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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 C03C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C03C
管理番号 1160087
審判番号 不服2003-7339  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-04-28 
確定日 2007-07-02 
事件の表示 平成10年特許願第110380号「ガラス-セラミック複合体およびそれを用いたフラットパッケージ型圧電部品」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月 2日出願公開、特開平11-302034〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年4月21日にした特許出願であって、平成15年3月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年4月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成15年4月28日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)本件補正は、平成15年1月20日付けで提出された手続補正書により補正された請求項1の「熱膨張係数が100?150×10-7/℃であって、ガラス中にフォルステライトを30?70重量%分散させたガラス-セラミック複合体であって、前記ガラス及び前記フォルステライトは、平均粒径0.3?3μmであって、前記ガラスは、重量%で、SiO2が50?70%、Al2O3が2?15%、(Rx)Oが5?30%(但し(Rx)はCa、Sr、Baから選ばれる1又は2以上の元素)、B2O3が1?8%、ZnOが2?15%、(Ry)2Oが5?30%(但し(Ry)はNa、K、Liから選ばれる1又は2以上の元素)からなり、このガラスを用いたガラス-セラミック複合体の材料に、ZrO2、TiO2、SnO2、P2O5、MoO3から選ばれる1又は2種以上の粒径0.1?1μmの微粉末を重量%で0.2?5%添加したガラス-セラミック複合体であり、または、前記ガラスは、重量%で、SiO2が70?86%、P2O5が1?10%、MgOが1?5%、(Rz)2Oが8?25%(但し(Rz)はK、Liから選ばれる1又は2の元素)からなり、または、前記ガラスは、重量%で、SiO2が40?55%、Al2O3が20?30%、P2O5が1?20%、BaOが1?5%、Na2Oが1?10、(Rw)2Oが1?5%(但し(Rw)はLi、K、から選ばれる1又は2の元素)、からなるガラス-セラミック複合体からなるベースを有し、ベ-スの長手方向に略矩形の表面弾性波素子片を配する構造の略矩形のフラットパッケ-ジであって、電極パッドが設けられており、この電極パッドに前記表面弾性波素子片をはんだボールを介して接続する構造のフラットパッケ-ジ」を「熱膨張係数が100?150×10-7であって、ガラス中にフォルステライトを30?70重量%分散させたガラス-セラミック複合体であり、前記ガラス及び前記フォルステライトは、平均粒径0.3?3μmであって、前記ガラスは、重量%で、SiO2が50?70%、Al2O3が2?15%、(Rx)Oが5?30%(但し(Rx)はCa、Sr、Baから選ばれる1又は2以上の元素)、B2O3が1?8%、ZnOが2?15%、(Ry)2Oが5?30%(但し(Ry)はNa、K、Liから選ばれる1又は2以上の元素)からなり、このガラスを用いたガラス-セラミック複合体の材料に、ZrO2、TiO2、SnO2、P2O5、MoO3から選ばれる1又は2種以上の粒径0.1?1μmの微粉末を重量%で0.2?5%添加したガラス-セラミック複合体であり、または、前記ガラスは、重量%で、SiO2が70?86%、P2O5が1?10%、MgOが1?5%、(Rz)2Oが8?25%(但し(Rz)はK、Liから選ばれる1又は2の元素)からなり、または、前記ガラスは、重量%で、SiO2が40?55%、Al2O3が20?30%、P2O5が1?20%、BaOが1?5%、Na2Oが1?10、(Rw)2Oが1?5%(但し(Rw)はLi、K、から選ばれる1又は2の元素)、からなるガラス-セラミック複合体からなるベースを有する、ベ-スの長手方向に略矩形の表面弾性波素子または半導体素子片を配する構造の略矩形のフラットパッケ-ジであって、電極パッドが設けられており、この電極パッドに前記表面弾性波素子または半導体素子片を直接接続し、この直接接続されたフラットパッケージをガラスエポキシ製プリント基板に直接はんだ付けする構造のフラットパッケ-ジ。」と補正するものであり、以下の補正を含むものである。
