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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1160199
審判番号 不服2005-12368  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-30 
確定日 2007-07-05 
事件の表示 平成 9年特許願第342414号「可とう管入り光ファイバケーブル」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月 2日出願公開、特開平11-174293〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成9年12月12日に特許出願したものであって、本願の請求項に係る発明は、平成16年6月28日の手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】可とう管の1ピッチのブロックが一端部に内径側に突出する第1環状端部を備えた大径部と、一端部に外径側に突出する第2環状端部を備えるとともに環状の接続部を介して前記大径部に接続された小径部とからなり、第2環状端部が隣り合うブロックの大径部内にあって第1環状端部と実質的に接し、隣り合うブロックが管軸方向に変位可能かつらせん状につながるようにして1つの帯状板で形成された可とう管を有し、光ファイバが可とう管内に管内壁面との間に間隙をもって挿入された光ファイバケーブルにおいて、前記可とう管の外周面が有機ポリマーで被覆されており、線状または帯状の可とう性抗張力材が可とう管外周面と有機ポリマー被覆との間、または有機ポリマー被覆層内を管長手方向に沿って直線状に延びていることを特徴とする可とう管入り光ファイバケーブル。」

2.刊行物記載の事項
原査定の拒絶理由に引用した、この出願前に頒布された刊行物1:特開平3-231707号公報には、下記の事項が記載されている。
「1.たわみ管内に光ファイバが管内壁面と間隙を有して挿入されている光ファイバケーブルにおいて、前記たわみ管の1ピッチのブロックが一端部に内径側に突出する第1環状端部を備えた大径部と、一端部に外径側に突出する第2環状端部を備えるとともに環状の接続部を介して前記大径部に接続された小径部とからなり、第2環状端部が隣り合うブロックの大径部内にあって第1環状端部と実質的に接し、隣り合うブロックが管軸方向に変位可能かつらせん状につながるようにして1つの帯状板で形成されていることを特徴とする光ファイバケーブル。」(特許請求の範囲)、
「(実施例3)
第9図は、本発明の光ファイバケーブルのさらに他の例を示している。この実施例の光ファイバケーブル1cは、ステンレス鋼製たわみ管2に光ファイバ心線12を挿入したものであるたわみ管2に仕上り外径5.0mmのPE被覆2aを追加している以外は実施例1と同じである。」(3頁右下欄下から2行?4頁左上欄5行)。

3.対比・判断
本願発明と刊行物1記載の事項(以下、「引用発明」という。)とを対比するに、引用発明の「たわみ管」は、本願発明の「可とう管」に相当する。また、引用発明の「PE被覆」が「たわみ管」の外周を覆っていることは明らかであるから、引用発明には、本願発明の「可とう管の外周面が有機ポリマーで被覆され」た点が備わっている。

よって、両者は、
「可とう管の1ピッチのブロックが一端部に内径側に突出する第1環状端部を備えた大径部と、一端部に外径側に突出する第2環状端部を備えるとともに環状の接続部を介して前記大径部に接続された小径部とからなり、第2環状端部が隣り合うブロックの大径部内にあって第1環状端部と実質的に接し、隣り合うブロックが管軸方向に変位可能かつらせん状につながるようにして1つの帯状板で形成された可とう管を有し、光ファイバが可とう管内に管内壁面との間に間隙をもって挿入された光ファイバケーブルにおいて、前記可とう管の外周面が有機ポリマーで被覆されていることを特徴とする可とう管入り光ファイバケーブル。」の発明で一致し、下記の点で相違する。

相違点;
本願発明は、線状または帯状の可とう性抗張力材が可とう管外周面と有機ポリマー被覆との間、または有機ポリマー被覆層内を管長手方向に沿って直線状に延びているのに対して、引用発明は、この構成を有しない点。

上記相違点に付き検討する。
一般に光ファイバケーブルの抗張力不足を補うために、一次シースの外側に細いステンレス線等の線状抗張力体を設け、その外側にポリエチレン等の有機ポリマーの二次シースを押し出し被覆することが従来周知である(例えば、実願昭53-084203号(実開昭55-1247号)のマイクロフィルムの第2頁2行?第3頁4行参照。)ところ、この種、可撓性のある内側管状部材やLPA(ラミネイテッドアルミニウムポリエチレン)パイプ(本願発明の「可とう管」に相当。)内に間隙をもって光ファイバが挿入された光ファイバケーブルにおいて、外被として、塩化ビニールなどの管状部材やポリエチレンシース(本願発明の「有機ポリマー被覆」に相当。)を設け、ケブラ繊維、スチールワイヤまたはFRPなどの抗張力材(本願発明の「線状または帯状の可とう性抗張力材」に相当。)を前記可とう管と有機ポリマー被覆との間に縦添えし、または有機ポリマー被覆層内に管長手方向に沿って直線状に埋込むことによって、光ファイバケーブルの抗張力を高めることもまた従来周知の技術(例えば、原審で引用した特開平4-265915号公報、及び、特開昭62-231915号公報の第1図及び第3図並びにこれに関する発明の詳細な説明を参照。)である。
してみると、引用発明の可とう管入り光ファイバケーブルの抗張力を高めるために、PE被覆に代えて上記従来周知の技術を採用し、上記本願発明の相違点の構成となすことは必要に応じて当業者が容易に想到し得たものである。

また、本願発明によってもたらされる「抗張力材により可とう管の伸びが極めて小さくなるので、光ファイバケーブルに過大な引張力が生じることはない。抗張力材は可とう管の外周面と有機ポリマー被覆との間、または有機ポリマー被覆層内で保持されているので、光ファイバケーブルは可とう性を失うことはない。」という明細書記載の効果は、刊行物1に記載された事項及び従来周知の技術から予想し得る程度のものであり、格別とはいえない。

4.むすび
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-02 
結審通知日 2007-05-08 
審決日 2007-05-21 
出願番号 特願平9-342414
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 昌夫笹野 秀生  
特許庁審判長 向後 晋一
特許庁審判官 吉田 禎治
吉野 公夫
発明の名称 可とう管入り光ファイバケーブル  
代理人 矢葺 知之  
代理人 津波古 繁夫  

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