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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05B
管理番号 1161159
審判番号 不服2004-23382  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-15 
確定日 2007-07-17 
事件の表示 特願2003-402340「環形蛍光ランプ用照明器具」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月11日出願公開、特開2004- 79552〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続きの経緯
本願は、平成9年1月23日(優先権主張;平成8年3月5日、同月29日)に出願された特願平9-9943号の一部を平成11年12月27日に新たな特許出願とした特願平11-371971号について、さらにその一部を平成15年12月2日に新たな出願(特願2003-402340号)としたものであって、平成16年10月12日付け(発送日;同月14日)で拒絶査定がなされ、これに対して、平成16年11月15日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成16年11月15日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年11月15日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
本件手続補正は、補正前の特許請求の範囲、
「【請求項1】
環外径が285?310mm、管外径が15?18mmであり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨ってガラスバルブ毎に配設された口金を有しており、20?40Wの範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第1の環形蛍光ランプと;
環外径が365?390mm、管外径が15?18mmであり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨ってガラスバルブ毎に配設された口金を有しており、28?50Wの範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第2の環形蛍光ランプと;
ソケットを有し、このソケットに第1および第2の環形蛍光ランプのそれぞれの口金を装着することで第1および第2の環形蛍光ランプが同心状に配設される器具本体と;
器具本体内に設けられ、第1および第2の環形蛍光ランプのそれぞれを所定範囲内のランプ電力であって10kHz以上の高周波で点灯させる点灯回路と;
を具備していることを特徴とする環形蛍光ランプ用照明器具。
【請求項2】
環外径が285?310mm、管外径が15?18mmであり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨ってガラスバルブ毎に配設された口金を有しており、20?40Wの範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第1の環形蛍光ランプと;
環外径が210?235mm、管外径が15?18mmであり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨ってガラスバルブ毎に配設された口金を有しており、17?30Wの範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第3の環形蛍光ランプと;
ソケットを有し、このソケットに第1および第3の環形蛍光ランプのそれぞれの口金を装着することで第1および第3の環形蛍光ランプが同心状に配設される器具本体と;
器具本体内に設けられ、第1および第3の環形蛍光ランプのそれぞれを所定範囲内のランプ電力であって10kHz以上の高周波で点灯させる点灯回路と;
を具備していることを特徴とする環形蛍光ランプ用照明器具。
【請求項3】
環外径が285?310mm、管外径が15?18mmであり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨ってガラスバルブ毎に配設された口金を有しており、20?40Wの範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第1の環形蛍光ランプと;
環外径が365?390mm、管外径が15?18mmであり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨ってガラスバルブ毎に配設された口金を有しており、28?50Wの範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第2の環形蛍光ランプと;
環外径が210?235mm、管外径が15?18mmであり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨ってガラスバルブ毎に配設された口金を有しており、17?30Wの範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第3の環形蛍光ランプと;
ソケットを有し、このソケットに第1ないし第3の環形蛍光ランプのそれぞれの口金を装着することで第1ないし第3の環形蛍光ランプが同心状に配設される器具本体と;
器具本体内に設けられ、第1ないし第3の環形蛍光ランプのそれぞれを所定範囲内のランプ電力であって10kHz以上の高周波で点灯させる点灯回路と;
を具備していることを特徴とする環形蛍光ランプ用照明器具。
【請求項4】
前記各環形蛍光ランプは定格ランプ電力および高出力特性ランプ電力のいずれのランプ電力でも点灯可能であり、点灯回路は前記各環形蛍光ランプのランプ電力を定格ランプ電力および高出力特性のランプ電力のいずれかに切換え可能な切換手段を有していることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の環形蛍光ランプ用照明器具。
【請求項5】
器具本体には、前記各環形蛍光ランプを覆うように透光性の乳白色セードが取着されていることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の環形蛍光ランプ用照明器具。」
を、
「【請求項1】
環外径がほぼ299mm、管外径が15?18mmであり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨ってガラスバルブ毎に配設された口金を有しており、20?40Wの範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第1の環形蛍光ランプと;
環外径がほぼ373mm、管外径が15?18mmであり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨ってガラスバルブ毎に配設された口金を有しており、28?50Wの範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第2の環形蛍光ランプと;
ソケットを有し、このソケットに第1および第2の環形蛍光ランプのそれぞれの口金を装着することで第1および第2の環形蛍光ランプが同心状に配設される器具本体と;
器具本体内に設けられ、第1および第2の環形蛍光ランプのそれぞれを所定範囲内のランプ電力であって10kHz以上の高周波で点灯させる点灯回路と;
を具備していることを特徴とする環形蛍光ランプ用照明器具。
【請求項2】
環外径がほぼ299mm、管外径が15?18mmであり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨ってガラスバルブ毎に配設された口金を有しており、20?40Wの範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第1の環形蛍光ランプと;
環外径がほぼ225mm、管外径が15?18mmであり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨ってガラスバルブ毎に配設された口金を有しており、17?30Wの範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第3の環形蛍光ランプと;
ソケットを有し、このソケットに第1および第3の環形蛍光ランプのそれぞれの口金を装着することで第1および第3の環形蛍光ランプが同心状に配設される器具本体と;
器具本体内に設けられ、第1および第3の環形蛍光ランプのそれぞれを所定範囲内のランプ電力であって10kHz以上の高周波で点灯させる点灯回路と;
を具備していることを特徴とする環形蛍光ランプ用照明器具。
【請求項3】
環外径がほぼ299mm、管外径が15?18mmであり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨ってガラスバルブ毎に配設された口金を有しており、20?40Wの範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第1の環形蛍光ランプと;
環外径がほぼ373mm、管外径が15?18mmであり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨ってガラスバルブ毎に配設された口金を有しており、28?50Wの範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第2の環形蛍光ランプと;
環外径がほぼ225mm、管外径が15?18mmであり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨ってガラスバルブ毎に配設された口金を有しており、17?30Wの範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第3の環形蛍光ランプと;
ソケットを有し、このソケットに第1ないし第3の環形蛍光ランプのそれぞれの口金を装着することで第1ないし第3の環形蛍光ランプが同心状に配設される器具本体と;
器具本体内に設けられ、第1ないし第3の環形蛍光ランプのそれぞれを所定範囲内のランプ電力であって10kHz以上の高周波で点灯させる点灯回路と;
を具備していることを特徴とする環形蛍光ランプ用照明器具。
【請求項4】
前記各環形蛍光ランプは定格ランプ電力および高出力特性ランプ電力のいずれのランプ電力でも点灯可能であり、点灯回路は前記各環形蛍光ランプのランプ電力を定格ランプ電力および高出力特性のランプ電力のいずれかに切換え可能な切換手段を有していることを特徴とする請求項1ないし3いずれか一記載の環形蛍光ランプ用照明器具。
【請求項5】
器具本体には、前記各環形蛍光ランプを覆うように透光性の乳白色セードが取着されていることを特徴とする請求項1ないし4いずれか一記載の環形蛍光ランプ用照明器具。」
と補正する内容を含むものである。
なお、アンダーラインは、補正箇所を示すために請求人が付したものである。

