• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1160302
審判番号 不服2003-23720  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-08 
確定日 2007-07-12 
事件の表示 特願2000-371309「遊技場用のデータ表示システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 6月18日出願公開、特開2002-172195〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年12月6日に出願したものであって、平成15年3月31日付の最初の拒絶理由が通知され、平成15年5月7日付で手続補正がなされたが、平成15年8月6日付の最後の拒絶理由が通知され、平成15年9月10日付けで手続補正がなされたが、平成15年10月31日付で平成15年9月10日付けの前記手続補正が却下されるとともに、同日付で拒絶査定がなされた。これに対し、平成15年12月8日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年12月8日付の手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成15年12月8日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

〔理由〕
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、

「遊技場内の各遊技機と対応した位置に当該遊技機についての遊技データを表示するための表示装置を設けた遊技場用のデータ表示システムにおいて、
遊技客を特定可能な情報が記録された携帯可能な記録担体と、
各遊技機に対応して設けられ前記記録担体に記録された情報を読み取り可能に設けられた情報読取手段と、
各遊技機の遊技データを逐次更新記憶すると共に、前記情報読取手段が読み取った情報に基づいて遊技客が遊技した遊技機の識別情報を遊技履歴データとして記憶可能に設けられ、遊技機側からの要求に応じて上記遊技履歴データにより特定される遊技機についての遊技データを返信可能に構成された情報処理手段と、
前記遊技客が遊技対象の遊技機を変更して新たな遊技機での遊技を開始した状態時に、変更前に遊技していた遊技機についての変更後における他の遊技客による遊技データを前記情報処理手段に要求すると共に、その要求に応じて返信された遊技データを、新たに遊技開始した遊技機と対応した表示装置に当該遊技機の遊技データと一緒に参考遊技データとして比較表示する制御を行う表示制御手段とを備え、
前記表示制御手段は、前記表示装置に対し前記参考遊技データを表示する際に、前記遊技客が遊技対象の遊技機を変更した時点以降の遊技データを表示することを特徴とする遊技場用のデータ表示システム。」

と補正された。
上記補正は、補正前(平成15年5月7日付手続補正書により補正された特許請求の範囲)の請求項1に記載された発明を特定する事項である、「(遊技客が)遊技機へ移動する前に遊技していた遊技機についての遊技データ」、及び、参考遊技データとして表示される遊技データを、それぞれ「(遊技客による遊技機の)変更前に遊技していた遊技機についての変更後における他の遊技客による遊技データ」、及び、「遊技客が遊技対象の遊技機を変更した時点以降の遊技データ」に限定する補正を含むものであるから、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法126条第4項の規定に適合するか)について以下検討する。

