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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1160473
審判番号 不服2004-1932  
総通号数 92 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-08-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-02-02 
確定日 2007-06-14 
事件の表示 特願2001-5156「基板を持たない低コストパワー半導体モジュール」拒絶査定不服審判事件〔平成13年8月31日出願公開、特開2001-237369〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 [1]手続の経緯
本願は、平成13年1月12日(優先権主張2000年1月12日 米国)の出願であって、平成15年6月18日付で拒絶理由通知がなされ、同年9月19日付で意見書及び手続補正書が提出され、平成15年6月18日付拒絶理由通知書に記載した理由によって、同年10月27日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年2月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成16年2月25日付で手続補正書が提出されたものである。

[2]平成16年2月25日付手続補正についての補正却下の決定

<補正却下の決定の結論>
平成16年2月25日付手続補正を却下する。

<理由>
[2-1]補正の内容
平成16年2月25日付手続補正は、特許請求の範囲を、
「【請求項1】低電圧アプリケーションのためのパワーモジュールであって、周囲枠体および開口したトップと底部を有するモールド形成の絶縁ハウジングと、多数の共通平面の導電性パッドおよびそれに接続された導電性リードを含むリードフレームとを備え、リードフレームにおける導電性リードは導伝性パッドと共に、周囲枠体の内側に挿入してモールド化され、そして前記周囲枠体の外部に突き出させ、そして、周囲枠体の内側でリードフレームパッドを支持させており、そして、回路を形成するために、導電性パッドを通じ、パワー半導体デバイスを電気的に相互接続させるための多数のワイヤー接続と、実質的に共通の面を持ち、前記モジュールと別体の放熱支持体上に装着できる、リードフレームの導電性パッドの底面と、を有することを特徴とするパワーモジュール。
【請求項2】回路は3相インバータ回路である請求項1記載のモジュール。
【請求項3】パワー半導体デバイスは、3相ブリッジ接続したMOSFETからなる請求項1記載のモジュール。
【請求項4】MOSFETは30から75Vの定格である請求項3記載のモジュール。
【請求項5】信号をパワー半導体デバイスに与えるために、制御回路基板は、周囲枠体における拡幅されたエリアの上に装着される請求項1記載のモジュール。
【請求項6】リードフレームの平面上の周囲枠体内部が充填材料で満たされる請求項1記載のモジュール。
【請求項7】ハウジングはモールドによるプラスチックである請求項6記載のモジュール。
【請求項8】上記MOSFETは、底面の上にドレイン電極を、上側表面にソースおよびゲート電極を有し、互いに絶縁され、当モジュールを貫通して周囲枠体内で挿入してモールド化された、第1、第2および第3のパラレルの導電性リードにそれぞれ接続された第1、第2および第3のパッドを含む多数の導電性パッドを有し、第4の導電性リードおよび、第4の導電性リードと平行に延在する第5の導電性リードに接続されたリードフレームのパッドを有し、これらの第4および第5の導電性リードは当モジュールを貫通して前記周囲枠体内で挿入されモールド化されており、そして、ドレイン電極が第1、第2および第3のパッドに良導電的に接続された、前記3つのMOSFETの第1のグループを有し、ドレイン電極が第4のパッドに良導電的に接続された、3つのMOSFETの第2のグループを有し、前記第5の導電性リードに接続された、第2のグループのMOSFETのソース電極を有する請求項3記載のパワーモジュール。
【請求項9】MOSFETは3相インバータ回路を形成するためにワイヤー接続される請求項8記載のモジュール。
【請求項10】MOSFETは30から75Vの定格である請求項8記載のモジュール。
【請求項11】回路基板への電気的な接続を提供する少なくとも一つの電極と、パワー半導体デバイスの少なくとも一つに電気的に接続された少なくとも一つの端子を更に備えた請求項8記載のパワーモジュール。
【請求項12】熱的に導伝性で電気的に絶縁する層が、リードフレームの導電性パッドと放熱部材との間に挿入される請求項8記載のパワーモジュール。」とする補正を含むものである。

