ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
---|---|---|
無効200480273 | 審決 | 特許 |
無効200235248 | 審決 | 特許 |
無効200580231 | 審決 | 特許 |
無効200580100 | 審決 | 特許 |
無効200480147 | 審決 | 特許 |
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 全部無効 2項進歩性 G01B 審判 全部無効 ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正 G01B 審判 全部無効 特許請求の範囲の実質的変更 G01B 審判 全部無効 1項3号刊行物記載 G01B 審判 全部無効 ただし書き3号明りょうでない記載の釈明 G01B 審判 全部無効 ただし書き1号特許請求の範囲の減縮 G01B |
---|---|
管理番号 | 1161118 |
審判番号 | 無効2004-80272 |
総通号数 | 93 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-09-28 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2004-12-22 |
確定日 | 2007-06-07 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 上記当事者間の特許第3390970号「穴の形状測定方法及び装置」の特許無効審判事件についてされた平成18年 2月22日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の決定(平成18年(行ケ)第10139号平成18年7月14日決定告知)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 |
結論 | 訂正を認める。 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
【1】本件経緯の概要 本件特許第3390970号についての手続きの経緯の概要は以下のとおりである。 平成12年 6月 9日 特許出願 平成15年 1月24日 特許権の設定登録 平成16年12月22日 特許の無効審判の請求(無効2004-8027 2号) 平成17年 4月 8日 被請求人より答弁書提出及び訂正請求 平成17年 6月10日 請求人(マーポス、ソチエタ、ペル、アツィオー ニ)より弁駁書提出 平成18年 2月22日 審決(発送日:同年3月2日) 平成18年 3月31日 被請求人(株式会社東京精密)により審決取消訴 訟提起(平成18年(行ケ)第10139号) 平成18年 5月24日 被請求人により訂正審判請求(訂正2006-3 9083号) 平成18年 7月14日 審決取消訴訟差戻し決定 平成18年 7月21日 訂正請求のための期間指定通知(発送日:同年同 月25日)注1 平成18年 8月10日 訂正請求副本送付通知及び弁駁指令通知(発送日 :同年同月15日)注2 注1:被請求人は平成18年7月21日付け訂正請求のための期間指定通知に応答しなかったので、被請求人が行った平成18年5月24日付け訂正審判請求(訂正2006-39083号)は、特許法第134条の3第5項の規定により、その訂正審判の請求書に添付された訂正した明細書又は図面を援用した訂正の請求とみなされ(以下「平成18年5月24日付け訂正請求」という。)、特許法第134条の2第4項により、この訂正請求によって平成17年4月8日付け訂正請求は取り下げられたものとみなされる。 注2:請求人は、平成18年8月10日付けの弁駁指令通知に対し指定期間内に応答しなかった。 【2】請求人の趣旨及び理由の概要 請求人(マーポス、ソチエタ、ペル、アッツィオーニ)は、「第3390970号特許の請求項1乃至8に係る発明は、これを無効とする、審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、証拠方法として下記の甲第1号証ないし甲第6号証(ロシア語文献)、甲第1a号証ないし甲第6a号証(甲第1号証ないし甲第6号証をそれぞれ英語訳したもの)、そして甲第1b号証ないし甲第6b号証(甲第1a号証ないし甲第6a号証をそれぞれ日本語訳したもの)と、甲第7号証及び甲第8号証を提出している。 そして、概ね、以下のアないしウの理由により、被請求人(株式会社東京精密)の訂正請求は、特許法第134条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、本件の訂正前の請求項1ないし8に係る特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効にすべきものであり、また、仮に訂正請求が認められたとしても、当該証拠方法により、本件の訂正後の請求項1ないし8に係る特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効にすべきものであると主張している。 記 甲第1号証:ソビエト社会主義共和国連邦(U.S.S.R.)発明者証133580 7号公報 甲第1a号証:甲第1号証の英訳 甲第1b号証:甲第1a号証の書誌的事項を除く部分の日本語訳 甲第2号証:ソビエト社会主義共和国連邦(U.S.S.R.)発明者証133580 8号公報 甲第2a号証:甲第2号証の英訳 甲第2b号証:甲第2a号証の書誌的事項を除く部分の日本語訳 甲第3号証:ソビエト社会主義共和国連邦(U.S.S.R.)発明者証149047 4号公報 甲第3a号証:甲第3号証の英訳 甲第3b号証:甲第3a号証の書誌的事項を除く部分の日本語訳 甲第4号証:ソビエト社会主義共和国連邦(U.S.S.R.)発明者証168277 2号公報 甲第4a号証:甲第4号証の英訳 甲第4b号証:甲第4a号証の書誌的事項を除く部分の日本語訳 甲第5号証:ソビエト社会主義共和国連邦(U.S.S.R.)発明者証130723 3号公報 甲第5a号証:甲第5号証の英訳 甲第5b号証:甲第5a号証の書誌的事項を除く部分の日本語訳 甲第6号証:ソビエト社会主義共和国連邦(U.S.S.R.)発明者証147982 7号公報 甲第6a号証:甲第6号証の英訳 甲第6b号証:甲第6a号証の書誌的事項を除く部分の日本語訳 甲第7号証:特開平10-206202号公報 甲第8号証:本件特許に係る特許出願(特願2000-174155号)の審 査結果書類 ア.訂正請求書による願書に添付した特許請求の範囲及び明細書の訂正は、実質上特許請求の範囲を拡張、又は、変更するものである。 イ.(訂正前の)請求項1及び2に係る特許発明は、本件出願前に頒布された刊行物である甲第1号証ないし甲第6号証のいずれにも記載の発明であり、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、 (訂正前の)請求項3と請求項4に係る特許発明は、本件出願前に頒布された刊行物である甲第2号証または甲第3号証に記載された発明と、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができた発明であり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、 (訂正前の)請求項5と請求項6に係る特許発明は、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明と、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができた発明であり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、 (訂正前の)請求項7に係る特許発明は、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明と、甲第1号証に記載された発明と、甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができた発明であり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、 (訂正前の)請求項8に係る特許発明は、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明と、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明することができた発明であり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 ウ.訂正後の請求項1ないし請求項8に係る特許発明は、以下の1)ないし5)のとおり、甲第1号証乃至甲第6号証に記載された発明と同一であるか、又は、甲第1号証乃至甲第7号証に記載された発明に基いて当業者がその出願前に容易に発明することができた発明であるから、本件請求項1ないし請求項8に係る特許は、特許法第29条第1項第3号又は同第29条第2項の規定に違反して特許されたものであり、したがって、特許法第123条第1項第2号の規定により無効にすべきものである。 1)訂正後の請求項1に係る特許発明について 本発明は、穴内において浮子が受ける自動求心作用を利用して穴の径を求める技術と、浮子の穴内における位置を検出する技術とを骨格技術とするものである。甲第1号証には、自動求心作用により穴の軸に垂直に位置決めされた支持体上に配置された球が、確実に穴の内部の中心に位置するようになること(自動求心作用)が記載されている。甲第2号証ないし甲第5号証には、穴内で球を移動させ、各々の移動位置で自動求心作用を利用して穴の径を測定することが開示されており、各々の移動位置で穴の径を測定するので当然に球の移動量が把握されることを前提とするのであり、本発明を構成する骨格技術が開示されている。甲第6号証には、穴内で球を移動させ、各々の移動位置で自動求心作用を利用して穴の径を測定することが開示されているとともに、「球がワーク3の穴及び標準リング14に位置している間」とあるように、穴の軸線方向における球の位置を認識していることが認められ、本発明を構成する骨格技術が開示されている。 すると、球の穴内における位置を検出することは例えば甲第2号証乃至甲第6号証に開示されているのであり、球の穴内における位置の検出において球の鉛直方向の位置だけでなく水平面上の位置を検出することは、必要に応じてその検出を行えばよいことであり、またその検出すること自体に格別の困難性を伴うことでもないのであり、従って、球の水平面上の位置を検出すること自体は進歩性を有しない。ゆえに、訂正後の請求項1に係る特許発明は、甲第1号証乃至甲第6号証に記載された発明と同一であるか、または、甲第1号証乃至甲第6号証に記載された発明により当業者が容易に発明することができたものである。 2)訂正後の請求項2に係る特許発明について 訂正後の請求項2には、穴のテーパの角度を求めることと、昇降量を検出するリニアスケールを備えたことが追加されているが、昇降量に相当する量を検出することは、後述するように甲第2号証乃至甲第6号証の各々においても行われていることであり、そのためにリニアスケールを用いることは単なる選択的設計事項である。そして、穴のテーパの角度を求めることは、例えば、甲第2号証の第2頁第29行目の前後に「例えば一方の端に向かって細くなる穴を備えたワークを検査する等、の本発明の装置の機能的可能性を拡大することができる」と記載されており、甲第2号証には穴のテーパの角度を求めることが示唆されている。 さらに、穴のテーパの角度については、穴の形状に関する情報が得られれば必要に応じて穴のテーパの角度を求めることは容易に行うことができるのであり、自明事項でもある。 すると、訂正後の請求項2に係る発明は、甲第1号証乃至甲第6号証に記載された発明と同一であり、また甲第1号証乃至甲第6号証に記載された発明により当業者が容易に発明することができたものである。 3)訂正後の請求項3、4に係る特許発明について 甲第1号証には、自動求心作用により穴の軸に垂直に位置決めされた支持体上に配置された球が確実に穴の内部の中心に位置するようになること(自動求心作用)が記載され、本発明を構成する骨格技術が開示されている。また、甲第2号証及び甲第3号証には、穴内で球を移動させ、各々の移動位置で自動求心作用を利用して穴の径を測定することが開示されており、各々の移動位置で穴の径を測定するので当然に球の移動量が把握されることを前提としていることは当業者には明らかなことであり、穴内における球の移動位置を求めることが示唆されている。そして、穴が軸対称性を有する場合には自動求心作用の下で移動する球の移動軌跡は穴の中心線に一致するのであり、球の移動位置と移動位置毎の穴の径を測定することによりすなわち穴の中心線を求めることにより穴の形状を求めることが可能になる。また、穴が軸対称性を有しない場合においては、球の移動位置として水平方向の位置と鉛直方向の位置とを求める必要があることは当然のことであり、このことは球の移動位置と移動位置毎の穴の径を測定することにより穴の形状を求めることを知る当業者には容易に理解できることであり、また球の移動位置として水平方向の位置と鉛直方向の位置とを求めること自体に特別の困難性は何も存在しない。 すると、訂正後の請求項3、4に係る特許発明は、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明と、甲第1号証に記載された発明とにより容易に当業者が発明することができたものである。 4)訂正後の請求項5、6に係る特許発明について 本発明は、請求項3及び請求項4の場合に述べたことと同様に、穴内において浮子が受ける自動求心作用を利用して穴の径を求める技術と、浮子の穴内における位置を検出する技術とを骨格技術とするものである。甲第1号証には、自動求心作用により穴の軸に垂直に位置決めされた支持体上に配置された球が確実に穴の内部の中心に位置するようになること(自動求心作用)が記載されており、本発明を構成する骨格技術の一つが開示されている。また、甲第2号証及び甲第3号証には、穴内で球を移動させ、自動求心作用を利用して球の移動位置毎に穴の径を測定することが開示されており、当然に球の移動量が把握されることを前提としていることは当業者には明らかなことであり、穴内における球の移動位置を求めることが示唆されている。そして、穴が軸対称性を有する場合には自動求心作用の下で移動する球の移動軌跡は穴の中心線に一致するのであり、球の移動位置と移動位置毎の穴の径を測定することにより穴の形状を求めることが可能になる。また、穴が軸対称性を有しない場合においては、球の移動位置として水平方向の位置と鉛直方向の位置とを求める必要があることは当然のことであり、このことは球の移動位置と移動位置毎の穴の径を測定することにより穴の形状を求めることを知る当業者には容易に理解できることであり、また球の移動位置として水平方向の位置と鉛直方向の位置とを求めること自体に特別の困難性は何も存在しない。 すると、請求項5及び請求項6の発明は、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明と、甲第1号証に記載された発明とにより当業者が容易に発明することができたものである。 5)訂正後の請求項7、8に係る特許発明について 訂正後の請求項7は、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明と、甲第1号証に記載された発明と、甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者がその出願前に容易に発明することができた発明であり、また、請求項8に記載の発明は、甲第2号証または甲第3号証に記載された発明と、甲第1号証に記載された発明とに基づいて当業者がその出願前に容易に発明することができた発明である。 