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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1160301
審判番号 不服2003-22046  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-13 
確定日 2007-07-12 
事件の表示 平成5年特許願第34099号「図柄組合わせ式遊技機用の図柄可変表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成6年8月16日出願公開、特開平6-225962〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯、本願発明

本願は、平成5年1月29日の出願であって、平成15年10月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年11月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年12月8日付けで手続補正がなされたものであり、その発明は、平成15年12月8日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「【請求項1】 左、中、右の位置に縦列セットされて独自に図柄変動表示機能を有する3列の図柄表示ユニット(45)と、遊技盤(M)に配設されたセーフ球入賞検出用の始動入賞具(4)内のスイッチ(5)がセーフ球を検出することで発生する該始動入賞具(4)からの1つの始動入力条件に対応して前記3列の図柄表示ユニット(45)の図柄変動開始および図柄位置検出に基く図柄変動停止を含む制御をなし得、外れ、大当りの何れか1つを設定すると共に、各図柄ユニット(45)に異なる変動時間(T1,T2,T3,T4,T5)を設定する制御回路装置(E)と、3列の図柄表示ユニット(45)における図柄を透視表示し得る透視表示体(31)とを備え、前記始動・停止条件に基き前記3列の図柄表示ユニット(45)による図柄組合わせゲームを展開して予め設定された図柄同志の組合わせに係る入賞成立時に対応して特別遊技状態を呈することが可能とされたパチンコ遊技機における図柄可変表示装置において、
前記3列の図柄表示ユニット(45)では複数種類の図柄を1コマ単位で停止表示し得る回転図柄表示体(54)および駆動モータ(47)、そして図柄位置検出手段(50)を含んで構成され、夫々の回転図柄表示体(54)において、当り用と外れ用および特別当り用とに設定区分された複数種類の図柄(59a,59b,59c)を基本的には同一間隔の1コマ分単位で形成配置するもとで、左列および右列の特別当り用図柄(59b,59b)を夫々1コマ単位の表示内容とし、中列の特別当り用図柄(59b)を2コマ分の同種有効な当り用図柄としての表示内容をもつ条件に形成して所要位置に配置し、
前記透視表示体(31)では、前記3列の図柄表示ユニット(45)における回転図柄表示体(54)の2コマ分の有効な図柄(59a,59b,59c)を透視表示できる一定透視面域をもつ表示窓(34)を形成すると共に、この3列の表示窓(34)に停止表示される夫々の図柄(59a,59b,59c)同志の組合わせ停止位置の指針とされて入賞成立の有無の判断目安とされる上下2本の水平入賞ライン(35a,35b)と、互いに交差する2本の斜入賞ライン(35c,35d)を形成し、中列の回転図柄表示体(54)の特別当り用図柄(59b)が前記表示窓(34)に2コマ分の有効図柄として停止表示された場合に、左列および右列の回転図柄表示体(54)の同種特別当り用図柄(59b,59b)が、前記水平入賞ライン(35a,35b)および斜入賞ライン(35c,35d)上に整一状態で停止表示されることで前記特別遊技状態が成立可能に構成され、
前記3列の図柄表示ユニット(45)では、前記制御回路装置(E)で設定された前記変動時間(T1,T2,T3,T4,T5)に基いて3列の回転図柄表示体(54)を、左列、右列、中列の順、あるいは左列、中列、右列の順で停止するよう構成したことを特徴とする図柄組合わせ式遊技機用の図柄可変表示装置。」(以下、「本願発明」という)


2.引用刊行物記載の発明

(第1引用刊行物:特開平3?21279号公報)
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成3年1月30日に頒布された特開平3?21279号公報(以下、「第1引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。