(2)特許法第29条第2項について
(2.1.)引用例の記載内容
本願の出願の日前に頒布された、特開平10-305151号公報(以下、「引用例1」という。)、特開平11-197334号公報(以下、「引用例2」という。)、特開平10-146432号公報(以下、「引用例3」という。)には、それぞれ次の事項が記載されている。
・引用例1
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 遊技台が多数設置された遊技場に設けられるものであって、
遊技客を特定するための識別コードが記憶された記憶担体と、
前記遊技台に対応する位置に前記記憶担体の記憶内容を読取可能に設けられた読取手段と、
前記遊技台毎の稼働情報を記憶する稼働情報記憶手段と、
遊技客による前記遊技台での遊技開始を判定する遊技開始判定手段と、
この遊技開始判定手段が遊技開始したと判定した後に遊技の終了を判定する遊技終了判定手段と、
前記遊技開始判定手段が遊技開始を判定してから前記遊技終了判定手段が遊技終了を判定するまでの間に使用された前記記憶担体から読取った識別コードと前記稼働情報記憶手段が記憶している稼働情報とを対応付ける遊技客特定手段とを備えたことを特徴とする遊技場用管理システム。
【請求項2】 前記遊技客特定手段が対応付けた稼働情報と識別コードとの対応関係に基づいて前記遊技台毎の遊技履歴を作成する遊技履歴作成手段を備えたことを特徴とする請求項1記載の遊技場用管理システム。」、
「【請求項5】 前記遊技開始判定手段は、遊技開始を判定してから前記遊技終了判定手段が遊技終了を判定するまでの期間を除いた状態において前記読取手段が前記記憶担体から識別コードを読取ったときに遊技開始であると判定することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の遊技場管理システム。」、
「【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、遊技台に1対1で対応して設けられ記憶担体の利用により遊技媒体の貸出及び預入等の各種サービスを行う遊技場用管理システムに関する。」、
「【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、識別コードが記憶された記憶担体の利用により各種サービスを行う構成において、遊技客と遊技台の遊技履歴とを確実に対応付けて管理することができる遊技場用管理システムを提供することにある。」、
「【0039】
【発明の実施の形態】
以下、本発明をパチンコホールに適用した一実施例について図面を参照しながら説明する。
図2には、例えばパチンコホールの遊技会員となった遊技客に対して発行される会員カード1(本発明の記憶担体に相当)の正面図が示されている。この会員カード1は、その表面にテープ状の磁気データ記録部1aが設けられていると共に、会員(遊技客)の氏名、パチンコホール名、有効年月日などエンボス加工により形成したカードデータ表示部1bが設けられている。この場合、上記磁気データ記録部1aには、例えばパチンコホールを特定するための加盟店コード、前記会員に割り当てられたID(識別コード)であるカードID、カード有効年月日を示す有効期限データなどが記録されている。」、
「【0046】
台毎計数返却機9(本発明の貸出手段、預入手段、補助貸出手段に相当)は、パチンコ遊技台3の左方に当該パチンコ遊技台3と1対1で対応した隣接状態で設置されるものであり、以下においては、この台毎計数返却機9について説明する。
【0047】
即ち、台毎計数返却機9は、縦長の矩形箱状に構成されており、その前面には、呼び出しランプ10a、対応するパチンコ遊技台3において特賞及び打止が発生した各状態を表示するための特賞表示ランプ10b及び打止表示ランプ10c、パネルユニット11、パチンコ玉放出用のノズル12、硬貨返却口13、前記会員カード1を挿入するためのカード挿入口14、カード排出用のイジェクトスイッチ15、前記案内管8の基部が連結された計数機ユニット16が設けられている。」、
「【0049】
上記パネルユニット11には、図5に拡大して示すように、硬貨投入口18、硬貨戻しボタン19、呼び出しスイッチ20、画像表示可能な平面ディスプレイ(例えばドット表示タイプの液晶ディスプレイ)より成る表示部21、この表示部21にパチンコホール側から提供される各種の管理用データ(パチンコ遊技台3に関する特賞発生回数データなど)を表示する状態を選択するためのデータ画面選択スイッチ22、当該表示画面の内容を切換えるための合計2個のデータ画面切替スイッチ23、表示部21にテレビ放送画面を表示する状態を選択するためのTV画面選択スイッチ24、図示しないイヤホーンなどを通じて遊技客側に供給される音声出力のボリュームを調整するための合計2個のボリュームスイッチ25、上記TV画面用のチャンネル切替スイッチ26、遊技を中断する際に操作する中断スイッチ27、スイッチパネル28が設けられている。」、
「【0054】
台毎計数返却機9内に前記カード挿入口14と対応するように設けられたカードリーダ35は、当該カード挿入口14から挿入されたカードを内部に取り込むと共に、そのカードに記録されたデータを読み取る動作を行う構成となっており、内部に取り込んだ状態のカードの排出動作は、前記制御部34からの指令により行う構成となっている。
【0055】
図6には、台毎計数返却機9の電気的構成が機能ブロックの組み合わせにより示されている。この図6において、台毎計数返却機9が有する制御部34は、図示しないCPUの他にデータを記憶するためのメモリなどを含んで構成されている。
【0056】
この制御部34は、後述する主管理装置(図7に符号36を付して示す)との間でデータの送受信を、送受信部37を通じて行うようになっている。また、制御部34は、前記パネルユニット11内のスイッチ群からの操作信号、イジェクトスイッチ15からの操作信号、計数機ユニット16内の計数終了スイッチ31及び玉計数機29からの操作信号及び数値信号、検銭機構33からの判断信号、カードリーダ35による読み取りデータ、管理装置36からの送信データ、並びに予め記憶したプログラムに基づいて、パネルユニット11内の表示部21、呼び出しランプ10a、特賞表示ランプ10b、打止表示ランプ10c、放出機構17、プリンタ32、カードリーダ35の制御を行うと共に、主管理装置36との間の送受信処理のための制御を行う構成となっている。」、
「【0058】
