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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1161333
審判番号 不服2004-21223  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-10-14 
確定日 2007-07-19 
事件の表示 特願2001-175453「液晶表示装置の駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月19日出願公開、特開2002-116743〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続きの経緯
本願は、平成13年6月11日(優先権主張;平成12年8月3日)の出願であって、平成16年9月6日付け(発送日;同月14日)で拒絶査定がなされ、これに対して、平成16年10月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月11日付けで手続補正がなされたものである。

第2.平成16年11月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年11月11日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正の内容
本件手続補正は、補正前の特許請求の範囲、
「 【請求項1】 液晶表示装置の各画素に書き込むべき画像データを、1垂直同期期間中に複数回上記液晶表示装置に供給して、液晶表示装置を駆動する液晶表示装置の駆動方法であって、1垂直同期期間中に複数回供給される画像データの総てを、前垂直同期期間における画像信号のデータ値と現垂直同期期間における画像信号のデータ値とに基づいて得ることを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項2】 液晶表示装置の各画素に書き込むべき画像データを、1垂直同期期間中に複数回上記液晶表示装置に供給して、液晶表示装置を駆動する液晶表示装置の駆動方法であって、上記1垂直同期期間中に複数回供給される画像データのうち少なくとも1回目に供給される画像データを、前垂直同期期間における画像信号のデータ値と現垂直同期期間における画像信号のデータ値とに基づいて得ることを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項3】 請求項2に記載の液晶表示装置の駆動方法において、上記1垂直同期期間中に複数回供給される画像データのうち2回目以降に供給される画像データを、上記現垂直同期期間における画像信号のデータ値と同じ値を有する画像データとすることを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項4】 請求項2に記載の液晶表示装置の駆動方法において、上記1垂直同期期間中に複数回供給される画像データのうち、2回目以降に供給される画像データのうちの少なくとも1回の画像データを、上記前垂直同期期間における画像信号のデータ値と現垂直同期期間における画像信号のデータ値との間の所定値を有する画像データとすることを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項5】 請求項1に記載の液晶表示装置の駆動方法において、前垂直同期期間における画像信号のデータ値よりも現垂直同期期間における画像信号のデータ値の方が大きい場合には上記現垂直同期期間における画像信号のデータ値よりも大きい値の画像データを供給することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項6】 請求項2から4のいずれかに記載の液晶表示装置の駆動方法において、前垂直同期期間における画像信号のデータ値よりも現垂直同期期間における画像信号のデータ値の方が大きい場合には上記現垂直同期期間における画像信号のデータ値よりも大きい値の画像データを上記1回目に供給することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項7】 請求項2から4および6のいずれかに記載の液晶表示装置の駆動方法において、上記1垂直同期期間に3回以上画像データを供給することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項8】 請求項2から4、6および7のいずれかに記載の液晶表示装置の駆動方法において、
上記1垂直同期期間中に複数回供給される画像データのうち少なくとも1つは、上記現垂直同期期間における画像信号のデータ値よりも小さい値を有することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項9】 請求項8に記載の液晶表示装置の駆動方法において、前記複数回供給される画像データのうち、最後に供給される画像データが上記現垂直同期期間における画像信号のデータ値よりも小さい値を有することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項10】 請求項1から9のいずれかに記載の液晶表示装置の駆動方法において、前垂直同期期間における画像信号のデータ値よりも現垂直同期期間における画像信号のデータ値の方が大きい場合には、上記1垂直同期期間内に、光透過率を現垂直同期期間の画像信号のデータ値に対応する光透過率よりも一旦大きくすることを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項11】 請求項1から10のいずれかに記載の液晶表示装置の駆動方法において、現垂直同期期間における画像信号のデータ値が前垂直同期期間における画像信号のデータ値と等しい場合には、前記複数回供給される画像データのうち少なくとも1回目に供給される画像データが上記現垂直同期期間における画像信号のデータ値と等しい値を有することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項12】 請求項1から11のいずれかに記載の駆動方法によって駆動される液晶表示装置であって、2以上の垂直同期期間の画像信号のデータ値を記憶するメモリを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項13】 請求項1から11のいずれかに記載の駆動方法によって駆動される液晶表示装置であって、各垂直同期期間の画像信号のデータ値を1垂直同期期間を超える時間に亘って記憶するメモリを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項14】 請求項13に記載の液晶表示装置であって、各垂直同期期間の画像信号のデータ値を1垂直同期期間の1.5倍の時間に亘って記憶するメモリを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項15】 請求項13に記載の液晶表示装置であって、各垂直同期期間の画像信号のデータ値を1垂直同期期間の2倍の時間に亘って記憶するメモリを有することを特徴とする液晶表示装置。」
