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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1161260 |
審判番号 | 不服2004-6227 |
総通号数 | 93 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-03-26 |
確定日 | 2007-07-20 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第287344号「骨形成促進および骨塩量減少防止用組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月 6日出願公開、特開平10-114653〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 ・本願発明 本願は,平成8年10月11日の出願であって、その請求項1に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下、「本願発明」という。) 「亜鉛塩とイソフラボンを主たる有効成分とすることを特徴とする骨形成促進および骨塩量減少防止用組成物。」 2 引用刊行物の記載の概要 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成8年9月10日に頒布された「特開平8-231533号公報 」(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が記載されている。 (1) 「前記フラボノイド配糖体が、ダイズイン、ゲニスチン、・・・からなるグループから選択されたフラボノイド配糖体である・・・骨粗鬆症治療剤。」(請求項5) (2) 「「骨粗鬆症」とは、骨の単位容積内の骨量が減少する状態を指すものであり、」(段落0003) (3) 「閉経直後に急激に骨塩量が減少することが知られている」(段落0004) (4) 「骨粗鬆症治療剤として、これまで、7-アルコキシイソフラボン類・・・・がすでに市販されている。しかしながら、イソフラボン誘導体を有効成分とするこの骨粗鬆症治療剤によっても、骨の量的減少を充分に抑制できない場合がある。」(段落0005)」 (5) 「骨粗鬆症の予防的側面からすれば、青年期の骨量の維持が重要であり、普段摂取している食品によるカルシウムの摂取及び閉経直後の骨塩量の減少抑制を行うことが望ましい。」(段落0008) (6) 「種々の原因により発症した骨粗鬆症に対して、一般的な投与方法により確実に骨量の減少を抑制し、あるいは食品として安全に長期間摂取することで骨粗鬆症を予防及び治療ならしめることを可能とするフラボノイド配糖体を含んだ新規の骨粗鬆症治療剤及び可食性組成物の提供を目的としている。」(段落0009) (7) 「【化4】(式省略)・・・で表されるフラボノイド配糖体が、その経口投与によって骨密度の低下を有意に抑制し、骨粗鬆症の治療に適用できることを知見するに到ったのである。 (段落0011、0012) (8) 「本発明のフラボノイド配糖体のアグリコンの一つであるイソフラボンは、・・・エストロジェン作用・・・などの生理作用を呈することが報告されている」(段落0013) (9) 「上記表2の結果より、・・・ゲニスチン、・・・は、対照群と比較して優位に骨密度が高く、骨密度低下抑制作用が認められた。」(段落0029) (10) 「本願発明の化合物を骨粗鬆症治療剤の活性成分として用いる場合、例えば、錠剤、・・・等として、所定用量を経口的に服用すればよい。」(段落0030) また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成7年6月13日に頒布された「米国特許明細書第5424331号」(以下、「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。 (11) 「亜鉛はカルシウムの取り込み、蛋白合成、並びにコラーゲン(骨の有機基質)形成にとりわけ重要である。」(第4欄第16?18行) (12) 「骨損失は、増加したカルシウムの摂取(1000mg/日以上)により減ぜられることが、管理下の臨床試験によって確認された。」(第3欄第62?65行) (13) 「この発明の範囲に入るものと考えられる二種の植物性エストロゲンがある。それらは、イソフラボン類とクメスタン類である。イソフラボン類は、たとえば、・・・ゲニスティン、・・・そしてそれらの配糖体である・・・ゲニスチン・・・であり」(第4欄第52?57行) (14) 「例1 以下の錠剤形態の組成物が得られた。(1)大豆イソフラボン(植物性エストロゲン)ゲニスチン75mg、・・・(5)硫酸亜鉛15mg・・・」 3 対比 上記摘記事項(1)?(10)を総合すると、引用例1には、「イソフラボンを主たる有効成分とすることを特徴とする骨粗鬆症治療用組成物」の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 そこで、本願請求項1に係る発明と引用発明を対比すると、本願発明にいう「イソフラボン」は、本願明細書の「イソフラボンには、ダイジン、ゲニスチン、グリスチンとそれらにマロニル基が結合したものや、それらから糖がとれたアグリコンが存在している。」(段落0004)、並びに「特にイソフラボンに含まれるゲニスチン、殊にもゲニスティン」(段落0006)との記載に照らせば、種々のイソフラボン誘導体を含む広義のイソフラボンの意であると解されるから、両者は、イソフラボンを有効成分とする組成物である点で一致し、以下の点で相違する。 前者がさらに亜鉛塩を有効成分としているのに対し、後者がそれを含むとしていない点(以下、相違点1という。) 前者が骨形成促進および骨塩量減少防止用組成物であるのに対し、後者が骨粗鬆症治療用組成物である点(以下、相違点2という。) 4 当審の判断 上記相違点について検討する。 (1) 相違点1について 上記2(5)に摘記したように、骨の単位容積内の骨量が減少する状態である骨粗鬆症の予防のためには、従来、カルシウム、ビタミンDの摂取により骨形成を促進するか、あるいは骨塩量の減少を抑制することが望ましいと考えられており、また、カルシウムやコラーゲンが骨構成成分であることは、本出願前の技術常識である(引用例1の段落0006、特開平4-356479号公報の段落0005、化学大辞典編集委員会編 化学大辞典8 縮刷版 第697、698頁 「ほね 骨」 共立出版株式会社 昭和53年9月10日発行、上記2(12)摘記事項参照)。一方、カルシウムやビタミンD以外に、亜鉛が骨形成促進効果を有することが引用例2に記載されている(上記2(11)摘記事項参照)。そして、同引用例には、亜鉛を、硫酸亜鉛等の亜鉛塩として、イソフラボンを包含する植物性エストロゲンをはじめとする各種の成分とともに配合した例も記載されている(上記摘記事項2(14)参照)。 そうすると、引用発明記載の、イソフラボンを主たる有効成分とすることを特徴とする骨粗鬆症治療用組成物に、さらに骨形成促進効果を有する亜鉛塩を有効成分として添加し、骨形成と骨塩量減少の両面から治療を試みることは当業者が容易に想到しえたものである。 (2) 相違点2について イソフラボンが骨密度低下抑制作用を有することは引用例1に記載されている(上記摘記事項2(9)参照)。ところで、骨密度とは一定の容積当たりのミネラルの量をいい、骨塩量とは骨の中のカルシウムを含んだミネラルの部分の量をいうことから、前記骨密度低下抑制作用は骨塩量減少作用と実質的に同義である。また、亜鉛塩が骨形成促進作用を有することは引用例2に記載されている(上記摘記事項2(11)(14)参照)。 そうすると、それら両成分を主たる有効成分として含有する組成物について、その作用に着目して、骨形成促進および骨塩量減少防止用組成物と特定することは当業者が容易に想到しえたものである。 そして、本願明細書記載の本願発明の効果にしても、引用例1、2に記載されるイソフラボン、亜鉛塩の作用から当業者が通常予測しうる範囲のものであって、これを格別な効果と評価することはできない。 5 むすび したがって、本願発明は、引用例1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-04-17 |
結審通知日 | 2007-04-24 |
審決日 | 2007-05-30 |
出願番号 | 特願平8-287344 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 内田 淳子、新留 素子 |
特許庁審判長 |
森田 ひとみ |
特許庁審判官 |
穴吹 智子 谷口 博 |
発明の名称 | 骨形成促進および骨塩量減少防止用組成物 |
代理人 | 大城 重信 |
代理人 | 佐藤 文男 |