図7にはパチンコホール内に設置された全部のパチンコ遊技台3及び台毎計数返却機9を含む全体のシステム構成が機能ブロックの組合わせにより示されている。この図7において、パチンコ遊技台3及び台毎計数返却機9の各対は、後述する主管理装置36(本発明の稼働情報記憶手段、遊技客特定手段、遊技履歴作成手段に相当)との間のデータ送受信動作を、それぞれに対応した遊技台管理端末器38(本発明の遊技開始判定手段、遊技終了判定手段に相当)を介して行う構成となっている。」、
「【0061】
そして、遊技台管理端末器38は、後述するように入力した信号に基づいて各パチンコ遊技台3の遊技ファイルを作成して主管理装置36に送信する。
【0062】
主管理装置36は、遊技台管理端末器38を介して各パチンコ遊技台3の制御を行う一方で、遊技台管理端末器38を介して各パチンコ遊技台3のデータを収集すると共に、収集した各種データに基づいて各種管理帳票を表示或いは印字する。また、主管理装置36は、遊技台管理端末器38からカードIDデータを入力したときは、そのカードIDに対応したカードの使用が有効か否かを会員ホストコンピュータ39(本発明の遊技客記憶手段に相当)により確認する。
【0063】
さて、図1は遊技台管理端末器38の構成を示している。この図1において、制御部40はCPUを主体として構成されており、入力処理部41を通じてパチンコ遊技台3及び台毎計数返却機9から使用種別を含むID信号、ラッキー中信号、確変中信号、計数中信号、中断中信号、玉皿玉有り信号、売上金額信号、アウト玉数信号、特賞中信号を入力することにより、第1の遊技履歴用レジスタ42に遊技の開始或いは特賞の種別或いはカードIDを判断するための情報を記憶する。」、
「【0072】
次に上記構成の作用を、台毎計数返却機9の動作を示す図9乃至図12を参照して説明する。
台毎計数返却機9の制御部40は、電源が投入されると、遊技ファイル49及び各レジスタ42,43,47を初期化によりクリアしてから(S901)、遊技開始条件が発生したかを判断する(S902)。この遊技開始条件とは遊技客が遊技を開始したものと判断するための条件で、以下の条件のうちの1つが満足した場合に成立する。
【0073】
1(○に1)売上入力……売上金額信号が入力した(現金による玉貸しがあった)。
2(○に2)会員カード1の(当日カード)使用…会員ホストコンピュータ39によりカードのIDが有効であることが確認された。
3(○に3)アウト入力…アウト信号が入力した(パチンコ遊技台3でアウト玉が発生した)。
【0074】
さて、制御部40は、遊技客が台毎計数返却機9により現金によりパチンコ玉の貸出しを受けたときは、対応するパチンコ遊技台3の売上が増加するので、遊技開始条件が成立したと判断して開始データをセットする(S903)。つまり、時計48の現在時刻を遊技ファイル49の遊技開始時刻記憶領域に遊技開始時刻としてセットすると共に、第1の遊技履歴用レジスタ42の遊技条件記憶領域に開始条件(上記1(○に1)?3(○に3)の何れか)を記憶する(図8参照)。この開始条件は遊技が終了したことを判定する解除判定に使用するためのものである。」、
「【0078】
この場合、遊技客が会員カード1を利用したときは(S910:YES)、第1の遊技履歴用レジスタ42の対応するID記憶領域にカードIDを記憶する(S911)。つまり、遊技客が遊技のために会員カード1(当日カード)により貯玉を引出したときは、第1の遊技履歴用レジスタ42の貯玉引出ID記憶領域にカードIDを記憶し、カードにより貯玉数の確認、或いは稼働データの確認が行われただけのときは、一般使用ID記憶領域にカードIDを記憶するもので、カードが使用される毎に、そのカードIDが使用種別(貯玉引出、一般使用)に応じて更新記憶されるようになっている。これらのカードIDは、後述するように遊技客を特定する際に利用されるようになっている。
【0079】
そして、制御部40は、解除タイマをリセットしてから(S912)、次のステップに移行することにより遊技終了を判定する。
以上の動作により、遊技客による遊技の開始が特定されると共に、遊技客が会員カード1を使用したときは、その使用種別に応じてカードIDが更新記憶される。
【0080】
・・・
さて、上述のようにして遊技が開始されると、パチンコ遊技台3からアウト玉数信号及びセーフ玉数信号が出力されるので、入力処理部44は、アウト玉数信号及びセーフ玉数信号を第2の遊技履歴用レジスタ43に出力する。これにより、第2の遊技履歴用レジスタ43のアウト玉数記憶領域には遊技開始からのアウト玉数が記憶されると共に、セーフ玉数記憶領域には遊技開始からのセーフ玉数が記憶される。」、
「【0105】
以上のようにして通常の特賞モード、確変モード或いはラッキーモードによる特賞が終了する毎に、主管理装置36には各遊技客による遊技情報を示す遊技ファイル49が順に記憶される。」、
「【0128】
図13は主管理装置36が作成した台番号1の遊技台別遊技履歴を示している。この図13において、遊技履歴帳票の上部には、パチンコ遊技台の台番号、機種、島が表示されていると共に、当該パチンコ遊技台で遊技した遊技客の順番に、その遊技時間、会員名、性別/年齢/職業、稼働(率)、売上(円)、貯玉引出(個)、景品・貯玉預入(個)、特賞回数、ベース、スタート、BO、TY、特賞履歴が記載されている。・・・」、
「【0131】
また、図15は遊技客別遊技履歴を示している。この図15において、遊技客遊技履歴帳票の上部には、遊技客種別及び遊技日付が表示されていると共に、当該遊技客が遊技したパチンコ遊技台の遊技情報が順に表示されている。また、遊技客別遊技履歴帳票の下部には当該遊技客が遊技したパチンコ遊技台数及び当該遊技客全体及び平均の遊技時間、稼働(率)、売上(円)、貯玉引出(個)、景品・貯玉預入(個)、特賞回数、ベース、スタート回数、BO、TYが表示されている。
【0132】
また、図16は所定の数日間にわたる遊技客別遊技履歴を示しており、表示内容は図15と同様であるので、その説明を省略する。
【0133】
上記構成のものによれば、パチンコ遊技台3及び台毎計数返却機9の稼働情報に基づいて遊技客がパチンコ遊技台3で遊技を開始したことを判定すると共に、当該遊技客がパチンコ遊技台3で遊技を終了したことを判定し、さらに遊技開始判定から遊技終了判定までの間に会員カード1が一度でも使用されたときは、当該会員カード1から遊技した遊技客を特定して履歴情報を作成するようにしたので、遊技客の持玉や特賞、打止などの情報をもとに遊技客の交代を判定しその履歴情報を作成する方法に比較して、遊技客を信頼性よく特定して精度の高い履歴情報を作成することができる共に、パチンコ遊技台毎に設けたカードリーダにカードが挿入されている間をその会員の収支データとして把握する方法に比較して、遊技客に会員カードをカードリーダに挿入することを強制する必要がなく、現実的に実施することができる。」。