を、
「 【請求項1】 1垂直同期期間ごとにデータ値が変化し得る画像信号に基づいて表示を行う液晶表示装置の駆動方法であって、
液晶表示装置の各画素に書き込むべき画像データを、1垂直同期期間中に複数回各画素に供給することによって、各画素のステップ応答特性を改善する駆動方法において、
1垂直同期期間中に各画素に複数回供給される画像データの総てを、前垂直同期期間における画像信号のデータ値と現垂直同期期間における画像信号のデータ値とに基づいて得ることを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項2】 1垂直同期期間ごとにデータ値が変化し得る画像信号に基づいて表示を行う液晶表示装置の駆動方法であって、
液晶表示装置の各画素に書き込むべき画像データを、1垂直同期期間中に複数回各画素に供給することによって、各画素のステップ応答特性を改善する液晶表示装置の駆動方法であって、
上記1垂直同期期間中に各画素に複数回供給される画像データのうち少なくとも1回目に供給される画像データを、前垂直同期期間における画像信号のデータ値と現垂直同期期間における画像信号のデータ値とに基づいて得ることを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項3】 請求項2に記載の液晶表示装置の駆動方法において、上記1垂直同期期間中に複数回供給される画像データのうち2回目以降に供給される画像データを、上記現垂直同期期間における画像信号のデータ値と同じ値を有する画像データとすることを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項4】 請求項2に記載の液晶表示装置の駆動方法において、上記1垂直同期期間中に複数回供給される画像データのうち、2回目以降に供給される画像データのうちの少なくとも1回の画像データを、上記前垂直同期期間における画像信号のデータ値と現垂直同期期間における画像信号のデータ値との間の所定値を有する画像データとすることを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項5】 請求項1に記載の液晶表示装置の駆動方法において、前垂直同期期間における画像信号のデータ値よりも現垂直同期期間における画像信号のデータ値の方が大きい場合には上記現垂直同期期間における画像信号のデータ値よりも大きい値の画像データを供給することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項6】 請求項2から4のいずれかに記載の液晶表示装置の駆動方法において、前垂直同期期間における画像信号のデータ値よりも現垂直同期期間における画像信号のデータ値の方が大きい場合には上記現垂直同期期間における画像信号のデータ値よりも大きい値の画像データを上記1回目に供給することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項7】 請求項2から4および6のいずれかに記載の液晶表示装置の駆動方法において、上記1垂直同期期間に3回以上画像データを供給することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項8】 請求項2から4、6および7のいずれかに記載の液晶表示装置の駆動方法において、
上記1垂直同期期間中に複数回供給される画像データのうち少なくとも1つは、上記現垂直同期期間における画像信号のデータ値よりも小さい値を有することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項9】 請求項8に記載の液晶表示装置の駆動方法において、前記複数回供給される画像データのうち、最後に供給される画像データが上記現垂直同期期間における画像信号のデータ値よりも小さい値を有することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項10】 請求項1から9のいずれかに記載の液晶表示装置の駆動方法において、前垂直同期期間における画像信号のデータ値よりも現垂直同期期間における画像信号のデータ値の方が大きい場合には、上記1垂直同期期間内に、光透過率を現垂直同期期間の画像信号のデータ値に対応する光透過率よりも一旦大きくすることを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項11】 請求項1から10のいずれかに記載の液晶表示装置の駆動方法において、現垂直同期期間における画像信号のデータ値が前垂直同期期間における画像信号のデータ値と等しい場合には、前記複数回供給される画像データのうち少なくとも1回目に供給される画像データが上記現垂直同期期間における画像信号のデータ値と等しい値を有することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。
【請求項12】 請求項1から11のいずれかに記載の駆動方法によって駆動される液晶表示装置であって、2以上の垂直同期期間の画像信号のデータ値を記憶するメモリを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項13】 請求項1から11のいずれかに記載の駆動方法によって駆動される液晶表示装置であって、各垂直同期期間の画像信号のデータ値を1垂直同期期間を超える時間に亘って記憶するメモリを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項14】 請求項13に記載の液晶表示装置であって、各垂直同期期間の画像信号のデータ値を1垂直同期期間の1.5倍の時間に亘って記憶するメモリを有することを特徴とする液晶表示装置。
【請求項15】 請求項13に記載の液晶表示装置であって、各垂直同期期間の画像信号のデータ値を1垂直同期期間の2倍の時間に亘って記憶するメモリを有することを特徴とする液晶表示装置。」
と補正する内容を含むものである。
なお、アンダーラインは、補正箇所を示すために請求人が付したものである。

2.補正の目的の適合性
上記手続補正は、補正前の請求項1及び2に記載された発明を特定するために必要な事項である「駆動方法」について、「1垂直同期期間ごとにデータ値が変化し得る画像信号に基づいて表示を行う液晶表示装置の駆動方法」であるとの限定、及び「各画素のステップ応答特性を改善する」との限定を付加して補正後の請求項1及び2としたものであり、また、請求項1又は2を直接的又は間接的に引用する補正後の請求項3乃至15についても、同様の限定を付加したものである。
したがって、上記手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するものである。

