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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1161184
審判番号 不服2003-24677  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-19 
確定日 2007-07-18 
事件の表示 特願2000-218796「パチンコ機の入賞装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月 5日出願公開、特開2002- 35259〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年7月19日に出願されたものであって、平成15年8月20日付けの拒絶理由通知に対し平成15年10月27日付けで手続補正がなされ、平成15年11月19日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年12月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成15年10月27日付けの手続補正によって補正された明細書の記載からみて、
「遊技盤の前面に止着する取付基板には前面に検出スイッチを内蔵する飛入口を突設し、他方該取付基板の背面には前記遊技盤に開設する貫通孔を通して後方に突き出す収納ケースを設け、該収納ケースの案内台に可動誘導樋を載置して前後方向に摺動自由に収める一方、上記案内台の後部には取付部を延設して該取付部にソレノイドを載置固定し、そのプランジャーと前記可動誘導樋とを連結腕を介して連結せしめ、前記プランジャーの伸長による前進時には前記可動誘導樋の先端部の球受け部を前記飛入口の直下に位置させ、該飛入口に飛入する飛入球を受け入れて可動誘導樋の内部を通して前記遊技盤の背面側に誘導し、可動誘導樋後端から前記案内台に開設する球抜き切欠部を通して遊技盤背面のセーフ球通路に誘導し、その一方前記プランジャーの引き込みによる後退時には前記可動誘導樋の先端部の球受け部を前記飛入口の直下より後退させ、前記飛入口に飛入する飛入球をそのまま前記遊技盤前面に戻し、これにより取り込み球と再放出球との選択を可能にしてなるパチンコ機の入賞装置。」
にあるものと認める。
なお、請求項1には「検出スイッチを内臓する飛入口」と記載されているが、段落0015の「6は内部に検出スイッチを内蔵する通過型の入賞口であり」という記載から、「検出スイッチを内臓する飛入口」は「検出スイッチを内蔵する飛入口」の誤記であると認め、本願発明を上記のように認定した。

3.先願明細書に記載された発明
i. 原査定の拒絶理由に引用された、本願の出願日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平11-341010号(特開2001-149543号公報参照。以下、「先願」という。)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

【0024】図7に示すように、パチンコ機10において第1種始動口30の上流側には、パチンコ球が通過可能な中ゲート32が設けられている。従って、この中ゲート32を通過したパチンコ球は、中ゲート32下流の第1種始動口30側へ落入する。また、図8及び図9に示すように、第1種始動口30は可動部材30aによって構成されている。可動部材30aは、シリンダ31aを有するソレノイド31によって図中の矢印80あるいは82方向に移動可能に構成されている。従って、可動部材30aが図8に示す位置にある場合は、中ゲート32を通過したパチンコ球は第1種始動口30に入賞可能であり、可動部材30aが図9に示す位置にある場合は、中ゲート32を通過したパチンコ球は第1種始動口30に入賞することはない。中ゲート32はゲートセンサ54を有し、……

図8及び図9の記載から、中ゲート32が、遊技盤面12の前面に止着する取付基板(図面で、遊技盤面12の左側に位置する板状の部分)に突設されていることが認められる。

図8及び図9の記載から、取付基板の背面には、遊技盤面12に開設する貫通孔を通して後方に突き出す収納ケース(図面で遊技盤面12に内蔵される、右下がりのハッチングが施された部分)を設けたことが認められる。また、当該収納ケースにおいて、可動部材30aが挿入されている部分は保持孔であると認められる。

図8の記載から、可動部材30aが図8に示す位置にある場合は、ソレノイド31のシリンダ31aが伸長され、可動部材30aの先端部が中ゲート32の直下にあることが認められる。

図9の記載から、可動部材30aが図9に示す位置にある場合は、ソレノイド31のシリンダ31aが引き込まれ、可動部材30aの先端部が中ゲート32の直下より後退させられていることが認められる。

ii. 前記摘示の記載及び図面並びに前記認定事項によれば、先願明細書には、以下の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。

遊技盤面12の前面に止着する取付基板には前面にゲートセンサ54を有する中ゲート32を突設し、他方該取付基板の背面には前記遊技盤面12に開設する貫通孔を通して後方に突き出す収納ケースを設け、該収納ケースの保持孔に第1種始動口30を構成する可動部材30aを前後方向に移動可能に保持する一方、ソレノイド31を設け、そのシリンダ31aと前記可動部材30aとを連結せしめ、前記シリンダ31aの伸長による前進時には前記可動部材30aの先端部を前記中ゲート32の直下に位置させ、該中ゲート32を通過したパチンコ球を第1種始動口30に入賞可能であり、その一方前記シリンダ31aの引き込みによる後退時には前記可動部材30aの先端部を前記中ゲート32の直下より後退させ、前記中ゲート32を通過したパチンコ球が第1種始動口30に入賞することがないパチンコ機10の入賞装置。

4.対比判断
(1)対比
本願発明と先願発明とを対比すると、先願発明の「遊技盤面12」「ゲートセンサ54」「中ゲート32」「可動部材30a」「シリンダ31a」及び「中ゲート32を通過したパチンコ球」は、それぞれ、本願発明の「遊技盤」「検出スイッチ」「飛入口」「可動誘導樋」「プランジャー」及び「飛入口に飛入する飛入球」に相当する。

また、先願発明は、「収納ケースの保持孔に可動部材30aを前後方向に移動自在に保持する」ものであるから、本願発明の「収納ケースの案内台に可動誘導樋を載置して前後方向に摺動自由に収める」点と対比して、「収納ケースに可動誘導樋を前後方向に摺動自在に収める」点において共通する。

