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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1161262
審判番号 不服2004-9642  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-05-07 
確定日 2007-07-20 
事件の表示 特願2000-158680「パチンコ機の逆行防止装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年12月 4日出願公開、特開2001-334029〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成12年5月29日の特許出願であって、平成15年8月8日付の拒絶理由が通知され、平成15年10月20日付で意見および手続補正がなされ、さらに、平成15年12月5日付の拒絶理由が通知され、平成16年1月22日付で意見および手続補正がなされ、平成16年1月22日付の手続補正が平成16年3月31日付で補正却下がなされると共に同時に拒絶査定がなされ、平成16年5月7日に審判請求がなされ、平成16年5月31日付で手続補正がなされ、当審より平成19年3月6日付の拒絶理由が通知され、平成19年4月26日付で手続補正がなされたものである。

そして、平成19年4月26日付の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、その請求項1において特定される下記のとおりのものである。

「外枠の一側に蝶番で蝶着した前枠に装着部を設け、該装着部には外誘導レールと内側誘導レールとを備えた遊技盤が着脱自在に取付けられ、前記装着部の下端に備えられる遊技盤の受台の前面には、打球装置と、該打球装置の打球槌により打撃された遊技球を遊技盤の外誘導レールと内側誘導レールとの間に向けて案内する発射レールと、戻り球を受け取るファール球通路とを設け、前記外誘導レールと内側誘導レールとを備えた遊技盤が前記装着部に取付けられ、前記外誘導レールと前記発射レールとの間には外誘導レールを逆行してくる戻り球を前記外誘導レールから前記ファール球通路に誘導する隙間が形成されており、前記戻り球を防止するための防止片本体と防止片基部から構成される逆行防止部材が前記発射レールの先端部側に固定され、前記防止片本体と前記外誘導レールとの間に前記外誘導レールを逆行してくる戻り球を通過させるスペースが形成される一方、前記打球装置から発射された遊技球が前記発射レールから前記防止片本体に達すると、当該遊技球が前記防止片本体の上面を発射レールの側から外誘導レールの側に進むに従って、前記防止片本体が徐々に撓んで外誘導レールの上に当接するようにしたパチンコ機の逆行防止装置であって、
前記逆行防止部材は、全体がU字状に曲げられるとともに、該U字状部分の上部及び底部に、抜け止め防止のための係止部を備えた防止片基部が形成され、該防止片基部が前記発射レールの先端の貫通している取付溝に差し込まれており、前記防止片本体は、ステンレス又は合成樹脂の弾性材料の薄状片からなるとともに、その長さが、前記防止片本体を遊技球が通過した時に前記防止片本体の先端部が外誘導レールと当接する長さに形成されており、 前記防止片本体は平坦面状に形成されるとともに、外誘導レールの側に行くに従って前記外誘導レールと内側誘導レールとの間において、放出口の側に向かうように上方にせり上がるように設けられており、さらに、前記防止片本体の弾性力は、その上面に前記打球槌により打撃された遊技球を受けた時、前記ファール球通路を越える打撃力で外誘導レールに当接するために要する必要最小限の弾性力に設定されていることを特徴とするパチンコ機の逆行防止装置。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例
(1)引用例1について
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-140237号公報(公開日:平成12年5月23日)(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1
「【0001】【発明の属する技術分野】本発明はパチンコ機に関するものであり、さらに詳しくは発射球数を計数するための球センサと、誘導レール内を逆走する戻り球から前記センサを保護し、戻り球を確実に戻り球回収口に落して下景品球受皿へ回収する戻り球防止装置を備えたパチンコ機に関する。」