3.独立特許要件
そこで、本件手続補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下検討する。

3-1.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平3-174186号公報(以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
1a.「(4)第1のフィールドで任意の画素に印加する第1の電圧の絶対値V1と前記第1のフィールド以後の第2のフィールドで前記画素に印加する第2の電圧の絶対値V2にV1<V2なる関係が成り立ち、かつ前記第2の電圧の絶対値V2が所定値より小さいまたはV1とV2との電位差が所定閾値以上の条件のうち少なくとも一方の条件を満足する時に、前記第1のフィールド以後のフィールドで前記第2の電圧の絶対値V2よりも大きい絶対値V3なる第3の電圧を前記画素に印加することを特徴とする液晶パネルの駆動方法。
(5)第1のフィールドで任意の画素に印加する第1の電圧の絶対値V1と前記第1のフィールド以後の第2のフィールドで前記画素に印加する第2の電圧の絶対値V2にV1>V2の関係が成り立ち、かつV1-V2が所定閾値以下の時に、前記第1のフィールド以後の第3のフィールドで前記第2の電圧の絶対値V2よりも小さい絶対値V3なる第3の電圧を前記画素に印加することを特徴とする液晶パネルの駆動方法。
(6)第1のフィールドで任意の画素に印加する絶対値V1なる第1の電圧値と前記第1のフィールド以後の第2のフィールドで前記画素に印加する絶対値V2なる第2の電圧値の間にV1<V2なる関係が成り立つ時に、前記第1のフィールド以後の第3のフィールドでV2よりも大きい電圧を印加し、かつ前記第3のフィールド直後のフィールドでV2よりも小さい電圧を前記画素に印加することを特徴とする液晶パネルの駆動方法。」(「特許請求の範囲」)

1b.「すべての画素に電圧が印加され再び次の電圧が印加されるまでの周期を1フレームと呼ぶ。またlフレームは2フイールドで構成される。通常、テレビ画像の場合l/30秒で一画面が書きかわるため1/30秒が1フレ一ム時間である。また倍速で各画素に電圧を書き込む場合は1/60秒が1フレ一ム時間となる。
本明細書では倍速で各画素に電圧を書き込む駆動方法を例にあげて説明する。つまり1フレームを1/60秒とし、1フィールド=1フレームとして説明する。」(3ページ左上欄15行?右上欄5行)

1c.「第23図は従来の液晶パネルの駆動方法の説明図である。第23図において、Fx(ただし、xは整数)はフィールド番号、Dx(ただし、xは整数)はソース信号線に印加する電圧に相当するデータ(以後、電圧データと呼ぶ)、Vx(ただし、xは整数)は前記電圧データにより作られ、ソースドライブIC2102からソース信号線に出力される電圧、Tx(ただし、xは整数)は画素に前記電圧が印加されることにより液晶の透過率が変化し、前記電圧に対応する状態になったときの光の透過量である。本明細書では説明を容易にするために添字xが大きいとフィールドFxは先のフィールドであることを示し、また電圧データDxは値が大きいことを、印加電圧Vxは電圧が高いことを、透過量Txは透過量が大きいことを、つまり液晶の透過率が高いことを示すものとする。ただし液晶への印加電圧と透過量との関係は非線形特性を示すため透過率Txの添字の大きさと実際の透過量とは比例しない。なお、第23図では印加電圧Vxは、理解を容易にするために絶対値であらわしたが、液晶は交流駆動する必要があるため、第24図で示すように1フィールドごとにコモン電圧を中心に正および負極性の電圧を印加している。以上のことは以下の図面に対しても同様である。以下、1つの画素に注目して説明する。
ソースドライブIC2102は、入力されるアナログ信号をサンプルホールドして電圧データDxを作成する。また、前記ICは前記電圧データDxを一走査線線分保存し、ゲートドライブIC2103と同期をとりソース信号線に印加する電圧Vxを出力する。今、フィールドで注目している画素(以後、単に画素と呼ぶ)への電圧データがD2からD6に変化したとする。するとソースドライブIC2102は電圧V6をソース信号線に出力し、前記電圧はゲートドライブIC2103と同期がとられ画素に入力される。しかしながら、フィールドF3では、前記電圧V6が印加されても前記電圧V6に相当する所望値の透過量T6にならず、通常3?4フィールド以上遅れて所望値のT6になる。これは液晶の立ち上がり速度つまり電圧を印加してから所望値の透過量になるまでの応答時間が遅いためである。なお、液晶の立ち上がりとはTN液晶の場合、液晶に電圧が印加され液晶分子のネジレがほどけた状態になることを、逆に液晶の立ち下がりとはネジレがもとにもどる状態となることを言う。この液晶のネジレの状態が光の透過量に関係し、本明細書では印加電圧が高くなるほど液晶のネジレがほどけ透過率が高くなるものとする。以上のように従来の液晶パネルの駆動方法ではビデオ信号の輝度信号に相当する印加電圧Vxをそのまま画素に印加していた。
発明が解決しようとする課題
しかしながら、従来の液晶制御回路およびその駆動方法では、液晶の立ち上がり速度が遅い、つまり電圧を印加してから所定の透過量になる時間が3?4フィールド以上要するため画像の尾ひきがあらわれる。この画像の尾ひきとは画素に印加している電圧に対して液晶の透過率の変化が追従しないために表示画素が変化した際、映像の輪郭部分などに、前フィールドの画像が影のように表示として現われる現象をいう。この現象は一定以上の速さで映像の動きがあるとき出現し、画像品位を著しく悪化させる。
本発明は、以上の課題を解決するためになされたもので、大画面、高解像度の画像表示に対応できる液晶制御回路および液晶パネルの駆動方法を提供するものである。」(3ページ左下欄16行?4ページ左下欄4行)

