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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1161202
審判番号 不服2005-23851  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-09 
確定日 2007-07-18 
事件の表示 特願2000-530130「流量制御要素を備えた改善された漏れ防止カップ組立体」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 8月12日国際公開、WO99/39617、平成14年 1月22日国内公表、特表2002-501865〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年2月4日(パリ条約による優先権主張1998年2月6日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成17年9月6日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年12月9日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
平成17年3月7日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの
「開口端を有するカップと、
前記開口端を閉囲するように適応させたキャップであって、飲み口、空気孔、内部表面、および前記内部表面と連絡している複数の合せ面とを含み、前記複数の合せ面の1つが前記飲み口に隣接して配置されるかそこに組み込まれ、前記複数の合せ面の別の1つが前記空気孔に隣接して配置されるかそこに組み込まれているキャップと、
2つのスタックを含む流量制御弁であって、前記2つのスタックの各々が前記複数の合せ面の別個の1つと係合してそれにより前記流量制御弁を前記飲み口および前記孔と流体連絡状態におくように適応され、前記2つのスタックの各々が頂部に、前記頂部を実質的に完全に横切って伸長し前記スタックの方向に内向きに湾曲する凹形弁フェースを備えている流量制御弁とを備えている飲料用カップ組立体。」(以下、「本願発明」という。)である。

3.原査定の理由の概要
原査定の拒絶の理由1は、「本願の各請求項に係る発明は、その出願前に頒布された刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものであり、そして、引用刊行物として、米国特許第570693号明細書(以下、「引用例1」という)、国際公開第97/08979号(以下、「引用例2」という)が引用された。

4.当審の判断
(4-1)引用例1の記載事項(当審訳)
a.明細書第3欄5?32行に、
図面の簡単な記述として、概略、
「図1は、カバーの内部に接続された流量調整弁の位置を明らかにするためにマグカップの本体と蓋の一部を破断した側面図。
図2は、空気孔の大きさ、吸口の内部構造を明らかにするための図1に示した蓋の底面図。
…略…
図5は、この発明に欠くことのできない流量調整弁が接続部によって連結された別の好ましい具体化の拡大平面図。
図6は、図5の6-6線に従って切断した際の断面図。
…略…
図9は、接続部の両端に流量調整弁を有するものがマグカプの蓋に取付けられた状態の断面図。」と記載されている。
b.明細書第3欄44行?第4欄18行に、概略、
「本体12に取り外し可能に設けられた蓋14を含む本発明のマグカップ10が、第1図に示されている。本体12は、広い底面20とこれに支えられ、且つ括れたウエスト部を形成する凹んだ側壁16からなる。図示を省略した本体12の上部には蓋14との係合離脱を可能にするための慣用手段としてねじ山22が形成されている。蓋14は、上方に突出する吸口26が取り付けられる上壁24を有している。吸口26の頂部28には図2で示した複数の孔と連なっている。吸口26は、図1、2で示されるように蓋の左側に位置している。同様に、カバーの右端からオフセットして配置された通気孔が設けられていて、液体が孔30を通過してマグカップから出て行くのと入れ替わりに通気孔32から空気がマグカップに入る。上壁24の下には、内壁36から通気孔32を取囲むように、内壁36からある高さを有する第1の内壁突出部34、同様に第2の内壁突出部38が、形成される。
液体排出流量調整弁42は第2の突出部38に、空気流量調整弁40は第1の突出部34に図1に示したように、それぞれしっかり取付けられる。図1で示したように、流量調整弁40、42はハンドル部44、46を含み、流量調整弁の取り外しを容易にする。
流量調整弁40、42の他の実施例が、図3?12に記載されている。液体排出流量調整弁42は、マグカップから決められた流量を設定するスリット49が形成された弾性体の第1のドーム部分48である。同様に空気流量調整弁40は、マグカップへ決められた空気流量を設定するスリット51が形成された弾性体の、第2のドーム部分50である。」と記載されている。
図1?6および9ならびに記載事項「a、b」によれば、
引用例1には、
「マグカップ10と、これにねじ山22で係合する蓋14とからなり、吸口26、空気孔32、蓋14の内壁36、内壁36からある高さを有する第1の内壁突出部34、第2の内壁突出部38が、蓋14の端部からオフセットされた位置に設けられ、液体排出流量調整弁42は第2の突出部38に、空気流量調整弁40は第1の突出部34に支持部52により、それぞれしっかり取付けられている。液体排出流量調整弁42は、マグカップから決められた流量を設定するスリット49が形成された弾性体の第1のドーム部分48であり、同様に空気流量調整弁40は、マグカップへ決められた空気流量を設定するスリット51が形成された弾性体の、第2のドーム部分50であるマグカップ」の発明が記載されている。(以下、「引用発明1」という)

