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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61G 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61G |
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管理番号 | 1160010 |
審判番号 | 不服2004-23932 |
総通号数 | 92 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-08-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-11-24 |
確定日 | 2007-06-25 |
事件の表示 | 特願2002- 75072「ベッド等におけるボトム起伏動作制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 9月24日出願公開、特開2003-265541号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成14年3月18日を出願日とする出願であって、平成16年10月21日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年12月17日付けで明細書についての手続補正がなされたものである。 2.平成16年12月17日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年12月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。 [理由] (2-1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 「ボトムを背に対応する背ボトムと、腰から膝にかけての膝ボトムと 、足に対応する足ボトムとに分割して、前記背ボトムを背上げ機構により起伏可能に支持する一方、前記膝ボトムと足ボトムとを膝上げ機構により連動起伏可能に支持する構成としたベッド等において、背ボトムの背上げ動作を行う際、膝ボトムを上げ下げする協調動作を行わせるべく、前記背上げ動作に先んじて膝上げ動作を開始させて、前記膝ボトムが所定の傾斜位置に達する所定時間、膝上げ動作を行い、所定時間経過時に、前記膝ボトムの膝上げ動作を停止すると共に次いで膝ボトムの膝下げ動作を開始し、前記背ボトムは背上げ動作を続行させるようにしたことを特徴とするベッド等におけるボトム起伏動作制御方法。」 (2-2)補正の目的及び新規事項の追加の有無 本件補正は、 請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「膝ボトムの膝上げ動作」および「背ボトムの背上げ動作」に関して、「当初膝ボトムの膝上げ動作を開始して、次いで前記背ボトムの背上げ動作を開始し」を、より具体的な「膝ボトムを上げ下げする協調動作を行わせるべく、前記背上げ動作に先んじて膝上げ動作を開始させて、前記膝ボトムが所定の傾斜位置に達する所定時間、膝上げ動作を行い」に限定するものであり、 かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そして、本件補正は、新規事項を追加するものではない。 (2-3)独立特許要件 そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2-3-1)引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-37820号公報(以下、「引用例」という)には、図面と共に次の事項が記載されている。 (a)「【0004】【課題を解決するための手段】 前記した課題を解決するために、本発明は、背上げ機構と膝上げ機構とを有し、これら背上げ機構と膝上げ機構とは、それぞれ駆動源を備えて、操作指令により、個々に背に対応する背ボトム、膝に対応する膝ボトムの傾斜調節を行う一方、背ボトムと共に膝ボトムの傾斜調節を行うようにしたベッド等において、前記駆動源は動作量検出手段を有し、背ボトムと共に膝ボトムの傾斜調節を行う際、駆動源における動作量検出手段の検出信号から、背ボトムおよび膝ボトムの調節状態を監視し、膝ボトムが所定の調節状態に達したら膝上げ機構の動作を停止させ、背ボトムと共に膝ボトムの傾斜調節を続行することで、前記膝ボトムを所定の調節状態から、逆に復帰調節させるように膝上げ機構を作動させるようにした。前述のベッド等において、背ボトムと共に膝ボトムの傾斜調節を行う際、背ボトムの調節動作に先立って、膝ボトムの調節動作を行わしめるようにした。また、前記ベッド等において、背ボトムと共に膝ボトムの傾斜調節を行う際、膝ボトムが所定の調節状態に達したら膝上げ機構の動作を停止させ、背ボトムと共に膝ボトムの傾斜調節を続行する際に、膝ボトムを所定の調節状態から、逆に復帰調節させるタイミングを調節可能とした。」 (b)「【0005】【発明の実施の態様】 次に、本発明にかかるベッド等における背膝連動制御方法について、一つの実施の態様を示し、添付の図面を参照しながら以下説明する。