(a)「電極パッドに前記表面弾性波素子片をはんだボールを介して接続する構造」を「電極パッドに前記表面弾性波素子または半導体素子片を直接接続し、この直接接続されたフラットパッケージをガラスエポキシ製プリント基板に直接はんだ付けする構造」とする。
そこで、上記補正事項(a)について検討する。
該補正は、補正前の特定事項にない「半導体素子片」の接続構造を択一的ではあっても新たに請求するものであり、電極パッドに表面弾性波素子片を接続する場合においても、電極パッドと表面弾性波素子片の接続構造を「はんだボールを介して接続する」から「直接接続」にする点で異なる接続構造に替えるものであり、また、「直接接続されたフラットパッケージをガラスエポキシ製プリント基板に直接はんだ付けする」という補正前の特定事項にないフラットパッケージとプリント基板との接続機構を新たに請求するものでもある。
してみると、上記補正事項(a)は、特許請求の範囲を減縮することを目的とする補正にも、明りょうでない記載の釈明を目的とする補正にも、また、誤記の訂正を目的とする補正にも該当しない。
(2)むすび
以上のとおりであるから、平成15年4月28日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反してなされたものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成15年4月28日付けで提出された手続補正書によりなされた補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は平成15年1月20日付けで提出された手続補正書により補正された本願明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「熱膨張係数が100?150×10-7/℃であって、ガラス中にフォルステライトを30?70重量%分散させたガラス-セラミック複合体であって、前記ガラス及び前記フォルステライトは、平均粒径0.3?3μmであって、前記ガラスは、重量%で、SiO2が50?70%、Al2O3が2?15%、(Rx)Oが5?30%(但し(Rx)はCa、Sr、Baから選ばれる1又は2以上の元素)、B2O3が1?8%、ZnOが2?15%、(Ry)2Oが5?30%(但し(Ry)はNa、K、Liから選ばれる1又は2以上の元素)からなり、このガラスを用いたガラス-セラミック複合体の材料に、ZrO2、TiO2、SnO2、P2O5、MoO3から選ばれる1又は2種以上の粒径0.1?1μmの微粉末を重量%で0.2?5%添加したガラス-セラミック複合体であり、または、前記ガラスは、重量%で、SiO2が70?86%、P2O5が1?10%、MgOが1?5%、(Rz)2Oが8?25%(但し(Rz)はK、Liから選ばれる1又は2の元素)からなり、または、前記ガラスは、重量%で、SiO2が40?55%、Al2O3が20?30%、P2O5が1?20%、BaOが1?5%、Na2Oが1?10、(Rw)2Oが1?5%(但し(Rw)はLi、K、から選ばれる1又は2の元素)、からなるガラス-セラミック複合体からなるベースを有し、ベ-スの長手方向に略矩形の表面弾性波素子片を配する構造の略矩形のフラットパッケ-ジであって、電極パッドが設けられており、この電極パッドに前記表面弾性波素子片をはんだボールを介して接続する構造のフラットパッケ-ジ」

4.引用文献の記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-191887号公報(以下、「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「熱膨張係数が100?150X10-7のガラス中にフォルステライト(2MgO・SiO2 )を30?70重量%分散させたことを特徴とするガラス-セラミック複合体。」(【請求項1】)、