[2-2]補正の目的
請求項1は、補正前の請求項1の「前記モジュールから分離している放熱支持体」をより具体的な「前記モジュールと別体の放熱支持体」に限定したものに該当し、
請求項2?12は、上記請求項1を引用する請求項、又はそれらの更に下位の請求項に該当する。
したがって、請求項1?12の補正は、いずれも特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

[2-3]独立特許要件
次いで、上記の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正後の請求項1?12に係る発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。

(1)補正後の本願発明
上記補正後の請求項1?12に係る発明(以下、「本願補正発明1」?「本願補正発明12」という。)は、平成16年2月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定される、上記[2-1]の【請求項1】?【請求項12】に記載したとおりのものと認める。

(2)引用刊行物の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願の優先権主張日前に頒布された刊行物である特開平11-274358号公報(以下、単に「引用刊行物」という。)には、
「【請求項1】パターン形成された部品載置部とこの部品載置部の周辺の複数のリードとを有した金属板と、この金属板の少なくとも前記部品載置部の底面領域を覆う第1の樹脂部と、前記リードの少なくとも1本と前記第1の樹脂部とを一体に封止する第2の樹脂部とを備えた電子部品用基板。
【請求項2】パターン形成された部品載置部とこの部品載置部の周辺の複数のリードとを有した金属板と、この金属板の少なくとも前記部品載置部の底面領域を覆う第1の樹脂部と、前記リードの少なくとも1本に封止して前記第1の樹脂部を2次元的に囲んだ第2の樹脂部とを備えた電子部品用基板。
・・・・・・・・・・・・・・・・・
【請求項8】第1の樹脂部がリードと部品載置部との底面側の所定部を一体に覆った請求項1または請求項2記載の電子部品用基板。
【請求項9】第1の樹脂部が熱硬化性樹脂であり、第2の樹脂部が熱可塑性樹脂である請求項1または請求項2記載の電子部品用基板。」(【特許請求の範囲】)、
発明の属する技術分野として、「この発明は、電力用半導体素子(以下パワー半導体素子と称する)および制御用集積回路素子等を載置して、大電力を扱う電子部品用基板に関するものである。」(段落【0001】)、
課題を解決するための手段として、「請求項2記載の電子部品用基板によれば、部品載置部とリードの底面を第1の樹脂部で覆い、さらに少なくとも1本のリードを第2の樹脂部により封止することにより結合して第1の樹脂部を2次元的に囲んだ」(段落【0007】)、
発明の実施の形態として、図1?4が示されるとともに、「【0020】・・・図1の電子部品用基板は、例えば厚み0.5mmの銅板をリードフレーム加工と同様に、所定のパターンに打ち抜き加工して複数のパワー半導体素子等の部品を載置する部品載置部1aと、部品載置部1aの周辺の接続端子となる複数のリード3を有する金属板1を形成している。部品載置部1aの底面領域を例えば高熱伝導の第1の樹脂部2で覆って封止・固定し、さらに第1の樹脂部2の側面およびリード3を第2の樹脂部4で一体に成形している。第2の樹脂部4によりパワー半導体素子等の部品載置部1aの下面の第1の樹脂部2とリード3の保持・固定を行う。1bは金属細線等の接続用のポートである。