1d.「以下、第1図,第2図および第3図を参照しながら第1の本発明の液晶制御回路について説明する。まずビデオ信号はゲインコントロールアンプによりA/D変換の入力信号範囲に合うように利得調整が行なわれる。次に前記信号はLPF102を通り不必要な高周波成分を除去されたのちA/D変換器103でA/D変換される。A/D変換された液晶に印加する電圧に相当するデータはフィールドメモリ切り換え回路201によりフィールドごとに3つのフィールドメモリに順次格納される。つまり第1番目のフィールドのデータはフィールドメモリ205に、第2番目のフィールドのデータはフィールドメモリ206に、第3番目のフィールドのデータはフィールドメモリ207に、第4番目のフィールドのデータはフィールドメモリ205に、第5番目のフィールドのデータはフィールドメモリ206に順次格納されていく。ここでは簡単のために、第1番目のフィールドのデータがフィールドメモリ205に、第2番目のフィールドのデータがフィールドメモリ206に、第3番目のフィールドのデータがフィールドメモリ207に格納されており、かつ次のD/A変換器107に送られるデータの順はフィールドメモリ205,フィールドメモリ206,フィールドメモリ207の順であるとして説明する。
今、D/A変換器へはフィールドメモリ205のデータが転送されている。またA/D変換器203はフィールドメモリ207にデータを書きこんでいる。なお、フィールドメモリ205のデータの内容はすでに補正されているものとする。同時に演算器208はフィールドメモリ切り換え回路202と203によりフィールドメモリ205と206とに接続されており、前記メモリの同一画素に印加する電圧に相当するデータを比較,演算する。前記演算結果が所定条件を満足するとき、前記画素のフィールドメモリ上のアドレス,データなどをデータ補正器209に転送する。データ補正器209はデータテーブル210を参照し、補正データを求めて、前記補正データをフィールド206上の前記画素に印加するデータが格納されたアドレスに書きこむ。この時、前記データには補正したことを示す情報が記録される。具体的にはデータの所定ビットをONにする。この動作を順次フィールドメモリのデータに対して行なう。また前記1つのフィールドに対する動作は、フィールドメモリ205のデータの転送が完了する時間以内に終了する。したがって、フィールドメモリ205の次にD/A変換器107には補正されたフィールドメモリ206のデータが転送することができる。
次にフィールドメモリ206のデータが転送されている時、演算器208はフィールドメモリ切り換え回路203,204によりフィールドメモリ206と207とに接続されており、前記メモリの同一画素に印加する電圧に相当するデータを比較,演算する。また、データ補正器209は、フィールドメモリ207のデータの補正を行なっている。同時にフィールドメモリ205には順次A/D変換器103でデジタル化されたデータが格納される。以上の動作を順次行なうことにより補正されたデータがD/A変換器107に転送され、D/A変換器107でアナログ信号となった信号はローパスフィルタ108で不要な高周波成分を除去された後、位相分割回路109に転送される。」(6ページ左下欄10行?7ページ右上欄14行)