・記載事項2
「【0006】【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図1及び図2を参照しながら説明する。図1は本発明に係るパチンコ機の下部分であり、図2はその発射レール周辺部を示している。打球機構やレールの構造等については従来より周知のパチンコ機と同様であり、相違する点は特にない。1は打球杆であり、その先端にはスプリング1Sが備えられている。打球杆1は図示しないモータの駆動により一定の周期で往復回動するように構成されている。2は発射レールであり、その基端部にて打球杆1のスプリング1Sにより打球されたパチンコ球Pが該発射レール2の先端部から誘導レール3へ飛び移るように、取付部材4を介して遊技盤取付枠5に固定されている。誘導レール3は内側レール3Aと外側レール3Bとから構成されており、両方とも遊技盤6に固定されている。7は球供給機構であり、上景品球受皿8から発射レール2上までを連通させてパチンコ球Pの供給経路を構成している。9は球保持片であり、発射レール2の基端部の上方で遊技盤取付枠5に固定されている。発射レール2と誘導レール3の間には戻り球回収口10があり、該戻り球回収口10は下景品球受皿11と連通している。発射レール2先端部の上方位置には、球センサ13が遊技盤6の空きスペースを利用して固定されている。該球センサ13は例えば近接スイッチのような非接触で検知するタイプのセンサであり、飛走するパチンコ球Pを検知可能な位置に備えられている。該球センサ13の前方位置にはセンサ防護部材14が遊技盤6に固定してあり、さらに該センサ防護部材14には戻り球防止片12が固定してある。戻り球防止片12は例えばばね鋼のような可撓性のある材質からなり、その先端を斜め下方に延ばすようにして設けてある。」

・記載事項3
「【0007】上記の構成による本発明のパチンコ機の実際の動作を以下説明する。上景品球受皿8に貯留されているパチンコ球Pは球供給機構7により一個ずつ発射レール2上に供給され、発射レール2の基端部にて球保持片9で保持される。遊技者の操作により打球機構が働いて打球杆1が往復回動し、パチンコ球Pはスプリング1Sに弾かれて発射レール2上から誘導レール3に向かって発射される。戻り球防止片12は、パチンコ球Pの発射方向への飛走力に対しては球の通過経路を開く方向に撓むので、パチンコ球Pは発射レール2から誘導レール3へと移動し、誘導レール3内を飛走して遊技盤面へと放出される。パチンコ球Pが戻り球となって誘導レール3上を逆走してきた場合、誘導レール3始端部から戻り球回収口10を飛び越えてきた戻り球は、センサ防護部材14あるいは戻り球防止片12に衝突する。このときの力で戻り球防止片12は戻り球の通過経路を閉じる方向に撓むので、衝突した戻り球は戻り球防止片12下方の戻り球回収口10に落下し、下景品球受皿11へ回収されていく。」

・記載事項4
「【0008】また、図3は本発明の他の実施の形態を示す。球センサ13の前方位置にセンサ防護部材14を備えている点は前記の実施の形態と変わらないが、本実施の形態では戻り球防止片12は発射レール2先端部又は取付部材4に固定してあり、その先端部を斜め上方に延ばすようにして設けてある。」

・記載事項5
「【0009】本実施の形態でも前記と同様に、戻り球は誘導レール3内を逆走して戻り球回収口10を飛び越えてきても、センサ防護部材14あるいは戻り球防止片12に衝突して勢いを失い、下方の戻り球回収口10に落下して下景品球受皿11へと回収されていく。」

・記載事項6
「【0012】
【発明の効果】本発明のパチンコ機は上記の説明から明らかなように、発射レール先端部の上方位置に設けた球センサの前方位置に、センサ防護部材及び戻り球防止片からなる戻り球防止装置を備えることにより、誘導レール内を逆走してきた戻り球はセンサ防護部材あるいは戻り球防止片に衝突し、戻り球回収口に落下して下景品球受皿へと回収されるので、戻り球が球センサに衝突して故障や破損を引き起こしたり、球センサが戻り球を検知して発射球数データに誤差が生じたりする問題がなくなる。さらに戻り球防止装置を構成するセンサ防護部材において、その前方部位に突起片を形成または円弧を形成することにより、勢いよく衝突してきた戻り球でも円滑に戻り球回収口に落下させることができる。本発明は以上のような理由から、戻り球による種々の問題を解決するパチンコ機を提供することを可能とし、その効果は著大である。」

