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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1160089
審判番号 不服2003-24741  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-22 
確定日 2007-07-02 
事件の表示 平成11年特許願第296551号「弾球遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月24日出願公開、特開2001-112958〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯
本願は、平成11年10月19日の出願であって、平成15年8月29日付の拒絶理由通知が通知され、平成15年10月23日付で意見および手続補正がなされ、平成15年11月25日付の拒絶査定がなされ、平成15年12月22日に審判請求がなされると同時に手続補正がなされ、さらに平成16年3月1日付で平成15年12月22日付の手続補正を補正したものである。

2.平成16年3月1日付および平成15年12月22日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論] 平成16年3月1日付および平成15年12月22日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正後の本願発明
平成16年3月1日付の手続補正および平成15年12月22日付の手続補正は、平成15年10月23日付の手続補正により補正された請求項1?4に記載された発明を特定するための事項の限定に相当するものであるから、平成15年改正前特許法第17条の2第4項第2号の規定に適合している。

そして、平成16年3月1日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?4に係る発明および平成15年12月22日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その請求項1?4およびその請求項1に記載されたとおりのものであると認められ、両請求項1に係る発明は、その請求項1において特定される下記のとおりのものである。
(平成16年3月1日付の手続補正による特許請求の範囲の請求項1に係る発明と平成15年12月22日付の手続補正による特許請求の範囲の請求項1に係る発明は全く同一である。)

「主に遊技盤(5) の遊技動作を制御する主制御手段(50)と、前記主制御手段(50)から送信される図柄制御コマンドを受信し且つその図柄制御コマンドに基づいて遊技盤(5) に設けられた図柄表示手段(22)の図柄の変動制御を行なう図柄制御手段(60)と、前記図柄表示手段(22)の変動停止時の図柄に関連して遊技者に不利となる第1状態と遊技者に有利となる第2状態とに変化可能な可変入賞装置(18)とを備えた弾球遊技機において、
前記主制御手段(50)は図柄制御手段(60)に図柄変動の開始から停止までの図柄変動時間を指令する変動時間情報と、前記第1状態と第2状態の何れかの状態を指示する当たり外れ情報とを含む図柄制御コマンドであって、図柄変動パターン及び停止図柄の情報を含まない図柄制御コマンドを出力可能に構成され、前記図柄制御手段(60)は、当たり外れの種類別に夫々複数の図柄変動パターンを記憶しており且つ図柄制御コマンドに含まれる前記当たり外れ情報に基づいて図柄変動パターンと停止図柄を決定する停止図柄決定手段を備えた、ことを特徴とする弾球遊技機。」(以下、「本願補正発明」という。)

(2)引用例について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-137811号公報(以下、「引用例」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1
「【0013】【発明の実施の形態】・・・本実施形態のCR機は、予め定められた種類の3桁の特別図柄を特別図柄表示装置33(図2参照)に変動及び停止させ、この内の停止図柄のうち、大当り図柄(特定表示態様)は「000」?「999」の10種類であり、それ以外の特別図柄は外れである。・・・」

・記載事項2
「【0015】図2に示す遊技盤24の構造を説明する。遊技盤24の遊技領域25の中央部に大形の枠体でなるセンター役物26が設けられている。・・・センター役物26の開口部には10インチサイズの液晶表示盤32を含み構成された特別図柄表示装置33が設けられている。・・・センター役物26の下方中央部に条件装置として動作する、アタッカーとも呼ばれる大入賞装置40が設けられている。・・・」

・記載事項3
「【0019】図6に示す本実施形態のパチンコ機1の電子制御装置130を説明する。電子制御装置130は、主基板111に設けられた主制御部140、枠制御基板119に設けられた枠制御部150、主制御部140と一方向通信を行う特別図柄制御部160を含み構成されている。主制御部140は、・・・パチンコ機1の遊技を司っているものである。・・・」

・記載事項4
「【0020】主制御部140は、第一種始動口(普通電動役物)入賞検知スイッチ83、カウント検知スイッチ86、カウント検知及び特定領域通過検知スイッチ87等の検知結果に基づいて、当否判定などの遊技状態を判断し、特別図柄表示装置33に表示すべき特別図柄や背景などの指示を特別図柄制御部160へ逐一送信する。」

・記載事項5
「【0022】図7に示す特別図柄制御部160を説明する。特別図柄制御部160はCPU161、RAM162、ROM163、入出力ポート164、VDP(Video Display Processor)165、それらを相互に接続するバス166、VDP165からの出力信号を受けるD/A変換器167、D/A変換器167からの信号を特別図柄表示装置33に出力する液晶表示盤用出力ポート168から構成されている。特別図柄制御部160は図柄決定やリーチ決定などのためアクセス可能なRAM162を有している。」

