユニット。
【請求項2】 前記ガス流路は,前記ガス流路入口と同じ一端に開口する袖火用ガス流路入口を備え,
前記前板にはその袖火用ガス流路入口に対応した位置に袖火用ガス供給孔が設けられており,その袖火用ガス供給孔の周縁は板状バーナ側に延びてガス流路に挿入される筒状部を形成しており,その筒状部の根元外周にはホットメルト型粘着剤を塗布してなるシールパッキンが設けられており,そのシールパッキンによってガス流路と袖火用ガス供給孔との接続部がシールされていることを特徴とする請求項1に記載のバーナユニット。」

(2) 本願の請求項1に係る発明の容易想到性について
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,本願補正発明の「軟化点が90℃以上のホットメルト型粘着剤」を「ホットメルト型粘着剤」とした以外は,同一のものである。

そうすると,本願発明を限定して減縮した本願補正発明について,前記のとおり,その容易想到性が肯定される以上,本願発明は,本願補正発明についてと同じ引用例に記載の事項に基づいて同様な理由により,その容易想到性が肯定されるものであるというべきである。

(3) まとめ
したがって,本願発明は,引用例発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,本願の他の請求項に係る発明については検討するまでもなく,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-13 
結審通知日 2007-04-24 
審決日 2007-05-08 
出願番号 特願2001-376195(P2001-376195)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F23D)
P 1 8・ 575- Z (F23D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 東 勝之平城 俊雅  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 岡本 昌直
間中 耕治
発明の名称 バーナユニット  
代理人 特許業務法人快友国際特許事務所  

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