以上の記載事項1?記載事項6及び図1?図5の記載によれば、引用例1には次の発明が記載されていると認められる。

「外側レール3Bと内側レール3Aとを備えた遊技盤6と、遊技盤6の遊技盤取付枠5の前面には、打球機構と、打球機構の打球杆1により打撃されたパチンコ球Pを遊技盤6の外側レール3Bと内側レール3Aとの間に向けて案内する発射レール2と、戻り球を回収する通過経路とを設け、外側レール3Bと内側レール3Aとを備えた遊技盤6と、外側レール3Bと発射レール2との間には外側レール3Bを逆行してくる戻り球を外側レール3Bから通過経路に誘導する戻り球回収口10が形成されており、戻り球を防止するための戻り球防止片12が発射レール2の先端部側に固定され、戻り球防止片12と外側レール3Bとの間に外側レール3Bを逆行してくる戻り球を通過させる戻り球回収口10が形成されるパチンコ機の戻り球防止装置であって、
戻り球防止片12は、ばね鋼の薄状片からなるパチンコ機の逆行防止装置。」(以下、「引用例1に記載された発明」という。)

(2)引用例2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-23111号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1
「【0012】【実施例】図1は、この発明の一実施例にかかるパチンコ遊戯機の外観を示す。このパチンコ遊戯機は、機体の前面に遊戯盤3,パチンコ球投入皿4,操作ハンドル5,パチンコ球払出口6,受け皿7などを備えた構造のものである。
【0013】前記遊戯盤3は外周部の球通路8と遊戯盤面9とから成り、遊戯盤面9には、ここでは図示しないが、複数の障害釘がそれぞれ設定された位置に配置され、さらに複数個の入賞口10が適宜位置に設けられている。また、遊戯盤面の中央位置には開閉ゲート11Aを有する特別入賞口11が、中央下部位置にはアウト玉を取り込むためのアウト口12が、中央上部位置には3つの可変表示器1a,1b,1cが、それぞれ設けられている。
【0014】前記パチンコ玉投入皿4はゲームに先立って複数のパチンコ玉を投入するためのものであり、上流端はパチンコ玉導出口4Aに、下流端はパチンコ玉の取込口4Bに、それぞれ連通する。操作ハンドル5は打撃部を作動させて前記取込口4Bより取り込まれたパチンコ玉を遊戯盤3上へ打ち出すためのもので、打ち出されたパチンコ玉がいずれか入賞口10または特別入賞口11に入ったとき、所定の個数のパチンコ玉が前記導出口4Aまたは払出口6より放出される。」

・記載事項2
「【0015】前記玉通路8は、前記打撃部により打ち出されたパチンコ玉を遊戯盤面9へ導くためのもので、その下部位置にパチンコ玉の返却通路13が連通させてある。図2は、玉通路8と返却通路13との連通部分を拡大して示してある。前記玉通路8には、返却通路13との連通部分の手前位置に、シャッター14が軸支されている。このシャッター14は開放端がストッパ14Aにて支持されて、平時は玉通路8を閉鎖し、パチンコ玉が打ち出されたときそのパチンコ玉がこれを押し開いて玉通路8を上昇する。」

・記載事項3
「【0016】また、シャッター14を通過して上昇したパチンコ玉が、途中で失速して玉通路8を逆戻りした時は、閉鎖したシャッター14に当たって返却通路13へと導かれる。」

以上の記載事項1?記載事項3及び図1?図12の記載によれば、引用例2には次の技術事項が記載されていると認められる。

「シャッター14の上面を打撃部側から玉通路8の外側に進むに従って、シャッター14が徐々に押し開かされて、シャッター14の先端が玉通路88の外側に連通するパチンコ遊戯機のシャッター14」(以下、「引用例2に記載された技術事項」という。)