【0021】この実施の形態に示す電子部品用基板は、例えば図2に示すように金属板1をプレス機等の打ち抜き加工により回路配線板化し、パワー半導体素子等が載置される部品載置部1aの領域の反対面を例えば高熱伝導のエポキシ樹脂を用いた第1の樹脂部2で平坦に形成するように成形により封止して基板化し、さらに第1の樹脂部2の側面と金属板1のリード3を、例えば熱可塑性樹脂の第2の樹脂部4で第1の樹脂部3の底面が第2の樹脂部4の底面よりも若干突出して露出するように一体に成形して封止・固定している。第2の樹脂部4は、金属板1の周囲に樹脂枠を形成しており、壁状に形成された部分4aが内壁側の部品載置部1aよりも高く形成されている。」(段落【0020】【0021】)、
「【0023】図3は部品載置部1a上にパワー半導体素子等の電子部品12を搭載した状態である。12は電子部品12を必要な部位と接続する金属細線である。ファストン110番の仕様のリード3aはパワー半導体素子と直接接続されているため、従来のようにリードを半田接続で付けたり金属細線を介して外部に引き出す必要がなく、そのため低抵抗で大電流を扱うことができる。一方細い等間隔のリード3bは第2の樹脂部4を形成する樹脂枠により位置規制されているため外部との接続が容易である。樹脂枠の高さは5mmである。樹脂枠には数箇所のねじ締めつけ部の構造を設けており、パワー半導体素子等を搭載して電子部品用基板を製造した後、アルミニウム製のフィン等の放熱板に取りつけることができる。
【0024】この実施の形態によれば、パワー半導体素子等の部品を載置する金属板の部品載置部1aのリード3の少なくとも1本を第2の樹脂部4により成形固定し外部接続端子として使用することにより、パワー半導体素子の主電流を金属細線を介さずに低抵抗で外部に取り出すことができる。」(段落【0023】【0024】)、
「【0027】・・・この発明の第2の実施の形態を図4により説明する。図4は金属板1のパワー半導体素子等の部品を搭載する部品載置部1aとリード3の所定の領域の下面を高熱伝導の第1の樹脂部2で覆って封止・固定して基板化し、さらに第1の樹脂部2の側面を2次元的に囲むとともに、リード3を第2の樹脂部4で第1の樹脂部2の下面が若干突出して露出するように樹脂枠を一体に成形したものである。第2の樹脂部4により、パワー半導体素子等の部品載置部1aおよびリード3の保持と、第1の樹脂部2の表面と平行して第2の樹脂部4の樹脂枠から外側に延出したリード3の固定を行う。
【0028】第1の樹脂部2はパワー半導体素子の発熱を速やかに逃がすため、高熱伝導のフィラー(充填材)が80重量%以上高密度充填された熱硬化性樹脂を用いている。電気絶縁特性、金属板1との接着強度、耐熱性、難燃化処理の容易さ、価格面から具体的にはエポキシ樹脂が使われている。また第2の樹脂部4には機械的強度、比較的大きい複雑な形状の具現化、成形性、価格面からガラス繊維が20重量%以上含まれた熱可塑性樹脂が使われている。具体的にはポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)やポリフェニレンサルファイド(PPS樹脂)等の熱可塑性樹脂が使われている。
【0029】この実施の形態によれば、パワー半導体素子の主電流を低抵抗で外部に取り出せるとともに、部品載置部1aとは分離した全てのリード3bを接続端子として使用することができる。また第2の樹脂部4により全てのリード3が封止・固定されているため、リード3の内部接続端(パワー半導体との金属細線による結線部分)が主電流を扱うリード3a側とパワー半導体載置部1aに接続されない独立したリード3bの両方の側で不要になり、さらにパッケージサイズの小型化が図られる。リード3が第2の樹脂部4により固定されているため、リード3の位置精度の確保が図れる。」(段落【0027】?【0029】)、
発明の効果として、「請求項9記載の電子部品用基板によれば、・・・機械的強度が強く、複雑な形状の具現化と高い生産性を持つ半導体装置等の電子部品用基板を作ることができる。」(段落【0048】)が記載されている。