(1-a) 「各リール2a?2cに表示されたシンボルマークのうち3個を観察するための表示窓6」(第2頁右下欄第18-20行)
(1-b) 「前記表示窓6には、複数の判定ライン5a?5eが表示されており」(第3頁左上欄第5-6行)
(1-c) 「第3図は、スロットマシンの制御装置を示すものである。各パルスモータ10a?10cには、それぞれ第1リール2a、第2リール2b、第3リール2cが取り付けられており、第2図に示すようにスロットマシン内部から表示窓6にのぞんでいる。各リール2a?2cにはそれぞれのリール外周から突出し、各リール2a?2cの原点位置を表わす遮光片11a、11b、11cが設けられている。またこの遮光片11a?11cの通過を検出するセンサ12a、12b、12cがそれぞれ設けられていて、それぞれの遮光片11a?11cの通過を検出し、信号を制御装置14に送って各リール2a?2cの回転位置のチェックに用いる。」(第3頁左上欄第8行-右上欄第1行)
(1-d) 「始動レバー4が下げられると制御装置14は各リール2a?2cを始動させる。なお各ストップボタン3a?3cが操作されると操作のタイミングに応じて制御装置14が各リール2a?2cを停止制御する。コイン払い出し器17は、有効化された判定ライン上に当りシンボル配列が現れた時に、この当りシンボル配列の『当り』の程度に応じた枚数のコインを払い出す。」(第3頁右上欄第9-16行)
(1-e) 「この第1判定データ20は大当りとして『777』を、中当りとして『77』のシンボルマークの組み合わせを、それぞれ1/3と2/3の確率で出現させるグループを選択するかという、『グループ選択の可否』を決定する確率テーブルとして用いられ」(第3頁左下欄第1-6行)
(1-f) 「各パルスモータ10a?10cは、駆動制御部26a?26cよりの駆動パルスによって駆動されるが、各リール2a?2cの原点位置からの駆動パルス数と各絵柄の位置は対応しているので、その駆動パルス数を数えることで各絵柄の停止位置を制御できる。」(第3頁右下欄第4-9行)
(1-g) 「始動レバー4を下げると、第1乱数発生部18は『1』?『100』までの数値範囲で乱数を発生させ、任意の一つの数をサンプリングする。」(第4頁左上欄第13-15行)
(1-h) 「第1判定部23は、第1判定データ20を参照することによりサンプリングされた乱数値が『1』?『100』までの発生範囲のうち『50』の数値にあたるときは『グループ選択可』であると判定する。」(第4頁左上欄第19行-右上欄第3行)
(1-i) 「『チェリー、チェリー』のシンボルマークが判定ライン5c上に揃って1枚の少量のコインを払い出す『小当り』などの役も含められる。」(第4頁右上欄第15-17行)
(1-j) 「第8図のa1?a6、b1?b6、c1?c6は、『大当り』、『中当り』のときに、各リール2a?2c上に表示された『7』のシンボルマークが、各リール2a?2cが停止制御されたときに停止する位置を模式的に示した図である。」(第4頁右下欄第6-10行)
(1-k) 「ストップボタンの代わりにタイマを用いて、各リールを自動停止させてもよい。」(第6頁左上欄第13-15行)

また、第2図には、各リール2a?2cが左、中、右の位置に縦列セットされ、表示窓6に各リールを透視できる3つの領域が形成されたものが記載されている。
第3図及び第8図には、各リールに『7』、『チェリー』、その他複数種類のシンボルマークを同一間隔で表示したもの、並びに、シンボルマークが停止する位置(a1?a6等)がシンボルマークと同じ間隔で記載されている。

これら記載事項によると、第1引用刊行物には、
「左、中、右の位置に縦列セットされた3列のリールと、始動レバーが下げられると前記3列のリールを始動させ、各リールの原点位置からの駆動パルス数に基づいて停止位置を制御し、第1乱数発生部からサンプリングした乱数により大当り又は中当りを出現させるか否かを判定する制御装置と、3列のリールに表示されたシンボルマークを観察するための表示窓とを備え、各リールの始動、停止制御の後に、有効化された判定ライン上に当りシンボル配列が現れた時に『当り』の程度に応じた枚数のコインを払い出すスロットマシンにおいて、当該スロットマシンは、各リールのシンボルマークの停止位置を制御できるパルスモータと、各リールの原点位置を表す遮光片及び当該遮光片の通過を検出するセンサを含んで構成され、各リールには『7』、『チェリー』、その他複数種類のシンボルマークを同一間隔で表示し、前記表示窓には3列のリールを透視できる3つの領域、及び複数の判定ラインを形成し、タイマにより設定された時間に基づいて各リールを停止するよう構成したスロットマシン」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。