・記載事項6
「【0023】主制御部140のアドレスマップは、図8に示す通り、作業領域・・・、空き領域・・・、スタック領域・・・、空き領域・・・、内蔵レジスタ領域・・・、空き領域・・・、ポートA領域・・・、ポートB領域・・・、ポートC領域・・・・、ポートD領域・・・、ポートE領域・・・、ポートF領域・・・、ポートG領域・・・、空き領域・・・、ポートH領域・・・、空き領域・・・、空き領域・・・、プログラム管理領域・・・、機種ID領域・・・、空き領域・・・、データ領域・・・、空き領域・・・、制御領域・・・、空き領域・・・、ベクタ領域・・・から構成されている。作業領域及びスタック領域等としてはRAM142、データ領域及び制御領域等としてはROM143、ポートA?Hとしては入出力I/O144が対応する。また、上述のデータ領域には、パチンコ機1を動作させる上で必要な各種のパラメータ(データテーブル)、例えば図9に示す各図柄の変動時間、音声発生パターン等の固定データ及び確率設定値等が格納されている。上述の制御領域には、主に遊技を司る遊技プログラムが格納されている。」

・記載事項7
「【0024】上述の図8のデータ領域・・・には、通常時の特別図柄変動時間テーブル、通常時の普通図柄変動時間テーブル、通常時の普通電動役物開放時間テーブル、時短中又は高確率時の場合の普通電動役物開放時間テーブル、時短中又は高確率時の普通図柄変動時間テーブル、高確率時の特別図柄変動時間テーブルが含まれて格納されている。CR機特有の高確率時の特別図柄変動時間テーブルが機種に共通のテーブルよりも後にアドレス化されることが特徴である。なお、上述の時短中で高確率時の普通電動役物開放時間テーブル、時短中で高確率時の普通図柄変動時間テーブルについては、本実施形態では使用しないが、時短付きのCR機、時短付現金機等の時短が関係する機種に共通して適用できるように予め格納されているのである。このため、仕様変更が簡単にできる。なお、仕様変更については後述する。」

・記載事項8
「【0031】上述の各ステップを説明する。ステップS4では遊技状態に応じた音楽や音声のデー夕の作成が行われる。ステップS5では遊技状態に応じたランプ点滅等のデータの作成が行われる。ステップS6では、普通図柄及び普通図柄作動保留球数の表示用のデータや、特別図柄作動保留球数の表示用のデータなど、LEDデータが作成される。
ステップS7では他の制御部(枠制御部150、特別図柄制御部160等)への情報出力に必要なデータの作成が行われる。ステップS8では、RAM142の普通図柄当否判定乱数メモリ(図示略)や汎用カウンタメモリ(図示略)などが更新される。
ステップS9では、各種検知スイッチの読み込みが行われる。即ち、発射停止検知信号、タッチ検知信号、ヴォリューム検知信号、カウント検知信号、特定領域通過検知信号、普通図柄作動ゲート検知信号などの各種信号が端子基板123を介して主制御部140に取り込まれ、又、第一種始動口(普通電動役物)入賞検知スイッチ83から第一種始動口入賞検知信号、入賞球検知スイッチ92から入賞球検知信号が各々取り込まれる。
ステップS10及び11では賞球払出しに関するデータの作成や出力等が行われる。ステップS12及び24では、外れ普通図柄乱数メモリ(図示略)が更新される。ステップS13及び14では、異常(球詰まりや断線など)を検知をする。ステップS15及び16では、特別図柄を表示するためのデータ処理が行われ、特別図柄制御部160へ表示すべき特別図柄や背景などを指示するコマンドデータを逐一送信する。すなわち、特別図柄処理番号メモリを使用してプログラムモジュール(図示略)の呼び出しが行われ、各プログラムモジュールが遊技状態に応じて適宜選択されて実行される。大当りや外れリーチの態様が実行される場合には、リーチに関するプログラムモジュールが選択されるが、その被選択確率は、大当りに対する信頼度数が均等にならないよう適宜設定されている。特別図柄の変動時間は、通常状態、高確率状態、普通図柄保留表示LED58に表示される保留数が所定値(例えば4)にある場合(時短機能付きにする場合は、変動時間短縮状態などの場合)で異なっており、変動時間制御は各種の状態に応じて行われる。
図柄が確定表示される際には、特別図柄確定ジョブが実行され、所定の時間が経過する毎に左・右・中の順で特別図柄が特別図柄表示装置33に確定表示されるようにする。なお、リ-チや当りの図柄変動の終盤から確定表示に至るまでの態様には、高速変動、コマ送り、逆進などの種々の態様が設定されている。当りの場合、当り図柄が確定表示された後、特別遊技の進行に合わせてラウンド数が表示され、特別遊技の終了が遊技者に告知されるようにする。
ステップS17及び18では、普通図柄及び普通図柄作動保留球数の表示用のデータの作成等が行われる。ステップS19では、大入賞口開閉シャッタの開閉等、大入賞装置40の制御が行われる。ステップS20では、回転盤モータ(図示略)の制御が行われる。ステップS21では、第一種始動口(普通電動役物)41の開放時間、特別図柄変動時間、普通図柄変動時間等を制御するタイマの減算が行われる。ステップS22では、特別図柄表示装置33(LCD)に表示される特別図柄管理のためのコマンドの入出力が行われる。」