ここで、前記表示部21に表示される、パチンコホール側から提供される各種の管理用データ(パチンコ遊技台3に関する特賞発生回数データなど)について、引用例1の発明の詳細な説明には、「パチンコ遊技台3及び台毎計数返却機9の各対は、後述する主管理装置36(本発明の稼働情報記憶手段、遊技客特定手段、遊技履歴作成手段に相当)との間のデータ送受信動作を、それぞれに対応した遊技台管理端末器38(本発明の遊技開始判定手段、遊技終了判定手段に相当)を介して行う構成となっている(段落【0058】)」と記載されていることなどから、引用例1に記載の前記「各種の管理用データ」が、遊技台管理端末器38及び主管理装置36がパチンコ遊技台3側からの要求に応じて、同パチンコ遊技台3の台番号により特定されるパチンコ遊技台3のデータを返信したものであることは明らかである。
そして、上記記載事項や、上記明らかな事項等を総合すると、引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1に記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

「パチンコホール内の各パチンコ遊技台3に1対1で対応する表示部21を備え、前記表示部21にはパチンコホール側から提供されるパチンコ遊技台3のデータが表示される遊技場用管理システムにおいて、
遊技客を特定するための識別コードが記憶された会員カード1と、
前記パチンコ遊技台3に対応する位置に前記会員カード1の記憶内容を読取可能に設けられた読取手段と、
各パチンコ遊技台3のデータを収集すると共に、前記識別コードに基づいて遊技客が遊技したパチンコ遊技台3の台番号を遊技履歴の一部として記憶可能に設けられ、パチンコ遊技台3側からの要求に応じて、前記遊技履歴の一部として記憶したパチンコ遊技台3の台番号により特定されるパチンコ遊技台3のデータを返信可能に構成された遊技台管理端末器38及び主管理装置36と、
前記表示部21等の制御を行う制御部34と、
を備えた遊技場用管理システム。」