(イ)「前記ガラスは重量%表示で、SiO250?70%,Al2O32?15%,RO(ただしRはCa,Sr,Baから選ばれる1種類以上とする)5?30%,B2O31?8%,ZnO2?15%,R2O(ただしRはNa,KおよびLiから選ばれる1種類以上とする)5?30%の組成物からなる請求項1記載のガラス-セラミック複合体。」(【請求項2】)、
(ウ)「前記ガラスおよびセラミックにZrO2 ,TiO2 ,SnO2 ,P2O5 ,MoO3のうち少なくとも1種類以上からなる微粉末(粒径0.1?1μm)を、0.2?5wt%添加させて焼成することを特徴とするガラス-セラミック複合体。」(【請求項3】)、
(エ)「前記ガラスおよびセラミックは平均粒径1?3μmに粉砕されたものが混合されていることを特徴とするガラス-セラミック複合体。」(【請求項4】)、
(オ)「両面に電極リード部を配線した水晶等の圧電素子と、前記圧電素子に電気的かつ機械的に接続される一対の電極パッド部を有するベース部材と、キャップ部材を備え、前記ベース部材及びキャップ部材を請求項1,2,3,4に記載するガラス-セラミック複合体を用いて形成されることを特徴とするフラットパッケージ型圧電部品。」(【請求項5】)、
(カ)「【作用】上記構成により、パッケージ材料と、水晶板等圧電部品の熱膨張率が整合し、加熱冷却後に水晶振動子等圧電部品の残留歪が低減され、共振周波数の変動が抑えられる。また、抗折強度も十分になる。」(第2頁右欄第44?47行、段落【0008】)、
(キ)「次に、水晶振動子用パッケージの特性を調査するために、表1中の実施例1に示す原料粉末を使用して以下に述べる製造工程に従って、図1に示す構造のパッケージを作成した。
……。
(i)前記ベース部材1に予め低融点のガラス封止部4を形成しておき、図1に示す構成で前記ベース部材1上の電極パッド部80と水晶片2の電極リード部7を導電性接着剤で固着した後、前記キャップ部材3で封止し、水晶振動子用パッケージ50を完成する。」(第5頁左欄第3?21行、同頁右欄第1?10行、段落【0016】)、
(ク)「また、本発明は水晶振動子に限らずSAW共振子など圧電部品の面実装用フラットパッケージにも広く応用できる。」(第5頁右欄第30?32行、段落【0023】)、
(ケ)第6頁に記載の【図1】には、「本発明の一実施例であるガラス-セラミックパッケージを用いた水晶振動子の分解斜視図 」が示されている。
引用文献1には、記載事項(キ)に図1に示す構成でベース部材上の電極パッド部と水晶片の電極リード部を導電性接着剤で固着して水晶振動子用パッケージを完成することが記載されている。そして、該記載中の「ベース部材」に関して、記載事項(オ)に「請求項1,2,3,4に記載するガラス-セラミック複合体を用いて形成される」と記載され、また、該記載中の「請求項1,2,3,4に記載するガラス-セラミック複合体」に関して、請求項1に記載するガラス-セラミック複合体については記載事項(ア)に「熱膨張係数が100?150X10-7のガラス中にフォルステライト(2MgO・SiO2 )を30?70重量%分散させた」と記載され、請求項2に記載するガラス-セラミック複合体については記載事項(イ)に「ガラスは重量%表示で、SiO250?70%,Al2O32?15%,RO(ただしRはCa,Sr,Baから選ばれる1種類以上とする)5?30%,B2O31?8%,ZnO2?15%,R2O(ただしRはNa,KおよびLiから選ばれる1種類以上とする)5?30%の組成物からなる」と記載され、請求項3に記載するガラス-セラミック複合体については記載事項(ウ)に「ガラスおよびセラミックにZrO2 ,TiO2 ,SnO2 ,P2O5 ,MoO3のうち少なくとも1種類以上からなる微粉末(粒径0.1?1μm)を、0.2?5wt%添加させて焼成する」と記載され、請求項4に記載するガラス-セラミック複合体については記載事項(エ)に「ガラスおよびセラミックは平均粒径1?3μmに粉砕されたものが混合されている」と記載されている。