さらに、先願発明は、「前記シリンダ31aの伸長による前進時には前記可動部材30aの先端部を前記中ゲート32の直下に位置させ、該中ゲート32を通過したパチンコ球を第1種始動口30に入賞可能であり、その一方前記シリンダ31aの引き込みによる後退時には前記可動部材30aの先端部を前記中ゲート32の直下より後退させ、前記中ゲート32を通過したパチンコ球が第1種始動口30に入賞することがない」から、シリンダ31aの伸長時には、飛入球を可動部材30aの先端部の球受け部から受け入れて取り込み、一方シリンダ31aの引き込み時には、飛入球をそのまま遊技盤面に戻すものであると認められ、これにより取り込み球と再放出球との選択を可能にしたものと言える。すなわち、先願発明は、本願発明と対比して、「前記プランジャーの伸長による前進時には前記可動誘導樋の先端部の球受け部を前記飛入口の直下に位置させ、該飛入口に飛入する飛入球を受け入れて取り込み、その一方前記プランジャーの引き込みによる後退時には前記可動誘導樋の先端部の球受け部を前記飛入口の直下より後退させ、前記飛入口に飛入する飛入球をそのまま前記遊技盤前面に戻し、これにより取り込み球と再放出球との選択を可能にしてなる」点において共通する。

そうすると、本願発明と先願発明の両者は、
「遊技盤の前面に止着する取付基板には前面に検出スイッチを内蔵する飛入口を突設し、他方該取付基板の背面には前記遊技盤に開設する貫通孔を通して後方に突き出す収納ケースを設け、該収納ケースに可動誘導樋を前後方向に摺動自由に収める一方、ソレノイドのプランジャーと前記可動誘導樋とを連結せしめ、前記プランジャーの伸長による前進時には前記可動誘導樋の先端部の球受け部を前記飛入口の直下に位置させ、該飛入口に飛入する飛入球を受け入れて取り込み、その一方前記プランジャーの引き込みによる後退時には前記可動誘導樋の先端部の球受け部を前記飛入口の直下より後退させ、前記飛入口に飛入する飛入球をそのまま前記遊技盤前面に戻し、これにより取り込み球と再放出球との選択を可能にしてなるパチンコ機の入賞装置。」
である点で一致し、以下の点で一応相違する。

相違点A
可動誘導樋を前後方向に摺動自在に収める構成、ソレノイドを設ける構成として、本願発明では、収納ケースの案内台に可動誘導樋を載置し、案内台の後部には取付部を延設して該取付部にソレノイドを載置固定するのに対し、先願発明では、可動誘導樋は収納ケースの貫通孔に挿入され、ソレノイドはどのように設けられるのかが明らかでない点。

相違点B
本願発明では、プランジャーと可動誘導樋とを連結腕を介して連結せしめるのに対し、先願発明では、連結腕を用いない点。

相違点C
本願発明では、可動誘導樋に受け入れた飛入球を、可動誘導樋の内部を通して遊技盤の背面側に誘導し、可動誘導樋後端から案内台に開設する球抜き切欠部を通して遊技盤背面のセーフ球通路に誘導するのに対し、先願発明では、受け入れた飛入球をどのように取り扱うのかが不明である点。

(2)相違点の検討
i. 相違点Aについて
先願発明は、可動誘導樋が前後方向に摺動自在に保持されるものである。また、先願発明では、可動誘導樋がソレノイドのプランジャーによって駆動されるから、ソレノイドはパチンコ機側に固定されなくてはならない。ここで、部材を前後方向に摺動自在に保持する構成、及びソレノイドを固定する構成として、部材を案内台に載置し、案内台の後部には取付部を延設して該取付部にソレノイドを載置固定することは、周知技術である(例えば、特開平3-193077号公報、特開平5-168758号公報、特開平8-257211号公報参照)。したがって、収納ケースの案内台に可動誘導樋を載置し、案内台の後部には取付部を延設して該取付部にソレノイドを載置固定することは、課題解決のための具体化手段における設計上の微差に過ぎない。

ii. 相違点Bについて
ソレノイドによって部材を駆動するものにおいて、ソレノイドのプランジャーと部材とを連結する際に、両者の間隔を調整したりするために連結腕を用いることは、慣用技術であって、新たな効果を奏するものであるとは認められない。したがって、プランジャーと可動誘導樋とを連結腕を介して連結せしめることは、課題解決のための具体化手段における設計上の微差に過ぎない。

iii. 相違点Cについて
先願明細書には明示されていないものの、入賞した遊技球をセーフ球通路に誘導することは、当業者にとって自明である。また、受け入れた遊技球を誘導するために切欠部を設けることは、周知技術である(例えば、実公平5-27980号公報、特開平11-104304号公報参照)。したがって、可動誘導樋に受け入れた飛入球を、可動誘導樋の内部を通して遊技盤の背面側に誘導し、可動誘導樋後端から案内台に開設する球抜き切欠部を通して遊技盤背面のセーフ球通路に誘導することは、課題解決のための具体化手段における設計上の微差に過ぎない。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、先願明細書に記載された発明と実質的に同一であり、しかも、本願の発明者が先願の発明者と同一であるとも、また、本願の出願の時において、その出願人が先願の出願人と同一であるとも認められないので、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。

したがって、本願は拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-04-27 
結審通知日 2007-05-15 
審決日 2007-05-28 
出願番号 特願2000-218796(P2000-218796)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 土屋 保光  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 林 晴男
太田 恒明
発明の名称 パチンコ機の入賞装置  
代理人 中山 伸治  

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