2.補正の目的の適合性
補正後の請求項1、2、及び3は、補正前の請求項1、2、及び3に記載された発明を特定するために必要な事項である第1、第2、及び第3の環形蛍光ランプの環外径「285?310mm」、「365?390mm」、及び「210?235mm」を、それぞれ、「ほぼ299mm」、「ほぼ373mm」、及び「ほぼ225mm」として限定を付加したものであり、また、先行する請求項を引用する補正後の請求項4及び5についても、同様の限定を付加したものである。
したがって、上記手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものである。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

3-1.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平2-61956号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
1a.「1.少なくとも1対の電極と希ガス及び水銀を封じた少なくも2個の環状の放電管と、該放電管の内表面に蛍光体を付着して成る蛍光ランプにおいて、該2本の環状放電管が同一平面内に同心円状に配置され、それぞれの放電管の直径が5mm以上25mm以下の範囲にあり、該放電管表面の輝度が2×104Cd/m2以上6×104Cd/m2以下の範囲にある蛍光ランプ。
2.上記同一平面内に同心円状に配置された2本の放電管相互の間隔dが3mm以上15mm以下の範囲にある特許請求の範囲第1項記載の蛍光ランプ。
3.上記1対の電極間の放電電圧が80V以上130V以下の範囲にある特許請求の範囲第1項記載の蛍光ランプ。
4.上記放電管の最大の環外径Dが200mm以上400mm以下である特許請求の範囲第1項記載の蛍光ランプ。
5.上記蛍光体が希土類蛍光体から成る特許請求の範囲1あるいは2項記載の蛍光ランプ。
6.上記同一平面内に同心円状の配置され2本の環状放電管の直径が10mm以上20mm以下である特許請求の範囲第1あるいは2項記載の蛍光ランプ。
7.上記1対の電極間に流れる放電電流が0.8A以下である特許請求の範囲第1あるいは2項記載の蛍光ランプ。」(「特許請求の範囲」)

1b.「本発明は、一般照明用蛍光ランプに関するもので、特に、居間やダイニングルームなどに好適な高出力、小形、かつ、薄形の吊り下げ器具を実現するに適した蛍光ランプを提供するものである。・・・従来、居間やダイニングルームなどに用いられる吊り下げ器具は、顧客の高出力に対するニーズに応ずるため大きさの異なる複数個の環形蛍光ランプを2段または3段に設置し、高出力化をはかっていた。しかし、この方法では器具が大形になり、器具のデータデザインに自由度が少なくなる欠点があった。例えば、3個の環形蛍光ランプを用いる場合、3段重ねのランプの厚みは約10cmにもおよび、器具の薄型化は不可能であった。そこで、よりコンパクトな蛍光ランプが要求されていた。・・・ 本発明は、このような背景のもとでなされたものであり、従来不可能であった小型、薄型、高出力の吊り下げ器具を実現することを目的としている。・・・
同一平面内に2本以上の同心円状の放電路を持つ蛍光放電管を用いることにより、高出力で、かつ、薄型の蛍光ランプが実現でき、また、上記2本の放電路を形成する2本の放電管の直径を5mmから25mmの範囲に細くすることにより、単位長当りの入力電力が増加でき、・・・少ない発光面積で大きな光出力を得ることが出来るようになる。これにより高出力で薄型の蛍光ランプを実現できる。」(1ページ右下欄14行?2ページ左下欄4行)

1c.「蛍光ランプの最大環外径はD、この実施例では外側に配置された放電管、すなわち放電管10の環外径D(mm)が200mm未満においては、光の放射効率の悪い電極部、管端部13,23の占める割合が増大し、ランプの効率が低下するという欠点が生じる。また、Dが400mmをこえると、照明器具が大形になり、器具のデザインの自由度が少なくなるという欠点が生じ、通常の居間やダイニングルームにおいては実際上使用できないという欠点が生じる。すなわち、蛍光ランプの最大環外径Dは、200mm以上400mm以下が最適である。
二つ以上の放電管を、放電管相互の間隔が3mm以下の範囲で、同一平面内に同心円状に設置するためには、放電管を精度よく真円環状に加工しなければならない。放電管の管径が25mmをこえると、この真円環状のガラス加工が著しく困難になり、加工費が高くなるという欠点が生じる。また、放電管の管径が10mm未満ではガラス機械的な強度が低下し、蛍光ランプを器具へとりつける際などの取扱がやっかいになるなどの欠点が生じる。したがって、放電管の管径は10mm以上25mm以下が最適である。さらに、器具のよりいっそうの薄型化を考慮すると、放電管の管径は20mm以下がよりいっそう好ましい。」(3ページ左上欄12行?右上欄16行)

1d.「第1図および第2図において、放電管10,20の管径は20mm,放電管10の環外径Dは212mm,放電管10と20の間隔平均dを3mm,金属酸化物の被膜3としてアルミナを用い、希土類蛍光体2・・・を用い、放電用ガスとしてアルゴンと水銀を封入した。この蛍光ランプは、樹脂製の口金4によって、照明器具に電気的、機械的に接続される。口金4が管端部12,22,13,23と機械的に十分な強度を有して接続されているので、器具への蛍光ランプの固定は主にこの口金4によって行なわれるので、従来の環形蛍光ランプのように多数の固定具を用いる事がなく、より洗練された器具デザインが可能となった。
上記の蛍光ランプを30kHzの高周波電子点灯回路を用いて、ランプ電流0.6Aで点灯したところ、ランプ電圧は107V,ランプ電力は64W,平均輝度は2.7×104Cdm-2が得られた。この蛍光ランプの全光束は従来の30Wと40W環形蛍光ランプ2本を用いた場合の10%増であり、かつ本発明の蛍光ランプは従来の環形蛍光ランプ2本を用いる器具の厚み70%の薄形器具で点灯できた。」(4ページ左上欄4行?右上欄7行)