1e.「以下、図面を参照しながら第1の本発明の液晶パネルの駆動方法の一実施例について説明する。第4図は第1の本発明の液晶パネルの駆動方法の説明図である。第4図では補正前の電圧データがフィールド番号F4でD1からD5に変化している場合を示している。なお、電圧データD1によりソースドライブIC112よりソース信号線に出力される電圧をV1また前記電圧V1の印加により得られる液晶の透過量をT1とする。なお、添字の大きさは説明を容易にするために付加したものであり、電圧などの物理的大きさを定量的にあらわすものではない。このことは以下の説明でも同様である。同じく電圧データD1(当審注;D5の誤記と認められる。)により出力される電圧をV5、透過量をT5とする。
第4図で示すように電圧V1,V5で示す電圧が比較的小さく、つまりコモン電圧に近く、かつV5-V1>0なる関係が成り立つ時は液晶の立ち上がり速度が遅く所定の透過量まで変化するのに長時間を要する。たとえば一例としてTN液晶を反射モードで用い、かつ印加電圧を液晶が光を透過させない最小電圧値(以後、黒レベル電圧と呼ぶ)が2.0V、液晶が最大量の光を透過させる最大の電圧値(以後、白レベル電圧と呼ぶ)が3.5Vの液晶パネルにおいて、印加電圧V1を2.0V、変化した電圧V5を2.5Vとすると所定の透過量になる時間は約70?100msecである。したがって、応答に要する時間は2フィールド以上となり画像の尾ひきが発生する。この応答時間はV5が大きくなるほど小さくなり、2フィールド内の33msec以内に応答するようになる。
このように電圧V5が所定値より小さい時は電圧V5を印加するフィールドF4で電圧V5よりも高い電圧が印加されるように電圧データを補正する。具体的には液晶制御回路によりフィールドF3とF4のデータを比較したとき当該画素の電圧変化量がわかるため、データ補正回路209によりフィールドメモリF4のデータをD5からD7に補正する。その時のデータの状態を第4図の補正電圧データの欄に示す。
ソースドライブIC112はフィールド番号F4で前記補正電圧データD7によりソース信号線にV7なる電圧を印加する。したがって液晶の立ち上がり特性は改善され、F4で示す1フィールド内で所定の透過量T5が得られる。・・・前述の液晶パネルの場合、たとえば電圧V7として3.0?3.5Vを印加することにより20?30msecに応答時間を改善できる。」(7ページ右上欄16行?8ページ左上欄10行)

1f.「以下、図面を参照しながら第1の本発明の液晶パネルの駆動方法の第2の実施例について説明する。第7図(a),(b),(c)は第1の本発明の液晶パネルの駆動方法の第2の実施例の説明図である。第7図(a)ではフィールド番号F3で電圧データがD10からD15に、第7図(b)では第7図(a)と同様にフィールド番号F3で電圧データがD5から第7図(a)と同様にD15に変化している(当審注;第7図(a)に関する説明と図面の第7図(a)の記載との間にはフィールド番号にずれが認められる。)。しかし、液晶の透過量は第7図(a)の場合はフィールド番号F4で所定値の透過量のT15になっているが、第7図(b)ではフィールド番号F4内の時間では所定値の透過量T15となっていない。これは液晶の応答性は目標透過量が同一でも、現在印加されている電圧と前記目標透過量になるための印加電圧の電圧との電位差により変化に要する時間が異なるためである。たとえば、前述の液晶パネルなどの仕様では、印加電圧が2Vから3Vに変化したときには所定の透過量になるまで40?50msecを要するが、2.5Vから3Vに変化するときは20?30msecで応答する。そこで、第1の本発明の液晶パネルの駆動方法の第2の実施例では第7図(c)で示すように、データテーブルなどから補正データD17を求め、フィールド番号F3のデータをD15からD17に補正する。このように現在画素に印加されている電圧と次に印加する電圧の電位差が所定閾値以上の時は、データの補正を行なう。第7図(c)の場合は、印加電圧V15が印加されるフィールドで、画素に前記電圧よりも高い印加電圧V17を印加することにより液晶の応答時間が改善され、フィールド番号F4で所定値の透過量T15が得られる。なお、前記第1の本発明の液晶パネルの駆動方法の第1の実施例と第2の実施例の液晶パネルの駆動方法を組みあわせる、つまり現在画素に印加されている第1の電圧と次に印加する第2の電圧の電位差および第2の電圧の大きさにより、補正データを作成することにより、更に最適な液晶パネルの駆動方法が行なわれることは言うまでもない。」(8ページ右上欄13行?右下欄10行)