【3】被請求人の主張の概要 これに対し、被請求人(株式会社東京精密)は、平成18年5月24日付け訂正請求により、特許請求の範囲の記載を訂正し、この訂正は、平成18年2月22日付け無効2004-80272号事件審決において、無効とされた第3390970号特許の請求項2、5及び8のうち、請求項2及び5を削除し、請求項8については、その従属する請求項2、4、6又は7のうち特許を維持すると判断された請求項4、6又は7にのみ従属するようにしたものであり、訂正後の第3390970号特許の請求項1ないし6に係る発明は、無効理由に該当しない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、概ね、以下のaないしfの理由により、本件訂正後の請求項1ないし請求項6に係る特許発明は、それぞれ甲第1号証ないし甲第7号証とは異なる発明であり、特許法第29条第1項第3号に該当するものではなく、更に、甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものではないと、反論している。 a.請求項1について a-1.甲第1号証について 甲第1号証には、平坦端5上に載置した球6を用いてワーク1と球6との隙間によって変化する圧力を計測する測定技術が記載されているが、訂正後の請求項1に係る特許発明の発明特定事項である「浮子を移動させながら、穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定して前記穴の形状を取得する」、「背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を検出した時の前記穴の水平面上の位置と、を複数箇所検出し」及び「穴の内径と前記穴の水平面上の位置とに基づいて穴の形状を測定する」点に関する技術が記載されていない。 そして、訂正後の請求項1に係る特許発明は、浮子の「穴の水平面上の位置」を複数箇所検出することにより、水平方向に曲がったいわゆる曲がり穴の場合にも、どの程度の内径を有し、どの程度水平方向に曲がった曲がり穴であるかを測定することができるという効果を奏する。 a-2.甲第2号証について 甲第2号証には、弾性スレッド7に連結された較正球6をワーク12の所望の断面に移動して圧力を計測する測定技術について記載されているが、訂正後の請求項1に係る特許発明の発明特定事項の「背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を検出した時の前記穴の水平面上の位置と、を複数箇所検出し」及び「穴の内径と前記穴の水平面上の位置とに基づいて穴の形状を測定する」点に関する技術が記載されていない。 そして、甲第2号証は、穴の内径を測定して内径値を出力する測定技術であるのに対し、訂正後の請求項1に係る特許発明は穴の内径を測定し、その測定した内径及び内径を測定したときの浮子の水平面上の位置に基づいて穴の形状情報を出力する測定技術であり、水平方向に曲がったいわゆる曲がり穴の場合にも、どの程度の内径を有し、どの程度水平方向に曲がった曲がり穴であるかを測定することができるという効果を奏する。 a-3.甲第3号証について 甲第3号証には、球9を弾性スレッド8に沿って降下させ、検査すべきワーク17の各断面の流圧を計測し、穴の平均直径を作用検査する測定技術について記載されているが、訂正後の請求項1に係る特許発明の発明特定事項の「背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を検出した時の前記穴の水平面上の位置と、を複数箇所検出し」及び「穴の内径と前記穴の水平面上の位置とに基づいて穴の形状を測定する」点に関する技術が記載されていない。 そして、甲第3号証は、穴の内径を測定し出力結果として穴の平均直径が得る技術であるが、訂正後の請求項1に係る特許発明は穴の内径を測定し、その測定した内径及び内径を測定したときの浮子の水平面上の位置に基づいて穴の形状情報を出力する測定技術であり、水平方向に曲がったいわゆる曲がり穴の場合にも、どの程度の内径を有し、どの程度水平方向に曲がった曲がり穴であるかを測定することができるという効果を奏する。 a-4.甲第4号証について 甲第4号証には、球3を有するロッド支持体4が、駆動部5によってワーク1に移動する点について記載されているが、訂正後の請求項1に係る特許発明の発明特定事項の「背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を検出した時の前記穴の水平面上の位置と、を複数箇所検出し」及び「穴の内径と前記穴の水平面上の位置とに基づいて穴の形状を測定する」点に関する技術が記載されていない。 そして、甲第4号証は、穴の内径を測定して穴の長手方向の寸法変化を出力する技術であるのに対し、訂正後の請求項1に係る特許発明は穴の内径を測定し、その測定した内径及び内径を測定したときの浮子の水平面上の位置に基づいて穴の形状情報を出力する測定技術であり、水平方向に曲がったいわゆる曲がり穴の場合にも、どの程度の内径を有し、どの程度水平方向に曲がった曲がり穴であるかを測定することができるという効果を奏する。 a-5.甲第5号証について 甲第5号証には、磁力により剛性支持体8上に保持された較正球9がワークに移動する点について記載されているが、訂正後の請求項1に係る特許発明の発明特定事項である「浮子を移動させながら、穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定して前記穴の形状を取得する」、「背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を検出した時の前記穴の水平面上の位置と、を複数箇所検出し」及び「穴の内径と前記穴の水平面上の位置とに基づいて穴の形状を測定する」点に関する技術が記載されていない。 そして、甲第5号証は、小径の貫通穴の流断面を検査する空気式装置であって流断面を測定する際に球の汚染を防ぐための技術であるのに対し、訂正後の請求項1に係る特許発明は穴の内径を測定し、その測定した内径及び内径を測定したときの浮子の水平面上の位置に基づいて穴の形状情報を出力する測定技術であり、水平方向に曲がったいわゆる曲がり穴の場合にも、どの程度の内径を有し、どの程度水平方向に曲がった曲がり穴であるかを測定することができるという効果を奏する。 a-6.甲第6号証について 甲第6号証には、ロッド4上に載置された較正球5がワーク3に移動する点について記載されているが、訂正後の請求項1に係る特許発明の発明特定事項の「背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を検出した時の前記穴の水平面上の位置と、を複数箇所検出し」及び「穴の内径と前記穴の水平面上の位置とに基づいて穴の形状を測定する」点に関する技術が記載されていない。 そして、甲第6号証は、出力結果としてワークの実際の断面寸法が得られる技術であるのに対し、訂正後の請求項1に係る特許発明は穴の内径を測定し、その測定した内径及び内径を測定したときの浮子の水平面上の位置に基づいて穴の形状情報を出力する測定技術であり、水平方向に曲がったいわゆる曲がり穴の場合にも、どの程度の内径を有し、どの程度水平方向に曲がった曲がり穴であるかを測定することができるという効果を奏する。 b.請求項2及び3について b-1.甲第1号証について 甲第1号証には、訂正後の請求項2に係る特許発明の発明特定事項である「穴の中心線を測定して穴の形状を取得する」、「水平面上の位置及び鉛直方向の位置を複数箇所検出し」及び「該検出値から穴の中心線を求め、該中心線に基づいて穴の形状を取得する」点に関し記載されていない。また、甲第1号証には、訂正後の請求項3に係る特許発明の発明特定事項である「穴の中心線を測定して穴の形状を取得する穴の形状測定装置」、「浮子の水平面上の位置を複数箇所検出する位置検出センサ」及び「浮子の鉛直方向の位置を複数箇所検出するリニアスケール」について記載されていない。 そして、訂正後の請求項2及び3に係る特許発明は、上記発明特定事項を備えることにより、穴の中心線を取得し、移動する浮子の水平面上及び鉛直方向の位置を検出することにより、穴の微細な曲がり具合を含む穴の形状測定ができるという効果を奏する。 b-2.甲第2号証及び第3号証について 甲第2号証及び第3号証には、較正球6又は球9を移動する点について記載されているが、訂正後の請求項2に係る特許発明の発明特定事項である「穴の中心線を測定して穴の形状を取得する」、「水平面上の位置及び鉛直方向の位置を複数箇所検出し」及び「該検出値から穴の中心線を求め、該中心線に基づいて穴の形状を取得する」点に関し記載されていない。また、甲第2号証及び第3号証には、訂正後の請求項3に係る特許発明の発明特定事項である「穴の中心線を測定して穴の形状を取得する穴の形状測定装置」、「浮子の水平面上の位置を複数箇所検出する位置検出センサ」及び「浮子の鉛直方向の位置を複数箇所検出するリニアスケール」について記載されていない。 そして、訂正後の請求項2及び3に係る特許発明は、上記発明特定事項を備えることにより、穴の中心線を取得し、移動する浮子の水平面上及び鉛直方向の位置を検出することにより、穴の微細な曲がり具合を含む穴の形状測定ができるという効果を奏する。 c.請求項4について 訂正後の請求項4に係る特許発明は、訂正後の請求項2及び3に係る発明に加えて、穴の内径を測定し、この穴の内径と、該請求項2及び3に係る発明と同様にして求めた穴の中心線とに基づいて穴の形状を測定する技術であり、上記発明特定事項を備えることにより、穴の内径、穴の中心線を取得し、移動する浮子の水平面上及び鉛直方向の位置を検出することにより、曲がり穴やテーパを有する穴でも、穴の曲がり具合やテーパ角度及び穴の内径を特定した穴の形状を測定することができるという効果を奏する。 そして、上記「b.」における記載と同様に、甲第1号証ないし甲第6号証には、訂正後の請求項4に係る特許発明の発明特定事項の「浮子を移動させながら」、「穴の中心線を測定して、穴の形状を取得する穴の形状測定装置」、「浮子の水平面上の位置を複数箇所検出する位置検出センサ」及び「浮子の鉛直方向の位置を複数箇所検出するリニアスケール」について記載されていない。 d.請求項5について 訂正後の請求項5は、訂正後の請求項3又は請求項4の従属項であり、上述したとおり訂正後の請求項3及び請求項4に係る特許発明についての請求人の主張が成り立たない以上、訂正後の請求項5に係る特許発明ついての請求人の主張も成り立たない。 そして、訂正後の請求項5に係る発明は、浮子が受ける抗力を3以上の方向に分割して検出し、この検出値と浮子の鉛直方向の位置とを用いて穴の中心線を求めて穴の形状を測定することができ、更に、これらに加えて穴の内径に基づいて穴の形状を測定することができるという効果を奏する。 e.請求項6について 訂正後の請求項6は、訂正後の請求項3、請求項4又は請求項5の従属項であり、上述したとおり訂正後の請求項3、請求項4及び請求項5についての請求人の主張が成り立たない以上、請求項6についての請求人の主張も成り立たない。 そして、請求項6の特許発明は、浮子に自動求心作用が生じやすい状態で穴の中心線を求めて穴の形状を測定することができ、また、浮子が受ける抗力を3以上の方向に分割して検出し、この検出値と浮子の鉛直方向の位置とを用いて穴の中心線を求めて穴の形状を測定することができ、更に、これらに加えて穴の内径に基づいて穴の形状を測定することができるという効果を奏する。 f.まとめ 以上のように、甲第1号証乃至甲第6号証には、訂正後の請求項1ないし6に係る特許発明の上記発明特定事項について記載されていない。また、甲第7号証には、訂正後の請求項1ないし6に係る特許発明の発明特定事項について記載されていない、したがって、訂正後の請求項1ないし6に係る特許発明は、甲第1号証ないし甲第7号証に記載された発明と異なる発明である。 更に、甲第1号証ないし甲第7号証に基づいて当業者がその出願前に容易することができた発明とはいえない。 よって、請求人の主張は成り立たない。 【4】当審の判断 請求人は、被請求人の平成18年5月24日付け訂正請求(以下、「本件訂正請求」という。)に対し、平成18年8月10日付け本件訂正請求の副本送付及び弁駁指令通知に対して何ら応答していないが、本件訂正請求には、平成17年4月8日付け訂正請求(以下、「従前訂正請求」という。)のものと実質的に同じ内容のものも含まれる。 すなわち、従前訂正請求における訂正後の請求項1、3、4及び6は、それぞれ、本件訂正請求の請求項1、2、3及び4と記載事項が同じものであり、また、従前訂正請求の請求項7及び8と、それぞれ対応する本件訂正請求の請求項5及び6とは、それらが引用する請求項番号が異なるだけで、その記載事項は実質的に同じものである。 そこで、上記「【2】ア.」、「【2】ウ.」のうち、従前訂正請求の訂正後の請求項1、3、4、6、7及び8についての請求人の主張を、本件訂正請求の訂正後の請求項1ないし6についての主張として読み替えて以下検討する。 【4.1】訂正の適否についての判断 【4.1.1】訂正事項 (1)訂正事項a 特許請求の範囲の請求項1を、 「浮子を移動させながら、穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定して前記穴の形状を取得する穴の形状測定方法であって、流体を供給した前記穴に前記浮子を挿入し、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させながら、前記流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力と、該背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を検出した時の前記穴の水平面上の位置と、を複数箇所検出し、該検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算し、該穴の内径と前記穴の水平面上の位置とに基づいて穴の形状を測定することを特徴とする穴の形状測定方法。」 と訂正する。 (2)訂正事項b 特許請求の範囲の請求項2を、削除する。 (3)訂正事項c 特許請求の範囲の請求項3を、 「穴の中心線を測定して穴の形状を取得する穴の形状測定方法であって、 流体を供給した穴に浮子を挿入し、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させながら前記浮子の水平面上の位置及び鉛直方向の位置を複数箇所検出し、該検出値から穴の中心線を求め、該中心線に基づいて穴の形状を取得することを特徴とする穴の形状測定方法。」 と訂正し、請求項2とする。 (4)訂正事項d 特許請求の範囲の請求項4を、 「穴の中心線を測定して穴の形状を取得する穴の形状測定装置であって、 前記穴に流体を供給する流体供給手段と、前記穴に挿入される浮子と、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させる移動手段と、前記浮子の水平面上の位置を複数箇所検出する位置検出センサと、前記浮子の鉛直方向の位置を複数箇所検出するリニアスケールと、を備えたことを特徴とする穴の形状測定装置。」 と訂正し、請求項3とする。 (5)訂正事項e 特許請求の範囲の請求項5を、 削除する。 (6)訂正事項f 特許請求の範囲の請求項6を、 「浮子を移動させながら、穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定するとともに、前記穴の中心線を測定して、穴の形状を取得する穴の形状測定装置であって、前記穴に流体を供給する流体供給手段と、前記穴に挿入される浮子と、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させる移動手段と、前記流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を複数箇所検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、前記浮子の水平面上の位置を複数箇所検出する位置検出センサと、前記浮子の鉛直方向の位置を複数箇所検出するリニアスケールと、を備えたことを特徴とする穴の形状測定装置。」 