(第2引用刊行物:特開昭63-31689号公報)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である昭和63年2月10日に頒布された特開昭63-31689号公報(以下、「第2引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
(2-a) 「本発明はポーカーマシーン、フルーツマシーンまたはスロットマシーンとして知られるゲームマシーンに関する」(第2頁左上欄第10-12行)
(2-b) 「一般的には、カードとして認識される各シンボルに割当てられたスペースはリール上のストップ数の関数であり、各シンボルに等しいスペースをおくことは、リールのストップ機構の機械的特性により支配されていた。さらに、従来ではリールのそれぞれの停止位置に1つのシンボルを割当てることが行なわれていた。」(第2頁右上欄第2-8行)
(2-c) 「従来のマシーンにはシンボルが従来のシンボルのスペースまたはカードの倍数に相当するスペースを占拠する場合もある。」(第2頁右上欄第15-18行)
(2-d) 「第6図から第10図において、自由回転リールを有する従来のポーカ-マシーンがストップ機構を有したものとして示されており、・・・カード30はリールの周の標準的な分割状態であり、典型的にはリールには25枚のカードが設けてある。このような装置においては、第6図、第7図及び第8図に示す“JACKPOT”シンボルのような標準カードを2倍または3倍したようなシンボル領域を用いることにより、本発明を適用することができる。」(第4頁左下欄第14行-右下欄第4行)
(2-e) 「2倍の大きさのカードの最初の半分でリールがストップしたかどうか確認し・・・、リールが2倍の大きさのカードの後の半分で止まっているかどうか確認し、・・・リールが2倍のカードのいずれの半分に相当するところで止まっていない場合、プログラムはその標準動作を単純に続ける220。」(第5頁左上欄第3-16行)

これら記載事項によると、第2引用刊行物には、
「リールの周に等しい間隔で停止位置が設けられ、それぞれの停止位置に基本的には1つのシンボルを割り当てるスロットマシーンにおいて、“JACKPOT”シンボルについては標準シンボルを2倍したシンボル領域を用いて表示し、当該“JACKPOT”シンボルが割り当てられた停止位置は2倍の大きさのシンボル領域の“最初の半分”と“後の半分”にそれぞれあるもの」
が記載されている。
なお、第2引用刊行物には「ナツジング」に関する技術も開示されているが、付加的なものであるから、上記のとおりの技術が開示されているものと認める。