以上の記載事項1?記載事項8及び図1?図22の記載によれば、引用例には次の発明が記載されていると認められる。

「主に遊技盤24の遊技動作を制御する主制御部140と、主制御部140から当否判定などの遊技状態と特別図柄表示装置33に表示すべき特別図柄や背景などの指示を受信し、且つ当否判定などの遊技状態と特別図柄表示装置33に表示すべき特別図柄や背景などの指示に基づいて遊技盤24に設けられた特別図柄表示装置33の図柄の変動制御を行なう特別図柄制御部160と、特別図柄表示装置33の変動停止時の図柄に関連して遊技者に特別遊技でない状態と特別遊技の状態とに変化可能な大入賞口装置40とを備えた遊技機」(以下、「引用例に記載された発明」という。)

(3)対比
引用例に記載された発明と本願補正発明を対比すると、引用例に記載された発明の「遊技盤24」は本願補正発明の「遊技盤」に相当している。以下同様に、「主制御部140」は「主制御手段」に、「当否判定などの遊技状態と特別図柄表示装置33に表示すべき特別図柄や背景などの指示」は「図柄制御コマンド」に、「特別図柄表示装置33」は「図柄表示手段」に、「特別図柄制御部160」は「図柄制御手段」に、「特別遊技状態でない状態と特別遊技の状態」は「不利となる第1状態と有利となる第2状態」に、「大入賞口装置40」は「可変入賞装置」に、「遊技機」は「弾球遊技機」にそれぞれ相当している。
そして、引用例に記載された発明について下記1)?3)のことがいえる。

1)引用例の記載事項4の「【0020】主制御部140は、第一種始動口(普通電動役物)入賞検知スイッチ83、カウント検知スイッチ86、カウント検知及び特定領域通過検知スイッチ87等の検知結果に基づいて、当否判定などの遊技状態を判断した上で、特別図柄表示装置33に表示すべき特別図柄や背景などの指示を特別図柄制御部160へ逐一送信する。」なる記載、および同記載事項1の「【発明の実施の形態】・・・本実施形態のCR機は、予め定められた種類の3桁の特別図柄を特別図柄表示装置33(図2参照)に変動及び停止させ、この内の停止図柄のうち、大当り図柄(特定表示態様)は「000」?「999」の10種類であり、それ以外の特別図柄は外れである。・・・」なる記載に基づけば、主制御部140は、当否判定などの遊技状態を判断して、特別図柄制御部160に表示すべき特別図柄や背景などの指示を特別図柄制御部160に逐一送信しているのであり、かつ、主制御部140の指示は大当たりか否かの当否判定に基づく特別図柄表示装置33における図柄を制御するための指示情報に他ならないから、引用例に記載された発明の「当否判定などの遊技状態」は「当たり外れ情報」と言い換えることができるとともに、引用例に記載された発明の「当否判定などの遊技状態と特別図柄表示装置33に表示すべき特別図柄や背景などの指示」は「図柄制御コマンド」と言い換えることができることは明らかである。

2)「当たり外れ情報」とは、当たりと外れを指示する情報であり、当たりは特別遊技の状態、外れは特別遊技状態でない状態を意味することは明らかであり、上記(3)の冒頭で示したとおり「特別遊技状態でない状態と特別遊技の状態」は「不利となる第1状態と有利となる第2状態」に相当しているのであるから、引用例に記載された発明は、「第1状態と第2状態の何れかの状態を指示する当たり外れ情報」を実質的に具備しているということができる。