と訂正し、請求項4とする。 (7)訂正事項g 特許請求の範囲の請求項7を、 「前記位置検出センサは、前記浮子が受ける抗力を3以上の方向に分割して検出することを特徴とする請求項3又は4記載の穴の形状測定装置。」 と訂正し、請求項5とする。 (8)訂正事項h 特許請求の範囲の請求項8を、 「前記浮子は、弾性体で支持されていることを特徴とする請求項3、4又は5に記載の穴の形状測定装置。」 と訂正し、請求項6とする。 (9)訂正事項i 段落番号【0005】 の「【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は前記目的を達成するために、… ことを特徴としている。」を、 「【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明は前記目的を達成するために、浮子を移動させながら、穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定して前記穴の形状を取得する穴の形状測定方法であって、流体を供給した前記穴に前記浮子を挿入し、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させながら、前記流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力と、該背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を検出した時の前記穴の水平面上の位置と、を複数箇所検出し、該検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算し、該穴の内径と前記穴の水平面上の位置とに基づいて穴の形状を測定することを特徴としている。」 と訂正する。 (10)訂正事項j 段落番号【0006】の「請求項記載の発明は前記目的を達成するために、… ことを特徴としている。」 を、削除する。 (11)訂正事項k 段落番号【0007】の「請求項1又は2に記載の発明によれば、…測定できる。」を、 「請求項1記載の発明によれば、流体を供給した穴に浮子を挿入して移動させながら、流体の背圧、流量、浮子が受ける効力を複数箇所検出することにより穴の内径を穴の奥行き方向に複数箇所測定できる。これにより、一定径でない穴、例えばテーパが形成された穴の形状も測定できる。」 と訂正する。 (12)訂正事項l 段落番号【0008】の「請求項3記載の発明は前記目的を達成するために、…特徴としている。」を、 「請求項2記載の発明は前記目的を達成するために、穴の中心線を測定して穴の形状を取得する穴の形状測定方法であって、流体を供給した穴に浮子を挿入し、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させながら前記浮子の水平面上の位置及び鉛直方向の位置を複数箇所検出し、該検出値から穴の中心線を求め、該中心線に基づいて穴の形状を取得することを特徴としている。」 と訂正する。 (13)訂正事項m 段落番号【0009】の「請求項4記載の本発明は前記目的を達成するために、…特徴としている。」を、 「請求項3記載の発明は、前記目的を達成するために、穴の中心線を測定して穴の形状を取得する穴の形状測定装置であって、前記穴に流体を供給する流体供給手段と、前記穴に挿入される浮子と、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させる移動手段と、前記浮子の水平面上の位置を複数箇所検出する位置検出センサと、前記浮子の鉛直方向の位置を複数箇所検出するリニアスケールと、を備えたことを特徴としている。」 と訂正する。 (14)訂正事項n 段落番号【0010】の「請求項3又は4記載の発明によれば、…を求めることができる。」を、 「請求項2又は3記載の発明によれば、流体を供給した穴に浮子を挿入すると、浮子は自動求心作用を受けて穴の中心に移動するので、浮子の中心位置の軌跡は 穴の中心線に一致する。したがって、浮子の位置を複数箇所検出することにより穴の中心線を求めることができる。 請求項4記載の発明は、浮子を移動させながら、穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定するとともに、前記穴の中心線を測定して、穴の形状を取得する穴の形状測定装置であって、前記穴に流体を供給する流体供給手段と、前記穴に挿入される浮子と、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させる移動手段と、前記流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を複数箇所検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、前記浮子の水平面上の位置を複数箇所検出する位置検出センサと、前記浮子の鉛直方向の位置を複数箇所検出するリニアスケールと、を備えたことを特徴とする。 請求項5記載の発明は、前記位置検出センサは、前記浮子が受ける抗力を3以上の方向に分割して検出することを特徴とする。 請求項6記載の発明は、前記浮子は、弾性体で支持されていることを特徴とする。」 と訂正する。 (15)訂正事項o 段落番号【0021】の「測定時における測定球30には、…ワーク22の外径を精度良く測定できる。」を、 「測定時における測定球30には、穴22Aの内壁と測定球30との隙間を通り抜ける圧縮空気によって自動求心作用(又は自動調芯作用)が働く。したがって、支持部材32が弾性変形して測定球30が穴22Aの中心に自動的に配置される。これにより、圧縮空気は、ワーク22の回りに略均等に形成された隙間を通り抜けることになり、このときの背圧を検出することによってワーク22の内径を精度良く測定できる。」 と訂正する。 なお、下線は、訂正箇所を示すために付したものである。 【4.1.2】新規事項の追加の有無及び訂正の目的の適否 (1)訂正事項aについて 訂正事項aにおいて、「と、該背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を検出した時の前記穴の水平面上の位置と、」を挿入した点は、複数箇所検出する対象として、訂正前の請求項1に記載された「背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力」に加えて、「該背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を検出した時の前記穴の水平面上の位置と、」を直列的に付加することにより検出対象を限定したものであり(以下、「限定事項1」という。)、「し、該穴の内径と前記穴の水平面上の位置とに基づいて穴の形状を測定」を挿入した点は、「穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定して前記穴の形状を収得する」際に、訂正前の請求項1に記載された「穴の内径」に加えて、「前記穴の水平面上の位置とに基づいて穴の形状を測定する」ことを直列的に付加することにより穴の形状測定のための要素を限定するものである(以下、「限定事項2」という。)。 そして、限定事項1及び2は、願書に添付された明細書の段落番号【0037】の「測定球30の水平面上の位置を検出する」及び段落番号【0041】の「該浮子の位置と穴の内径を複数箇所検出したので、様々な穴の形状を測定することができる。」の記載に基づくものである。 また、「浮子を移動させながら、」を挿入する点は、訂正前の請求項1に記載された「該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させながら」の記載に基づいて「浮子」を移動させることについて明りょうにするために行なったものであり、「流体を供給した前記穴に前記浮子を挿入し、」において、「穴」と「浮子」の前にそれぞれ「前記」を挿入している点は、訂正前の請求項1に記載された「穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定して前記穴の形状を取得する穴の形状測定方法であって、流体を供給した穴に浮子を挿入し」に基づき、「浮子」と「穴」とが前述したものであることを明りょうにするためのものであるから、これらはいずれも明りょうでない記載の釈明を目的としたものである。 すると、訂正事項aは、願書に添付された明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。 (2)訂正事項bについて 訂正事項bは、訂正前の特許請求の範囲の請求項2を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 (3)訂正事項cについて 訂正事項cは、訂正前の請求項3の「浮子の位置」を、より具体的に「水平面上の位置及び鉛直方向の位置」に限定するものである(以下、「限定事項3」という。)。 そして、限定事項3は、訂正前の明細書の段落番号【0037】の「即ち測定球30の水平面上の位置を検出する。この位置検出センサで検出した測定球30の水平面上の位置と、リニアスケール46で検出した測定球30の鉛直方向の位置とに基づいて、測定球30の位置が算出される。」の記載に基づくものである。 また、訂正前の請求項番号を請求項3から請求項2に変更したことは、訂正前の請求項2を削除したことに伴い請求項番号を整理するためのもので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。 すると、訂正事項cは、願書に添付された明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。 (4)訂正事項dについて 訂正事項dは、訂正前の請求項4の「前記浮子の位置」を、より具体的に「水平面上の位置」と「鉛直方向の位置」に分け、「複数箇所検出する位置検出手段」を、「水平面上の位置」と「鉛直方向の位置」に対応して、それぞれ「位置検出センサ」と「リニアスケール」に限定するものである(以下、「限定事項4」という。)。 そして、限定事項4は、訂正事項cと同様に、願書に添付された明細書の段落番号【0037】の記載に基づくものである。 また、訂正前の請求項番号を請求項4から請求項3に変更したことは、訂正前の請求項2を削除したことに伴い請求項番号を整理するためのもので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。 すると、訂正事項dは、願書に添付された明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。 (5)訂正事項eについて 訂正事項eは、訂正前の特許請求の範囲の請求項5を削除するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 (6)訂正事項fについて 訂正事項fは、「浮子を移動させながら」は、訂正事項aについて上記(1)で述べたことと同様であり、また、「前記浮子の水平面上の位置を…リニアスケールと」は、訂正事項dについて上記(4)で述べたことと同様であり、それぞれ、願書に添付された明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内の訂正であって、明りょうでない記載の釈明及び特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正である。 また、訂正前の請求項番号を請求項6から請求項4に変更したことは、訂正前の請求項2及び請求項5を削除したことに伴い請求項番号を整理するためのもので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。 (7)訂正事項gについて 訂正事項gは、訂正前の請求項7の「位置検出手段」を、従属する訂正後の請求項3又は4の「水平面上の位置を複数箇所検出する位置検出センサ」に対応して、「位置検出センサ」と限定するものである(以下、「限定事項5」という。)。 そして、限定事項5は、訂正事項cと同様に、願書に添付された明細書の段落番号【0037】の記載に基づくものである。 また、訂正前の請求項番号を請求項7から請求項5に、訂正前の引用する請求項番号を請求項4又は6から請求項3又は4に変更したことは、訂正前の請求項2及び5を削除したことに伴うもので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。 すると、訂正事項gは、願書に添付された明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内の訂正であって、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。 (8)訂正事項hについて 訂正事項hは、訂正前の請求項番号を請求項8から請求項6に、訂正前の引用する請求項番号を請求項2、4、6又は7から請求項3、4又は5に変更したことは、訂正前の請求項2及び5を削除したことに伴うもので、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正であり、願書に添付された明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内の訂正であって、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。 (9)訂正事項iないしnについて 訂正事項iないしnは、訂正事項aないしhによる特許請求の範囲の訂正に伴い、【発明の詳細な説明】の項の記載を整合させるためのものであるから、願書に添付された明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内の訂正であって、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正である。 (10)訂正事項oについて 訂正事項oは、訂正前の明細書の段落番号【0021】における「ワーク22の外径」を「ワーク22の内径」に訂正するものである。 すると、訂正前の「ワーク22の外径」が、願書に最初に添付した明細書又は図面の段落番号【0020】の「背圧の検出値を管制部20でマスターの基準値と比較することによって穴22Aの内径を複数箇所測定することができ、」の記載に基づき、「ワーク22の内径」の誤記であることが明らかであるから、訂正事項oは、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載されていた事項の範囲内の訂正であって、誤記の訂正を目的とするものである。 【4.1.3】特許請求の範囲の実質上の拡張又は変更の存否 (1)上記訂正事項aないしoにより、実質的に特許請求の範囲が拡張又は変更されたか否かについて以下検討する。 上記限定事項1ないし5によって、訂正前の請求項1ないし8に係る特許発明の発明特定事項に新たな発明特定事項が付加され、あるいは、より具体的に発明特定事項が限定されているが、上述したように、これらの付加や限定は訂正前の明細書等に記載された事項に基づくものであり、訂正前後の特許発明の目的は同一であり、訂正前の特許発明の目的及び効果に新たなものを加えるものではなく、また、訂正前の特許発明の技術的思想を変更するものでもないことは明らかである。 そして、上記請求項の削除、明りょうでない記載の釈明及び誤記の訂正によっても、訂正前後の特許発明の目的は同一であり、訂正前の特許発明の目的及び効果に新たなものを加えるものではなく、また、訂正前の特許発明の技術的思想を変更するものでもないことは明らかである。 よって、上記訂正事項は、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、平成18年5月24日付けの訂正は、特許法第134条の2ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項、4項の規定に適合するので適法な訂正と認める。 (2)なお、上記「【2】請求人の請求の趣旨及び理由の概要」の「ア.」において述べたとおり、請求人は、本件訂正請求は認められるべきものでないと主張するものと解されるので、以下に検討する。 請求人の主張する具体的な理由は、概ね、以下の(あ)、(い)のとおりである。 理由(あ) 本件明細書には、段落【0012】乃至【0025】に第1の実施形態、段落【0026】乃至【0032】に第2の実施形態、段落【0033】乃至【0037】に第3の実施形態が記載されている。 第1の実施形態は訂正前の請求項1、2に対応する。第1の実施形態には、段落【0020】に記載されているように、穴の水平面上の浮子の位置を検出することを行わないで穴の形状を検出する例が開示されている。第1の実施形態は、段落【0022】に「例えば、穴22Aにテーパが形成されていた場合、そのテーパの角度を求めることができる。また、図7に示すように、穴22Aに縮径部や拡径部がある場合であっても、縮径部や拡径部の形状を求めることもできる。」とあるように、軸対称性を有するとみなされる場合を想定しているものである。 また、第2の実施形態は訂正前の請求項3、4に対応するものである。第2の実施形態には、段落【0028】に「・・・圧電センサ38、38…の検出値から回転モーメントを算出し、測定球30の中心位置の軌跡を求めることにより、穴22Aの中心線を求めることができる。これにより、穴22Aの曲率等を測定できる。同様に、穴22Aが屈曲している場合には、その屈曲角度を求めることができ、穴22Aが斜めに形成されている場合には、穴22Aの角度を求めることができる。」と記載されているように、圧電センサ38、38…の検出値から回転モーメントを算出して穴の中心線の鉛直軸からの相対的ずれを求め穴22Aの曲率等を測定するものであり、第2の実施形態では穴の水平面上の浮子の位置そのものを検出することはしていない。 また、第3の実施形態は訂正前の請求項5、6に対応する。第3の実施形態は、測定球30の水平面上の位置を検出し、穴の中心線と穴の内径とを測定して穴の形状を測定するものである。 上述したように、訂正前の請求項1、2に対応する第1の実施形態は穴が軸対称性を有するとみなされる場合を想定したものであり、訂正前の請求項3、4に対応する第2の実施形態は穴の中心線の鉛直軸からの相対的ずれを求め穴の屈曲角度等を求めるものであり、いずれにおいても測定球30の水平面上の絶対的位置を検出することは行われていない。 もし、同一の明細書内の記載を根拠とするものとはいえ、第1の実施形態及び第2の実施形態において測定球30の水平面上の位置を検出することを付加することが認められるとすれば、第1の実施形態及び第2の実施形態の内容を拡張あるいは変更することになり、対応する請求項1、3、4(当審注:本件訂正請求における訂正後の請求項1、2、3)は出願時の開示範囲を超えて第3の実施形態に対応する請求項5、6(当審注:同訂正後の請求項4)をも包含してしまうことになり不当に広い内容になる。 従って、訂正した請求項1における、訂正した「流体を供給した前記穴に前記浮子を挿入し、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させながら、前記流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力と、該背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を検出した時の前記穴の水平面上の位置と、を複数箇所検出し、」と、訂正した「該検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算し、該穴の内径と前記穴の水平面上の位置とに基づいて穴の形状を測定する」の内容は、明細書の開示された内容を拡張するものであり、従って、請求項1の訂正は特許請求の範囲の減縮ではなく特許請求の範囲の拡張あるいは変更に該当し訂正請求の要件に違反している。 理由(い) 請求項3(当審注:同訂正後の請求項2)の「流体を供給した穴に浮子を挿入し、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させながら前記浮子の水平面上の位置及び鉛直方向の位置を複数箇所検出し」と、請求項4(当審注:同訂正後の請求項3)の「前記浮子の水平面上の位置を複数箇所検出する位置検出センサ」の訂正内容は、明細書の開示された内容を拡張するものであり、従って、請求項3、4(当審注:同訂正後の請求項2、3)の訂正は特許請求の範囲の減縮ではなく特許請求の範囲の拡張あるいは変更に該当し訂正請求の要件に違反している。 理由(あ)について 訂正後の請求項1に係る特許発明における訂正内容は、「浮子・・・水平面上の位置・・・を検出」及び「水平面上の位置とに基づいて穴の形状を測定する」という、願書に添付した明細書又は図面の段落【0026】ないし【0031】、【0035】及び【0037】に記載された事項に基づいた発明特定事項の直列的付加にあたるものであり、この訂正によって、訂正前の特許発明の目的である「様々な穴の形状を測定できる穴の形状測定方法及び装置を提供すること」(段落【0004】)を達成するための発明特定事項をより具体的なものにしている。そうすると、この訂正は、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものでない。また、当該訂正後の請求項1に係る特許発明に整合させるための明細書の【発明の詳細な説明】中の記載事項の訂正によっても、請求項1に係る記載事項を拡張あるいは変更して解釈し得ない。従って、訂正後の請求項1に係る特許発明が、願書に添付された明細書等の記載範囲を超えるとの請求人の主張を採用することはできない。 理由(い)について 訂正後の請求項2、3に係る特許発明における訂正内容は、「浮子の水平面上の位置」を検出するという、願書に添付した明細書又は図面の段落【0026】ないし【0031】、【0035】及び【0037】に記載された事項に基づいた発明特定事項の直列的付加にあたるものであり、上記「理由(あ)について」と同様に、特許請求の範囲を実質的に拡張又は変更するものでない。また、当該訂正後の請求項2、3に係る特許発明に整合させるための明細書の【発明の詳細な説明】中の記載事項の訂正によっても、請求項2、3に係る記載事項を拡張あるいは変更して解釈し得ない。従って、訂正後の請求項2、3に係る特許発明が、願書に添付された明細書等の記載範囲を超えるとの請求人の主張を採用することはできない。 【4.1.3】訂正の適否についての結論 従って、平成18年5月24日付けの訂正請求は、特許法第134条の2第1項ただし書き、及び、同条第5項において準用する同法第126条第3項、4項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 【4.2】本件発明 以上のように、本件訂正請求は適法なものであるので、本件特許の請求項1ないし6に係る特許発明(以下、項番号に従い「本件発明1」ないし「本件発明6」という。)は、訂正請求書に添付された訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりの次のものと認める。 「【請求項1】 浮子を移動させながら、穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定して前記穴の形状を取得する穴の形状測定方法であって、 流体を供給した前記穴に前記浮子を挿入し、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させながら、前記流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力と、該背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を検出した時の前記穴の水平面上の位置と、を複数箇所検出し、該検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算し、該穴の内径と前記穴の水平面上の位置とに基づいて穴の形状を測定することを特徴とする穴の形状測定方法。 【請求項2】 穴の中心線を測定して穴の形状を取得する穴の形状測定方法であって、 流体を供給した穴に浮子を挿入し、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させながら前記浮子の水平面上の位置及び鉛直方向の位置を複数箇所検出し、該検出値から穴の中心線を求め、該中心線に基づいて穴の形状を取得することを特徴とする穴の形状測定方法。 【請求項3】 穴の中心線を測定して穴の形状を取得する穴の形状測定装置であって、 前記穴に流体を供給する流体供給手段と、 前記穴に挿入される浮子と、 該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させる移動手段と、 前記浮子の水平面上の位置を複数箇所検出する位置検出センサと、 前記浮子の鉛直方向の位置を複数箇所検出するリニアスケールと、 を備えたことを特徴とする穴の形状測定装置。 【請求項4】 浮子を移動させながら、穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定するとともに、前記穴の中心線を測定して、穴の形状を取得する穴の形状測定装置であって、 前記穴に流体を供給する流体供給手段と、 前記穴に挿入される浮子と、 該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させる移動手段と、 前記流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を複数箇所検出する検出手段と、 該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、 前記浮子の水平面上の位置を複数箇所検出する位置検出センサと、 前記浮子の鉛直方向の位置を複数箇所検出するリニアスケールと、 を備えたことを特徴とする穴の形状測定装置。 【請求項5】 前記位置検出センサは、前記浮子が受ける抗力を3以上の方向に分割して検出することを特徴とする請求項3又は4記載の穴の形状測定装置。 【請求項6】 前記浮子は、弾性体で支持されていることを特徴とする請求項3、4又は5に記載の穴の形状測定装置。」 【4.3】甲各号証に記載された発明 請求人の提出した甲第1号証ないし甲第7号証(以下、番号順に「刊行物1」ないし「刊行物7」という。)には、以下のような記載事項が存在する(なお、甲第1号証ないし甲第6号証の記載事項の日本語訳は甲第1b号証ないし甲第6b号証を採用する。)。 【4.3.1】刊行物1について (1a)「本発明は測定技術に関し、ごく微小な径から数ミリメートルまでの径を有する穴を検査するために使用されることができる。本発明の目的は、計測精度を向上させることである。穴の相当直径を検査するために、該穴の軸に対して垂直に位置決めされた支持体が該穴に挿入され、支持体上に球が載置されて、ガスが該穴に一定の流量で供給される。ガス流は該穴内において球を中心に位置させる。該穴の径は、球と検査すべきワークとの間の隙間によって変化するガスの圧力に基づいて決定される。」(甲第1号証第1頁右欄(57)、甲第1b号証第1頁(57)) (1b)「検査すべきワーク1が、配置要素2の上に載置される。支持体4が検査すべき穴3内に挿入されて、平坦端5が該穴の軸に対して垂直となるように位置決めされる。適切な寸法を有する球6が検査すべき穴内の支持体上に配置される。内部にノズル9が形成された吸気管8を有する気密チャンバ7が、ワーク1上に配置される。チャンバは表示ユニット11に管10を介して連通している。圧縮ガスが管8を介してチャンバに供給され、穴3の入口を通り、球6とワーク1との間の隙間を通過して、大気中に流出する。ガス流量はノズル9により一定に保持される。」(甲第1号証第1欄14行?32行、甲第1b号証第2頁8行?15行) (1c)「ガスは球6の周囲を流れ、球6が穴の中心に対して変位した場合には、該穴の中心に向かって方向付けられる空気力成分が形成される。こうして、ワーク1に対する支持体の位置とは無関係に、ガス流によって球が穴内において中心に位置される。」(甲第1号証第1欄32行?第2欄6行、甲第1b号証第2頁第15行?18行) (1d)「球6が中心位置に配置されると、表示ユニット11は、ガス流パラメータを、特に球6とワーク1との間の隙間によって変化する圧力を計測するように使用される。こうして、表示ユニット11により穴3の相当直径に関する情報が提供される。」(甲第1号証第2欄7行?13行、甲第1b号証第2頁第19行?22行) (1e)「穴の軸に垂直に位置決めされた支持体上に球を配置することにより、確実に球が穴の内部の中心に位置するようになり、計測精度が向上する。」(甲第1号証第2欄14行?18行、甲第1b号証第2頁23,24行) (1f)「計測精度の向上を目的として、前記穴の内部において前記回転体を中心に位置させることにより、検査すべき穴の内部において該穴の軸に垂直に配置された支持体上に回転体が自由に配置される」(甲第1号証第2欄特許請求の範囲、甲第1b号証第3頁特許請求の範囲) (1g)刊行物1の図面には、ガス流の方向と反対側に、球6とワーク1との間の隙間によって変化する圧力を計測するための表示ユニット11を配置していること、ワーク1に穴3が形成されていること、そして穴3内に支持体である平坦端5が位置することが読み取れる。 そうすると、刊行物1には以下の発明が記載されている(以下、「刊行物1記載発明」という。)。 「ワーク1に形成された穴3の直径を測定する穴3の測定技術において、適切な寸法を有する球6が検査すべき穴内の支持体の平坦端5上に配置され、ノズル9が形成された吸気管8を有する気密チャンバ7をワーク1上に配置し、ガスを吸気管8を介してチャンバ7に供給し、ガスを球6とワーク1との間の隙間を通過させ、ワーク1に対する支持体の平坦端5の位置とは無関係にガス流によって球6を穴3内において中心に位置させ、球6とワーク1との間の隙間によって変化する圧力を表示ユニット11により計測し、ワーク1に形成された穴3の直径を求める技術」 【4.3.2】刊行物2について (2a)「安定した圧力を有する圧縮空気がチャネル2内に供給され、駆動部9によりベローズ8を圧縮しながら、較正された球6がワーク12の検査すべき穴内に供給される。球6とワーク12との間の隙間によって変化するチャネル4内の圧力に基づいて、対応する断面における該穴の径が決定される。」(甲第2号証第1頁左欄(57)、甲第2b号証第1頁(57)) (2b)「本発明は測定技術分野に係り、ごく微小な径から数ミリメートルまでの径を有する円筒形穴の長手方向断面の寸法及び形状を作用及び証明検査するために使用されることができる。・・・本発明による穴の寸法を作用検査するための空気式装置は、吸気チャネル2、ノズル3、及び排気チャネル4を有するシールされた本体1と、これらのチャネルと連通する表示コマンドユニット5と、弾性スレッド7によりベローズ8に連結された較正球6と、レバー10を介してベローズ8と協働する駆動部9と、を有している。本発明による装置は、旋盤(図示せず)の支持アーム11に固定されている。検査すべきワーク12は、コレット13により前記旋盤に固定されている。ベローズ8は排気チャネル4とそのブラインド端において同軸状に配置されており、駆動部と球との連結部がシールされることを確実にしている。シールリング14は排気チャネル4の端部に載置されている。」(甲第2号証第1欄1行?33行、甲第2b号証第2頁2行?17行) (2c)「計測前には、本体1はシールリング14を介して検査すべきワーク12に当接している。安定した圧力を有する圧縮空気が吸気チャネルに供給され、球を検査すべきワークに引き寄せるとともに、ベローズ8を延長させるようにして、これによりスレッド7が緊張状態となる。ベローズ8は駆動部9及びレバー10によって圧縮され、球6は検査すべきワーク12の所望の断面に移動される。その後、計測圧力が表示コマンドユニット5によって調節されて、これに伴ってワーク12の加工工程を調整するようにコマンドが生成される。」