1e.「第4図は、本発明の別の実施例で、それぞれ両端に1対の電極を有する放電管40,50を、口金4によって同一平面内に同心円状に束ねたものである。この実施例の蛍光ランプは、製造方法が簡単であるという利点が生じる。なお、放電管40および50それぞれにおいて、ランプ電流0.8A以下、ランプ電圧は80V以上130V以下という本発明の要件を満たさねばならない事は自明である。
通状の環形蛍光ランプと同様に放電管40と50にそれぞれ独立した口金を設け、器具において同一平面内に同心円状に固定する方法は、放電管が環状で、放電管の管径が10?25mmと細い事と、放電管の間隔が3?15mmと小さいため、不可能であった。すなわち、同一平面内で円心円状(当審注;「同心円状」の誤記と認められる。)にするためには、二つの放電管を前もって束ねる事が必須である。・・・
第5図に本発明の別の実施例を示す、第4図においては口金4によって放電管40,50を束ねたが、第5図の実施例においては、円板5を用いて放電管40と50を束ねる。そして、この蛍光ランプは円板5に取り付けられた口金6によって、電気的、機械的に器具に取り付けられる。放電管40および50の円板5への固定は、シリコン系の接着剤や機械的なバネなどによる。」(4ページ右上欄16行?右下欄4行)

3-2.対比・判断
引用刊行物の前記「1a.」?「1e.」の記載から、次のことが読みとれる。
・「1e.」の記載から、放電管40,50は、所定の範囲のランプ電流及びランプ電圧で点灯されなければならないこと。それぞれ両端に1対の電極を有する放電管40,50は、口金4により同心円状に束ねられること。
・「1a.」の記載から、2個の環状の放電管40,50は、その内表面に蛍光体が付着されるとともに希ガス及び水銀が封入されており、また、環外径が200mm以上400mm以下、直径が10mm以上20mm以下であること。
・「1d.」及び「1e.」の記載から、第1図及び第2図と同様に、照明器具は、放電管40,50を、主として口金4により固定するための固定機構を備え、また、所定の範囲のランプ電流及びランプ電圧で放電管40,50を点灯させるための30kHzの高周波電子点灯回路を備えているものと解されること。

したがって、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「環外径が200mm以上400mm以下、直径が10mm以上20mm以下であり、その内表面に蛍光体が付着されるとともに希ガス及び水銀が封入された、1対の電極を有し、それぞれ所定の範囲のランプ電流及びランプ電圧で点灯される、2本の環外径の異なる環状の放電管40,50と、放電管40,50を同心円状に束ねる口金4により器具に固定するための固定機構と、前記所定の範囲のランプ電流及びランプ電圧で放電管40,50を点灯させるための30kHzの高周波電子点灯回路と、を備えた照明器具。」