図1に示すベッド1では、ボトム2は、背に対応する背ボトム2aと、腰に対応する腰ボトム2bと、腰から膝にかけての膝ボトム2cと、足に対応する足ボトム2dとに分割され、前記背ボトム2aと腰ボトム2b間に、また前記膝ボトム2cと足ボトム2d間にそれぞれ適度な曲率で湾曲するように構成した湾曲ボトム2e,2fを配設している。そして、図示は省略するが、前記背ボトム2a裏面に背上げ機構である背上げリンクを当接させる一方、膝ボトム2cと足ボトム2dとの間の湾曲ボトム2f裏面に、膝上げ機構である膝上げリンクを当接させており、これら背上げリンク、膝上げリンクは、それぞれ駆動手段(図示省略)に接続しており、背上げ、膝上げを行う構造としている。」 (c)「【0007】 そこで、前記コントローラについて、以下説明する。コントローラには、予め、制御手順が設定されており、前述の回転量検出手段による検出信号を、設定された手順に基づき、信号処理を行って、リモコンスイッチや操作パネルに、適宜な表示信号を与えたり、モータに電力を与えたり遮断したり、逆転起動するべく電力を与えるようにしている。すなわちコントローラは、制御手順として例えば、リモコンスイッチや操作パネルからギャッチ(背上げと共に膝上げ)にかかる操作指令によって、背上げ機構および膝上げ機構双方の直動駆動機構におけるモータに動作電力を供給する一方、前記モータの回転量検出手段による検出信号から、背ボトム2a、膝ボトム2cの傾斜状態を把握し、膝ボトム2cが20°?30°に達したら、膝上げ機構の直動駆動機構におけるモータへの動作電力の供給を遮断し、さらにギャッチ指令を続行することで、今度は、前記膝上げ機構の直動駆動機構におけるモータへ逆転起動するべく電力を与えて、膝ボトム2cを下降させるギャッチ動作をなすように設定してある。」 (d)「【0008】 次に、かかる設定手順に基づいて、動作を説明する。例えば、図1に示すようなボトム2が平坦な状態において、リモコンスイッチまたは操作パネルにおける操作スイッチを操作して、ギャッチ動作を行うべく動作指令を入力すると、背上げ機構および膝上げ機構双方の直動駆動機構におけるモータに動作電力が供給され、背上げリンク、膝上げリンクが変位して、背ボトム2a、膝ボトム2cが傾斜していく(図2参照)。この際、前記背上げ機構および膝上げ機構双方の直動駆動機構におけるモータの回転量検出手段による検出信号がコントローラに供給され、コントローラにおいて、前記背ボトム2a、膝ボトム2cの傾斜状態を把握し、膝ボトム2cが20°?30°に達したら、膝上げ機構の直動駆動機構におけるモータへの動作電力の供給を遮断し膝上げを停止させる。このように、背上げと膝上げが同時になされるため、ボトム2から使用者への圧迫を抑えることができ、身体のずれを抑えることができる。そして、さらにギャッチ指令を続行することで、今度は、前記膝上げ機構の直動駆動機構におけるモータへは、逆転起動するべく電力を与えて、膝ボトム2cを下降させることができる(図3、図4参照)。」 (e)「【0009】 以上、一つの設定手順に基づいて、動作を説明したが、使用者の体形によって、使用者が圧迫を感じるボトム2の姿勢が異なるため、かかる状況に対応するために、膝上げ動作のタイミング、膝ボトム2cの逆転動作のタイミングを変えるようにすることもできる。例えば、前述の設定手順では、背上げと膝上げが同時になされるが、背上げに先行して膝上げをなすように設定することもできる。また、使用者の体形によって、使用者が圧迫を感じるボトム2の姿勢が異なることへの対策としては、膝上げ機構の直動駆動機構におけるモータへ逆転起動するべく電力を与えて、膝ボトム2cを下降させるタイミングを調節できるように調整手段を設けるようにしてもよい。」 (f)【図2】には、「背ボトム2aを湾曲ボトム2eにより背上げし、『腰ボトムおよび膝ボトム2c』と足ボトム2dとを湾曲ボトム2fにより連動して膝上げすること」が図示されている。 そして、上記(b)の「次に、本発明にかかるベッド等における背膝連動制御方法について・・・」及び上記(e)の「・・・背上げに先行して膝上げをなすように設定することもできる・・・」からして、背上げと膝上げとが連動するとともに、背上げに先んじて膝上げが開始することが示されている。 上記(a)ないし(f)の記載事項及び図示内容からみて、 引用例には、次の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。 「ボトムを背に対応する背ボトムと、腰から膝にかけての『腰ボトムおよび膝ボトム』と、足に対応する足ボトムとに分割して、前記背ボトムを背上げ機構により『背上げ動作と復帰の両方を行うことができるように』支持する一方、前記『腰ボトムおよび膝ボトム』と足ボトムとを膝上げ機構により連動して『膝上げ動作と下降の両方を行うことができるように』支持する構成としたベッド等において、背ボトムの背上げ動作と『膝ボトムの膝上げ動作と下降』とを連動すべく、前記背上げ動作に先んじて膝上げ動作を開始させて、前記『腰ボトムおよび膝ボトム』が20?30°の傾斜位置に達する所定のモータ回転量、膝上げ動作を行い、所定のモータ回転量経過時に、前記膝ボトムの膝上げ動作を停止すると共に次いで膝ボトムの下降を開始し、前記背ボトムは背上げ動作を続行させるようにした、ベッド等における背膝連動制御方法。」 (2-3-2)対比・判断 本願補正発明と引用例記載の発明とを対比する。 ○後者の「『腰ボトムおよび膝ボトム』」と前者の「膝ボトム」とは、腰から膝に対応するものであるという点で同じであることから、後者の「『腰ボトムおよび膝ボトム』」は、前者の「膝ボトム」に相当している。 ○後者の「『背上げ動作と復帰の両方を行うことができるように』」、「連動して『膝上げ動作と下降の両方を行うことができるように』」、「膝ボトムの膝上げ動作と下降」、「下降」、「20?30°の傾斜位置」、「背膝連動制御方法」は、 前者の「起伏可能に」、「連動起伏可能に」、「膝ボトムを上げ下げする」、「膝下げ動作」、「所定の傾斜位置」、「ボトム起伏制御方法」それぞれに相当している。 ○後者の「背ボトムの背上げ動作と『膝ボトムの膝上げ動作と下降(膝ボトムを上げ下げする)』を連動すべく」は、「背上げ動作」と「膝上げの上げ下げ」とを連動させること自体、両者を協調動作させることであると云えることから、「背ボトムの背上げ動作を行う際、膝ボトムを上げ下げする協調動作を行わせるべく」と言い換えることができるので、前者の「背ボトムの背上げ動作を行う際、膝ボトムを上げ下げする協調動作を行わせるべく」に相当している。 ○後者の「所定のモータ回転量」と後者の「所定時間」とは、膝ボトムを所定の傾斜位置にするのに必要な「所定の移動量」という点で軌を一にしている。 そうすると、両者は、 「ボトムを背に対応する背ボトムと、腰から膝にかけての膝ボトムと、足に対応する足ボトムとに分割して、前記背ボトムを背上げ機構により起伏可能に支持する一方、前記膝ボトムと足ボトムとを膝上げ機構により連動起伏可能に支持する構成としたベッド等において、背ボトムの背上げ動作を行う際、膝ボトムを上げ下げする協調動作を行わせるべく、前記背上げ動作に先んじて膝上げ動作を開始させて、前記膝ボトムが所定の傾斜位置に達する所定の移動量、膝上げ動作を行い、所定の移動量経過時に、前記膝ボトムの膝上げ動作を停止すると共に次いで膝ボトムの膝下げ動作を開始し、前記背ボトムは背上げ動作を続行させるようにした、ベッド等におけるボトム起伏動作制御方法。」という点で一致し、以下の点で相違している。 前者は、「所定の移動量」が「所定時間」であるのに対して、後者は、「所定のモータ回転量」である点。(以下、「相違点」という。) 上記相違点について検討する。 一般に、モータによって駆動される部材の移動量を表現するものにおいて、モータの回転速度が一定である場合、「モータの回転量」と「回転に要する時間」とが一対一に対応すること自体、自明の事項である。 してみれば、引用例記載の発明において、「所定のモータ回転量」に代えて「回転に要する所定時間」とする、即ち、該相違点に係る本願補正発明の発明特定事項とすることに格別の困難性があるとは云えない。 よって、本願補正発明は、引用例記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (2-3-3)むすび したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を、「本願発明」という)は、平成16年8月26日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「ボトムを背に対応する背ボトムと、腰から膝にかけての膝ボトムと、足に対応する足ボトムとに分割して、前記背ボトムを背上げ機構により起伏可能に支持する一方、前記膝ボトムと足ボトムとを膝上げ機構により連動起伏可能に支持する構成としたベッド等において、背ボトムの背上げ動作を行う際、当初膝ボトムの膝上げ動作を開始して、次いで前記背ボトムの背上げ動作を開始し、所定時間経過時に、前記膝ボトムの膝上げ動作を停止すると共に次いで膝ボトムの膝下げ動作を開始し、前記背ボトムは背上げ動作を続行させるようにしたことを特徴とするベッド等におけるボトム起伏動作制御方法。」 4.引用例の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された引用例の記載事項は、上記(2-3-1)に記載したとおりである。 5.対比・判断 本願発明は、本願補正発明から(2-2)で示した限定事項を省いたものであって、本願補正発明を包含するものである。 そうすると、本願補正発明が、上記(2-3-2)に記載したとおり、引用例記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、この本願補正発明を包含する本願発明も、同様に、引用例記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例記載の発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-04-27 |
結審通知日 | 2007-05-01 |
審決日 | 2007-05-14 |
出願番号 | 特願2002-75072(P2002-75072) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61G)
P 1 8・ 575- Z (A61G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西山 智宏、稲村 正義 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
豊永 茂弘 一色 貞好 |
発明の名称 | ベッド等におけるボトム起伏動作制御方法 |
代理人 | 三觜 晃司 |