・引用例2
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばパチンコ遊技機やスロットマシンのように、遊技媒体を使用した遊技に応じて当たり状態となったときに遊技媒体の払出動作を行うと共に、消費遊技媒体及び払出遊技媒体などに関するデータ管理用信号を出力するように構成された遊技機が多数台設置される遊技場用のデータ管理システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
例えば、パチンコホールにおいては、店内のパチンコ遊技機についての収支や大当たり(特賞)回数のデータなどを含む遊技機データを遊技客側に公開し、以て遊技客側の便宜を図るシステムが実用化されている。また、前記遊技機データを専用端末からダウンロードできるように構成されたマイコンより成る携帯型データ表示機を遊技客に提供するシステムも実現されており、このようなシステムによれば、携帯型データ表示機を利用したデータ分析を、パチンコホール外において時間をかけて行うことができるなど、遊技客側の利便性がさらに向上するという利点がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような携帯型データ表示機を利用したシステムでは、ダウンロードした遊技機データに基づいてパチンコ遊技機の特性などを分析することは可能であるが、遊技客個人の遊技成績(例えばパチンコ遊技機1の機種毎の損得結果、通算の損得結果など)については分析することが不可能である。このため、マイコンの機能を備えた携帯型データ表示機の機能を十分に活かしているとはいえず、この点が未解決の課題となっていた。
【0004】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、遊技客個人の遊技成績を携帯型データ表示機に表示できるようになり、以て遊技客側の利便性を大幅に向上させ得るなどの効果を奏する遊技場用のデータ管理システムを提供することにある。」、
「【0009】
さらに、前記携帯型データ表示機を、前記データ管理端末に接続された状態で、遊技客により予め設定された期間の遊技機データのみをダウンロードする構成とすることもできる(請求項4)。このような構成によっても、携帯型データ表示機に対して、遊技客が希望する期間の個人成績データを選択的に表示可能になるものであり、また、予め期間を設定しておけば、その期間において遊技機データのダウンロードが自動的に行われるから、この面からも利便性が向上するようになる。」、
「【0021】
つまり、台間玉貸機2は、パチンコ遊技機1から出力されるデータ管理用信号SDをホストコンピュータ3へ送信する機能の他に、通常の貸出機能による貸出高を示す売上信号、貯玉貸出機能による貸出高を示す貯玉払出信号、会員カードから読み取った会員データなどを含む売上データ信号をホストコンピュータ3へ送信する機能を有し、また、ホストコンピュータ3からの送信データを受信して記憶する機能も有する。さらに、台間玉貸機2は、データ管理端末として機能するために、パチンコ遊技機1からのデータ管理用信号SD並びに自身が出力する売上信号及び貯玉払出信号などに基づいて、それぞれ現在時点での累計スタート回数、特賞発生回数、確率変動状態発生回数、アウト玉数、セーフ玉数、売上金額、貯玉貸出数、特賞発生確率などを演算して表示用データとして蓄積する。そして、データ表示機4が接続されている状態では、上記のような表示用データのデータ蓄積動作を行う毎に、当該最新の表示用データをデータ表示機4へ逐次送信する機能を有するものである。この場合、上記表示用データには、対応するパチンコ遊技機1の機種名を示すデータや、他のパチンコ遊技機1についての同様のデータも含まれる。」、
「【0032】
ここでいう詳細履歴とは、選択された機種のパチンコ遊技機1毎についての遊技履歴であって、例えば各パチンコ遊技機1において特賞が発生するまでのスタート回数などを含むデータであり、上記詳細履歴表示ルーチンA16では、このような詳細履歴を表示パネル5に表示した状態をメニューキャンセルスイッチ8が操作されるまで保持する。そして、メニューキャンセルスイッチ8が操作されたときには、ステップA2に戻って通常画面を表示した状態に復帰する。
【0033】
また、上記履歴帳票とは、データ表示機4を所持した遊技客の当日での遊技履歴であり、上記履歴帳票表示ルーチンA17では、このような遊技履歴を図10に示すような形態で表示パネル5に表示する。具体的には、この遊技履歴表示画面は、該当する遊技客が遊技したパチンコ遊技機1毎の遊技履歴データ(遊技時間帯、特賞発生回数、スタート回数、差玉数)を、当該パチンコ遊技機1の台番号毎と対応付けた状態で1行ずつにまとめて表示すると共に、それらの遊技履歴データの累計データ(合計遊技時間、特賞発生回数の総数、スタート回数の総数、差玉数の合計)を表示したものであり、遊技客は、このような表示内容に基づいて自身の一日の遊技内容を把握できることになる。そして、履歴帳票表示ルーチンA17では、上記のような遊技履歴表示画面を表示した状態でメニューキャンセルスイッチ8が操作されたときには、ステップA2に戻って通常画面を表示した状態に復帰する。」、
「【0051】
次に、図5に示す割込処理プログラムについて説明する。即ち、この割込処理プログラムは、表示パネル5に対する上述のような表示データ並びに後述のような表示データの算出の基礎となる基礎データを採取するためのプログラムである。前にも述べたように、上記割込制御プログラムは、データ表示機4のプラグ5bが台間玉貸機2側のジャック2dに接続(挿入)された状態で実行されるものであるが、その接続状態では、台間玉貸機2から最新の表示用データ(累計スタート回数、特賞発生回数、確率変動状態発生回数、アウト玉数、セーフ玉数、売上金額、貯玉貸出数、特賞発生確率、機種名データなど)がデータ表示機4へ送信されるようになる。
【0052】
しかして、割込処理プログラムの実行時には、まず、最初に表示パネル5に対して、上記表示用データに基づいて図19及び図20に示すような遊技機データ画面を表示する(ステップB1)。具体的には、この遊技機データ画面には、対応するパチンコ遊技機1の台番号m1の他に、データ表示機4を所持した遊技客についての特賞発生回数、スタート回数、確率変動状態発生回数、特賞発生確率を示す個人データm2と、パチンコ遊技機1における累計特賞発生回数、累計スタート回数、累計確率変動状態発生回数、特賞発生確率を示す遊技機データm3とが表示されるようになっている。但し、割込処理プログラムの実行当初には個人データm2は発生していないので、図19に示すような初期値を表示した状態となる。」、
「【0064】
この場合、データ表示機4は、台間玉貸機2に接続された期間において遊技機データのダウンロードをリアルタイムに行う構成となっているから、その表示内容の信頼性が向上するようになる。」。