(甲第2号証第1欄36行?第2欄13行、甲第2b号証第2頁19行?26行) (2d)「駆動部と球との連結部をベローズ及びこれに固定された弾性スレッドの形状にし、且つ該ベローズを排気チャネルのブラインド端に配置することにより、例えば一方の端に向かって細くなる穴を備えたワークを検査する等の、本発明の装置の機能的可能性を拡大することができる。」(甲第2号証第2欄14行?21行、甲第2b号証第2頁27行?第3頁1行) (2e)「駆動部と球との連結部をベローズの形状とし、前記ベローズは前記駆動部と、前記ベローズに固定された弾性スレッドと、前記球と協働するとともに、前記排気チャネルとそのブラインド端において同軸状に配置されていること」(甲第2号証第2欄特許請求の範囲、甲第2b号証第3頁特許請求の範囲) (2f)刊行物2の図面には、圧縮空気流の方向と反対側に、球6とワーク12との間の隙間によって変化するチャネル4内の圧力を測定する表示コマンドユニット5を配置していること、ワーク12に穴が形成されていることが読み取れる。 そうすると、刊行物2には以下の発明が記載されている(以下、「刊行物2記載発明」という。)。 「ワーク12に形成された穴の直径を測定する穴の測定技術において、本体1がシールリング14を介して検査すべきワーク12に当接しており、弾性スレッド7がベローズ8に固定されており、弾性スレッド7に較正球6が連結されることにより、較正球6がワーク12の検査すべき穴内に供給され、圧縮空気が吸気チャネル2からワーク12の検査すべき穴内に供給され、較正球6とワーク12の穴との間の隙間によって変化する排気チャネル4内の圧力に基づいて対応する断面における該穴の径を決定するワーク12に形成された穴の直径を測定する穴の測定技術」 【4.3.3】刊行物3について (3a)「本発明の目的は、検査すべき穴の長さ範囲を拡大することである。ドラム6から解かれた弾性スレッド8に沿って、較正球が検査すべきワーク17の穴まで降下される。検査すべき穴全体に沿った平均直径が、吸気ノズル2を介して供給された圧縮ガス流に対する流圧に基づいて決定される。」(甲第3号証第1頁(57)、甲第2b号証第1頁(57)) (3b)「本発明による穴寸法を作用測定するための空気式装置は、吸気ノズル2、排気チャネル3、及び表示コマンドユニット(図示せず)への空気流通路のためのパイプ連結部4とを有するシールされた剛性本体1と、この本体内に配置された駆動部であって、電気モータ 5と、軸7に載置された回転自在ドラム6と、較正球9を有するドラム6に巻き付けられた弾性スレッド8と、中央リング10と、ガスケット13及び14とともに前記本体のシールを確実にするカバー11及び12と、電気モータ 5へのシール電力リード15と、本体1と検査すべきワーク17との突合せ接合部をシールすることが意図されたガスケット16とを有する駆動部とを有している。ワーク17は旋盤チャック18に固定されている。本発明により提案される装置は、ガスケット16を介してワーク17の端部に当接している。」(甲第3号証第3欄13行?32行、甲第3b号証第2頁6行?16行) (3c)「安定した圧力を有する圧縮空気がノズル2を介して供給され、較正球9がチャネル3に沿ってワーク17の検査すべき穴に引き寄せられる。ドラム6は電気モータ 5により回転されて、球9をスレッド8に沿って降下させる。」(甲第3号証第3欄32行?第4欄4行、甲第3b号証第2頁16行?18行) (3d)「検査すべきワーク17の各断面において、球と検査すべきワークとの間の隙間は該ワークの径に応じて変化し、空気流に対する流圧が決定される。該流圧は表示コマンドユニットにより計測され、検査すべきワークのその時の径がこのユニットと較正との関係の読取値に基づいて決定される。」(甲第3号証第4欄4行?13行、甲第3b号証第2頁18行?22行) (3e)「駆動部をドラム形状にして較正球を担持する弾性スレッドを該駆動部から解かれるようにすることにより、検査すべき穴の長さ範囲を拡大することができる」(甲第3号証第4欄14行?19行、甲第3b号証第2頁23行?25行) そうすると、刊行物3には以下の発明が記載されている(以下、「刊行物3記載発明」という。)。 「ワーク17の穴の径を決定する穴寸法の測定技術において、装置1がガスケット16を介してワーク17の端部に当接しており、圧縮空気がノズル2を介して供給され、較正球9がチャネル3に沿ってワーク17の検査すべき穴に引き寄せられ、ドラム6は電気モータ5により回転されて球9を弾性スレッド8に沿って降下させ、検査すべきワーク17の各断面において、球と検査すべきワークとの間の隙間は該ワークの径に応じて変化し、空気流に対する流圧が決定され、該流圧は表示コマンドユニットにより計測され、検査すべきワークのその時の径がこのユニットと較正との関係の読取値に基づいて決定されるワーク17の穴の径を決定する穴寸法の測定技術」 【4.3.4】刊行物4について (4a)「本発明は検査及び測定技術に関し、壁厚0.2乃至2.0mm及び直径0.5mm乃至3.0mmの軸受筒を0.1乃至0.5μmの範囲の寸法精度で形成する場合に利用されることができる。本発明の目的は、薄壁であって容易に変形しやすいワークを検査する際の損傷を防止することにより、検査の信頼性を向上させることである。」(甲第4号証第1欄(57)1行?10行、甲第4b号証第1頁(57)1行?5行) (4b)「較正球3が一方の側から検査すべき穴内に導入されるとともに、ガスが他方の側から該穴に導入されて、該穴の入口における圧力が決定されて、検査すべきパラメータがこの値に基づいて評価される。」(甲第4号証第2欄6行?11行、甲第4b号証第1頁(57)12行?14行) (4c)「図面は本発明による装置を示し、流断面を検査する方法を説明するものである。図には、加工及び検査すべき穴2を有するワーク1と、較正計測球3と、軸方向駆動部5を有する厳密に方向付けられた磁気ロッド支持体4と、作動ガスの流通路のための開口部7を有するマンドレル6と、較正球3と検査すべきワーク1の凹部9とともに支持体を移動させるための開口部8と、ガス供給チャネル11とノズル12とを有する計測センサ10と、ガス流通路チャネル13と、長方形の断面を有するガスケット14と、計測センサ移動駆動部15と、該ワークの寸法を視覚的に検査するための機器16と、表示コマンドユニット17と、ラップ19を有する処理ユニット18とが示されている。」(甲第4号証第2欄下から6行?第3欄13行、甲第4b号証第2頁7行?15行) (4d)「ノズル端の内径dnと、マンドレルの凹部の直径Drと、ノズル端の外径Dnとの関係がdn<Dr<Dnとなるように関係付けられる・・・」(甲第4号証第3欄14行?19行、甲第4b号証第2頁16行?18行) (4e)「本発明の装置により、ラップ19を使用しながらダイヤモンドペーストを用いて穴を加工する方法は、以下の態様で実施される。球3を有するロッド支持体4が、駆動部5によって端(作動領域から移動された)位置に配置される。弾性ガスケット14がワーク1の外側円筒形表面に着座され、ワーク1が凹部9内に挿入される。計測センサ10が駆動部15によりワーク1まで移動され、該ワークは弾性ガスケット14に対するノズル12の端部によるセンサの軸方向移動によって軸方向に押される。弾性ガスケット14はマンドレル8の端部に当接してノズル12の端部においてガスケット14と弾性接触している。安定した圧力を有するガス流がガス供給チャネル11、ノズル12、及びチャネル13を通過するとともに、駆動部5が同時にワーク1に沿って球3を有するロッド支持体4を移動させる。この時、断面に関して該ワークにおける寸法変化が機器16の目盛りに基づいて観察され、ダイヤモンドペーストを用いたラップによる加工処理の次の補正のための情報が得られる。表示コマンドユニット17から情報が送信され、駆動部5により球3を有するロッド支持体4が不作動位置まで移動され、駆動部15により該ワークから計測センサが移動され、該ワークが洗浄されて開口部7を介してブローされ、ラップ19を有する加工ユニット18が作動される。穴をラップによって加工した後、計測サイクルが繰り返され、目標となる穴寸法が得られた後、該ワークが凹部9から移動される。」(甲第4号証第3欄20行?57行、甲第4b号証第2頁19行?第3頁8行) (4f)「以上提案してきた方法及び装置は、穴径dor=2.5+0.0005mm・・の軸受筒を加工する際に実施された。・・・本発明による方法及び装置は、直径0.5乃至3.0mmの穴であって、壁厚が0.2乃至2.0mmの穴を、0.1乃至0.5μmの範囲の計測精度で計測する際の信頼性を向上させることができる。」(甲第4号証第3欄58行?第4欄12行、甲第4b号証第3頁9行?16行) そうすると、刊行物4には以下の発明が記載されている(以下、「刊行物4記載発明」という。)。 「ワーク1における小径貫通穴の流断面を検査するための技術において、磁気ロッド支持体4上の較正球3が一方の側から検査すべき穴内に導入されるとともに、ガスが他方の側から該穴に導入されて、穴の入口における圧力が決定されて、検査すべきパラメータがこの値に基づいて評価されるワーク1における小径貫通穴の流断面を検査するための技術」 【4.3.5】刊行物5について (5a)「本発明の目的は、穴を加工する際の作用検査において精度と生産性とを向上させることである。この目的のために、加工すべき穴に挿入されるとともに、検査の際にガス流に露出される較正球9を、磁力により剛性支持体8上に保持する。これにより、較正球9は測定ガス流中において穴の内部で自由に中心に位置することができ、且つ作動ガスの放出領域を超えて移動することができる。」(甲第5号証第1頁右欄(57)4行?第2頁左欄7行、甲第5b号証第1頁3行?8行) (5b)「支持体8は高い磁場力を有する永久磁石の形態とされるとともに、駆動部10の往復運動に適合するようにされている。球は強磁性材料から形成される。検査すべき穴の流断面は、球と穴との間の隙間によって変化するガス圧力に基づいて決定される。」(甲第5号証第2頁右欄2行?7行、甲第5b号証第1頁(57)11行?14行) (5c)「本発明による装置は、検査すべきワーク3を収容し位置させる凹部2を有する本体1と、ガスの供給及び放出のためのチャネル5及び6が導かれるピックアップ4とを有している。表示コマンドユニット7がこれらのチャネルに連通している。較正球9は本体1内の支持体8上に配置されている。支持体8は駆動部10に連結され、永久磁石の形態とされて、検査すべき部分を収容するための領域A、及び検査すべき部分が収容される前記領域の外部の領域において凹部の軸0 0に沿った移動を許容するようにされている。凹部の領域Bはパージチャネル11とともに形成されている。」(甲第5号証第1欄20行?35行、甲第5b号証第2頁8行?15行) (5d)「球9が磁力により支持体8に対して保持されている。・・・安定した圧力を有するガスがノズル21を介してピックアップ4内に供給され、次いで検査すべきワーク3の穴内に供給される。そして球9及び支持体8は駆動部10により移動される。検査すべき穴の流断面によって変化する計測圧力は、ピックアップ4及びそのチャネル6において生成され、これは機器12によって記録され、コンパレータ要素13の所定のレベルに設定された入力部に送信される。」(甲第5号証第2欄12行?40行、甲第5b号証第2頁25行?第3頁7行) そうすると、刊行物5には以下の発明が記載されている(以下、「刊行物5記載発明」という。)。 「小径の貫通穴の流断面を検査するための技術において、較正球9を磁力により保持することのできる永久磁石の形態の剛性支持体8と、この剛性支持体8上において較正球9は測定ガス流中に穴の内部で自由に中心に位置することができ、圧縮空気が加工すべきワーク3の穴内に供給され、駆動部10により較正球9及び支持体8が穴内を移動させられ、検査すべき穴の流断面が球と穴との間の隙間によって変化するガス圧力に基づいて決定される小径の貫通穴の流断面を検査するための技術」 【4.3.6】刊行物6について (6a)「計測中において、該球は装置6によりダイアフラム15に形成された開口部を介して押されて検査すべきワーク3及び標準リング14に沿って移動される。表示コマンドユニットは、この工程の間に、吸気チャネル10を介して供給された空気に対する流体抵抗を記録する。計測された圧力に従って、ユニット8が検査すべきワークの穴の実際の横方向寸法を記録し・・・」(甲第6号証第1頁右欄6行?18行、甲第6b号証第1頁(57)6行?10行) (6b)「本発明による装置は、凹部2を有する本体1であって、凹部の一部は検査すべきワーク3を収容し配置させるように設計された本体1と、本体の内部でロッド4上に載置された較正球5と、該球を本体の軸に沿って移動させる駆動部6であってヒンジ7によりロッド4に連結された駆動部6と、ノズル11を有する吸気チャネル10と排気チャネル12とが内部に形成されるとともに、シールガスケット13と標準リング14とが載置された計測ユニット9に連結された表示コマンドユニット8と・・・」(甲第6号証第1欄10行?23行、甲第6b号証第2頁6行?12行) (6c)「球5は検査すべきワークの穴内に導入されて、球が検査すべきワークに沿って且つ標準リング14に対して移動される間に、表示コマンドユニット8が計測圧力の値を記録する。球がワーク3の穴及び標準リング14に位置している間に、計測された圧力と較正関係との比較に基づいて、表示コマンドユニット8が検査すべきワークの穴の実際の断面寸法を決定し・・・」(甲第6号証第2欄4行?19行、甲第6b号証第2頁第26行?第3頁第1行) そうすると、刊行物6には以下の発明が記載されている(以下、「刊行物6記載発明」という。)。 「ワーク3の穴の寸法を検査する技術において、駆動部6とヒンジ7で結合されたロッド4と、該ロッド4上に載置された較正球5と、ノズル11を有する吸気チャネル10と排気チャネル12とが内部に形成された計測ユニット9に連結された表示コマンドユニット8とを備え、較正球5は検査すべきワークの穴内に導入されて検査すべきワークに沿って移動する間に、表示コマンドユニット8が計測圧力の値を記録するとともに、計測された圧力と較正関係との比較に基づいて、表示コマンドユニット8が検査すべきワークの穴の実際の断面寸法を決定するワーク3の穴の寸法を検査する技術」 【4.3.7】刊行物7について (7a)「【請求項1】測定対象となる流体の流量と圧力とを同時に測定するための複合センサであって、 前記流体が流れる方向と平行に配置されるとともに一面が当該流体に接するダイアフラム部と、このダイアフラム部の前記一面に基端が接合されるとともに先端が前記流体の流動方向と交差する方向に延びるカンチレバー部と、前記ダイアフラム部の機械的変位に応じて電気抵抗が変化するとともに当該ダイアフラム部の表面に放射状に配列されている複数の歪みゲージとを備えていることを特徴とする複合センサ。」(特許請求の範囲) (7b)「【0001】【発明の属する技術分野】管路等を流れる液体や気体等の流体について、その流量と圧力とを同時に測定するための複合センサに関する。」(第2頁第1欄第49行?同第2欄第2行目) (7c)「【0011】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の一形態を図面に基づいて説明する。 図1および図2には、本実施形態に係る複合センサ1が示されている。この複合センサ1は、測定対象となる流体を流通させる配管に接続される筒体10に、流量と圧力とを同時に測定するための仕組みを設けたものである。筒体10の内部には、前述の流体が通る流路11が設けられ、この流路11両端には、配管を接続するための接続部12が設けられている。接続部12は、内周面側の雌ねじ部13と、外周面側の工具係合部14とを有したものである。雌ねじ部13は、内部に向かって次第に直径が小さくなったもので、いわゆるテーパー雄ねじと螺合するようになっている。工具係合部14は、六角ナット状に形成されたものであり、スパナ等の工具と係合するようになっている。筒体10の中間部分には、当該筒体10の側壁15を貫通する開口部16が設けられている。開口部16の周囲には、筒体10の外周面から突出する立ち上がり部17が設けられている。」