3.対比

本願発明と引用発明とを比較すると、
引用発明の「スロットマシン」は、図柄組合わせ式遊技機に該当し、そのリール、制御装置、表示窓、パルスモータ、センサーを含めた構成は、本願発明の「図柄組合わせ式遊技機用の図柄可変表示装置」に相当する。
また、引用発明の「制御装置」は本願発明の「制御回路装置」に相当し、以下同様に、「シンボルマーク」は「図柄」に、「表示窓」は「透視表示体」に、「リール」は「回転図柄表示体」に、「パルスモータ」は「駆動モータ」に、「各リールの原点位置を表す遮光片及び当該遮光片の通過を検出するセンサ」は「図柄位置検出手段」に、「リールを透視できる3つの領域」は「有効な図柄を透視表示できる一定透視面域をもつ表示窓」に、「判定ライン」は「入賞ライン」に、それぞれ相当する。
引用発明の制御装置が「始動レバーが下げられると前記3列のリールを始動させ」る点は、本願発明の制御回路装置が「1つの始動入力条件に対応して前記3列の図柄表示ユニットの図柄変動開始」をする点に、また、「各リールの原点位置からの駆動パルス数に基づいて停止位置を制御」する点は、原点位置からの駆動パルス数とシンボルマークの位置は対応していることから、「図柄位置検出に基く図柄変動停止を含む制御」をする点に、さらに、「第1乱数発生部からサンプリングした乱数により大当り又は中当りを出現させるか否かを判定する」点は、「外れ、大当りの何れか1つを設定する」点に、それぞれ相当する。
引用発明の「各リールの始動、停止制御の後に、有効化された判定ライン上に当りシンボル配列が現れた時に『当り』の程度に応じた枚数のコインを払い出す」点は、本願発明の「始動・停止条件に基き前記3列の図柄表示ユニットによる図柄組合わせゲームを展開」する点に相当する。
引用発明の「リール」、「パルスモータ」、「各リールの原点位置を表す遮光片及び当該遮光片の通過を検出するセンサ」で構成されるものは、本願発明の「図柄表示ユニット」(回転図柄表示体、駆動モータ、図柄位置検出手段を含んで構成される)に相当し、本願発明と同様に「独自に図柄変動表示機能を有する」ものであり、さらに、引用発明においてシンボルマークの停止位置はシンボルマークの間隔と同じ間隔とされているから、本願発明と同様に「複数種類の図柄を1コマ単位で停止表示し得る」ものでもある。
引用発明の3列のリールは、シンボルマークを同一間隔で表示したものであるとともに、そのシンボルマークである「7」、「チェリー」、及びその他のシンボルマークは、それぞれ、大当り、小当り、外れの組合わせに関係しているから、本願発明の回転図柄表示体と同様に「当り用と外れ用および特別当り用とに設定区分された複数種類の図柄を基本的には同一間隔の1コマ分単位で形成配置」したものである。
引用発明で各リールの停止に関する「タイマにより設定された時間」は、本願発明の回転図柄表示体の停止に関する「変動時間」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「左、中、右の位置に縦列セットされて独自に図柄変動表示機能を有する3列の図柄表示ユニットと、1つの始動入力条件に対応して前記3列の図柄表示ユニットの図柄変動開始および図柄位置検出に基く図柄変動停止を含む制御をなし得、外れ、大当りの何れか1つを設定する制御回路装置と、3列の図柄表示ユニットにおける図柄を透視表示し得る透視表示体とを備え、前記始動・停止条件に基き前記3列の図柄表示ユニットによる図柄組合わせゲームを展開する図柄可変表示装置において、
前記3列の図柄表示ユニットでは複数種類の図柄を1コマ単位で停止表示し得る回転図柄表示体および駆動モータ、そして図柄位置検出手段を含んで構成され、夫々の回転図柄表示体において、当り用と外れ用および特別当り用とに設定区分された複数種類の図柄を基本的には同一間隔の1コマ分単位で形成配置するもとで、左列および右列の特別当り用図柄を夫々1コマ単位の表示内容とし、
前記透視表示体では、前記3列の図柄表示ユニットにおける回転図柄表示体の有効な図柄を透視表示できる一定透視面域をもつ表示窓を形成すると共に、この3列の表示窓に停止表示される夫々の図柄同志の組合わせ停止位置の指針とされて入賞成立の有無の判断目安とされる入賞ラインを形成し、
前記3列の図柄表示ユニットでは、設定された変動時間に基いて3列の回転図柄表示体を停止するよう構成したことを特徴とする図柄組合わせ式遊技機用の図柄可変表示装置。」 の点で一致し、次の点において相違する。

(1) 本願発明では、図柄組合わせ式遊技機用の図柄可変表示装置は「パチンコ遊技機における」ものと特定しており、また、図柄変動を開始する始動入力条件は「遊技盤に配設されたセーフ球入賞検出用の始動入賞具内のスイッチがセーフ球を検出することで発生する当該始動入賞具からの」ものとしているのに対し、引用発明は「スロットマシン」に関するものであり、図柄変動を開始する始動入力条件は「始動レバー」からのものである点。(以下、相違点1という。)

(2) 本願発明では制御回路装置が「各図柄ユニットに異なる変動時間を設定」し、当該設定された変動時間に基づいて「3列の回転図柄表示体を、左列、右列、中列の順、あるいは左列、中列、右列の順で停止する」のに対し、引用発明ではそのような特定はされていない点。(以下、相違点2という。)