そして、記載事項(ケ)における図1の「本発明の一実施例であるガラス-セラミックパッケージを用いた水晶振動子の分解斜視図」 には、長手方向の両端部に電極リード部を有する略長方形の水晶片と、略長方形のベース部材を有し、ベース部材の長手方向の両端部上に電気パッド部を設けた略長方形の水晶振動子用パッケージとが示されていて、記載事項(キ)の「図1に示す構成で前記ベース部材1上の電極パッド部80と水晶片2の電極リード部7を導電性接着剤で固着した後、前記キャップ部材3で封止し、水晶振動子用パッケージ50を完成する」という記載と、略長方形も略矩形の1つであることを勘案すると、図1には「略矩形の水晶振動子用パッケージのベース部材の長手方向に略矩形の水晶片を配し、前記ベース部材上の電極パッド部と前記水晶片の電極リード部を導電性接着剤で固着してなる水晶振動子用パッケージ」が記載されているといえる。
そして、記載事項(ク)に「本発明は水晶振動子に限らずSAW共振子など圧電部品の面実装用フラットパッケージにも広く応用できる」と記載され、また、「水晶振動子用パッケージ」を「SAW共振子用のパッケージ」にする場合にはパッケージに配されるものが水晶片からSAW素子片に変わることは当然である。
そして、上記記載事項(キ)中の「導電性接着剤」という用語に「はんだ」が含まれることは明らかであり〔もしも必要ならば、例えば特開平9-252028号公報(第3頁右欄第41行)、及び、特開平9-321341号公報(第2頁右欄第21?22行)参照。〕、また、上記記載事項(ア)中の「熱膨張係数が100?150X10-7」という記載は、熱膨張係数の単位が〔/℃〕であることからみて「熱膨張係数が100?150×10-7/℃」を意味することは明らかである。
そして、これらの記載を、本願発明の記載に沿って整理すると、引用文献1には、「熱膨張係数が100?150×10-7/℃のガラス中にフォルステライト(2MgO・SiO2 )を30?70重量%分散させたガラスーセラミック複合体であって、ガラスは重量%表示で、SiO250?70%,Al2O32?15%,RO(ただしRはCa,Sr,Baから選ばれる1種類以上とする)5?30%,B2O31?8%,ZnO2?15%,R2O(ただしRはNa,KおよびLiから選ばれる1種類以上とする)5?30%の組成物からなり、ガラスおよびセラミックにZrO2 ,TiO2 ,SnO2 ,P2O5 ,MoO3のうち少なくとも1種類以上からなる微粉末(粒径0.1?1μm)を、0.2?5wt%添加させて焼成し、ガラスおよびセラミックは平均粒径1?3μmに粉砕されたものが混合されているガラス-セラミック複合体を用いてベース部材を得、略矩形のSAW共振子用パッケージのベース部材の長手方向に略矩形のSAW素子片を配し、前記ベース部材上の電極パッド部と前記SAW素子片の電極リード部をはんだで固着してなるSAW共振子用パッケージ」の発明(以下、「引用1発明」という。)が記載されているといえる。

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特開平9-208261号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次の事項が記載されている。
(ア)「結晶化ガラス中にフォルステライトを40?60重量%含むガラス-セラミック複合体。」(【請求項1】)、
(イ)「ガラスは重量%でSiO2が70?85、P2O5が1?10、MgOが0?5、R2O(但しRはLi,Kから選ばれる1種類以上とする)が、8?20、Na2Oが0?2の組成物からなることを特徴とする請求項1に記載のガラス-セラミック複合体。」(【請求項2】)、
(ウ)「ガラスは重量%表示でSiO2が40?55、Al2O3が20?30、P2O5が1?20、BaOが0?5、X2O(但しXはNa,Kから選ばれる1種類以上とする)が5?10の組成物からなることを特徴とする請求項1に記載のガラス-セラミック複合体。」(【請求項3】)、
(エ)「平均粒径が0.1?3μmのガラスおよびフォルステイライトの微粉末を混合してなることを特徴とする請求項1に記載のガラス-セラミック複合体。」(【請求項5】)、
(オ)「【発明の属する技術分野】本発明は水晶の熱膨張係数に略一致した熱膨張係数を有するガラス-セラミック複合体および信頼性の高い水晶振動子やSAW共振子等の圧電部品用の面実装用フラットパッケージに関するものである。」(第2頁左欄第30?34行、段落【0001】)、