(4-2)引用例2の記載事項(当審訳)
c.明細書第1頁第5?20行には、概略
「本発明は、トレイナーカップ(trainer cup)等としての使用に適した飲用容器を含む飲料容器に関する。
従来、トレーナーカップ(即ち、通常スパウト(口)形式のマウスピースの持つ蓋を備えたカップ又はマッグ)は、乳児の哺乳瓶の使用期と通常のコップ又はグラス使用の時期の間の間隙を埋めるために、幼児により使用されている。トレーナーカップはしばしば、自給することを学ぶ子供の第一歩である。蓋にスパウトを設けるのは、子供が自給するのを容易にする為である。つまり、スパウトを口中に、その前段階で出来た哺乳瓶の乳首を口中に位置付けたるのと極めて同様に位置付けることが出来るからである。しかしながら、この年齢の幼児は当然、活発である。飲食は、騒々しく、乱雑な経験となる。トレーナーカップはしばしば、激しく振り動かされるか、ひっくり返される。何れの場合にも、従来のトレーナーカップでは、こぼしてしまう。移動・旅行の際には、別個の閉じ円板を蓋の下でカップに装着するか、蓋に調整可能な閉じ装備をする必要がある。」と記載されている。
d.明細書第3頁24?第4頁17行には、概略
「図1は、飲用容器を蓋を通した断面図であり、
図2は、飲料紙器の概略図である。
図面に関して、従来の形式の開口カップ形状の容器10上に用いられる蓋1が示されている。蓋1は一体構成で、一般に2で表示された弁体と共に同時成型される。蓋1はその下側に一体周囲スカート3が設けられ、該スカート上部縁は半径方向外側に延びる周囲稜4により区切られている。蓋1がそのカップ形状容器10の開口頭部に嵌合されると、スカート3はカップ内下向きに延び、稜4はカップの上部周囲縁に着座する。これにより適宜のシールが形成され、こぼれを阻止する。蓋1内の、スカート3により区切られたもの以外の唯一の開口は、上方に突出するマウスピース6内の開口5である。マウスピース6の一般形状は、従来のトレーナーカップの形状と類似して良い。その違いは弁体2を設けたことにある。弁体2は弾性的可撓性シート又はディスク7から形成され、後者はゴム、好ましくはプラスチック材料で良く、単数又は複数のスリット8が在る。スリットを一つにしても良いが、好ましくは交差してクロスカットを形成する一対のスリットを用いる。そのスリット又は各スリットは開口スリットと云うよりは文字通りスリット或いはその分割で、弁体2を形成するシート7がマウスピースの内側に向かって僅かに皿状に窪む自然の弁体状態では、そのスリット又は各スリットは充分に閉じて、液体が容器の内側から或いは空気が容器の外側から出ないようにする。オリフィスを、尖った器具でディスク7を貫通することにより、単数又は複数のスリットの代わりに、該ディスク7内に設けても良い。何れの場合にも、ディスクを材料を除去せずにディスク自体を切ることにより、スリット又は他のオリフィスが形成される。」と記載されている。
第1図および関連記載を総合すれば、
引用例2には、概略、
「弁体(2)が設けられたマウスピース(6)を有し、この弁体は、概してその中央部に、通常密閉される少なくとも一つのスリット又は他の穿孔(8)が形成された弾性的に可撓性の膜(7)からなっており、この膜(7)は、マウスピースの内側に向かって皿状に窪み、負圧がかると反転し、液がそのスリット(8)を通して吸引されるようにする飲料容器の蓋(1)。」の発明が記載されている。(以下、「引用発明2」という)

(4-3)対比・判断
本願発明の、「カップ」が、「開口端を有する」ことは、引用発明1に記載の「マグカップ10が、蓋14とねじ山22で係合する」ことに相当する。
そこで、本願発明と引用発明1とを対比すると、
後者の「マグカップ10」、「蓋14」、「吸口26」、「空気孔32」、「蓋14の内壁36」、「第1の内壁突出部34、第2の内壁突出部38」、「支持部52」、「流量調整弁40、42」は、前者の「カップ」、「キャップ」、「飲み口」、「空気孔」、「内部表面」、「複数の合せ面」、「スタック」、「流量制御弁」に夫々相当するから、
両者は、「開口端を有するカップと、
前記開口端を閉囲するように適応させたキャップであって、飲み口、空気孔、内部表面、および前記内部表面と連絡している複数の合せ面とを含み、前記複数の合せ面の1つが前記飲み口に隣接して配置されるかそこに組み込まれ、前記複数の合せ面の別の1つが前記空気孔に隣接して配置されるかそこに組み込まれているキャップと、
2つのスタックを含む流量制御弁であって、前記2つのスタックの各々が前記複数の合せ面の別個の1つと係合してそれにより前記流量制御弁を前記飲み口および前記孔と流体連絡状態におくように適応され、前記2つのスタックの各々が頂部に前記頂部を実質的に完全に横切って伸張し、湾曲する弁フェースを備えている流量制御弁とを備えている飲料用カップ組立体。」で一致し、以下の点で相違している。
相違点a:本願発明では「弁フェース」が、「2つのスタックの各々が頂部に、前記スタックの方向に内向きに湾曲する」ものであるのに対し、引用発明1では、「第1のドーム部分48」は「それぞれ内向きと外向きに湾曲する凹形弁フェース」である点。

〈判断〉
そこで上記相違点aについて検討する。

相違点aについて、
引用発明2においても、「膜(7)は、マウスピースの内側に向かって皿状に窪み、負圧がかると反転し」と、記載されている。
してみれば、引用発明1に記載の「液体排出流量調整弁42」に、引用発明2を適用することは、当業者が必要に応じ適宜なしえた程度である。

そうすると、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
それゆえ、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-16 
結審通知日 2007-02-20 
審決日 2007-03-05 
出願番号 特願2000-530130(P2000-530130)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川本 真裕柳田 利夫  
特許庁審判長 松縄 正登
特許庁審判官 関口 勇
中西 一友
発明の名称 流量制御要素を備えた改善された漏れ防止カップ組立体  
代理人 畑 泰之  
代理人 斉藤 武彦  

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