3)引用例の記載事項1の「・・・本実施形態のCR機は、予め定められた種類の3桁の特別図柄を特別図柄表示装置33(図2参照)に変動及び停止させ、この内の停止図柄のうち、大当り図柄(特定表示態様)は「000」?「999」の10種類であり、それ以外の特別図柄は外れである。・・・」なる記載、および同記載事項6の「【0023】主制御部140のアドレスマップは、図8に示す通り、・・・から構成されている。・・・また、上述のデータ領域には、パチンコ機1を動作させる上で必要な各種のパラメータ(データテーブル)、例えば図9に示す各図柄の変動時間、音声発生パターン等の固定データ及び確率設定値等が格納されている。上述の制御領域には、主に遊技を司る遊技プログラムが格納されている。」なる記載に基づけば、主制御部140に格納されている各図柄の変動時間が指令として特別図柄制御部160に送信されて、特別図柄表示装置33は各図柄の変動を開始し停止するのであるから、引用例の図柄の変動時間とは、変動開始から停止までの図柄変動時間情報を意味していることは明らかである。
そして、引用例に記載された発明の「主制御部140」「特別図柄表示部160」「特別図柄表示装置33」は本願補正発明の「主制御手段」「図柄制御手段」「図柄表示手段」に相当していることは上記(3)の冒頭で示したとおりである。
そうすると、引用例に記載された発明は、「主制御手段は図柄表示手段に図柄変動の開始から停止までの図柄変動時間を指令する変動時間情報を出力可能」な構成を実質的に具備しているということができる。

以上の1)?3)を勘案すれば、本願補正発明と引用例に記載された発明は、

「主に遊技盤の遊技動作を制御する主制御手段と、主制御手段から図柄制御コマンドを受信し、且つその図柄制御コマンドに基づいて遊技盤に設けられた図柄表示手段の図柄の変動制御を行なう図柄制御手段と、図柄表示手段の変動停止時の図柄に関連して遊技者に不利となる第1状態と有利となる第2状態とに変化可能な可変入賞装置とを備えた弾球遊技機において、
主制御手段は図柄表示手段に図柄変動の開始から停止までの図柄変動時間を指令する変動時間情報を出力可能に構成される弾球遊技機」の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。

<相違点>
本願補正発明においては、主制御手段から図柄制御手段に送信される図柄制御コマンドが、図柄変動パターンおよび停止図柄の情報を含まず、図柄制御手段が、当たり外れの種類別に夫々複数の図柄変動パターンを記憶するとともに、当たり外れ情報に基づいて図柄変動パターンと停止図柄を決定する停止図柄決定手段を有しているものであるのに対して、引用例に記載された発明においては、主制御手段から図柄制御手段に送信される図柄制御コマンドが、図柄変動パターンおよび停止図柄の情報を含むとともに、主制御手段が当たり外れ情報に基づいて図柄変動パターンと停止図柄を決定する停止図柄決定手段を有し、かつ、図柄制御手段が当たり外れ種類別に夫々複数の図柄変動パターンを記憶しているか否か不明である点。