(3)対比・判断
(3-1)本願補正発明1について
上記(2)に摘記した事項を総合すると、引用刊行物には、
「パターン形成された複数のパワー半導体素子等の部品載置部と該部品載置部の周辺の複数のリードとを有する金属板と、該金属板の部品載置部の底面領域とリードの所定の底面領域を平坦に覆って封止・固定する第1の樹脂部と、該第1の樹脂部を2次元的に囲み、該第1の樹脂部の表面と平行に外側に延出する前記リードを封止・固定するとともに、前記部品載置部の保持と固定を行う第2の樹脂部である樹脂枠とを備え、該樹脂枠の壁状の部分を内壁側の部品載置部よりも高く形成し、該樹脂枠の数箇所にねじ締めつけ部を設けた電子部品用基板に、複数のパワー半導体素子等を前記部品載置部に載置し金属細線で結線して接続し、製造後、前記ねじ締めつけ部によってアルミニウム製のフィン等の放熱板に取りつけられる、複数のパワー半導体素子等を搭載した半導体装置」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
そこで、本願補正発明1と引用発明とを対比すると、引用発明における「電子部品用基板に・・・複数のパワー半導体素子等を搭載した半導体装置」は、所謂「パワーモジュール」に他ならない。
また、引用発明における「金属板の部品載置部の底面領域とリードの所定の底面領域を平坦に覆って封止・固定する第1の樹脂部と、該第1の樹脂部を2次元的に囲み、該第1の樹脂部の表面と平行に外側に延出する前記リードを封止・固定するとともに、前記部品載置部の保持と固定を行う第2の樹脂部である樹脂枠・・・該樹脂枠の壁状の部分を内壁側の部品載置部よりも高く形成し」の「第1の樹脂部」と「第2の樹脂部である樹脂枠」は、本願補正発明1における「周囲枠体および開口したトップと底部を有するモールド成形の絶縁ハウジング」に相当する。
また、引用発明における「パターン形成された複数のパワー半導体素子等の部品載置部と該部品載置部の周辺の複数のリードとを有する金属板」は、その「部品載置部と該部品載置部の周辺の複数のリード」が本願補正発明1における「導電性パッドおよびそれに接続された導電性リード」に相当し、多数の部品載置部とリードを平坦に配置したリードフレームの構造を有するのであるから、本願補正発明1における「多数の共通平面の導電性パッドおよびそれに接続された導電性リードを含むリードフレーム」に相当する。
また、引用発明における「金属板の部品載置部の底面領域とリードの所定の底面領域を平坦に覆って封止・固定する第1の樹脂部と、該第1の樹脂部を2次元的に囲み、該第1の樹脂部の表面と平行に外側に延出する前記リードを封止・固定するとともに、前記部品載置部の保持と固定を行う第2の樹脂部である樹脂枠とを備え、」は、本願補正発明1における「リードフレームにおける導電性リードは導伝性パッドと共に、周囲枠体の内側に挿入してモールド化され、そして前記周囲枠体の外部に突き出させ、そして、周囲枠体の内側でリードフレームパッドを支持させており、」に相当する。
また、引用発明における「複数のパワー半導体素子等を前記部品載置部に載置し金属細線で結線して接続」は、本願補正発明1における「回路を形成するために、導電性パッドを通じ、パワー半導体デバイスを電気的に相互接続させるための多数のワイヤ接続」に相当する。
また、引用発明における「アルミニウム製のフィン等の放熱板」は、半導体装置がねじ締めつけ部によって取りつけられるのであるから、本願補正発明1における「前記モジュールと別体の放熱支持体」に相当する。
また、引用発明における「部品載置部の底面」は、引用刊行物の段落【0021】の「・・・図2に示すように金属板1をプレス機等の打ち抜き加工により回路配線板化し、パワー半導体素子等が載置される部品載置部1aの領域の反対面を例えば高熱伝導のエポキシ樹脂を用いた第1の樹脂部2で平坦に形成するように成形により封止して基板化し、」との記載及び図1、2によれば、平坦な金属板の底面に当たり、実質的に共通の面を持ち、該面が第1の樹脂部2で平坦に覆われ、該樹脂部2を介してアルミニウム製のフィン等の放熱板に取りつけられる面といえる。一方、本願補正発明1の下位の発明を記載した請求項である請求項12には、「熱的に導伝性で電気的に絶縁する層が、リードフレームの導電性パッドと放熱部材との間に挿入される」と記載され、更に本願明細書の発明の詳細な説明には、「薄い絶縁材料による底部の層70は、ハウジング50の底全体に対して位置し、パッド30、31、32、33、および34を、互いに、かつ、このハウジングが設けられるユーザーの放熱板から電気的に絶縁する。」(段落【0016】)との記載により、「薄い絶縁材料による底部の層70」がパッドの底面と放熱板との間に設けられることが述べられ、更に同記載のとおりの構造が図2に示されているので、本願補正発明1における「実質的に共通の面を持ち、前記モジュールと別体の放熱支持体上に装着できる、リードフレームの導電性パッドの底面」には、モジュールと別体の放熱支持体上に絶縁材料層を介して装着される態様のものが含まれることは明らかである。そして、このような本願補正発明1の「実質的に共通の面を持ち、前記モジュールと別体の放熱支持体上に装着できる、リードフレームの導電性パッドの底面」と、引用発明の上記した実質的に共通の面を持ち、該面が第1の樹脂部2で平坦に覆われ、該樹脂部2を介してアルミニウム製のフィン等の放熱板に取りつけられる「部品載置部の底面」とは、実質的に相違しない。
そうすると、両発明は、「パワーモジュールであって、周囲枠体および開口したトップと底部を有するモールド形成の絶縁ハウジングと、多数の共通平面の導電性パッドおよびそれに接続された導電性リードを含むリードフレームとを備え、リードフレームにおける導電性リードは導伝性パッドと共に、周囲枠体の内側に挿入してモールド化され、そして前記周囲枠体の外部に突き出させ、そして、周囲枠体の内側でリードフレームパッドを支持させており、そして、回路を形成するために、導電性パッドを通じ、パワー半導体デバイスを電気的に相互接続させるための多数のワイヤー接続と、実質的に共通の面を持ち、前記モジュールと別体の放熱支持体上に装着できる、リードフレームの導電性パッドの底面と、を有するパワーモジュール。」の点で一致し、次の点で相違する。
(イ)本願補正発明1では、パワーモジュールが低電圧アプリケーションのためのものであるのに対し、引用発明では、そのように記載されていない点。
次いで、上記相違点(イ)について検討するに、低電圧アプリケーションのためのパワーモジュールは本願出願の優先権主張日前周知であるから(例えば、特開昭62-160798号公報,〔概要〕の欄、特開平10-229680号公報,請求項1,段落【0001】参照)、引用発明の半導体装置を低電圧アプリケーションのためのものとすることは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。
そして、上記相違点(イ)に係る本願補正発明1の効果も、引用発明及び上記周知の技術から当業者が普通に予測し得る程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明1は、引用刊行物に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおり、本願補正発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができないため、本願補正発明2?12について検討するまでもなく、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