(3) 図柄組合わせゲームを展開して予め設定された図柄同志の組合わせに係る入賞成立が生じた時に、本願発明では、「特別遊技状態を呈することが可能とされ」ているが、第1引用刊行物には特別遊技状態について記載がない点。(以下、相違点3という。)

(4) 本願発明では、「中列の特別当り用図柄を2コマ分の同種有効な当り用図柄としての表示内容をもつ条件に形成して所要位置に配置」しているのに対し、引用発明では、中列の図柄も夫々1コマ単位の表示内容である点。(以下、相違点4という。)

(5) 本願発明では、透視表示体で有効な図柄を透視表示できる範囲を「2コマ分」とし、また、当該透視表示体に形成される入賞ラインを「上下2本の水平入賞ラインと、互いに交差する2本の斜入賞ライン」としているのに対し、第1引用刊行物には透視表示できる範囲を「2コマ分」とすることも、2コマ分の範囲に2本の斜入賞ラインを形成することも開示されていない点。(以下、相違点5という。)

(6) 本願発明では、「中列の回転図柄表示体の特別当り用図柄が前記表示窓に2コマ分の有効図柄として停止表示された場合に、左列および右列の回転図柄表示体の同種特別当り用図柄が、前記水平入賞ラインおよび斜入賞ライン上に整一状態で停止表示されることで前記特別遊技状態が成立可能に構成され」ているが、引用発明ではそのような「当り図柄組合わせ」は採用していない点。(以下、相違点6という。)


4.当審の判断

上記各相違点について検討する。

4-1.相違点4乃至6について
第2引用刊行物に開示された図柄(以下、「公知図柄」という。)は、停止位置については2つの同じ図柄が上下に連続してあるものとして取り扱いつつ、表示上は標準の2倍の大きさで1つの大きな図柄を表示しているものであるから、本願発明の「2コマ分の同種有効な当り用図柄としての表示内容をもつ条件に形成し(た)」図柄に相当する。
当該公知図柄を引用発明の図柄可変表示装置における中列の特別当り用図柄として用いること、それ自体は格別の技術的困難性の認められない単なる転用であり、その転用に伴って、当該公知図柄が中列に停止表示した図柄組合わせのうち特定のものを、「特別当り」の図柄組合わせとして設定する必要が生じるにすぎない。
しかしながら、図柄可変表示装置において、停止表示される種々の図柄組合わせから特定のものを選択して「当り」として設定することは、遊技機の遊技内容を決めることであって、任意の図柄組合わせが選択でき且つ設定できるものである。上下2コマ分の範囲で当り用図柄が3列に停止表示される図柄組合わせとしても、3つの当り用図柄が「水平」に並ぶ配列以外でも、任意の配列を「当り」として採用し得ることが本願出願前に周知である(例えば、特開平3-198881号公報に開示された「谷形」「山形」に並ぶ配列(同公報第1図の入賞ライン4f又は4g)や、特開昭64-58284号公報の第21a図及びその説明箇所に開示された「その他の組合せ」の配列などを参照されたい。さらに、実願昭62-57954号(実開昭63-163877号)のマイクロフィルムには、中列の1つの図柄を介して「水平入賞ライン」及び「斜入賞ライン」を共に設定することが開示されている(同文献中、特に第2図、第3図及びその説明箇所参照)。)。
そして、上記公知図柄を中列の特別当り用の図柄として転用した場合において、当該公知図柄が中列に停止表示され、且つ、(a) 左列と右列の上側(又は、下側)に同じ当り用図柄が停止表示した図柄組合わせ、及び、(b) 左列の上側と右列の下側(又は、左列の下側と右列の上側)に同じ当り図柄が停止表示した図柄組合わせの両者を、共に「特別当り」に設定することは、3列に特別当り用図柄が停止表示される組合わせの全てを特別当りとするにすぎず、格別の創意工夫を要することとは認められない。上記 (a)及び(b) の図柄組合わせは、本願発明の「水平入賞ラインおよび斜入賞ライン上に整一状態で停止表示」された図柄組合わせに該当するものである。