3.対比
引用例1に記載された発明と本願発明を対比すると、引用例1に記載された発明の「外側レール3B」は本願発明の「外誘導レール」に相当している。以下同様に、「内側レール3A」は「内側誘導レール」に、「遊技盤6」は「遊技盤」に、「遊技盤取付枠5」は「受台」に、「打球機構」は「打球装置」に、「打球杆1」は「打球槌」に、「パチンコ球P」は「遊技球」に、「発射レール2」は「発射レール」に、「回収する」は「受け取る」に、「戻り球回収口10」は「隙間」および「スペース」に、「戻り球防止片12」は「逆行防止部材」に、「戻り球防止装置」は「逆行防止装置」にそれぞれ相当している。

そして、引用例1に記載された発明について、以下の(1)?(4)のことがいえる。

(1)実質的具備事項1
遊技盤は前枠に取り付けられ、前枠は遊技盤の装着部を有し、そして、前枠は外枠に蝶番を介して取り付けられるとともに、前枠の装着部に遊技盤を着脱自在に取り付けるようにすること、および前枠の装着部の下端に備えられる遊技盤6の遊技盤取付枠5の前面には、打球機構や発射レール等を有することは、引用例1の記載事項2の「【0006】・・・図1は本発明に係るパチンコ機の下部分であり、図2はその発射レール周辺部を示している。打球機構やレールの構造等については従来より周知のパチンコ機と同様であり、相違する点は特にない。・・・」なる記載に示されるように、パチンコ技術分野に周知慣用される技術にすぎず、単に明示していないに過ぎないと解されるから、引用例1に記載された発明の「外枠の一側に蝶番で蝶着した前枠に装着部を設け、装着部には外側レール3Bと内側レール3Aとを備えた遊技盤6が着脱自在に取付けられ、装着部の下端に備えられる遊技盤6の遊技盤取付枠5の前面には、打球機構と発射レール2と、戻り球を回収する通過経路」を有する構成を実質的に具備しているということができる。
そして、引用例1に記載された発明の「外側レール3B」「遊技盤6」「遊技盤取付枠5」「打球機構」は本願発明の「外誘導レール」「遊技盤」「受台」「打球装置」に相当していることは上記の3.対比の冒頭部で示したとおりである。
そうすると、引用例1に記載された発明は、「外枠の一側に蝶番で蝶着した前枠に装着部を設け、装着部には外誘導レールと内側誘導レールとを備えた遊技盤が着脱自在に取付けられ、装着部の下端に備えられる遊技盤の受台の前面には、打球装置と、打球装置の打球槌により打撃された遊技球を遊技盤の外誘導レールと内側誘導レールとの間に向けて案内する発射レールと、戻り球を受け取るファール球通路とを設け、外誘導レールと内側誘導レールとを備えた遊技盤が装着部に取付けられ」なる構成を実質的に具備しているということができる。

(2)実質的具備事項2
戻り球防止片12は、図3?5を参酌すると、防止片の本体と防止片の基部から構成されることは明らかである。
そして、引用例1に記載された発明の「戻り球防止片12」は、本願発明の「逆行防止部材」に相当していることは上記の3.対比の冒頭部で示したとおりである。
そうすると、引用例1に記載された発明の戻り球防止片12は、防止片本体と防止片基部から実質的に構成されていることは明らかである。

(3)実質的具備事項3
引用例1の記載事項3の「【0007】・・・遊技者の操作により打球機構が働いて打球杆1が往復回動し、パチンコ球Pはスプリング1Sに弾かれて発射レール2上から誘導レール3に向かって発射される。戻り球防止片12は、パチンコ球Pの発射方向への飛走力に対しては球の通過経路を開く方向に撓むので、パチンコ球Pは発射レール2から誘導レール3へと移動し、誘導レール3内を飛走して遊技盤面へと放出される。パチンコ球Pが戻り球となって誘導レール3上を逆走してきた場合、誘導レール3始端部から戻り球回収口10を飛び越えてきた戻り球は、センサ防護部材14あるいは戻り球防止片12に衝突する。このときの力で戻り球防止片12は戻り球の通過経路を閉じる方向に撓むので、衝突した戻り球は戻り球防止片12下方の戻り球回収口10に落下し、下景品球受皿11へ回収されていく。」なる記載および図1、図3並びに上記実質的具備事項1に示したように、打球杆1により打撃されたパチンコ球Pは、通常内側レール3Aと外側レール3Bの先端間に設けられた放出口から遊技盤の遊技領域に向かって打ち出されることは常識であることに基づけば、戻り球防止片12は、その上面に打球杆1により打撃されたパチンコ球Pを受けた時、パチンコ球Pがスムーズに通過経路を越えるように徐々に撓んで外側レール3Bに当接して戻り球回収口10を塞いでいるのであるから、戻り球防止片12の本体は外誘導レールに連通する長さに形成され、かつ、防止片本体は平坦面状に形成されるとともに、外側レール3Bの側に行くに従って外側レール3Bと内側レール3Aとの間において、放出口の側に向かうように上方にせり上がるように設けられていることは明らかである。

