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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1161183
審判番号 不服2003-13306  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-11 
確定日 2007-07-18 
事件の表示 特願2000-126184「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成12年11月21日出願公開、特開2000-317105〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件出願は、平成5年5月6日に出願した特願平5-105480号の一部を平成12年4月26日に新たな特許出願としたものであって、平成15年6月9日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、当審において、平成19年2月21日付で拒絶理由通知がなされ、同年4月23日に手続補正がなされたものであり、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、明細書および当審で提出された補正書および出願当初の明細書および図面の記載から見て、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「図柄を表示する表示装置と、前記表示装置の上方に設けられた入賞口と、前記入賞口に入賞した遊技球を遊技盤の裏面側において誘導する球誘導路と、を備えた遊技機であって、
前記表示装置は、遊技盤の裏面から後方へ突出した状態で配置されており、
前記球誘導路は、後方へ突出した前記表示装置の上方において後下り状に傾斜した前側誘導部と前記表示装置の後側に位置している後側誘導部とを備え、
前記入賞口に入賞した遊技球は、この前側誘導部を通じ前記表示装置の上方を迂回して前記表示装置の後側に位置している後側誘導部に誘導される構成であることを特徴とする遊技機。」

2.引用例
これに対して、当審の拒絶の理由に引用され本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭63-79350号(実開平2-1184号 )のマイクロフィルム(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、
「遊技盤の裏面側へ転動したパチンコ球を誘導通過させるために遊技盤の裏面に装着された誘導樋であって、・・・中継基板を脱離可能に取付けるための取付部材を設けた・・・パチンコ機におけるパチンコ球の誘導樋。」(実用新案登録請求の範囲)、
「パチンコ機のゲーム内容や入賞態様が多様化するにしたがってゲーム用の電気部品や電気回路を接続するリード線の本数が増加してその接続状態や配線状態が複雑化し、とくに入賞装置に関連する電気配線が複雑になっている。」(第1頁第18行?第2頁第2行)、
「遊技盤1の中央部に組付けられた入賞装置Nにおいて、回転体(役物)が組込まれた・・・役物ケース5は、遊技盤1に対し・・・窓部1a内に貫挿された状態で取着されて遊技盤1の裏面1bの後方へ突出されている。役物ケース5には前記回転体を回転駆動するためのモータ50・・・LED・・・等の電気部品が取付けられるとともに、役物ケース5の後端部に垂設された取付板5aの背面には・・・集合電気回路基板6が・・・並着されている。」(第3頁第16行?第4頁第6行)、
「入賞装置Nの前上端部に開口された上入賞口55・・・を通じて遊技盤1の前面から裏面1bへ転動した遊技球を誘導通過させるために設けた誘導樋11は遊技盤1の裏面1bに役物ケース5を包囲した状態で取着されている。この誘導樋11は・・・、上下の横樋部12,12と、左右の縦樋部13,13とがほぼ方形枠状に連接されている。」(第4頁第15行?第5頁第4行)、
「入賞装置Nの上入賞口55内へ落入したパチンコ球は上側の横樋部12内の中央部へ送出されて同中央部から片側の縦樋部13内へ転動し、同縦樋部13内から下方へ転落する。」(第5頁第19行?第6頁第2行)、
との記載が認められ、
また、上記摘記事項および第1図より、パチンコ機のゲーム内容や入賞態様が多様化していること、役物ケース5には回転体(役物)が組込まれ、該回転体を回転駆動するためのモータ50が取付けられていること等、および、一般的にパチンコ機分野では、ドラム回転式変換表示装置を設けて、回転可能な回転表示部材の周面に記される識別情報を停止表示することが周知(一例として、実願昭60-196641号(実開昭62-108987号)のマイクロフィルム)であるから、役物ケース5は、「図柄を表示する」ことができるものと認められ、
また、上記摘記事項および第1・2・5図より、誘導樋11は役物ケース5を包囲した状態で取着されており、上下の横樋部12,12と、左右の縦樋部13,13とがほぼ方形状に連接されていること、入賞装置Nの上入賞口55内へ落入したパチンコ球は上側の横樋部12内の中央部へ送出されて同中央部から片側の縦樋部13へ転動し、同縦樋部13内から下方へ転落すること等から、誘導樋11は、「役物ケース5の上側において中央部から横方向片側へ転動できるように中央部から横方向片側下り状に傾斜した横樋部12と前記役物ケース5を左右に包囲した状態で配置され、役物ケース5の左右側に位置している縦樋部13とを備え、上入賞口55に落入したパチンコ球は、この横樋部12を通じ前記役物ケース5の上側を迂回して前記役物ケース5の左右側に位置している縦樋部13に誘導通過される」ものと認められる。
これらの記載によれば、引用例1には、