(第4頁第5欄) (7d)「【0012】開口部16は、その内部に流路11を横断するカンチレバー部20が挿入された状態で、円盤状のダイアフラム部30で塞がれたものとなっている。ダイアフラム部30の中心部分にカンチレバー部20が連結されるとともに、ダイアフラム部30がリング状部材31を介して筒体10の立ち上がり部17に連結されている。ここで、ダイアフラム部30が変形することにより、カンチレバー部20の先端側が回動するようになっている。」(第4頁第5欄) (7e)「【0013】カンチレバー部20は、その基端がダイアフラム部30に接合されるとともに、先端が流体の流動方向と交差する方向に延びる棒状のものとなっている。カンチレバー部20の流路11内に収まる部分には、流体の流動方向と正対し、当該流体を受ける流体受面21が設けられている。・・・ここで、ダイアフラム部30は、流路11内を流体の圧力(静圧)およびカンチレバー部30の回動のいずれによっても、変形薄肉部34が変位を生じるようになっている。」(第4頁第5欄) (7f)「【0014】 ダイアフラム部30の流体と接しない面には、当該ダイアフラム部30の機械的変位に応じて電気抵抗が変化する複数の歪みゲージGF1?GF4, GP1?GP4と、温度に応じて電気抵抗が変化する温度検出部GTとが設けられている。このうち、温度検出部GTは、ダイアフラム部30の中央厚肉部32に設けられている。歪みゲージGP1?GP4, GF1?GF4は、ダイアフラム部30の変形薄肉部34に放射状に配列されている。このうち、歪みゲージGP1?GP4は、流体の圧力を受けることにより生じるダイアフラム部30の変位を検出するために設けられた第1の歪みゲージである。これらの歪みゲージGP1?GP4は、図5に示されるように、流体の流動方向に直交する方向に一列に配列されている。一方、歪みゲージGF1?GF4は、カンチレバー部20の流体受面21が流体を受けることにより生じるダイアフラム部30の変位を検出するために設けられた第2の歪みゲージである。これらの歪みゲージGF1?GF4は、流体の流動方向に沿って一列に配列されている。」(第4頁第6欄) そうすると、刊行物7には、以下の発明が記載されている(以下、「刊行物7記載発明」という。)。 「流体の静圧を受けて変形するダイアフラム部30の中心部分に、流体の動圧を受けてダイアフラム部30を変形させるカンチレバー部20を垂直に連結し、ダイアフラム部30の機械的変位を検出する複数の歪みゲージGP1?GP4,GF1?GF4を、ダイアフラム部30の表面に十文字状に配列し、これにより、流体の圧力(静圧)測定と、流体の動圧検出に基づく流量測定との両方を行う技術」 【4.4】対比と判断 [本件発明1] そこで、本件発明1(以下、「前者」という。)と刊行物2記載発明(以下、「後者」という。)とを比較すると、「穴の内径」は当該穴の「直径」によって表現するのが通常であり、両者ともに、ワークに形成された穴の内径を流体中における球の自動求心作用を利用して、該球と該穴の内壁との距離によって変化する流体の圧力を測定して該穴の内径に変換することを測定原理としている点で共通している。 また、刊行物2には、「円筒形穴の長手方向断面の寸法及び形状を作用及び証明検査するために使用される」(「2b」)と記載されていることから、後者の「ワーク12に形成された穴の直径を測定する穴の測定技術」は、円筒形穴の長手方向(前者の「奥行き方向」に相当する。)に渡る複数箇所の断面の寸法及び形状を検査するためのものであるので、前者の「穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定して前記穴の形状を取得する穴の形状測定方法」に相当する。 そして、後者の「較正球6がワーク12の検査すべき穴内に供給され、圧縮空気が吸気チャネル2からワーク12の検査すべき穴内に供給され」は、刊行物2の「安定した圧力を有する圧縮空気が吸気チャネルに供給され、球を検査すべきワークに引き寄せるとともに、ベローズ8を延長させるようにして、これによりスレッド7が緊張状態となる。ベローズ8は駆動部9及びレバー10によって圧縮され、球6は検査すべきワーク12の所望の断面に移動される。」(「2c」)の記載から、ワーク12の検査すべき穴内に較正球6(前者の「浮子」に相当する。)が挿入した穴内に圧縮空気(前者の「流体」に相当する。)を供給するといえるので、前者の「流体を供給した前記穴に前記浮子を挿入し」に相当する。 さらに、後者の較正球6は弾性体である弾性スレッド7を介して支持部材であるベローズ8に固定され、「ベローズ8は・・・圧縮され、球6は検査すべきワーク12の所望の断面に移動される」(「2c」)」ことから、後者の較正球6は円筒形穴の長手方向に移動しながら、直径を測定しているといえる。 また、後者の「変化する排気チャネル4内の圧力」が前者の「流体の背圧」に相当し、この変化する圧力から穴の径を決定するに際し該圧力を基準値と比較して算出することは技術常識であることと、上記検討事項とから、後者の「圧縮空気が吸気チャネル2からワーク12の検査すべき穴内に供給され、較正球6とワーク12の穴との間の隙間によって変化する排気チャネル4内の圧力に基づいて対応する断面における該穴の径を決定する」は、「流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の流体の背圧を複数箇所検出し、該検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算し、該穴の内径に基づいて穴の形状を測定する」点で前者と共通する。 そうすると、両者は、 「浮子を移動させながら、穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定して前記穴の形状を取得する穴の形状測定方法であって、 流体を供給した前記穴に前記浮子を挿入し、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させながら、前記流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の背圧を複数箇所検出し、該検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算し、該穴の内径に基づいて穴の形状を測定することを特徴とする穴の形状測定方法。」 で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) (1)前者は、「流体の背圧」の他、「流量、又は前記浮子が受ける抗力」を検出量としているのに対し、後者は「流体の背圧」のみ記載されている点 (2)前者は、「背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を検出した時の前記穴の水平面上の位置」を複数箇所検出し、「穴の内径と前記穴の水平面上の位置と」に基づいて穴の形状を測定しているのに対し、後者は穴の内径から穴の形状を測定している点 (判断) 相違点(1)について 本件発明1の「流体の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力」なる発明特定事項は、浮子と穴の内壁との隙間を流体が通過する際に生じる流体あるいは浮子に関する物理量であるという点で共通する選択肢を並列して択一的に記載したものであり、「流体の背圧」を選択した場合が刊行物2に記載されていることから、相違点(1)は実質的な相違点ではない。 相違点(2)について 本件発明1は、相違点(2)に係る構成により、浮子の水平面上の位置を複数箇所検出することによって奥行き方向の位置と併せ、例えば、図6のような湾曲した穴の形状を測定することができるという効果を奏する。すると、刊行物1ないし刊行物7には、このような湾曲した穴の形状を測定することについて記載も示唆もされていないことから、刊行物1ないし刊行物7を組み合わせたとしても、当業者が本件発明1を容易に構成することはできない。 なお、請求人は、上記「【2】ウ.1)」において、概ね、球の穴内における位置を検出することは例えば刊行物2(甲第2号証)ないし刊行物6(甲第6号証)に開示されているのであり、球の穴内における位置の検出において球の鉛直方向の位置だけでなく水平面上の位置を検出することは、必要に応じてその検出を行えばよいことであり、またその検出すること自体に格別の困難性を伴うことでもないのであり、従って、球の水平面上の位置を検出すること自体は進歩性を有しない、と主張している。しかし、本件発明1は、相違点(2)に係る構成により、球の水平面上の位置を測定することにより湾曲した穴など様々な穴の形状を測定できるという格別な効果を奏するのであるから、刊行物1ないし刊行物7において水平面上の球の位置を測定する技術が記載も示唆もされていない以上、当該技術を当業者が必要に応じてなし得ることとはいえない。 (小括) したがって、本件発明1は、刊行物1ないし刊行物7記載のそれぞれの発明と同一でなく、かつ、刊行物1ないし刊行物7から当業者が容易に発明できたものでもないので、特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。 [本件発明2] 本件発明2(以下、「前者」という。)と刊行物2記載発明(以下、「後者」という。)とを比較すると、両者ともに、ワークに形成された穴の内径を流体中における球の自動求心作用を利用して、該球と該穴の内壁との距離によって変化する流体の圧力を測定する点で共通している。 また、刊行物2には、「円筒形穴の長手方向断面の寸法及び形状を作用及び証明検査するために使用される」(「2b」)と記載されていることから、後者の「ワーク12に形成された穴の直径を測定する穴の測定技術」は、円筒形穴の長手方向(前者の「奥行き方向」に相当する。)の断面の寸法及び形状を検査するためのものであるので、「穴の形状を取得する穴の形状測定方法」の点で、前者と共通する。 そして、後者の「較正球6がワーク12の検査すべき穴内に供給され、圧縮空気が吸気チャネル2からワーク12の検査すべき穴内に供給され」は、刊行物2の「安定した圧力を有する圧縮空気が吸気チャネルに供給され、球を検査すべきワークに引き寄せるとともに、ベローズ8を延長させるようにして、これによりスレッド7が緊張状態となる。ベローズ8は駆動部9及びレバー10によって圧縮され、球6は検査すべきワーク12の所望の断面に移動される。」(「2c」)の記載から、ワーク12の検査すべき穴内に較正球6(前者の「浮子」に相当する。)が挿入された穴内に圧縮空気(前者の「流体」に相当する。)を供給するといえるので、前者の「流体を供給した穴に浮子を挿入し」に相当する。 さらに、後者の較正球6は弾性体である弾性スレッド7を介して支持部材であるベローズ8に固定され、「ベローズ8は・・・圧縮され、球6は検査すべきワーク12の所望の断面に移動される」(「2c」)」ことから、後者の較正球6は円筒形穴の長手方向に移動しながら、直径を測定しているといえ、「浮子を穴の奥行き方向に沿って移動させながら前記浮子の位置を複数箇所検出する」点で、前者と共通する。 そうすると、両者は、 「穴の形状を取得する穴の形状測定方法であって、 流体を供給した穴に浮子を挿入し、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させながら前記浮子の位置を複数箇所検出し、該検出値から穴の形状を取得することを特徴とする穴の形状測定方法。」 で一致し、以下の点で相違する。 (相違点) (3)前者は、浮子の「水平面上の位置」を複数箇所検出しているのに対し、後者はそのことが明らかでない点 (4)前者は、浮子の「鉛直方向の位置」を複数箇所検出しているのに対し、後者はそのことが明らかでない点 (5)前者は、「検出値から穴の中心線を求め、該中心線に基づいて穴の形状を取得」しているのに対し、後者は、検出値から穴の内径を測定し、該穴の内径から穴の形状を取得している点 (判断) 相違点(3)について 本件発明2は、浮子の水平面上の位置を複数箇所検出することによって、例えば、図6のような湾曲した穴の形状を測定することができるという効果を奏する。すると、刊行物1ないし刊行物7には、湾曲した穴の形状を測定することについて記載も示唆もされていないことから、刊行物1ないし刊行物7を組み合わせたとしても、当業者が本件発明2を容易に構成することはできない。 なお、請求人は、上記「【2】ウ.3)」において、概ね、穴が軸対称性を有しない場合においては、球の移動位置として水平方向の位置と鉛直方向の位置とを求める必要があることは当然のことであり、このことは球の移動位置と移動位置毎の穴の径を測定することにより穴の形状を求めることを知る当業者には容易に理解できることであり、また球の移動位置として水平方向の位置と鉛直方向の位置とを求めること自体に特別の困難性は何も存在しない、と主張している。しかし、本件発明2は、球の水平面上の位置を測定することにより湾曲した穴など様々な穴の形状を測定できるという格別な効果を奏するものであり、刊行物1ないし7に、軸対称性のない穴を測定する技術について記載も示唆もされていない以上、当該技術を当業者が当然なしえることとはいえない。 相違点(4)について 刊行物2記載発明が、奥行き方向の穴の寸法・形状を測定するものであり、球6は所望の断面に移動され、対応する断面における穴の径を測定するものであることは、刊行物2の記載から明らかである。また、刊行物3には、「駆動部をドラム形状にして較正球を担持する弾性スレッドを該駆動部から解かれるようにすることにより、検査すべき穴の長さ範囲を拡大することができる」(「3e」)との記載があり、穴の奥行き方向に沿って穴の形状を測定することを示すものである。すると、刊行物2、3記載発明においても、本件発明2と同様に、鉛直方向における穴の寸法を複数箇所測定していることは明らかであり、その際、鉛直方向の昇降量を検出することは当業者が当然なすべきことである。 なお、被請求人は、上記「【3】b-2.」において、概ね、刊行物1ないし3には、「浮子の鉛直方向の位置を複数箇所検出するリニアスケール」について記載されていないと主張している(特に、刊行物2について、「較正球6を移動させるものの、その移動量を検出できません」(答弁書第13頁下から10行、9行)と主張している)。しかし、上述したように、刊行物2、3記載発明は、鉛直方向の長さを有する穴を測定対象にしており、このような穴の寸法・形状を測定するに際し、鉛直方向の一箇所だけでなく複数箇所を測定することは当業者において当然なし得ることであり、その測定毎に内径だけでなく鉛直方向の量も測定することも当業者が当然なし得ることである。ゆえに、被請求人の上記主張は採用できない。刊行物2記載の発明も、相違点(4)で述べたように、浮子の鉛直方向の位置を複数箇所検出しているものといえる。 相違点(5)について 刊行物2記載発明は、ワークに形成された穴の内径を流体中における球の自動求心作用を利用して、該球と該穴の内壁との距離によって変化する流体の圧力を測定して該穴の内径に変換する点で測定原理が本件訂正特許発明2と共通している。すると、このような測定原理で穴の内径を測定した場合、球の大きさと測定値とから、当然穴の中心線を求めることができ、かかる中心線に基づいて穴の形状を取得するように構成することは、当業者にとって格別困難を伴うものでもない。 (小括) したがって、本件発明2は、刊行物1ないし刊行物7記載のそれぞれの発明と同一でなく、かつ、刊行物1ないし刊行物7から当業者が容易に発明できたものでもないので、特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。 [本件発明3] 本件発明3(以下、「前者」という。)と刊行物2記載発明(以下、「後者」という。)とを比較すると、両者ともに、ワークに形成された穴の内径を流体中における球の自動求心作用を利用して、該球と該穴の内壁との距離によって変化する流体の圧力を測定する装置で共通している。 また、刊行物2には、「円筒形穴の長手方向断面の寸法及び形状を作用及び証明検査するために使用される」、「空気式装置」(「2b」)と記載されていることから、後者の「ワーク12に形成された穴の直径を測定する穴の測定技術」は、円筒形穴の長手方向(前者の「奥行き方向」に相当する。)