(カ)「さらに、フラットパッケージ型圧電部品としては、電極リード部を配した水晶片と、前記水晶片に電気的かつ機械的に接続される一対の電極パッド部を有するベース部材と、キャップ部材とを備え、前記ベース部材およびキャップ部材が請求項1,4,5,2または3に記載のガラス-セラミック複合体を用いて形成されたことを特徴とする。」(第2頁右欄第47行?第3頁左欄第3行、段落【0007】)、
(キ)「次に、本発明のガラス-セラミック複合体を用いたフラットパッケージについて説明する。表1に示す実施例1および実施例9に示す原料粉末を使用して、以下に述べる製造工程に従って従来と同等な構造のパッケージを作成した。
……。
(i)前記ベース部材1に予め低融点のガラス封止部4を形成しておき、図1に示す構成で前記ベース部材1上の電極パッド部80と水晶片2の電極リード部7を導電性接着剤で固着した後、前記キャップ部材3で封止し、水晶振動子用パッケージ50を完成する。」(第4頁右欄第4?33行、段落【0017】)、
(ク)「水晶振動子等の圧電部品の熱膨張率とパッケージの熱膨張率が整合するため、パッケージに封止時および封止後の熱処理においても水晶振動子等の周波数特性が変動しにくくなり、また、抗折強度が向上するため衝撃や曲げの力に対して強くなり、さらに、耐湿性に優れるため信頼性の高い表面実装型圧電部品を得ることが出来る。」(第5頁左欄第13?19行、段落【0023】)、
(ケ)第3頁に記載の【表1】にガラス-セラミック複合体の実施例として熱膨張率の値が103×10-7/℃?143×10-7/℃のものが示されている。
(コ)第5頁に記載の【図1】には、「本発明の一実施例であるガラス-セラミック複合体の用いたフラットパッケージ型水晶振動子の分解斜視図 」が示されている。
引用文献2には、記載事項(キ)に図1に示す構成でベース部材上の電極パッド部と水晶片の電極リード部を導電性接着剤で固着して水晶振動子用パッケージを完成することが記載されている。そして、該記載中の「ベース部材」に関して、記載事項(カ)に「請求項1,4,5,2または3に記載のガラス-セラミック複合体を用いて形成された」と記載され、また、該記載中の「請求項1,4,5,2または3に記載のガラス-セラミック複合体」に関して、請求項1に記載するガラスーセラミック複合体については記載事項(ア)に「結晶化ガラス中にフォルステライトを40?60重量%含む」と記載され、請求項2に記載するガラスーセラミック複合体については記載事項(イ)に「ガラスは重量%でSiO2が70?85、P2O5が1?10、MgOが0?5、R2O(但しRはLi,Kから選ばれる1種類以上とする)が、8?20、Na2Oが0?2の組成物からなる」と記載され、請求項3に記載するガラスーセラミック複合体については記載事項(ウ)に「ガラスは重量%表示でSiO2が40?55、Al2O3が20?30、P2O5が1?20、BaOが0?5、X2O(但しXはNa,Kから選ばれる1種類以上とする)が5?10の組成物からなる」と記載され、請求項5に記載するガラスーセラミック複合体については記載事項(エ)に「平均粒径が0.1?3μmのガラスおよびフォルステイライトの微粉末を混合してなる」と記載され、さらに、記載事項(ケ)にガラス-セラミック複合体の実施例として熱膨張率の値が103×10-7/℃?143×10-7/℃のものが示されている。
そして、記載事項(コ)における図1の「本発明の一実施例であるガラス-セラミック複合体の用いたフラットパッケージ型水晶振動子の分解斜視図」 には、長手方向の両端部に電極リード部を有する略長方形の水晶片と、略長方形のベース部材を有し、ベース部材の長手方向の両端部上に電気パッド部を設けた略長方形の水晶振動子用パッケージとが示されていて、記載事項(キ)の「図1に示す構成で前記ベース部材1上の電極パッド部80と水晶片2の電極リード部7を導電性接着剤で固着した後、前記キャップ部材3で封止し、水晶振動子用パッケージ50を完成する」という記載と、略長方形も略矩形の1つであることを勘案すると、図1には「略矩形の水晶振動子用パッケージのベース部材の長手方向に略矩形の水晶片を配し、前記ベース部材上の電極パッド部と前記水晶片の電極リード部を導電性接着剤で固着してなる水晶振動子用パッケージ」が記載されているといえる。