・引用例3
「【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、IDカードを利用して遊技台で遊技する遊技客に遊技台の稼働情報を提供する遊技情報公開システムに関する。」、
「【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、遊技客が自分の遊技成績を客観的に判断することができる遊技情報公開システムを提供することにある。」、
「【0009】
さて、遊技客が遊技台の稼働情報を確認したいときは、情報提供端末機のカードリーダにIDカードを挿入する。すると、情報提供端末機は、出力する稼働情報中にカードリーダがIDカードから読取った個人情報に対応した稼働情報が含まれていたときは、その稼働情報を他の遊技客に対応した稼働情報と識別可能に出力する。これにより、遊技客は、自分の遊技成績を他の遊技客の遊技成績と比較検討することができる。
【0010】
また、本発明は、各遊技台に対応して設けられたカードリーダと、遊技台の稼働情報と前記カードリーダがIDカードから読取った個人情報とを対応させた状態で記憶管理する管理装置と、外部操作に応じて前記管理装置が記憶している稼働情報を出力する情報提供端末機とを設けた上で、前記情報提供端末機は、カードリーダを有し、前記管理装置が記憶している稼働情報中に前記カードリーダがIDカードから読取った個人情報に対応した稼働情報が含まれていたときは、その稼働情報を他の遊技客に対応する稼働情報と識別可能に出力するようにしたものである(請求項2)。
【0011】
このような構成によれば、情報提供端末機は、カードリーダがIDカードに記憶された個人情報を読取ったときは、管理装置が記憶している稼働情報中にカードリーダがIDカードから読取った個人情報に対応した稼働情報が含まれているかを判断し、含まれていたときは、その稼働情報を他の遊技客に対応する稼働情報と識別可能に出力する。これにより、遊技客は、自分の遊技成績を他の遊技客の遊技成績と比較検討することができる。」、
「【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
図1は全体の構成を概略的に示している。この図1において、各遊技台1に隣接してカードリーダ2が設けられており、遊技客は、カードリーダ2にIDカードとしての会員カードを読取らせた状態で遊技台1で遊技するようになっている。この会員カードは貯玉システムを利用するためのものである。
【0016】
この貯玉システムとは、パチンコホールから発行された会員カードを利用して遊技台1で遊技するもので、この会員カードには遊技客固有の個人情報が記憶されている。・・・
【0017】
また、管理装置3は、カードリーダ2が会員カードの個人情報を読取った状態で遊技台1が遊技されたときは、その遊技台1の稼働情報をカードリーダ2が読取った個人情報に対応して記憶することにより各遊技台1の稼働情報を示すデータファイルを作成する。」、
「【0019】
次に上記構成の作用について説明する。
会員として登録されている遊技客は、遊技台1で遊技するときは、遊技台1に隣接して設けられたカードリーダ2に会員カードを挿入する。すると、カードリーダ2が会員カードに記憶された会員No.を読取って管理装置3に出力するので、管理装置3は、遊技台1毎の稼働情報をカードリーダ2から出力された会員No.に対応して順に記憶することによりデータファイルを作成する。」、
「【0034】
ところで、上述のようにして、情報提供端末機4を利用する遊技客は、当該情報提供端末機4に表示された各種データを確認することにより所望の遊技台1の稼働状態を把握することができるものの、自分の遊技成績の良否を判定することはできない。
【0035】
そこで、本実施例では、情報提供端末機4は、以下のようにして情報提供端末機4を利用している遊技客の稼働情報を他の遊技客の稼働情報と区別して表示するようになっている。
【0036】
即ち、遊技客が当日を含む数日間において123番台で遊技した状態で、情報提供端末機4の表示部4bに表示された図9のメニュー画面において1番の「指定台データ」モードを選択すると共に、図10に示す台番号入力画面で123番台を選択したときは、情報提供端末機4は、データ作成処理において管理装置3が記憶しているデータファイルに基づいてカードリーダ4eが読取った会員カードに記憶された会員No.に対応する稼働情報と他の遊技客に対応した稼働情報とを区別して作成して表示する。
【0037】
図16の表示例では、123番台の稼働情報としては、スタート回数が1234回、特賞回数が12回、確率が1/103で、そのうち情報提供端末機4を利用している遊技客によるスタート回数が567回、特賞回数が8回、確率が1/71、他の遊技客によるスタート回数が667回、特賞回数が4回、確率が1/167であることを示しており、情報提供端末機4を操作する遊技客の遊技成績は他の遊技客の遊技成績に比較して優れていることを示している。
【0038】
従って、情報提供端末機4を利用している遊技客は、情報提供端末機4の表示部4bに表示された遊技データを確認することにより、自分の遊技成績を他の遊技客の遊技成績と比較検討することができる。
【0039】
また、図13の「出玉推移グラフ」モードにおけるグラフ表示画面に表示された稼働情報に情報提供端末機4を利用している遊技客に対応した稼働情報が含まれていたときは、情報提供端末機4は、図17に示すように当該遊技客に対応した稼働情報を他の遊技客に対応した稼働情報とを区別して表示するので、遊技客は、自分の出玉成績を他の遊技客の出玉成績と比較検討することができる。
【0040】
ところで、情報提供端末機4を利用している遊技客が、自分で遊技した遊技台1毎の遊技成績を知りたいときは、図9のメニュー画面において4番の「自分の台データ」モードを選択する。
【0041】
情報提供端末機4は、メニュー画面において4番の「自分の台データ」モードが選択されたときは(A8:YES)、「自分の台データ」モードに移行してデータ作成処理を実行する(E1)。このデータ作成処理では、管理装置3に記憶されているデータファイルにおいてカードリーダ4eが読取った会員No.に対応して記憶している稼働情報のうち最新の稼働情報を検索し、図17に示すようにグラフ表示する。
【0042】
つまり、情報提供端末機4を利用している遊技客が当日を含む過去数日間にわたって遊技した最新の遊技台1が123番台であったときは、図18のグラフ表示画面に示すように123番台の差玉数がグラフで表示されると共に、そのグラフ中の実線が情報提供端末機4を利用している遊技客に対応した稼働情報を示している。従って、遊技客は、自分が遊技した123番台における自分の遊技成績を他の遊技客の遊技成績と素早く比較検討することができる。
ここで、遊技客がデータとして自分の遊技成績を確認したいときは、図18のグラフ表示画面の「データ」表示部をタッチ操作する。」、
「【0045】
上記構成のものによれば、情報提供端末機4は、会員の遊技客による外部操作に応じて遊技台1の稼働情報を表示する際に表示する稼働情報に当該情報提供端末機4を利用している遊技客に対応する稼働情報が含まれていたときは、その稼働情報を他の遊技客に対応する稼働情報と識別可能に表示するので、遊技台1の稼働情報を単に表示するだけの構成と違って、遊技客は、自分の遊技成績を他の遊技客の遊技成績と比較検討することができる。
【0046】
また、情報提供端末機4は、会員の遊技客による操作に応じてその遊技客に対応する稼働情報を管理装置3が記憶している否かを検索し、記憶している場合はその稼働情報を他の遊技客に対応する稼働情報と識別可能に表示するので、遊技客は、自分で遊技した遊技台の台番号を知らなくとも自分の遊技成績を他の遊技客の遊技成績と素早く比較検討することができる。」。