の断面の寸法及び形状を検査するためのものであるので、「穴の形状を取得する穴の形状測定装置」の点で、前者と共通する。 そして、後者の「較正球6がワーク12の検査すべき穴内に供給され、圧縮空気が吸気チャネル2からワーク12の検査すべき穴内に供給され」は、刊行物2の「安定した圧力を有する圧縮空気が吸気チャネルに供給され、球を検査すべきワークに引き寄せるとともに、ベローズ8を延長させるようにして、これによりスレッド7が緊張状態となる。ベローズ8は駆動部9及びレバー10によって圧縮され、球6は検査すべきワーク12の所望の断面に移動される。」(「2c」)の記載から、ワーク12の検査すべき穴内に較正球6(前者の「浮子」に相当する。)が挿入された穴内に圧縮空気(前者の「流体」に相当する。)を供給するといえるので、前者の「前記穴に流体を供給する手段と、前記穴に挿入される浮子と」に相当する。 さらに、後者の「弾性スレッド7がベローズ8に固定されており、弾性スレッド7に較正球6が連結されることにより、較正球6がワーク12の検査すべき穴内に供給され」は、刊行物2の「ベローズ8は・・・圧縮され、球6は検査すべきワーク12の所望の断面に移動される」(「2c」)」の記載から、後者の較正球6は円筒形穴の長手方向に移動しながら、直径を測定しているといえるので、「該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させる移動手段と、前記浮子の位置を複数箇所検出する検出手段と」を有する点で、前者と共通する。 そうすると、両者は、 「穴の形状を取得する穴の形状測定装置であって、前記穴に流体を供給する流体供給手段と、前記穴に挿入される浮子と、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させる移動手段と、前記浮子の位置を複数箇所検出する検出手段と、を備えたことを特徴とする穴の形状測定装置。」で一致し、その相違点は、上記相違点(5)に加えて、以下のような相違点を有する。 (相違点) (6)前者は、「浮子の水平面上の位置を複数箇所検出する位置検出センサ」を備えているのに対し、後者はそのことが明らかでない点 (7)前者は、「浮子の鉛直方向の位置を複数箇所検出するリニアスケール」を備えているのに対し、後者はそのことが明らかでない点 (判断) 相違点(5)については、 [本件発明2]において既に述べたとおりであり、相違点(6)については、相違点(3)における「検出」を行うための手段として具体的に表現したものが「位置検出センサ」に他ならないところ、刊行物1ないし刊行物7には、浮子の水平面上の位置を検出することが記載も示唆もされていないことは前述のとおりである。また、相違点(7)については、上記相違点(4)において述べたとおり、浮子の「鉛直方向の位置」を複数箇所検出することは当業者が当然なすべきことであるところ、その「検出」を行うための具体的な手段である「リニアスケール」も所定方向の変位量を検出する際の常套手段であることから、当該鉛直方向の位置検出にかかる常套手段を採用して相違点(7)に係る構成を得ることは、刊行物2及び3から当業者が容易になし得ることである。 (小括) したがって、本件発明3は、刊行物1ないし刊行物7記載のそれぞれの発明と同一でなく、かつ、刊行物1ないし刊行物7から当業者が容易に発明できたものでもないので、特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項に違反して特許されたものではない。 [本件発明4] 本件発明4は、本件発明3の発明特定事項に加えて、「浮子を移動させながら、穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定する」点、「流体が穴の内壁と前記浮子との隙間を通過する際の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を複数箇所検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段」という発明特定事項を有したものである。 そこで、本件発明4(以下、「前者」という。)と刊行物2記載発明(以下、「後者」という。)とを比較すると、「浮子を移動させながら、穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定して前記穴の形状を取得する穴の形状測定装置であって、前記穴に流体を供給する流体供給手段と、前記穴に挿入される浮子と、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させる移動手段と、前記流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の背圧を複数箇所検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、を備えたことを特徴とする穴の形状測定装置。」で一致し、上記[本件発明3]と同様の相違点(3)ないし(7)を有する。 (判断) 相違点(3)、(6)については、上記[本件発明3]において既に述べたとおりである。 なお、請求人は、上記「【2】ウ.4)」で、概ね、穴が軸対称性を有しない場合においては、球の移動位置として水平方向の位置と鉛直方向の位置とを求める必要があることは当然のことであり、このことは球の移動位置と移動位置毎の穴の径を測定することにより穴の形状を求めることを知る当業者には容易に理解できることであり、また球の移動位置として水平方向の位置と鉛直方向の位置とを求めること自体に特別の困難性は何も存在しない、と主張している。 しかし、本件発明4は、球の水平面上の位置を測定することにより湾曲した穴など様々な穴の形状を測定できるという格別な効果を奏するものであり、刊行物1ないし7に、軸対称性のない穴を測定する技術について記載も示唆もされていない以上、当該技術を当業者が当然なし得ることとはいえない。 (小括) したがって、本件発明4は、刊行物1ないし刊行物7記載のそれぞれの発明と同一でなく、かつ、刊行物1ないし刊行物7から当業者が容易に発明できたものでもないので、特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。 [本件発明5] (判断・小括) 本件発明5は、本件発明3又は本件発明4に従属する関係にあり、上述したように本件発明3と本件発明4が、刊行物1ないし刊行物7記載のそれぞれの発明と同一でなく、かつ、刊行物1ないし刊行物7から当業者が容易に発明できたものでもないので、本件発明5も、特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。 なお、請求人は、上記「【2】ウ.5)」で、概ね、本件発明5は、刊行物2(甲第2号証)または刊行物3(甲第3号証)に記載された発明と、刊行物1(甲第1号証)に記載された発明と、甲第7号証に記載された発明に基づいて当業者がその出願前に容易に発明することができた発明である、と主張している。 しかし、刊行物1ないし刊行物7には、「浮子が受ける抗力を3以上の方向に分割して検出すること」について記載も示唆もなく、また、相違点(3)、(6)によって、「測定球30の中心位置と穴22Aの内径とが同時に求まる」(【0031】)という格別な効果を奏し、当該相違点(3)、(6)が当業者にとって自明ともいえないので、請求人の上記主張を採用できない。 [本件発明6] (判断・小括) 本件発明6(以下、「前者」という。)と刊行物2記載発明(以下、「後者」という。)とを比較すると、本件発明6が本件発明3、本件発明4又は本件発明5に従属する関係にあり、上述したように本件発明3、本件発明4及び本件発明5が、刊行物1ないし刊行物7記載のそれぞれの発明と同一でなく、かつ、刊行物1ないし刊行物7から当業者が容易に発明できたものでもないので、本件発明6も、特許法第29条第1項第3号及び同法第29条第2項の規定に違反して特許されたものではない。 なお、請求人は、上記「【2】ウ.5)」で、概ね、本件発明6は、刊行物2または刊行物3に記載された発明と、刊行物1に記載された発明とに基づいて当業者がその出願前に容易に発明することができた発明である、と主張している。 しかし、相違点(3)、(6)によって、「測定球30の中心位置と穴22Aの内径とが同時に求まる」(【0031】)という格別な効果を奏し、当該相違点(3)、(6)が当業者にとって自明ともいえないので、請求人の上記主張を採用できない。 【4.5】むすび 以上のとおりであるから、 (1)平成18年5月24日付け訂正請求は、これを認め、 (2)請求項1、2、3、4、5及び6に係る発明の特許については、無効の理由を発見しない。 (3)そして、審判に関する費用については、特許法169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。 よって、結論のとおり審決する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 穴の形状測定方法及び装置 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】浮子を移動させながら、穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定して前記穴の形状を取得する穴の形状測定方法であって、 流体を供給した前記穴に前記浮子を挿入し、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させながら、前記流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力と、該背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を検出した時の前記穴の水平面上の位置と、を複数箇所検出し、該検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算し、該穴の内径と前記穴の水平面上の位置とに基づいて穴の形状を測定することを特徴とする穴の形状測定方法。 【請求項2】穴の中心線を測定して穴の形状を取得する穴の形状測定方法であって、 流体を供給した穴に浮子を挿入し、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させながら前記浮子の水平面上の位置及び鉛直方向の位置を複数箇所検出し、該検出値から穴の中心線を求め、該中心線に基づいて穴の形状を取得することを特徴とする穴の形状測定方法。 【請求項3】穴の中心線を測定して穴の形状を取得する穴の形状測定装置であって、 前記穴に流体を供給する流体供給手段と、 前記穴に挿入される浮子と、 該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させる移動手段と、 前記浮子の水平面上の位置を複数箇所検出する位置検出センサと、 前記浮子の鉛直方向の位置を複数箇所検出するリニアスケールと、 を備えたことを特徴とする穴の形状測定装置。 【請求項4】浮子を移動させながら、穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定するとともに、前記穴の中心線を測定して、穴の形状を取得する穴の形状測定装置であって、 前記穴に流体を供給する流体供給手段と、 前記穴に挿入される浮子と、 該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させる移動手段と、 前記流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を複数箇所検出する検出手段と、 該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、 前記浮子の水平面上の位置を複数箇所検出する位置検出センサと、 前記浮子の鉛直方向の位置を複数箇所検出するリニアスケールと、 を備えたことを特徴とする穴の形状測定装置。 【請求項5】前記位置検出センサは、前記浮子が受ける抗力を3以上の方向に分割して検出することを特徴とする請求項3又は4記載の穴の形状測定装置。 【請求項6】前記浮子は、弾性体で支持されていることを特徴とする請求項3、4又は5記載の穴の形状測定装置。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、ワークに形成された穴の形状を測定する穴の形状測定方法及び装置に関する。 【0002】 【従来の技術】 穴の形状を測定する測定装置の一つとして、空気マイクロメータがある。従来の空気マイクロメータは、測定ヘッドを穴に挿入し、測定ヘッドのノズルから穴の壁面に向けて圧縮空気を噴射し、ノズルの背圧を検出する。ノズルの背圧は、穴内壁とノズルとの間隔に依存するので、予め求めたマスターの基準値と比較することによって、前記検出値を穴の内径寸法に換算することができる。従来の空気マイクロメータは、測定ヘッドを穴に出し入れしながら連続的に内径を測定することにより、穴の形状を求めることができる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 しかしながら、従来の空気マイクロメータは、屈曲或いは湾曲された穴に測定ヘッドを出し入れできないので、屈曲或いは湾曲された穴の形状を測定できなかった。 【0004】 本発明はこのような事情に鑑みて成されたもので、様々な穴の形状を測定できる穴の形状測定方法及び装置を提供することを目的とする。 【0005】 【課題を解決するための手段】 請求項1記載の発明は前記目的を達成するために、浮子を移動させながら、穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定して前記穴の形状を取得する穴の形状測定方法であって、流体を供給した前記穴に前記浮子を挿入し、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させながら、前記流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力と、該背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を検出した時の前記穴の水平面上の位置と、を複数箇所検出し、該検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算し、該穴の内径と前記穴の水平面上の位置とに基づいて穴の形状を測定することを特徴としている。 【0006】 【0007】 請求項1記載の発明によれば、流体を供給した穴に浮子を挿入して移動させながら、流体の背圧、流量、浮子が受ける抗力を複数箇所検出することにより、穴の内径を穴の奥行き方向に複数箇所測定できる。これにより、一定径でない穴、例えばテーパが形成された穴の形状も測定できる。 【0008】 請求項2記載の発明は前記目的を達成するために、穴の中心線を測定して穴の形状を取得する穴の形状測定方法であって、流体を供給した穴に浮子を挿入し、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させながら前記浮子の水平面上の位置及び鉛直方向の位置を複数箇所検出し、該検出値から穴の中心線を求め、該中心線に基づいて穴の形状を取得することを特徴としている。 【0009】 請求項3記載の本発明は前記目的を達成するために、穴の中心線を測定して穴の形状を取得する穴の形状測定装置であって、前記穴に流体を供給する流体供給手段と、前記穴に挿入される浮子と、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させる移動手段と、前記浮子の水平面上の位置を複数箇所検出する位置検出センサと、前記浮子の鉛直方向の位置を複数箇所検出するリニアスケールと、をえたことを特徴としている。 【0010】 請求項2又は3記載の発明によれば、流体を供給した穴に浮子を挿入すると、浮子は自動求心作用を受けて穴の中心に移動するので、浮子の中心位置の軌跡は穴の中心線に一致する。