1g.「以下、図面を参照しながら第2の本発明の液晶パネルの駆動方法の一実施例について説明する。第8図(a),(b)は第2の本発明の液晶パネルの駆動方法の説明図である。第8図(a)ではフィールド番号F4で電圧データがV8からV4に変化している。しかし、液晶の透過量はフィールド番号F4内で所定値の透過量にならない。これは液晶の立ちさがり時の応答性は現在画素に印加されている電圧と次に印加される電圧との電位差に関係するためである。たとえば、前述の液晶パネルなどの仕様では、印加電圧が3.5Vから2.0Vに変化する時には所定の透過量になるまで30?40msecの時間を要するが、印加電圧が3.5Vから0Vに変化させた場合10?20msecで応答する。そこで、第2の本発明の液晶パネルの駆動方法では第8図(b)で示すように、データテーブルなどから電圧データD4より小さい補正データD1を求め、フィールド番号F3のデータをD8からD1に補正する。したがってフィールド番号F3では、フィールド番号F4で印加されるV4よりも小さい電圧V1が画素に印加されることになり、液晶の立ち下がり特性が改善される。前記補正データつまり補正印加電圧は、液晶の立ち下がり時の応答時間は変化する電圧の大きさにおよそ比例することにより求められる。なお、前記第2の本発明と第1の本発明とを組みあわせることにより一層最適な液晶パネルの駆動方法が行えることは言うまでもない。また、本発明の実施例においては1フィールド内だけのデータを補正するとしたが、これに限定するものではなく、たとえば第9図に示すように、液晶の特性および必要画像表示状態を考慮して複数のフィールドにわたりデータを補正してもよい。」(8ページ右下欄11行?9ページ右上欄3行)

1h.「以下、図面を参照しながら第3の本発明の液晶パネルの駆動方法の一実施例について説明する。第11図は、第3の本発明の液晶パネルの駆動方法の説明図である。第11図では補正前の電圧データがフレーム番号F3でD2からD6に変化している場合を示している。なお、電圧データD2によりソースドライブIC1016よりソース信号線に出力される電圧をV2また前記電圧V1の印加により得られる液晶の透過量をT2とする。同じく電圧データD6により出力される電圧をV6、前記電圧による定常的な透過量をT6とする。第11図で示すように電圧V2,V5で示す電圧が比較的小さく、つまり、コモン電圧に近く、かつV6-V2>0なる関係が成り立つ時は液晶の立ちあがり速度が遅く所定の透過量まで変化するのに長時間を要する。この応答時間はV6が大きくなるほど小さくなり、2フィールド内の1/30秒以内で応答するようになる。
そこで本発明の液晶の駆動方法では本発明の液晶制御回路を用い、フィールド番号F2のフィールドメモリの電圧データとフィールド番号F3のフィールドメモリの電圧データを順次比較し、たとえば、第11図で示すようにフィールド番号F3で画素の電圧データがD2からD6に変化しており、立ち上がり時間が遅いと演算器1008が判定した場合はデータ補正器1009に信号を送る。データ補正器1009は前記信号にもとづきフィールド番号F3とF4のフィールドメモリの前記画素の電圧データを補正する。この場合、フィールド番号F3の電圧データは前記電圧データD6よりも大きく、フィールド番号F4の電圧は前記電圧データD6よりも小さく補正される。なお、前記補正データはあらかじめ実験などにより定められている。
以上の処理によって、電圧データは第11図の補正電圧データ欄のようになる。前記データは順次D/A変換され、ソースドライブIC1016に送られ、前記ICにより第11図の印加電圧が画素に印加される。まずフィールド番号F3で電圧V8が印加され、液晶は急激に立ち上がり、1フィールド時間内で定常透過量T8になる。つぎにフィールド番号F4で電圧V4が印加され、液晶は立ち下がり1フィールド時間内で定常透過量T4になる。さらにフィールド番号F5で目標の電圧V6が印加されることにより、目標透過量T6が得られる。
以上の印加電圧V8およびV4の大きさは第11図の斜線で示すAの面積とBの面積が実効的に等しくなる電圧が選ばれる。したがって、フィールド番号F3では目標透過量T6を越えるため明るくなるが、フィールド番号F4で目標透過量T6を下まわるため暗くなる。しかし、変化は1/30秒であるので視覚的にはフィールド番号F3からほぼ目標透過量T6が得られるように見える。以上のように電圧データを補正することにより、液晶の立ち上がり時間つまり応答速度は改善され、画像の尾ひきのない映像が得られる。
以下、図面を参照しながら第3の本発明の液晶パネルの駆動方法の第2の実施例について説明する。第12図,第13図,第14図は第3の本発明の第2の実施例における液晶パネルの駆動方法の説明図である。第12図ではフィールド番号F3で電圧データがD10からD15に、第13図ではフィールド番号F3で電圧データがD5から第12図と同様にD15に変化している。しかし、液晶の透過量は第12図の場合はフィールド番号F4で所定値の透過量のT15になっているが、第13図ではフィールド番号F4内の時間では所定値の透過量T15となっていない。これは先にも述べたように液晶の応答時間は目標透過量が同一でも、現在印加されている電圧と前記目標透過量になるための印加電圧の電圧との電位差により変化に要する時間が異なるためである。
そこで、本実施例では第14図で示すように、データテーブルなどから補正データD19を求め、フィールド番号F3のデータをD15からD19に補正する。またフィールド番号F4のデータをD15からD12に補正する。以上の処理は前述した第1の実施例と同様に第2の本発明の液晶制御装置を用いて行なう。このように、現在画素に印加されている電圧と次に印加する電圧の電圧差が所定閾値以上の時は電圧データの補正を行なう。したがって、第14図のようにフィールド番号F3で電圧V19が印加され、液晶は急激に立ちあがり、1フィールド時間内で定常透過量T19になる。つぎにフィールド番号F4で電圧V12が印加され、液晶は1フィールド時間内で定常透過量T12になる。なお、前述の本発明の液晶パネルの駆動方法と同様に印加電圧V19とV12の大きさは第14図の斜線で示すAの面積とBの面積が実効的に等しくなる電圧に選定される。したがって、視覚的にはフーィールド番号F3からほぼ規定値の目標透過量T15が得られる。
なお、前記第2の本発明の第1の実施例の液晶パネルの駆動方法と第2の実施例の液晶パネルの駆動方法とを組みあわせる、つまり現在画素に印加されている第1の電圧と次に印加する第2の電圧の電位差および第2の電圧の大きさにより電圧データを補正することにより、更に最適な液晶パネルの駆動方法が行なわれることを言うまでもない。」(10ページ左下欄9行?11ページ右下欄9行)