してみると、上記公知図柄を引用発明の回転図柄表示体の中列の所要位置に転用して、相違点4に係る本願発明の構成の如く「中列の特別当り用図柄を2コマ分の同種有効な当り用図柄としての表示内容をもつ条件に形成して所要位置に配置」した構成とすることも、さらにその場合に、相違点6に係る本願発明の構成の如く「中列の回転図柄表示体の特別当り用図柄が前記表示窓に2コマ分の有効図柄として停止表示された場合に、左列および右列の回転図柄表示体の同種特別当り用図柄が、前記水平入賞ラインおよび斜入賞ライン上に整一状態で停止表示されることで」当りとすることも、当業者が容易に為し得たことである。(なお、「当り」の場合に「特別遊技状態が成立可能」にすることは、以下で相違点3として検討するが、結論として格別のことではない。)

さらに、上下2コマ分の範囲で遊技をする図柄組合わせ式遊技機は周知であり(例えば、特開平3-55082号公報等参照)、また、「当り図柄組合わせ」となる入賞ラインを遊技者に明示することは慣用的に行われている事項にすぎない。してみると、上記公知図柄を引用発明に転用して上下2コマの範囲で「特別当り」の図柄組合わせを設定する場合に、その遊技内容を上下2コマの範囲に限定することは設計的事項にすぎず、相違点5に係る本願発明の構成の如く、透視表示体の透視表示範囲を「2コマ分」とすることも、また、透視表示体に「上下2本の水平入賞ラインと、互いに交差する2本の斜入賞ライン」を形成することも、当業者であれば適宜に為し得たことである。


4-2.相違点1乃至3について
図柄組合わせ式遊技機用の図柄可変表示装置に関する技術は、通常は、図柄組合わせ式遊技機の種類によらず共通しており、パチンコ遊技機にもスロットマシンにも実施できることは周知であって、本願発明の適用対象を「パチンコ遊技機」に特定したことに、格別の意義も技術的困難性も認められない。
そして、パチンコ遊技機で図柄可変表示装置を用いる場合には、「遊技盤に配設されたセーフ球入賞検出用の始動入賞具内のスイッチがセーフ球を検出することで発生する当該始動入賞具から」始動入力条件を得て図柄変動を開始することも、また、「各図柄ユニットに異なる変動時間を設定」し、当該設定された変動時間に基づいて「3列の回転図柄表示体を、左列、右列、中列の順、あるいは左列、中列、右列の順で停止する」ことも、何れも慣用的に行われている事項にすぎず、格別のことではない。(必要であれば、特開平4-327870号公報、特開平5-7650号公報参照。)
また、図柄組合わせゲームを展開して予め設定された図柄同志の組合わせに係る入賞成立が生じた時に「特別遊技状態を呈すること」も、図柄組合わせ式遊技機用において慣用的に行われている事項にすぎず、格別のことではない。
してみると、図柄組合わせ式遊技機用の図柄可変表示装置の適用対象を「パチンコ遊技機」に特定することも、また、相違点1?3に係る本願発明の構成を採用することも、当業者が容易に為し得たことにすぎない。

さらに、上記で検討した相違点4?6に係る構成(2コマ分の同種図柄としての表示内容をもつ図柄の採用と、その入賞ラインに関する構成)と、相違点1?3に係る構成(パチンコ遊技機への特定、図柄変動の開始・停止、特別遊技状態の付与に関する構成)とが相互に関連していて、本願発明で両者の構成をともに採用するにあたって格別の技術的困難があったものとも、また、両者の構成を採用した本願発明が新たに相乗的な作用効果を奏するに至ったものとも認められない。本願発明の効果は、引用発明、第2刊行物に記載された公知技術、及び、本願出願前の周知技術、慣用的技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願請求項1に係る発明は、引用発明、第2刊行物に記載された公知技術、及び、本願出願前の周知技術、慣用的技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。


5.むすび

したがって、本願請求項1に係る発明は、第1引用刊行物に記載された発明、及び第2引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-10 
結審通知日 2007-05-15 
審決日 2007-05-30 
出願番号 特願平5-34099
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 林 晴男
榎本 吉孝
発明の名称 図柄組合わせ式遊技機用の図柄可変表示装置  
代理人 山本 喜幾  

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