そこで、本願補正発明(前者)と上記引用発明(後者)とを対比する。
・後者の「照明器具」は、前者の「環形蛍光ランプ用照明器具」に相当する。
・後者の「30kHzの高周波電子点灯回路」により点灯される「環外径が200mm以上400mm以下、直径が10mm以上20mm以下であり、その内表面に蛍光体が付着されるとともに希ガス及び水銀が封入された、1対の電極を有し、それぞれ所定の範囲のランプ電流及びランプ電圧で点灯される、2本の環外径の異なる環状の放電管40,50」と、前者の「環外径がほぼ299mm、管外径が15?18mmであり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨ってガラスバルブ毎に配設された口金を有しており、20?40Wの範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第1の環形蛍光ランプと、環外径がほぼ373mm、管外径が15?18mmであり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨ってガラスバルブ毎に配設された口金を有しており、28?50Wの範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第2の環形蛍光ランプ」とを対比すると、前者の管外径15?18mmは、後者の管の直径範囲である10mm以上20mm以下に含まれること、また、後者の「所定の範囲のランプ電流及びランプ電圧で点灯される」ことは、「所定のランプ電力の範囲内で点灯可能」といえることから、両者は、ともに、「環外径が200mm以上400mm以下、直径が10mm以上20mm以下であり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨って配設された口金を有しており、所定のランプ電力の範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第1の環形蛍光ランプと、環外径が200mm以上400mm以下、直径が10mm以上20mm以下であり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨って配設された口金を有しており、所定のランプ電力の範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている環外径が前記第1の環形蛍光ランプより大きい第2の環形蛍光ランプ」である点で共通する。
・後者の「放電管40,50を同心円状に束ねる口金4により器具に固定するための固定機構」は、照明器具の器具本体にソケットを設け、環形蛍光ランプの口金をソケットに装着することが普通に用いられていることを勘案すれば、後者もそのような構成を有するものといえるものであるから、前者の「ソケットを有し、このソケットに第1および第2の環形蛍光ランプのそれぞれの口金を装着することで第1および第2の環形蛍光ランプが同心状に配設される器具本体」と、「ソケットを有し、このソケットに第1および第2の環形蛍光ランプの口金を装着することで第1および第2の環形蛍光ランプが同心状に配設される器具本体」である点で共通する。
・後者の「所定の範囲のランプ電流及びランプ電圧で放電管40,50を点灯させるための30kHzの高周波電子点灯回路」は、点灯回路が通常、器具本体内に設けられるものであることを勘案すれば、前者の「器具本体内に設けられ、第1および第2の環形蛍光ランプのそれぞれを所定範囲内のランプ電力であって10kHz以上の高周波で点灯させる点灯回路」に相当する。

したがって、両者は、
「環外径が200mm以上400mm以下、直径が10mm以上20mm以下であり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨って配設された口金を有しており、所定のランプ電力の範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている第1の環形蛍光ランプと、
環外径が200mm以上400mm以下、直径が10mm以上20mm以下であり内面側に蛍光体が塗布された環状のガラスバルブ、このガラスバルブ内に封入された水銀および希ガス、ガラスバルブ内に放電を生起させるようにガラスバルブ内の両端部に封装された一対の電極手段ならびにガラスバルブの両端間に跨って配設された口金を有しており、所定のランプ電力の範囲内で点灯可能であり、かつ、10kHz以上の高周波で点灯するように構成されている環外径が前記第1の環形蛍光ランプより大きい第2の環形蛍光ランプと、
ソケットを有し、このソケットに第1および第2の環形蛍光ランプの口金を装着することで第1および第2の環形蛍光ランプが同心状に配設される器具本体と、
器具本体内に設けられ、第1および第2の環形蛍光ランプのそれぞれを所定範囲内のランプ電力であって10kHz以上の高周波で点灯させる点灯回路と、
を具備していることを特徴とする環形蛍光ランプ用照明器具。」
の点の構成で一致し、以下の各点で相違する。

[相違点1]
前者が、環外径、管外径、点灯可能電力の範囲を、第1の環形蛍光ランプに関して、ほぼ299mm、15?18mm、20?40Wの範囲内とし、第2の環形蛍光ランプに関して、ほぼ373mm、15?18mm、28?50Wの範囲内としているのに対し、後者は、放電管40,50の環外径を200mm以上400mm以下、直径を10mm以上20mm以下、ランプ電流及びランプ電圧を所定の範囲としている点。
[相違点2]
前者が、ソケットに第1および第2の環形蛍光ランプのそれぞれの口金を装着することで第1および第2の環形蛍光ランプが同心状に配設されるのに対し、後者は、放電管40,50を同心円状に束ねる口金4により器具に固定している点。