そして、引用例1に記載された発明の「戻り球防止片12」「打球杆1」「パチンコ球P」「通過経路」「外誘導レール」「内側誘導レール」「通過経路」「戻り球回収口10」は、本願発明の「逆行防止部材」「打球槌」「遊技球」「ファール球通路」「外側レール3B」「内側レール3A」「隙間」もしくは「スペース」に相当していることは上記の3.対比の冒頭部で示したとおりであり、戻り球防止片12は防止片の本体と防止片の基部から実質的に構成されることは上記実質的具備事項2において示したとおりである。
そうすると、引用例1に記載された発明は、「逆行防止部材の長さが、防止片本体を遊技球が通過した時に防止片本体の先端部が外誘導レールと連通する長さに形成され、防止片本体は平坦状に形成されるとともに、外誘導レールの側に行くに従って外誘導レールと内側誘導レールとの間において、放出口の側に向かうように上方にせり上がるように設けられている」なる構成を実質的に具備しているということができる。

(4)実質的具備事項4
引用例1の記載事項3の「【0007】・・・遊技者の操作により打球機構が働いて打球杆1が往復回動し、パチンコ球Pはスプリング1Sに弾かれて発射レール2上から誘導レール3に向かって発射される。戻り球防止片12は、パチンコ球Pの発射方向への飛走力に対しては球の通過経路を開く方向に撓むので、パチンコ球Pは発射レール2から誘導レール3へと移動し、誘導レール3内を飛走して遊技盤面へと放出される。パチンコ球Pが戻り球となって誘導レール3上を逆走してきた場合、誘導レール3始端部から戻り球回収口10を飛び越えてきた戻り球は、センサ防護部材14あるいは戻り球防止片12に衝突する。このときの力で戻り球防止片12は戻り球の通過経路を閉じる方向に撓むので、衝突した戻り球は戻り球防止片12下方の戻り球回収口10に落下し、下景品球受皿11へ回収されていく。」なる記載に基づけば、戻り球防止片12は、その上面にその上面に打球杆1により打撃されたパチンコ球Pを受けた時、パチンコ球Pがスムースに通過経路を越えるように徐々に撓んで外側レール3Bに当接して戻り球回収口10を塞いでおり、かつ、パチンコ球Pが戻り球となって逆走してきた時に戻り防止片に衝突するのであるから、パチンコ球Pの通過後に、戻り球防止片12の撓み力言い換えると弾性力によりパチンコ球Pが通過する前の状態に戻ると解されるから、引用例1に記載された発明の戻り球防止片12は、外側レール3Bに連通するために要する必要最小限の弾性力を有しているということができる。
そして、引用例1に記載された発明の「戻り球防止片12」「打球杆1」「パチンコ球P」「通過経路」「外側レール3B」は本願発明の「逆行防止部材」「打球槌」「遊技球」「ファール球通路」「外誘導レール」に相当していることは上記の3.対比の冒頭部で示したとおりである。
そうすると、引用例1に記載された発明は、「逆行防止部材の弾性力は、その上面に打球槌により打撃された遊技球を受けた時、ファール球通路を越える打撃力で外誘導レールに当接するために要する必要最小限の弾性力に設定されている」なる構成を実質的に具備しているということができる。