[3]本願発明
平成16年2月25日付手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1?12に係る発明は、平成15年9月19日付手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定され
るものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】低電圧アプリケーションのためのパワーモジュールであって、周囲枠体および開口したトップと底部を有するモールド形成の絶縁ハウジングと、多数の共通平面の導電性パッドおよびそれに接続された導電性リードを含むリードフレームとを備え、リードフレームにおける導電性リードは導伝性パッドと共に、周囲枠体の内側に挿入してモールド化され、そして前記周囲枠体の外部に突き出させ、そして、周囲枠体の内側でリードフレームパッドを支持させており、そして、回路を形成するために、導電性パッドを通じ、パワー半導体デバイスを電気的に相互接続させるための多数のワイヤー接続と、実質的に共通の面を持ち、前記モジュールから分離している放熱支持体上に装着できる、リードフレームの導電性パッドの底面と、を有することを特徴とするパワーモジュール。」

[4]引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物(特開平11-274358号公報)には、上記[2-3](2)に摘記した事項が記載されている。

[5]対比・判断
本願発明1は、上記[3]で認定したとおり、本願補正発明1における「前記モジュールと別体の放熱支持体」を、それを含む上位概念の「前記モジュールから分離している放熱支持体」としたものに相当し、本願発明1は、本願補正発明1を包含する発明であるといえる。
そうすると、本願発明1に包含される本願補正発明1が、上記[2-3](3-1)で説示したとおり、引用刊行物に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1についても、同様の理由により、引用刊行物に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[6]むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用刊行物に記載された発明及び上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、上記のとおり本願発明1が特許を受けることができないため、本願の請求項2?12に係る発明ついて検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2006-04-12 
結審通知日 2006-04-18 
審決日 2006-05-02 
出願番号 特願2001-5156(P2001-5156)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今井 拓也  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 市川 裕司
日比野 隆治
発明の名称 基板を持たない低コストパワー半導体モジュール  
代理人 青山 葆  
代理人 河宮 治  

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