そして、記載事項(オ)に「本発明は水晶振動子やSAW共振子等の圧電部品用の面実装用フラットパッケージに関するものである」ことが記載されており、また、上記「水晶振動子用パッケージ」を「SAW共振子用のパッケージ」にする場合にはパッケージに配されるものが水晶片からSAW素子片に変わることは当然である。
そして、上記記載事項(キ)中の「導電性接着剤」という用語に「はんだ」が含まれることは(1)で述べたとおり明らかである。
そして、これらの記載を本願発明の記載に沿って整理すると、引用文献2には、「結晶化ガラス中にフォルステライトを40?60重量%含むガラスーセラミック複合体であって、ガラスは重量%でSiO2が70?85、P2O5が1?10、MgOが0?5、R2O(但しRはLi,Kから選ばれる1種類以上とする)が、8?20、Na2Oが0?2の組成物からなり、または、ガラスは重量%表示でSiO2が40?55、Al2O3が20?30、P2O5が1?20、BaOが0?5、X2O(但しXはNa,Kから選ばれる1種類以上とする)が5?10の組成物からなり、平均粒径が0.1?3μmのガラスおよびフォルステイライトの微粉末を混合してなり、熱膨張係数が103?143×10-7/℃であるガラスーセラミック複合体を用いてベース部材を得、略矩形のSAW共振子用パッケージのベース部材の長手方向に略矩形のSAW素子片を配し、前記ベース部材上の電極パッド部と前記SAW素子片の電極リード部をはんだで固着してなるSAW共振子用パッケージ」の発明(以下、「引用2発明」という。)が記載されているといえる。

5.対比・判断
本願発明と引用1発明を対比すると、引用1発明の「ガラス-セラミック複合体」、「ベース部材」、「略矩形のSAW共振子用パッケージ」、「略矩形のSAW素子片」、「電極パッド」及び「はんだで固着」が、それぞれ、本願発明の「ガラス-セラミック複合体」、「ベース」、「略矩形のフラットパッケージ」、「略矩形の表面弾性波素子片」、「電極パッド」及び「はんだを介して接続」に相当し、また、引用1発明の「ガラス-セラミック複合体を用いてベース部材を得、略矩形のSAW共振子用パッケージのベース部材の長手方向に略矩形のSAW素子片を配し、前記ベース部材上の電極パッド部と前記SAW素子片の電極リード部をはんだで固着してなるSAW共振子用パッケージ」が、本願発明の「ガラス-セラミック複合体からなるベースを有し、ベ-スの長手方向に略矩形の表面弾性波素子片を配する構造の略矩形のフラットパッケ-ジであって、電極パッドが設けられており、この電極パッドに前記表面弾性波素子片をはんだを介して接続する構造のフラットパッケ-ジ」に相当する。
そして、引用1発明の「熱膨張係数が100?150×10-7/℃のガラス中にフォルステライト(2MgO・SiO2 )を30?70重量%分散させたガラスーセラミック複合体であって、ガラスは重量%表示で、SiO250?70%,Al2O32?15%,RO(ただしRはCa,Sr,Baから選ばれる1種類以上とする)5?30%,B2O31?8%,ZnO2?15%,R2O(ただしRはNa,KおよびLiから選ばれる1種類以上とする)5?30%の組成物からなり、ガラスおよびセラミックにZrO2 ,TiO2 ,SnO2 ,P2O5 ,MoO3のうち少なくとも1種類以上からなる微粉末(粒径0.1?1μm)を、0.2?5wt%添加させて焼成し、ガラスおよびセラミックは平均粒径1?3μmに粉砕されたものが混合されているガラス-セラミック複合体」が、本願発明の「熱膨張係数が100?150×10-7/℃であって、ガラス中にフォルステライトを30?70重量%分散させたガラス-セラミック複合体であって、前記ガラス及び前記フォルステライトは、平均粒径0.3?3μmであって、前記ガラスは、重量%で、SiO2が50?70%、Al2O3が2?15%、(Rx)Oが5?30%(但し(Rx)はCa、Sr、Baから選ばれる1又は2以上の元素)、B2O3が1?8%、ZnOが2?15%、(Ry)2Oが5?30%(但し(Ry)はNa、K、Liから選ばれる1又は2以上の元素)からなり、このガラスを用いたガラス-セラミック複合体の材料に、ZrO2、TiO2、SnO2、P2O5、MoO3から選ばれる1又は2種以上の粒径0.1?1μmの微粉末を重量%で0.2?5%添加したガラス-セラミック複合体」と、熱膨張係数、組成及び原料粉末の平均粒径の値が重複している。