上記各相違点について検討する。
[相違点1]について
(1)環外径に関して;
ガラスバルブの管径が29mmで環外径がほぼ299mmの32W形環形蛍光ランプや、同じく管径が29mmで環外径がほぼ373mmの40W形環形蛍光ランプは、周知のものである。したがって、本願補正発明の第1及び第2の環形蛍光ランプの環外径は、このような周知の環形蛍光ランプとほぼ同一のものである。
また、環外径の異なる複数の環形ランプを同一平面に置いた場合には、それらを近接させると交換時の着脱が面倒なこと、平面方向の照度の低下が生じること等の難点があることは、例えば、特開昭62-52803号公報[2ページ左上欄10行?右上欄2行に「各c1,c2,c3が同一平面上に同心的に配置する場合には、照明器具の全体の高さを低く抑えることができるとともに、各環形ランプc1,c2,c3と床面との距離をそれぞれ一定に保つことができるから、照度上の効率低下は避けることができるが、しかし、各環形ランプc1,c2,c3が同一平面上において重なり合うため、照明器具の周囲方向に対する照度が低下し、・・・また、各環形ランプc1,c2,c3が互いに隣接して重なり合うため、これらの交換時等におけるその着脱が面倒となる難点がある。」と記載されている。]に示されるように従来周知のことであり、2本の環形蛍光ランプの環外径を各ランプ間の間隙寸法がある程度大きなものとなるように設定することは、当然考慮すべきことといえる。
さらに、従来の環形ランプとほぼ等しい環外径とすれば、パッケージングの平面サイズの共通化等のメリットが想定されるところである。
そうすると、これらのことを考慮すれば、環外径を本願補正発明のようにすることは、当業者が格別の推考力を要することとは認められない。