(2.2.)対比
そこで、本願補正発明と引用例1に記載の発明とを対比すると、引用例1に記載の発明における「パチンコホール」、「パチンコ遊技台3」、「パチンコ遊技台3のデータ」、「表示部21」、「遊技場用管理システム」、「遊技客」、「遊技客を特定するための識別コード」、「会員カード1」、「読取手段」、「台番号」は、それぞれ本願補正発明の「遊技場」、「遊技機」、「遊技データ」、「表示装置」、「遊技場用のデータ表示システム」、「遊技客」、「遊技客を特定可能な情報」、「記録担体」、「情報読取手段」、「識別情報」に相当し、
引用例1に記載の発明における、遊技履歴の一部として記憶された「(前記識別コードに基づいて遊技客が遊技した)パチンコ遊技台3の台番号」は、本願補正発明における「遊技履歴データ」に相当する。
また、前記のように、引用例1に記載の発明の「パチンコ遊技台3のデータ」、「遊技客を特定するための識別コード」、「パチンコ遊技台3の台番号」が、それぞれ本願補正発明の「遊技データ」、「遊技客を特定可能な情報」、「遊技履歴データ」に相当すること、また、引用例1には「遊技が開始されると、パチンコ遊技台3からアウト玉数信号及びセーフ玉数信号が出力されるので、入力処理部44は、アウト玉数信号及びセーフ玉数信号を第2の遊技履歴用レジスタ43に出力する。これにより、第2の遊技履歴用レジスタ43のアウト玉数記憶領域には遊技開始からのアウト玉数が記憶されると共に、セーフ玉数記憶領域には遊技開始からのセーフ玉数が記憶される。(段落【0080】)」及び「以上のようにして通常の特賞モード、確変モード或いはラッキーモードによる特賞が終了する毎に、主管理装置36には各遊技客による遊技情報を示す遊技ファイル49が順に記憶される。(段落【0105】)」と記載されており、同記載事項から、各パチンコ遊技台3のデータは逐次更新されているものと認められるから、引用例1に記載の発明における「遊技台管理端末器38及び主管理装置36」は、本願補正発明における「情報処理手段」に相当する。
さらに、引用例1に記載の発明における「制御部34」と、本願補正発明における「表示制御手段」とは、表示装置に対して遊技データの表示制御を行う手段で共通する。

そうすると、両者は、
「遊技場内の各遊技機と対応した位置に当該遊技機についての遊技データを表示するための表示装置を設けた遊技場用のデータ表示システムにおいて、
遊技客を特定可能な情報が記録された携帯可能な記録担体と、
各遊技機に対応して設けられ前記記録担体に記録された情報を読み取り可能に設けられた情報読取手段と、
各遊技機の遊技データを逐次更新記憶すると共に、前記情報読取手段が読み取った情報に基づいて遊技客が遊技した遊技機の識別情報を遊技履歴データとして記憶可能に設けられ、遊技機側からの要求に応じて上記遊技履歴データにより特定される遊技機についての遊技データを返信可能に構成された情報処理手段と、
前記表示装置に対して遊技データの表示制御を行う手段とを備えた遊技場用のデータ表示システム。」

で一致し、本願補正発明と引用例1に記載の発明とは、次の点で相違する。

(相違点)
表示制御手段が、本願補正発明では、遊技客が遊技対象の遊技機を変更して新たな遊技機での遊技を開始した状態時に、変更前に遊技していた遊技機についての変更後における他の遊技客による遊技データを前記情報処理手段に要求すると共に、その要求に応じて返信された遊技データを、新たに遊技開始した遊技機と対応した表示装置に当該遊技機の遊技データと一緒に参考遊技データとして比較表示する制御を行い、さらに、前記表示装置に対し前記参考遊技データを表示する際に、前記遊技客が遊技対象の遊技機を変更した時点以降の遊技データを表示するのに対し、引用例1に記載の発明では、前記表示装置に対してパチンコ遊技台3のデータの表示制御を行うものの、本願補正発明のような表示制御を行うものではない点。