そして、本願発明におけるガラス-セラミック複合体に関する、「前記ガラスは、重量%で、SiO2が70?86%、P2O5が1?10%、MgOが1?5%、(Rz)2Oが8?25%(但し(Rz)はK、Liから選ばれる1又は2の元素)からなる」点(以下、「前者の組成」という。)、及び、「前記ガラスは、重量%で、SiO2が40?55%、Al2O3が20?30%、P2O5が1?20%、BaOが1?5%、Na2Oが1?10、(Rw)2Oが1?5%(但し(Rw)はLi、K、から選ばれる1又は2の元素)、からなる」点(以下、「後者の組成」という。)は、択一的な構成である。
したがって、前者の組成を選択した場合、両発明は、「熱膨張係数が100?150×10-7/℃であって、ガラス中にフォルステライトを30?70重量%分散させたガラス-セラミック複合体であって、前記ガラス及び前記フォルステライトは、平均粒径0.3?3μmであって、前記ガラスは、重量%で、SiO2が50?70%、Al2O3が2?15%、(Rx)Oが5?30%(但し(Rx)はCa、Sr、Baから選ばれる1又は2以上の元素)、B2O3が1?8%、ZnOが2?15%、(Ry)2Oが5?30%(但し(Ry)はNa、K、Liから選ばれる1又は2以上の元素)からなり、このガラスを用いたガラス-セラミック複合体の材料に、ZrO2、TiO2、SnO2、P2O5、MoO3から選ばれる1又は2種以上の粒径0.1?1μmの微粉末を重量%で0.2?5%添加したガラス-セラミック複合体からなるベースを有し、ベ-スの長手方向に略矩形の表面弾性波素子片を配する構造の略矩形のフラットパッケ-ジであって、電極パッドが設けられており、この電極パッドに前記表面弾性波素子片をはんだを介して接続する構造のフラットパッケ-ジ」で一致し、次の点で相違する。
相違点a:本願発明では、電極パッドに表面弾性波素子片を接続するためのはんだとして「はんだボール」を使用するのに対して、引用1発明でははんだを使用するものではあるが、はんだボールを使用することについては記載のない点
そこで、上記相違点aについて検討する。
はんだを用いて部材を接続する際に、はんだの供給形態としてボール状のものを供給することは本願出願前から普通に行われていることである。
してみると、引用1発明に対して、電極パッドに表面弾性波素子片を接続するためのはんだとしてはんだボールを使用することは当業者であれば適宜なし得ることである。
そして、上記相違点における本願発明の構成を採ることにより奏される「表面弾性波素子とパッケージの熱膨張率が整合するため、素子を直接パッケージに接続する場合、はんだボール接続部の亀裂の発生等を抑えることができ、信頼性の高い表面実装型部品を得ることができる」という効果も、引用文献1にも圧電部品素子とパッケージの熱膨張率が整合することが記載されている〔記載事項(カ)〕ことを勘案すると、当業者であれば予測し得る範囲内のものである。
次に、本願発明におけるガラス-セラミック複合体に関する上記の択一的な後者の組成を採る場合について検討する。
本願発明と引用2発明を対比すると、引用2発明の「ガラス-セラミック複合体」、「ベース部材」、「略矩形のSAW共振子用パッケージ」、「略矩形のSAW素子片」、「電極パッド」及び「はんだで固着」が、それぞれ、本願発明の「ガラス-セラミック複合体」、「ベース」、「略矩形のフラットパッケージ」、「略矩形の表面弾性波素子片」、「電極パッド」及び「はんだを介して接続」に相当し、また、引用2発明の「ガラス-セラミック複合体を用いてベース部材を得、略矩形のSAW共振子用パッケージのベース部材の長手方向に略矩形のSAW素子片を配し、前記ベース部材上の電極パッド部と前記SAW素子片の電極リード部をはんだで固着してなるSAW共振子用パッケージ」が、本願発明の「ガラス-セラミック複合体からなるベースを有し、ベ-スの長手方向に略矩形の表面弾性波素子片を配する構造の略矩形のフラットパッケ-ジであって、電極パッドが設けられており、この電極パッドに前記表面弾性波素子片をはんだを介して接続する構造のフラットパッケ-ジ」に相当する。