(2)管外径及びランプ電力に関して;
蛍光ランプにおける高周波点灯の意義、管径と入力電力等との関係については、例えば、特開平5-251190号公報に次のように記載されている。
・段落【0003】に【従来の技術】として;
「従来、けい光ランプを定格光束以上の光出力を得るように高周波点灯するものとして、実開昭60-123900 号公報のものが提案されている。このものは、けい光ランプを公称(定格)光束の1.1 ?1.39倍で点灯させるようにするものである。」
・段落【0004】乃至【0006】に【発明が解決しようとする課題】として;
「しかしながら、このような従来のものでは、十分な光出力を得られない場合があった。たとえば、ビル等の照明器具として採用されている40W 、3 灯形の照明器具を2 灯形の照明器具に置き換えようとした場合、あるいは3 灯形の照明器具の照度を2 灯形の照明器具で得ようとした場合、2 灯のけい光ランプそれぞれを公称光束の1.1 倍で点灯しても、そのときの合計の光出力は、3 灯を定格点灯したときの合計の光出力より低下してしまうものである。このために、前記公称光束の1.39?1.5 倍の光束を出力させようとすると、ランプ電流を相当増大しなければならない。たとえば、前記40W、3 灯形照明器具に用いられるけい光ランプ(たとえばFLR40S)の定格ランプ電流は0.42A であり(JIS C7801-1989 )、このけい光ランプを高周波点灯して定格光束を得るには約0.37A のランプ電流でよいが、前記1.5 倍の光出力を得るように高周波点灯するためには、約0.66A のランプ電流を流す必要がある。1.39倍の光出力を得る場合でも、約0.6 1Aのランプ電流を流す必要があった。しかしながら、このようなけい光ランプにおいてランプ電流を1.39?1.5 倍も流すことになると、ランプの寿命が損なわれることになる。すなわち、けい光ランプの寿命を決定する要因は、フィラメントの寿命であるが、このフィラメントの寿命は正常に加熱されている場合、ランプ電流に依存する。一般に高周波点灯すると、ランプ効率が10?20% 向上する。また、フィラメントの電流容量にも10?2 0%程度余裕がある。したがって、定格光束の1.3 倍程度までの過負荷点灯においてはフィラメントの寿命を著しく損なうことはない。しかし、それ以上の高光出力を得ようとして、過大なランプ電流を流すと、フィラメント寿命が損なわれ、ランプ寿命が損なわれるものである]
・段落【0012】乃至【0015】に【作用】として;
「請求項1に記載の発明において、管径が25.5mm以下のけい光ランプは、現在最も多く使用されているたとえば管径が32.5mmのけい光ランプに比し、管長が同じなら、ランプ電圧が高いものである。したがって、同じランプ電力であるならば、上記管径が25.5mm以下のランプの方がランプ電流を少なくできる。このことから、上記管径が25.5mm以下のランプでは、高光出力化のためにランプ電流を増加してもランプ電流を相対的に小さくでき、したがって、フィラメント惹いてはランプ寿命を損なうことなく、十分な高光出力を得られる。たとえば、管径が32.5mmで管長が1198cmのアルゴンを封入した40W けい光ランプ(FLR40S)の定格ランプ電圧が106V、定格ランプ電流が0.42A であって、高周波点灯することによって同じ光束(2850lm)を得るにはランプ電圧103V、ランプ電流が.037Aであるのに対し、管径が25.5mmで管長が1198cmのアルゴン封入の32W のけい光ランプは高周波点灯したときランプ電圧が128V、ランプ電流0.26A 、光束278 0lm である。そして、前記管径が32.5mmのけい光ランプを定格の1.5 倍の光出力(4275lm)を得るように高周波点灯するためには、ランプ電流を0.66A 流す必要があったが、前記管径が2 .55mmのランプで、前記管径が32.5mmのけい光ランプの定格の1.46倍、前記光束2780lmの1.5 倍の光出力(4170lm)を得るように高周波点灯したときは0 .46Aのランプ電流でよかった。このように、少ないランプ電流0.46A で十分な光出力を得て、しかも、ランプ寿命を損なうことがないものである。」
・段落【0018】乃至【0026】に【実施例】として;