「図柄を表示する役物ケース5と、前記役物ケース5の上方に設けられた上入賞口55と、前記上入賞口55に落入したパチンコ球を遊技盤1の裏面1b側に誘導通過させる誘導樋11と、を備えたパチンコ機であって、
前記役物ケース5は、遊技盤1の裏面1bの後方へ突出されており、
前記誘導樋11は、後方へ突出した前記役物ケース5の上側において中央部から横方向片側下り状に傾斜した横樋部12と前記役物ケース5の左右側に位置している縦樋部13とを備え、
前記上入賞口55に落入したパチンコ球は、この横樋部12を通じ前記役物ケース5の上側を迂回して前記役物ケース5の左右側に位置している縦樋部13に誘導通過される構成であるパチンコ機。」

との発明(以下「引用例1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

3.対比
そこで、本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「役物ケース5」、「上入賞口55」、「落入した」、「パチンコ球」、「誘導通過させる」、「誘導樋11」、「パチンコ機」、「遊技盤1の裏面1bの後方へ突出されており」および「上側」は、本願発明における「表示装置」、「入賞口」、「入賞した」、「遊技球」、「誘導する」、「球誘導路」、「遊技機」、「遊技盤の裏面から後方へ突出した状態で配置されており」および「上方」に相当すると認められる。
また、引用例1発明の「中央部から横方向片側下り状に傾斜した横樋部12」と、本願発明の「後下り状に傾斜した前側誘導部」は、「特定方向に傾斜した上流側誘導部」で共通し、
また、引用例1発明の役物ケース5の「左右側に位置している縦樋部13」と、本願発明の表示装置の「後側に位置している後側誘導部」は、「特定の場所に位置している下流側誘導部」で共通する。
したがって、両者は、

「図柄を表示する表示装置と、前記表示装置の上方に設けられた入賞口と、前記入賞口に入賞した遊技球を遊技盤の裏面側において誘導する球誘導路と、を備えた遊技機であって、
前記表示装置は、遊技盤の裏面から後方へ突出した状態で配置されており、
前記球誘導路は、後方へ突出した前記表示装置の上方において特定方向に傾斜した上流側誘導部と前記表示装置の特定の場所に位置している下流側誘導部とを備え、
前記入賞口に入賞した遊技球は、この上流側誘導部を通じ前記表示装置の上方を迂回して前記表示装置の特定の場所に位置している下流側誘導部に誘導される構成である遊技機。」

である点で一致し、以下の点で相違している。

相違点:球誘導路における上流側誘導部と下流側誘導部の配置にあたり、上流側誘導部を特定方向に傾斜させるのに、本願発明では、「前側誘導部が後下り状」であるのに対し、引用例1発明では、「横樋部12が中央部から横方向片側下り状」であって、また、上流側誘導部に連なる下流側誘導部の位置する特定の場所が、本願発明では、後側誘導部が表示装置の「後側」であるのに対し、引用例1発明では、縦樋部13が役物ケース5の「左右側」であり、本願発明のような構成となっていない点。

4.判断
上記相違点について検討すると、パチンコ機分野において、一般的に、パチンコ球を底部の所望の場所まで落下させる誘導路を確保するために、誘導路を障害となる部材から離れて上流側誘導部と下流側誘導部を連通するように設置することは周知であり(例えば、特開昭61-284274号公報、特開平3-18388号公報参照。)、引用例1発明の横樋部と縦樋部を有する誘導樋の構成に代えて、上記周知の事項を適用して、本願発明の前側誘導部と後側誘導部を有する球誘導路とすることに、格別の創意工夫を要したとはいえず、当業者が必要に応じて容易に想到し得たものである。

そして、本願発明が上記構成を採ることによりもたらされる効果は、引用例1発明および周知技術から当業者が予測できる範囲内のものであって格別のものとは認められない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例1発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明できたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-21 
結審通知日 2007-05-22 
審決日 2007-06-06 
出願番号 特願2000-126184(P2000-126184)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 一宮 誠  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 土屋 保光
林 晴男
発明の名称 遊技機  
代理人 岩田 哲幸  
代理人 池田 敏行  

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