(2.3.)判断
上記相違点について検討する。
遊技場用のデータ表示システムにおいて、表示手段により遊技客に提示する遊技データとして、遊技客が遊技している遊技機における所望の期間の成績や、特定の遊技機における自分の遊技成績と他の遊技客の遊技成績とを比較可能に表示するなど、種々の表示態様が存在することは、本願出願前公知の技術事項(例えば、引用例2の段落【0009】、【0021】や、引用例3の段落【0034】?【0042】、【図16】?【図19】等参照)である。
また、一般に、複数の項目からなるデータを分析する際のデータ表示態様として、分析の目的やデータの内容に応じて、比較可能なデータ同士を並べて表示することは、本願出願前ごく普通に行われている周知・慣用のデータ解析手法にすぎない。
そうすると、引用例1に記載の発明に上記公知の技術事項を採用し、遊技客がそれまで遊技していたパチンコ遊技台3を変更して新たなパチンコ遊技台3で遊技を行う際に、制御部34が、変更前のパチンコ遊技台3のデータを遊技台管理端末器38及び主管理装置36に要求し、その要求に応じて返信された変更前のパチンコ遊技台3のデータや変更後のパチンコ遊技台3のデータを、新たに遊技開始したパチンコ遊技台3に対応した表示部21に表示制御し、その際の前記パチンコ遊技台3のデータは、パチンコ遊技台3を変更した後のものであるよう構成することは、容易に想到し得たものと認められ、さらに、前記パチンコ遊技台3のデータ表示態様に前記周知・慣用のデータ解析手法を適用して、変更前のパチンコ遊技台3のデータと変更後のパチンコ遊技台3のデータを一緒に表示することは、遊技客がデータ解析の目的に応じて適宜なし得る設計的事項である。

そして、本願補正発明が奏する効果も、引用例1に記載された発明、引用例2,3に記載された事項及び周知技術事項から普通に予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、引用例2,3に記載された事項及び周知技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年12月8日付けの手続補正は上記の通り却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年5月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「遊技場内の各遊技機と対応した位置に当該遊技機についての遊技データを表示するための表示装置を設けた遊技場用のデータ表示システムにおいて、
遊技客を特定可能な情報が記録された携帯可能な記録担体と、
各遊技機に対応して設けられ前記記録担体に記録された情報を読み取り可能に設けられた情報読取手段と、
各遊技機の遊技データを逐次更新記憶すると共に、前記情報読取手段が読み取った情報に基づいて遊技客が遊技した遊技機の識別情報を遊技履歴データとして記憶可能に設けられ、遊技機側からの要求に応じて上記遊技履歴データにより特定される遊技機についての遊技データを返信可能に構成された情報処理手段と、
前記情報読取手段が前記記録担体の記録情報を読み取ったときに、当該記録情報により特定される遊技客が当該情報読取手段に対応する遊技機へ移動する前に遊技していた遊技機についての遊技データを前記情報処理手段に要求すると共に、その要求に応じて返信された遊技データを、前記情報読取手段に対応する遊技機の表示装置に当該遊技機の遊技データと一緒に参考遊技データとして比較表示する制御を行う表示制御手段とを備えたことを特徴とする遊技場用のデータ表示システム。」

(1)引用例の記載内容
原査定に引用され本願出願前に頒布された刊行物である引用例1、引用例2、及びその記載内容は、前記2.(2.1.)に記載したとおりである。

(2)対比
本願発明と引用例1に記載の発明との一致点については、前記2.(2.2.)を参照。
そして、本願発明と引用例1に記載の発明とは、次の点で相違する。

(相違点)
表示制御手段が、本願発明では、情報読取手段が前記記録担体の記録情報を読み取ったときに、当該記録情報により特定される遊技客が当該情報読取手段に対応する遊技機へ移動する前に遊技していた遊技機についての遊技データを前記情報処理手段に要求すると共に、その要求に応じて返信された遊技データを、前記情報読取手段に対応する遊技機の表示装置に当該遊技機の遊技データと一緒に参考遊技データとして比較表示する制御を行うのに対し、引用例1に記載の発明では、前記表示装置に対してパチンコ遊技台3のデータの表示制御を行うものの、本願発明のような表示制御を行うものではない点。

(3)判断
上記相違点について検討する。
引用例2には、パチンコ遊技機1のデータ表示機4に、遊技客が遊技したパチンコ遊技機1毎の遊技成績を表示することが記載されており(段落【0033】、【図10】等参照)、また、表示される遊技成績は最新のものが含まれることも記載されている(段落【0021】、【0064】等参照)ことから、遊技客が現在遊技しているパチンコ遊技機1に移動する前に遊技していたパチンコ遊技機1についての遊技成績と、同遊技客が現在遊技しているパチンコ遊技機1での遊技成績とを、一緒に比較表示することは、本願出願前に公知の技術事項である。
そうすると、引用例1に記載の発明に引用例2に記載の公知技術事項を採用し、制御部34が、遊技客が現在遊技しているパチンコ遊技台3に移動する前に遊技していたパチンコ遊技台3のデータと、現在遊技しているパチンコ遊技台3のデータを、遊技台管理端末器38及び主管理装置36に要求し、その要求に応じて返信されたデータを、一緒に表示制御するよう構成することは、容易に想到し得たものと認められ、そして、前記要求を、読取手段が会員カード1の記憶内容を読み取ったときに行うことは、当業者がデータ表示の迅速性等を考慮することにより適宜なし得る設計的事項である。

そして、本願発明が奏する効果も、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された事項から普通に予測できる範囲のものである。

したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載の発明及び引用例2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-09 
結審通知日 2007-05-15 
審決日 2007-05-28 
出願番号 特願2000-371309(P2000-371309)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬津 太朗小林 英司  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 小田倉 直人
中槙 利明
発明の名称 遊技場用のデータ表示システム  
代理人 佐藤 強  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