「以下、本発明の一実施例を第1図?第2図を参照して説明する。1はけい光ランプであり、たとえば管径が25.5mmで、管長が1198cmの直管形のものである。このけい光ランプ1には、水銀の他にアルゴンが封入されている。本実施例では2灯を直列点灯の例を示している。しかし、1灯点灯でもよいものである。2は高周波点灯装置で、たとえば40KHz より高く50KHz より低い高周波電力にて前記けい光ランプ1を点灯するものである。また、この高周波点灯装置2は前記けい光ランプ1をシングルスポットで点灯するものである。このような高周波点灯装置2としては、たとえば周知のインバ-タ、チョッパ等を適宜選択的に用いて構成できるものである。なお、3は前記高周波点灯装置2の電源としての商用交流電源である。しかし、他の電源であってもよいことはもちろんである。つぎに、本実施例の実験結果を示す。前記けい光ランプ1を、2780lmの光束を得るように高周波点灯したときは、ランプ電圧:128V、ランプ電流:0.26A であった。これに対して、前記けい光ランプ1を4170lmの光束を得るように45KHz で高周波点灯したときは、ランプ電圧:110V、ランプ電流:0.46A であった。このように、ランプ電流が0.46A でけい光ランプ1を点灯した結果、棒状のシングルコイル、棒状のダブルコイルのいずれも上記JIS に規定されているけい光ランプの寿命10000 時間を問題なく達成できた。一方、現在最も多用されている管径が32.5mmで管長が1198cmのけい光ランプを、光束2850lmを得るように高周波点灯したときは、ランプ電圧:103V、ランプ電流:0.37A であり、これを1.5 倍すなわち4275lmの光束を得るように高周波点灯したときは、ランプ電圧が89V 、ランプ電流:0.66A であった。そして、シングルスポットで、かつ、前記ランプ電流0.66A でけい光ランプを点灯した場合には、棒状のシングルコイルで約6500時間、棒状のダブルコイルで約9000時間で寿命に達し、いずれも規定の10000 時間を得られないものであった。また、上記従来のように1.39倍として0.61A で点灯した場合には、棒状のシングルコイルで約8000時間、棒状のダブルコイルで約10500 時間で寿命に達し、シングルコイルの場合は規定を満足できないものであった。以上のことからも、管径が25.5mmのけい光ランプは、管径が32.5mmのけい光ランプよりもランプ電圧が高く、ランプ電流が少ないこと、そして、前記管径が255mm のけい光ランプについては、シングルスポットで点灯しても、フィラメントが短寿命になることがなく、けい光ランプの寿命を劣化させることがないものであることが明かである。なお、他のけい光ランプたとえばFL40S (管径32.5mm)、FL40SS/37 (管径28mm)、FCL40 (管径31mm)、FCL40/38(管径29mm)等についても同じ管長であれば、いずれも管径が25.5mmのけい光ランプよりランプ電圧が低く、ランプ電流が多いものであった。そして、上記実験結果と同様の傾向を示した。これは、管径が25.5mm以下のけい光ランプは管壁負荷が大きく、この結果、ランプ電圧が高く、その分ランプ電流が少なくなるものによると考えられる。」
・段落【0031】に環形蛍光ランプへの適用可能性に関して;
「なお、本発明において、けい光ランプは管径が25.5mm以下であればよく、管長は限定されるものでなく、また、直管形の他、環形、U字形に折曲したもの等であつてもよい。いずれにしても、管長が同じである管径が25.5mmを越えるけい光ランプの定格光束の1.35倍以上の光束で高周波点灯することによって、本発明の効果を得られるものである。」
上記の記載からみて、環形蛍光ランプを含め種々の管長を有する蛍光ランプ全般について、以下のことが周知であると認められる。
(A)管径が小さくなると管壁負荷が大きくなることから、管長が同じなら、管径が小さいほどランプ電圧が高くなり、ランプ電流を小さくできること。
(B)管径の小さいランプの方がランプ電流の許容範囲が広く取れ、ランプ電力の許容範囲も広がること。
(C)高周波点灯の場合、定格光束の1.3 倍程度までの過負荷点灯が可能であり、管径の小さいランプと高周波点灯と組み合わせると、ランプ電力の許容範囲が一層拡がること。