以上の実質的具備事項1?4を勘案すれば、本願発明と引用例1に記載された発明は、

「外枠の一側に蝶番で蝶着した前枠に装着部を設け、装着部には外誘導レールと内側誘導レールとを備えた遊技盤が着脱自在に取付けられ、装着部の下端に備えられる遊技盤の受台の前面には、打球装置と、打球装置の打球槌により打撃された遊技球を遊技盤の外誘導レールと内側誘導レールとの間に向けて案内する発射レールと、戻り球を受け取るファール球通路とを設け、外誘導レールと内側誘導レールとを備えた遊技盤が装着部に取付けられ、外誘導レールと発射レールとの間には外誘導レールを逆行してくる戻り球を外誘導レールからファール球通路に誘導する隙間が形成されており、戻り球を防止するための防止片本体と防止片基部から構成される逆行防止部材が発射レールの先端部側に固定され、防止片本体と外誘導レールとの間に外誘導レールを逆行してくる戻り球を通過させるスペースが形成される一方、打球装置から発射された遊技球が発射レールから防止片本体に達すると、遊技球が防止片本体の上面を発射レールの側から外誘導レールの側に進むに従って、防止片本体が徐々に撓むようにしたパチンコ機の逆行防止装置であって、
防止片本体は、ばね鋼の薄状片からなるとともに、防止片本体は平坦面状に形成され、外誘導レールの側に行くに従って外誘導レールと内側誘導レールとの間において、放出口の側に向かうように上方にせり上がるように設けられており、
さらに、逆行防止部材の弾性力は、その上面に打球槌により打撃された遊技球を受けた時、ファール球通路を越える打撃力で外誘導レールに連通するために要する必要最小限の弾性力に設定されていることを特徴とするパチンコ機の逆行防止装置。」の点で一致し、以下の点で相違していると認められる。

<相違点1>
逆行防止部材が、本願発明においては、全体がU字状に曲げられるとともに、該U字状部分の上部及び底部に、抜け止め防止のための係止部を備えた防止片基部が形成され、該防止片基部が前記発射レールの先端の貫通している取付溝に差し込まれるものであるのに対して、引用例1に記載された発明においてはそのような構成を有していない点。

<相違点2>
遊技球が防止片本体の上面を発射レールの側から外誘導レールの側に進むに従って、防止片本体が徐々に撓む際に、本願発明においては防止片本体の先端が外誘導レールに当接するものであるのに対して、引用例1に記載された発明は、防止片本体が外誘導レールに連通するものであり、当接するか否か明瞭でない点。

<相違点3>
弾性を有する薄状片の防止片本体の材料が、本願発明においてはステンレス又は合成樹脂であるのに対して、引用例1に記載された発明においてはばね鋼である点。

4.判断
上記相違点について、検討する。
<相違点1について>
一般的に、ハウジング等の基体の係合穴、孔、開口もしくは溝等の取付溝に何らかの装着部材を着脱自在に取り付けること、取り付ける対象となる装着部材の基部相当部分をU字状にした上、抜け止め防止のためにそのU字状部に係合部又は被係合部を設けることは、周知慣用技術に過ぎない(必要であれば、実願平4-17981号(実開平5-69407号)のCD-ROM、特開平6-278548号公報、特開平6-52919号公報、実願平5-58303号(実開平7-22823号)のCD-ROM、特開平7-257290号公報等参照されたい)。
そうすると、上記周知慣用技術を参酌して、引用例1に記載された発明の逆行防止部材の基部の全体をU字状に曲げたものとするとともに、U字状部分の上部及び底部に、抜け止め防止のための係止部を備えた防止片基部を形成し、防止片基部が発射レールの先端の貫通している取付溝に差し込まれるようにすることは、当業者が容易になし得る程度のことということができる。