そして、引用2発明の「結晶化ガラス中にフォルステライトを40?60重量%含むガラスーセラミック複合体であって、ガラスは重量%でSiO2が70?85、P2O5が1?10、MgOが0?5、R2O(但しRはLi,Kから選ばれる1種類以上とする)が、8?20、Na2Oが0?2の組成物からなり、または、ガラスは重量%表示でSiO2が40?55、Al2O3が20?30、P2O5が1?20、BaOが0?5、X2O(但しXはNa,Kから選ばれる1種類以上とする)が5?10の組成物からなり、平均粒径が0.1?3μmのガラスおよびフォルステイライトの微粉末を混合してなり、熱膨張係数が103?143×10-7/℃であるガラスーセラミック複合体」が、本願発明の「熱膨張係数が100?150×10-7/℃であって、ガラス中にフォルステライトを30?70重量%分散させたガラス-セラミック複合体であって、前記ガラス及び前記フォルステライトは、平均粒径0.3?3μmであって、前記ガラスは、重量%で、SiO2が70?86%、P2O5が1?10%、MgOが1?5%、(Rz)2Oが8?25%(但し(Rz)はK、Liから選ばれる1又は2の元素)からなり、または、前記ガラスは、重量%で、SiO2が40?55%、Al2O3が20?30%、P2O5が1?20%、BaOが1?5%、Na2Oが1?10、(Rw)2Oが1?5%(但し(Rw)はLi、K、から選ばれる1又は2の元素)、からなるガラス-セラミック複合体」と、熱膨張係数、組成及び原料粉末の平均粒径の値が重複している。
してみると、本願発明と引用2発明との一致点及び相違点は本願発明と引用1発明の一致点及び相違点と同一であり、また、相違点における本願発明の構成を採ることにより奏される効果についても、引用文献2にも圧電部品素子とパッケージの熱膨張率が整合することが記載されている〔記載事項(ク)〕ことを勘案すると、本願発明と引用1発明を対比した際と同じく、当業者であれば予測し得る範囲内のものである。
そうすると、本願発明は、上記引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.審尋に対する回答について
本件請求人は、平成19年3月14日付けで提出した審尋に対する回答書で、平成15年4月28日付けで提出した手続補正書により補正された本願明細書の特許請求の範囲の請求項1の「ベ-スの長手方向に略矩形の表面弾性波素子または半導体素子片を配する構造の略矩形のフラットパッケ-ジであって、電極パッドが設けられており、この電極パッドに前記表面弾性波素子または半導体素子片を直接接続し、この直接接続されたフラットパッケージをガラスエポキシ製プリント基板に直接はんだ付けする構造」との記載を「ベ-スの長手方向に略矩形の表面弾性波素子を配する構造の略矩形のフラットパッケ-ジであって、電極パッドが設けられており、この電極パッドに前記表面弾性波素子をはんだボールを介して接続し、この接続されたフラットパッケージをガラスエポキシ製プリント基板に直接はんだ付けする構造」とする補正案を提示している。
しかしながら、フラットパッケージをガラスエポキシ製プリント基板に直接はんだ付けすることは当該技術分野で本願出願前から普通に行われていることにすぎず、また、そのことにより奏される効果も当業者であれば予測し得る範囲内のものであるから、補正案に係る発明も、上記引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができるものである。

7.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、本願の出願前に頒布された刊行物である引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-08 
結審通知日 2007-05-09 
審決日 2007-05-22 
出願番号 特願平10-110380
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C03C)
P 1 8・ 57- Z (C03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 直也深草 祐一  
特許庁審判長 松本 貢
特許庁審判官 斎藤 克也
森 健一
発明の名称 ガラス-セラミック複合体およびそれを用いたフラットパッケージ型圧電部品  

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