したがって、浮子の位置を複数箇所検出することにより穴の中心線を求めることができる。 請求項4記載の発明は、浮子を移動させながら、穴の内径を穴の奥行き方向に沿って複数箇所測定するとともに、前記穴の中心線を測定して、穴の形状を取得する穴の形状測定装置であって、前記穴に流体を供給する流体供給手段と、前記穴に挿入される浮子と、該浮子を前記穴の奥行き方向に沿って移動させる移動手段と、前記流体が穴内壁と前記浮子との隙間を通過する際の背圧、流量、又は前記浮子が受ける抗力を複数箇所検出する検出手段と、該検出手段で検出した検出値を基準値と比較して前記穴の内径に換算する換算手段と、前記浮子の水平面上の位置を複数箇所検出する位置検出センサと、前記浮子の鉛直方向の位置を複数箇所検出するリニアスケールと、を備えたことを特徴とする。 請求項5記載の発明は、前記位置検出センサは、前記浮子が受ける抗力を3以上の方向に分割して検出することを特徴とする。 請求項6記載の発明は、前記浮子は、弾性体で支持されていることを特徴とする。 【0011】 【発明の実施の形態】 以下添付図面に従って本発明に係る穴の形状測定方法及び装置の実施の形態について説明する。 【0012】 図1は、第1の実施の形態の測定装置10の構成を示すブロック図である。測定装置10は、ワーク22の穴22Aの内径を穴22Aの軸方向に複数箇所測定する装置である。 【0013】 図1に示すように、空気源12から供給される圧縮空気は、フィルタ14で除塵され、レギュレータ16で一定圧力に調整された後、A/E変換器18(空気/電気変換器)内に設置された絞りを通り、コネクタ33を介して測定台28内の送気路28Bに送気される。 【0014】 測定台28の上面には、送気路28Bに連通される供給口28Aが形成されるとともに、ワーク22が載置される。ワーク22には、穴22Aが形成されており、この穴22Aが供給口28Aに連通される。供給口28Aの回りには、エア漏れ防止シール(Oリング)34が配設され、このエア漏れ防止シール34によって測定台28とワーク22との隙間から空気が洩れることが防止される。これにより、前記送気路28Bに供給された圧縮空気は、漏れることなく、供給口28Aから穴22Aに噴射される。 【0015】 穴22Aに噴射された圧縮空気は、穴22Aの内壁と測定球(浮子に相当)30との隙間を通って外部に吹き出される。A/E変換器18は、このときの圧力を、内蔵するベローズと差動変圧器とによって電気信号に変換し、管制部20に出力する。穴22Aの径が異なる場合、圧力が微小変化し、管制部20は、後述するように、変化した電気信号に基づいてワーク22の内径を算出し、算出したデータを例えば管制部20のモニタ上に表示する。 【0016】 前記測定球30は、セラミック、樹脂、鋼、軽合金等の材料を用いて、高い加工精度で球状に形成される。図2に示すように、測定球30の直径dは、測定する穴22Aの内径(内径が一定でない場合には最小径)Dと、要求される感度によって設定し、例えば、(D-d)が10?100μm程度になるように設定する。この(D-d)が小さいほど感度が良くなり、穴22Aの内径Dが少し変化しただけでも、A/E変換器18の検出値が大きく変化するようになる。 【0017】 また、測定球30は、図1に示すように、弾性体(例えばピアノ線等)から成る支持部材32を介してアーム36に取り付けられる。アーム36は、スライダ38、38を介して架台40に摺動自在に取り付けられるとともに、モータ42の回転軸に連結された送りねじ44が螺合される。これにより、モータ42を駆動すると、送りねじ44が回動し、アーム36が昇降する。 【0018】 アーム36の上方には、リニアスケール46が設けられている。リニアスケール46は、アーム36の昇降量を検出し、その検出信号を管制部20に出力する。管制部20は、この検出信号に基づいてモータ42を駆動制御し、アーム36の昇降量、即ち、ワーク22の上下方向の位置を調節する。 【0019】 次に上記の如く構成された測定装置10の作用について説明する。 【0020】 まず、空気源12から圧縮空気を供給し、測定台28の供給口28Aから穴22Aに圧縮空気を噴射する。次いで、モータ42を駆動してアーム36を一定速度で下降させ、測定球30を穴22Aに挿入するとともに、挿入した測定球30を穴30に沿って下降させる。そして、圧縮空気が測定球30と穴22Aの内壁との隙間を通過する際の背圧を、所定の間隔ごとに複数箇所(或いは連続して)検出する。前記背圧は、測定球30と穴22Aの内壁との隙間の大きさに依存するので、背圧の検出値を管制部20でマスターの基準値と比較することによって穴22Aの内径に換算できる。これにより、穴22Aの内径を複数箇所測定することができ、穴22Aの形状を求めることができる。ここで、マスターの基準値とは、測定に先立って、測定時と同じ条件でマスターを測定した値であり、測定条件を変える度に行われる。 【0021】 測定時における測定球30には、穴22Aの内壁と測定球30との隙間を通り抜ける圧縮空気によって自動求心作用(又は自動調芯作用)が働く。したがって、支持部材32が弾性変形して測定球30が穴22Aの中心に自動的に配置される。これにより、圧縮空気は、ワーク22の回りに略均等に形成された隙間を通り抜けることになり、このときの背圧を検出することによってワーク22の内径を精度良く測定できる。 【0022】 このように本実施の形態の測定装置10によれば、測定球30を穴22Aに沿って移動させながら背圧を複数箇所測定するので、穴22Aの内径を穴22Aの奥行き方向に所定の間隔ごとに複数箇所求めることができる。したがって、穴22Aの形状を取得することができ、一定径でない穴22Aの形状も求めることができる。例えば、穴22Aにテーパが形成されていた場合、そのテーパの角度を求めることができる。また、図7に示すように、穴22Aに縮径部や拡径部がある場合であっても、縮径部や拡径部の形状を求めることもできる。さらに、測定装置10は、穴22Aの径が一定であるかどうかの検査を行うこともできる。 【0023】 なお、上述した実施の形態は、アーム36を一定速度で下降させたが、一定速度でなくてもよい。その場合には、A/E変換器18で背圧を検出すると同時に、リニアスケール46によって測定球30の位置を検出する。これにより、穴22Aの内径の測定と、その測定位置の記録とを同時に行うことができる。したがって、穴22Aの形状を求めることができる。 【0024】 また、上述した実施の形態では、圧縮空気の背圧を検出したが、これに限定するものではなく、圧縮空気が穴22Aの内壁と測定球30との隙間を通過する際の圧縮空気の流量を検出してもよい。この場合も上述した実施の形態と同様に、管制部20が、検出値をマスターの基準値と比較することによって穴22Aの内径を精度良く測定できる。 【0025】 さらに、本発明は、圧縮空気の背圧や流量の検出に限定されるものではなく、測定球30が受ける抗力を圧電ピックアップや歪みゲージで検出し、穴22Aの内径に換算してもよい。 【0026】 図3は、第2の実施の形態の測定装置50の構造を示すブロック図であり、図4は、アーム36と支持部材32との連結機構を示す側面図である。これらの図に示す測定装置50は、穴22Aの中心線を測定する装置である。 【0027】 測定装置50は、支持部材32の上端に円盤52が取り付けられ、該円盤52が4個の圧電センサ54、54…を介してアーム36に連結されている。支持部材32は、図5に示すように、円盤52の中央に連結され、圧電センサ54、54…は、円盤52の周辺部に所定の間隔で配置される。各圧電センサ54は、測定球30が受ける抗力を4方向に分割して検出し、該検出信号を管制部20に出力する。管制部20は、各圧電センサ54から検出信号を受信すると、各検出値の差から回転モーメントを算出する。そして、この回転モーメントと、前記リニアスケール46で検出したアーム36の昇降量から、測定球30の位置を求める。 【0028】 上記の如く構成された測定装置50は、圧縮空気を供給した穴22Aに測定球30を挿入し、該測定球30を穴22Aの奥行き方向に移動させながら、測定球30の位置を所定間隔ごとに複数箇所(或いは連続して)検出する。測定時における測定球30は、前述したように、自動求心作用によって穴22Aの中心に自動的に移動する。したがって、測定球30を穴22Aに沿って下降させると、測定球30の中心の軌跡は、穴22Aの中心線に一致する。例えば、図6に示すように、穴22Aが湾曲して形成されている場合、測定球30は、一点鎖線で示す穴22Aの中心線に沿って移動する。したがって、圧電センサ38、38…の検出値から回転モーメントを算出し、測定球30の中心位置の軌跡を求めることにより、穴22Aの中心線を求めることができる。これにより、穴22Aの曲率等を測定できる。同様に、穴22Aが屈曲している場合には、その屈曲角度を求めることができ、穴22Aが斜めに形成されている場合には、穴22Aの角度を求めることができる。 【0029】 このように測定装置50によれば、測定球30を穴22Aに沿って移動させながら圧電センサ54、54…で複数箇所検出することによって、穴22Aの中心位置を複数箇所測定することができ、穴22Aの中心線を求めることができる。 【0030】 ところで、測定装置50は、圧電センサ54、54…の検出値を合算することによって測定球30が受ける全抗力を算出できる。したがって、この算出値をマスターの基準値と比較することにより、第1の実施の形態と同様、穴22Aの内径を求めることができる。例えば、図7に示すように、穴22Aに縮径部や拡径部がある場合、穴22Aの内径を複数箇所求めることにより、縮径部や拡径部の形状を求めることもできる。 【0031】 さらに、測定装置50は、各圧電センサ54、54…の検出値から測定球30の中心位置と穴22Aの内径とが同時に求まる。したがって、穴22Aが複雑な形状な場合(即ち、穴22Aの中心線が非直線状で、且つ一定径でない場合)であっても、その形状を求めることができる。例えば、図8に示すように穴22Aが形成されていた場合、穴22Aの奥行き方向に測定球30を移動させると、測定球30は一点鎖線で示す穴22Aの中心線に沿って移動する。このときの圧電センサ54、54…の検出値から、測定球30の受ける抗力と回転モーメントを算出することにより、穴22Aの内径と中心位置が求まる。この穴22Aの内径と中心位置とを複数箇所求めることによって、穴22Aの形状を具体的に取得することができる。このように測定装置50は、穴22Aの中心位置と内径とを複数箇所求めることができるので、様々な穴の形状を求めることができる。 【0032】 なお、上述した実施の形態は、回転モーメントを求めるために4個の圧電センサ54、54…を設けたが、3個以上の圧電センサ54であればよい。また、圧電センサ54の代わりにロードセルを用いてもよい。 【0033】 図9は、第3の実施の形態の測定装置62の構造を示すブロック図である。 【0034】 同図に示す測定装置62は、支持部材32の上端の円盤52が、3個以上の圧電素子(不図示)を介してX軸Y軸ステージ64に取り付けられ、該X軸Y軸ステージ64がアーム36に取り付けられる。X軸Y軸ステージ64は、円盤52を水平方向にスライド自在に支持するとともに、内蔵するセンサ(不図示)によって円盤52の位置を検出する。 【0035】 上記の如く構成された測定装置62は、各圧電素子の検出値が等しくなるまで、X軸Y軸ステージ64で円盤52の位置を調節する。これにより、測定球30が受ける抗力が穴22Aの軸方向と一致する。したがって、X軸Y軸ステージ64に内蔵するセンサによって円盤52の位置を検出することにより、測定球30の中心位置が求まる。これにより、穴22Aの中心線を求めることができる。 【0036】 なお、上述した第3の実施の形態において、支持部材32を剛体で構成するとともに、該支持部材32をX軸Y軸ステージ64に直接連結してもよい。この場合、測定球30の位置に応じて支持部材32の上端位置が変わるので、X軸Y軸ステージ64に内蔵するセンサによって測定球30の位置を検出できる。 【0037】 また、図10に示すように、フローティング機構を用いて支持部材32をアーム36に取り付けてもよい。図10に示す支持部材32は、剛体で構成されており、該支持部材32の上端には、円盤52に取り付けられている。円盤52は、静圧流体軸受58によって水平方向にスライド自在に支持される。前記静圧流体軸受58は、図11に示すように、光学式エンコーダや磁気スケール等の位置検出センサ60、60を備えており、該位置検出センサ60によって円盤52の位置、即ち測定球30の水平面上の位置を検出する。この位置検出センサ60で検出した測定球30の水平面上の位置と、リニアスケール46で検出した測定球30の鉛直方向の位置とに基づいて、測定球30の位置が算出される。これにより、測定球30を穴22Aに通過させた際に測定球30の中心位置の軌跡を求めることができ、穴22Aの中心線を求めることができる。 【0038】 なお、上述した第1、2、3の実施の形態では、圧縮空気の流れに逆らって測定球30を移動させたが、これに限定するものではなく、圧縮空気の流れる方向に測定球30を移動させながら測定してもよい。 【0039】 また、穴22Aの供給する流体は、圧縮空気に限定するものではなく、空気以外の気体や液体を穴22Aに供給してもよい。 【0040】また、穴22Aに供給する流体の温度を制御する温度制御手段を設けてもよい。 【0041】 【発明の効果】 以上説明したように本発明に係る穴の形状測定方法及び装置によれば、流体が供給される穴の奥行き方向に沿って浮子を移動し、該浮子の位置と穴の内径を複数箇所検出したので、様々な穴の形状を測定することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明に係る穴の形状測定装置の第1の実施の形態の構造を示すブロック図 【図2】図1に示した穴の形状測定装置の特徴部分を示す側面断面図 【図3】本発明に係る穴の形状測定装置の第2の実施の形態の構造を示すブロック図 【図4】図3に示した穴の形状測定装置の特徴部分を示す側面図 【図5】図4の5-5線に沿う断面図 【図6】図3に示した穴の形状測定装置の作用を示す説明図 【図7】図3に示した穴の形状測定装置の作用を示す説明図 【図8】図3に示した穴の形状測定装置の作用を示す説明図 【図9】本発明に係る穴の形状測定装置の第3の実施の形態の構造を示すブロック図 【図10】図9と異なる測定球の支持構造を示す側面図 【図11】図10の11-11線に沿う断面図 【符号の説明】 10…測定装置、12…空気源、16…レギュレータ、18…A/E変換器、20…管制部、22…ワーク、22A…穴、28…測定台、28A…供給口、30…測定球、32…支持部材、36…アーム、46…リニアスケール、54…圧電センサ |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
審理終結日 | 2006-02-03 |
結審通知日 | 2006-02-09 |
審決日 | 2007-01-26 |
出願番号 | 特願2000-174155(P2000-174155) |
審決分類 |
P
1
113・
121-
YA
(G01B)
P 1 113・ 851- YA (G01B) P 1 113・ 113- YA (G01B) P 1 113・ 853- YA (G01B) P 1 113・ 855- YA (G01B) P 1 113・ 852- YA (G01B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岡田 卓弥 |
特許庁審判長 |
上田 忠 |
特許庁審判官 |
濱野 隆 山口 敦司 |
登録日 | 2003-01-24 |
登録番号 | 特許第3390970号(P3390970) |
発明の名称 | 穴の形状測定方法及び装置 |
代理人 | 勝沼 宏仁 |
代理人 | 永井 浩之 |
代理人 | 岡田 淳平 |
代理人 | 宮嶋 学 |
代理人 | 久保山 典子 |
代理人 | 吉武 賢次 |
代理人 | 松浦 憲三 |
代理人 | 松浦 憲三 |
代理人 | 久保山 典子 |