(4)判断
上記相違点について、検討する。
拒絶査定時に提示した特開平6-246050号公報(【0076】【0118】【0119】参照)には、図柄制御手段に相当する表示制御装置400が主制御手段に相当する遊技制御手段360の制御の一部を負担すること、および主制御手段に相当する役物制御用CPU301は図柄の可変表示と停止態様のみを指令することにより、図柄制御手段側が停止時の図柄を選択して図柄表示手段に表示させていることから、主制御手段が当たり外れ情報を図柄制御手段に送り、図柄制御手段はその当たり外れ情報に基づいて、停止図柄を選択しているものである。また、特開平11-76571号公報(【003】?【0005】、【0014】【0015】【0020】等参照)には、図柄制御手段に相当する特別図柄制御部160が主制御手段に相当する主制御部140の制御の一部を負担すること、および主制御部140から特別図柄制御部160に、各種スイッチの検知結果、当たり外れ情報に相当する当たりの当否判定結果や乱数値を送る一方で、特別図柄制御手段160から主制御部140へ、特別図柄当否判定結果、特別図柄の表示態様、遊技条件変動情報、音声情報、表示トラブルの有無などを送信しているのであるから、主制御手段が当たり外れ情報を図柄制御手段に送り、図柄制御手段は当たり外れの種類別に夫々複数の図柄変動パターンを記憶しておき、当たり外れ情報に基づいて、記憶している特別図柄を含む図柄変動パターンや停止図柄を決定しているものである。
以上のように、図柄制御手段が、当たり外れの種類別に夫々複数の図柄変動パターンを記憶しておくこと、および主制御手段から図柄制御手段に送られてきた当たり外れ情報を含む図柄制御コマンドに基づいて、図柄制御手段が図柄変動パターンや停止図柄を選択して決定することは、パチンコ遊技機技術分野の表示制御技術において周知技術にすぎない(以下、「周知技術」という。)ということができる。
また、例示するまでもなく、一般的に、複数の制御機能を有する機器から制御システムを構築するに当たって、主制御手段や中央制御装置等の機器が有するCPU、ROM、RAM等の能力と、パソコン、サーバー等の端末機器が有するCPU、ROM、RAM等の能力の間において、互いにどの程度の範囲において処理能力等を負担し合うかの決定は、その構築するシステム機器のサーバーの数、サーバーや中央制御装置の設置スペース、システムに組み込まれる中央制御装置やパソコンや端末機器の能力、中央制御装置側が負担するコストとパソコン、サーバーや端末側が負担するコスト等を勘案して決定される設計上の常識技術にすぎない。
そして、引用例に記載された発明および周知技術は、ともにパチンコ遊技機技術分野の表示制御技術において共通するのであるから、引用例に記載された発明に周知技術を利用することに格別の困難性を見出し得ない。
また、引用例に記載された発明と上記常識技術は、複数の制御機能を有する機器を用いて制御システムを構築する技術において関連するのであるから、引用例に記載された発明に上記常識技術を参酌することに格別の困難性を見出し得ない。
そうすると、上記常識技術を参酌して、引用例に記載された発明の主制御手段が、当たり外れの種類別に夫々複数の図柄変動パターンを記憶するとともに、図柄変動パターンと停止図柄を決定する停止図柄決定手段を備える構成に代えて、上記周知技術の「図柄制御手段が当たり外れの種類別に夫々複数の図柄変動パターンを記憶し、かつ、主制御手段から図柄制御手段に送られてきた当たり外れ情報を含む図柄制御コマンドに基づいて、図柄変動パターンと停止図柄を決定する停止図柄決定手段を設けること」を採用して、主制御手段から図柄制御手段に送信される図柄制御コマンドに、図柄変動パターンおよび停止図柄の情報を含まないようにするとともに、図柄制御手段が、当たり外れの種類別に夫々複数の図柄変動パターンを記憶し、当たり外れ情報に基づいて図柄変動パターンと停止図柄を決定する停止図柄決定手段を備えるようにすること、すなわち上記相違点に係る構成と為すことは、当業者が容易になし得る程度のことということができる。

(5)むすび
よって、本願補正発明は、引用例に記載された発明および周知技術並びに常識技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、本願補正発明によって奏する効果も、引用例に記載された発明および周知技術並びに常識技術に基づいて、普通に予測できる範囲内のものであって格別のものがあるとは認められないから、許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(6)補正却下の判断
以上のとおり、本願補正発明は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるので、平成16年3月1日付および平成15年12月22日付の手続補正は、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成16年3月1日付および平成15年12月22日付の手続補正は上記のとおり却下されているので、平成15年10月23日付の手続補正書における特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その請求項1において特定される以下のものである。

「主に遊技盤(5) の遊技動作を制御する主制御手段(50)と、前記主制御手段(50)から送信される図柄制御コマンドを受信し且つその図柄制御コマンドに基づいて遊技盤(5)に設けられた図柄表示手段(22)の図柄の変動制御を行なう図柄制御手段(60)と、前記図柄表示手段(22)の変動停止時の図柄に関連して遊技者に不利となる第1状態と遊技者に有利となる第2状態とに変化可能な可変入賞装置(18)とを備えた弾球遊技機において、
前記主制御手段(50)は図柄制御手段(60)に図柄変動の開始から停止までの図柄変動時間を指令する変動時間情報と、前記第1状態と第2状態の何れかの状態を指示する当たり外れ情報とを含む図柄制御コマンドを出力可能に構成され、前記図柄制御手段(60)は、当たり外れの種類別に夫々複数の図柄変動パターンを記憶しており且つ図柄制御コマンドに含まれる前記当たり外れ情報に基づいて図柄変動パターンと停止図柄を決定する停止図柄決定手段を備えた、ことを特徴とする弾球遊技機。」(以下、「本願発明」という。)

(1)引用例について
引用例の記載およびそれら記載事項は、上記2.(2)引用例についてに記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、上記2.(4)判断で検討した本願補正発明において、図柄制御コマンドにおいて「図柄変動パターン及び停止図柄の情報を含まない」なる構成を削除したものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.(4)判断?(5)むすびに記載したとおり、引用例に記載された発明および周知技術並びに常識技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるので、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明および周知技術並びに常識技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明および周知技術並びに常識技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項について検討するまでもなく本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-07 
結審通知日 2007-05-08 
審決日 2007-05-21 
出願番号 特願平11-296551
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 澤田 真治  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 中槙 利明
林 晴男
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 岡村 俊雄  

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