<相違点2について>
引用例2の記載事項2の「【0015】前記玉通路8は、前記打撃部により打ち出されたパチンコ玉を遊戯盤面9へ導くためのもので、その下部位置にパチンコ玉の返却通路13が連通させてある。図2は、玉通路8と返却通路13との連通部分を拡大して示してある。・・・このシャッター14は開放端がストッパ14Aにて支持されて、平時は玉通路8を閉鎖し、パチンコ玉が打ち出されたときそのパチンコ玉がこれを押し開いて玉通路8を上昇する。」なる記載に基づけば、引用例2に記載された技術事項のシャッター14と返却通路13は、パチンコ玉を玉通路8に導くために、返却通路13を図2の破線で示すように、シャッター14は返却通路13を連通して塞ぐ関係にあるから、シャッター14の開放端が玉通路8の外側の部分の返却通路側端の返却通路部分の上端部分に当接して、返却通路13をシャッター14で塞いでいるものと解される。
そして、パチンコ機において打撃部側から発射された遊技球は発射レールの側から放出口に向かって発射レールの側から玉通路の外側に向かって進むことは例を示すまでもなくパチンコ機における常識であるから、引用例2に記載された技術事項の「打撃部側」「玉通路8の外側」は、それらの機能から見て、本願発明の「発射レールの側」「外誘導レールの側」に相当しているということができる。
そして、引用例2に記載された技術事項「シャッター14」「パチンコ玉」「パチンコ遊戯機」は、それらの機能から見て、本願発明の「防止片本体」および「逆行防止装置の戻り球防止片」「遊技球」「パチンコ遊技機」にそれぞれ相当しているということができる。
そうすると、引用例2に記載された技術事項である「シャッター14の上面を打撃部側から玉通路8の外側に進むに従って、シャッター14が徐々に押し開かされて、シャッター14の先端が玉通路88の外側に連通するパチンコ遊戯機のシャッター14」は、「遊技球が防止片本体の上面を発射レールの側から外誘導レールの側に進むに従って、防止片本体が徐々に撓む際に、防止片本体の先端が外誘導レールに当接するパチンコ機の逆行防止装置の戻り球防止片」と言い換えることができる(以下、「引用例2に記載された発明」という。)。
また、引用例1に記載された発明と引用例2に記載された発明は、パチンコ遊技機技術分野における戻り遊技球防止技術において互いに関連するものであるから、相互に利用することに格別の困難性を見出し得ない。
そうすると、引用例2に記載された発明のシャッター片の開放端が玉通路の外側に当接することを参酌して、引用例1に記載された発明の戻り防止片12の先端が連通することに代えて、外誘導レールに当接するようにすること、すなわち上記相違点2に係る構成となすことは、当業者が容易になし得る程度のことということができる。

<相違点3について>
引用例1の記載事項2の「【0006】・・・戻り球防止片12は例えばばね鋼のような可撓性のある材質からなり、その先端を斜め下方に延ばすようにして設けてある。」なる記載に基づけば、戻り球防止片の材料として、ばね鋼は一例に過ぎず、可撓性のある材質であればどのような材質でもよいことを示していること、および、合成樹脂やステンレスを始めとする材質は、可撓性を有するとともに弾性を有する材質としてよく知られ使用されているものにすぎない(以下、「周知技術」という。例示するまでもないがもし必要であれば、特開平11-276490号公報、特開2000-116788号公報、特開平11-57598号公報等参照されたい)。
そうすると、上記周知技術を参酌すれば、引用例1に記載された発明のばね鋼に代えて、弾性を有する薄状片の防止片本体をステンレス又は合成樹脂とすること、すなわち相違点3に係る構成となすことは当業者が容易になし得る程度のことということができる。

5.むすび
上記のとおりであるので、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明および周知慣用技術並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであり、本願発明によって奏する効果も、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明および周知慣用技術並びに周知技術に基づいて、普通に予測できる範囲内のものであって格別のものがあるとは認められないから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-17 
結審通知日 2007-05-23 
審決日 2007-06-06 
出願番号 特願2000-158680(P2000-158680)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 仁之▲吉▼川 康史  
特許庁審判長 三原 裕三
特許庁審判官 土屋 保光
林 晴男
発明の名称 パチンコ機の逆行防止装置  
代理人 中村 壽夫  
代理人 宮崎 嘉夫  
代理人 小野塚 薫  
代理人 萼 経夫  

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