1i.「発明の効果
以上の説明で明らかなように、本発明の液晶パネルの駆動方法および液晶制御回路を用いることにより、液晶の立ち上がり、つまり目標透過量にするための応答時間を短縮することができる。したがって、画像の尾ひきなどがあらわれることがなく、良好な映像が得られる。このことは液晶パネルの画面が大型化,高解像度になるにつれて著しい効果としてあらわれる。」(15ページ左下欄5行?13行)

3-2.対比・判断
引用刊行物の前記「1a.」?「1i.」の記載から、引用刊行物には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「各フィールド毎のデータに基づいて表示を行う液晶パネルの駆動方法であって、第1のフィールドで各画素に印加する第1の電圧と次の第2のフィールドで各画素に印加する第2の電圧との電位差、および第2の電圧の大きさに基づいて各画素に印加する電圧データを補正することにより、液晶の応答時間を短縮することを特徴とする液晶パネルの駆動方法。」
そこで、本願補正発明(前者)と上記引用発明(後者)とを対比する。
・後者の「各フィールド毎のデータ」は、前者の「1垂直同期期間ごとにデータ値が変化し得る画像信号」に相当する。
・後者の「第1のフィールドで各画素に印加する第1の電圧と次の第2のフィールドで各画素に印加する第2の電圧との電位差、および第2の電圧の大きさに基づいて各画素に印加する電圧データを補正することにより、液晶の応答時間を短縮することを特徴とする液晶パネルの駆動方法」と、前者の「液晶表示装置の各画素に書き込むべき画像データを、1垂直同期期間中に複数回各画素に供給することによって、各画素のステップ応答特性を改善する駆動方法において、1垂直同期期間中に各画素に複数回供給される画像データの総てを、前垂直同期期間における画像信号のデータ値と現垂直同期期間における画像信号のデータ値とに基づいて得ることを特徴とする液晶表示装置の駆動方法」とを対比すると、後者の「液晶の応答時間を短縮する」ことは、前者の「各画素のステップ応答特性を改善する」ことに相当することといえるから、両者は、「液晶表示装置の各画素のステップ応答特性を改善するために、1垂直同期期間中に各画素に供給される画像データの総てを、前垂直同期期間における画像信号のデータ値と現垂直同期期間における画像信号のデータ値とに基づいて得ることを特徴とする液晶表示装置の駆動方法」である点で共通する。