また、蛍光ランプにおける高周波点灯の周波数に関しては、例えば、特開平1-140594号公報に次のように記載されている。
・「本発明者らは種々研究,実験の結果、特定の周波数範囲であれば、定格光束の150%光束を得られる電流を流しても、ランプ寿命をさ程損うことがないことを究明したものである。すなわち、10kHz程度以上の高周波領域であればランプ電流を増してもランプ寿命を著しく劣化させないことが判った。」(2ページ左上欄1行?7行)
上記の記載からみて、「10kHz以上の高周波領域であれば、ランプ電力の許容範囲が広がること」は、従来周知のことと認められる。

そうすると、上記のような周知事項、及び、環外径がほぼ299mmの32W形環形蛍光ランプや、ほぼ373mmの40W形環形蛍光ランプが周知のものであることを併せ考慮すれば、管外径及びランプ電力の範囲を本願補正発明のように設定することは、当業者が格別の推考力を要することなくなし得る程度のことと認められる。

[相違点2]について
ソケットに第1および第2の環形蛍光ランプのそれぞれの口金を装着することで第1および第2の環形蛍光ランプを同心状に配設することは従来周知であり(例えば、特開昭57-145207号公報、特開昭61-195503号公報、実願昭63-1324号(実開平1-106007号)のマイクロフィルム参照。)、このような周知の構成を、引用発明の口金によるランプの器具への固定のための構成に代えて採用し、相違点2に係る構成とすることは、当業者が格別の推考力を要することとは認められない。

そして、本願補正発明による効果も、引用刊行物の記載及び上記周知事項から、当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
平成16年11月15日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至5に係る発明は、願書に最初に添付された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる(前記「第2.」の「1.」の補正前の特許請求の範囲参照。その請求項1に係る発明を、以下、「本願発明」という。)。

第4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は、前記「第2.」の「3-1.」に記載したとおりのものである。

第5.対比・判断
本願発明は、前記「第2.」で検討した本願補正発明から、発明を特定するために必要な事項である第1、第2、及び第3の環形蛍光ランプの環外径についての数値範囲を拡張したものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に、環外径についての数値範囲を限定したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.」の「3-2.」に記載したとおり、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明(請求項1に係る発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-14 
結審通知日 2007-05-17 
審決日 2007-05-29 
出願番号 特願2003-402340(P2003-402340)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05B)
P 1 8・ 121- Z (H05B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小島 寛史小川 亮  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 堀部 修平
小川 浩史
発明の名称 環形蛍光ランプ用照明器具  
代理人 和泉 順一  

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