したがって、両者は、
「1垂直同期期間ごとにデータ値が変化し得る画像信号に基づいて表示を行う液晶表示装置の駆動方法であって、
液晶表示装置の各画素のステップ応答特性を改善するために、1垂直同期期間中に各画素に供給される画像データの総てを、前垂直同期期間における画像信号のデータ値と現垂直同期期間における画像信号のデータ値とに基づいて得ることを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。」
の点の構成で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
前者が、画像データを、1垂直同期期間中に複数回各画素に供給することによって、各画素のステップ応答特性を改善するものであるのに対し、後者は、各フィールドにおいてデータを複数回各画素に供給するようには構成されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。
例えば、実願昭63-154799号(実開平2-75623号)のマイクロフィルムの明細書2ページ14行?5ページ3行に、「[従来技術と解決すべき課題]一般に液晶表示素子は、応答速度が遅いという問題があり、この応答速度を向上するために従来から駆動方法の改善、あるいは材料、液晶セルの改善等が考えられている。しかして、従来、走査電極と信号電極とがマトリクス状に配置されてなる液晶パネルを駆動する液晶パネル駆動回路においては、第7図に信号波形を示す走査電極駆動信号Xn及び信号電極駆動信号Ym により液晶パネルを駆動するようにしている。すなわち、走査電極駆動信号Xn はフレーム信号φF に応じてV0 あるいはV4 の一定レベルのバイアス電圧を発生して走査電極に順次印加し、信号電極駆動信号Ym は映像信号に応じてV1 ,V3 レベルのバイアス電圧を選択して信号電極に印加している。従って、走査電極と信号電極との間には、第7図に示す「Xn -Ym 」の合成電圧が印加され、走査電極駆動信号により選択されている走査電極に対応する信号電極が駆動される。上記のようにして液晶パネルに対する駆動が行なわれるが、上記従来の液晶駆動方法では、液晶の応答速度を充分に改善することができない。本考案は上記実情に鑑みてなされたもので、液晶の応答速度を向上し得る液晶パネル駆動回路を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段及び作用]本考案は、走査電極と信号電極とがマトリクス状に配置されてなる液晶パネルを駆動する液晶パネル駆動回路において、1走査電極の選択期間をm分割してm回同一データによる表示を行い、走査電極駆動信号に対して上記分割期間毎に波高値を異ならせるようにしたものである。また、本考案は、走査電極と信号電極がマトリクス状に配置されてなる液晶パネルを駆動する液晶パネル駆動回路において、1走査電極の選択期間をm分割してm回同一データによる表示を行い、信号電極駆動信号に対して上記分割期間毎に波高値を異ならせるようにしたものである。・・・
上記のように走査電極駆動信号と信号電極駆動信号の何れか一方あるいは両方に対して上記分割期間毎に波高値を異ならせることにより、走査電極期間中のピーク電圧が従来より高くなり、液晶の応答速度を向上することができる。」との記載があり、走査電極の選択期間における走査電圧を互いに波高値の異なる複数の期間に分割し、同一画素へ印加する電圧を異ならせて複数回供給するようにし、液晶の応答速度を高めることが示されている。そして、走査電極の選択期間を複数の期間に分割して同一画素へ印加する電圧を異ならせて複数回供給することは、画像データを1垂直同期期間中に複数回各画素に供給することに相当するから、画像データを1垂直同期期間中に複数回各画素に供給することにより、各画素のステップ応答特性を改善することは従来周知のことと認められる。
また、引用刊行物の「すべての画素に電圧が印加され再び次の電圧が印加されるまでの周期を1フレームと呼ぶ。・・・通常、テレビ画像の場合l/30秒で一画面が書きかわるため1/30秒が1フレ一ム時間である。また倍速で各画素に電圧を書き込む場合は1/60秒が1フレ一ム時間となる。本明細書では倍速で各画素に電圧を書き込む駆動方法を例にあげて説明する。」との記載(「1b.」の記載参照。)からみて、テレビ画像の場合、1/30秒毎に一画面を書き換えるための画像信号が供給され、倍速で各画素に電圧を書き込む倍速駆動においては、1/60秒毎に各画素への書き込みがなされるものと解される。そうすると、倍速駆動においては、外部から所定周期で供給される画像信号について、その所定周期中に2回各画素に画像信号が供給されること、及び、引用発明は、そのような倍速駆動が適用され得るものであることからみて、そのような倍速駆動を採用すれば、「外部から供給される画像信号の上記周期」は本願補正発明の「垂直同期期間」に相応し、また、「その所定周期中に2回各画素に画像信号が供給される」点は、本願補正発明の「1垂直期間中に各画像データが複数回各画素に供給される」ことに相応することになるから、この点からみても、相違点に係る構成が格別のものとは認められない。
したがって、上記周知事項、及び引用刊行物の倍速駆動に関する記載を勘案すれば、画像データを、1垂直同期期間中に複数回各画素に供給することによって、各画素のステップ応答特性を改善する点に格別の特徴は認められず、当業者が格別の推考力を要することとは認められない。
そして、本願補正発明による効果も、引用刊行物の記載及び上記周知事項から、当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
平成16年11月11日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至15に係る発明は、平成15年12月2日付け、及び平成16年7月9日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至15に記載された事項により特定されるとおりのものと認められる(前記「第2.」の「1.」の補正前の特許請求の範囲参照。その請求項1に係る発明を、以下、「本願発明」という。)。

第4.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物及びその記載事項は、前記「第2.」の「3-1.」に記載したとおりのものである。

第5.対比・判断
本願発明は、前記「第2.」で検討した本願補正発明から、前記構成の限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.」の「3-2.」に記載したとおり、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおりであるから、本願発明(請求項1に係る発明)は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-16 
結審通知日 2007-05-22 
審決日 2007-06-04 
出願番号 特願2001-175453(P2001-175453)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴野 幹夫  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 小川 浩史
堀部 修平
発明の名称 液晶表示装置の駆動方法  
代理人 奥田 誠司  

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