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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1161345
審判番号 不服2005-1800  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-02-03 
確定日 2007-07-19 
事件の表示 平成11年特許願第196848号「基板回転乾燥装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月26日出願公開、特開2001- 23943〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本件の出願(以下、「本願」という。)は、平成11年7月12日の特許出願であって、平成16年10月15日付け手続補正書により明細書を対象とした補正がされ、平成16年12月27日付けで拒絶査定がされ(発送日:平成17年1月5日)、これに対し、平成17年2月3日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年3月1日付け手続補正書により明細書を対象とした補正がされたものである。


第2.平成17年3月1日付け手続補正書による補正の却下の決定
[結論]
平成17年3月1日付け手続補正書による補正を却下する。

[理由]
1.本件補正発明
平成17年3月1日付け手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、次のとおりに補正された。

「基板を保持して回転する基板回転保持手段と、
前記基板回転保持手段を囲むチャンバと、
前記チャンバの周壁下部に備わり前記チャンバ内を排気するチャンバ排気部とを備え、
前記チャンバが、基板を出し入れする開閉可能な基板出入口と、基板出入口を閉じた状態でも内部と外部が連通して外気を吸い込む吸気口とを有する基板回転乾燥装置であって、
時間をカウントするタイマー部を内部に有する制御部を備え、
チャンバ排気部による排気を停止させてからチャンバ内外の気圧差がない状態が実現されるまでに要する所定時間が経過したと前記制御部が判断した後に、前記チャンバの基板出入口が開くようにしたことを特徴とする基板回転乾燥装置。」

上記補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「チャンバ排気部」に対して「チャンバの周壁下部に備わり」なる事項を限定的に付加するものである。
したがって、上記補正は、限定的減縮を目的とするものであり、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)につき以下に検討する。
2.刊行物
原審の拒絶の理由で示された、本願の出願前に日本国内で頒布された刊行物である「特開平7-22378号公報」(以下、「公知刊行物」という。)には、図面とともに明細書に次の事項が記載されている。

ア.「【請求項1】基板を保持する回転保持部と、開閉可能な基板出入口を有しかつ前記回転保持部を覆うチャンバとを備えた基板回転乾燥装置の排気装置であって、
前記チャンバ内を排気する排気部と、
前記基板出入口が開いているとき、前記排気部による排気を停止する停止手段と、を備えた基板回転乾燥装置の排気装置。」(【特許請求の範囲】)
イ.「【作用】本発明に係る排気装置では、排気部がチャンバ内を排気する。そして基板出入口が開いているときには、停止手段が排気部を停止する。ここでは、基板出入口が開き、チャンバ内が外気に開放されている状態では、排気部による排気が停止するので、チャンバ内が負圧にならず外気が流入しにくい。このため、外気に含まれるパーティクルがチャンバ内に侵入しにくい。したがってチャンバ内のパーティクルを低減できる。」(段落【0007】)

ウ.「チャンバ15の周壁上部には基板出入口23が、また周壁下部には排気口24がそれぞれ形成されている。基板出入口23は開閉自在のチャンバ開閉蓋18で閉止されている。チャンバ開閉蓋18の上部には、外気を取り入れるための吸入口26が設けられており、吸入口26にはフィルタ25が装着されている。・・・(中略)・・・排気口24には、ダクト接続部15aが形成されており、このダクト接続部15aに槽排気ダクト28(図5)が接続されている。」(段落【0009】)

エ.「基板処理装置1は、図6に示すマイクロコンピュータからなる制御部60を有している。制御部60には、エアシリンダ39、モータ17、槽排気ダンパー52、軸排気ダンパー53、静電気除去装置27、ガス供給弁55及び他の入出力部が接続されている。次に、上述の実施例の動作を、図7に示す制御フローチャート及び図8に示すタイミングチャートに従って説明する。」(段落【0017】)

オ.「乾燥装置5では、運ばれてきた基板を検出する(ステップS1)と、開閉蓋18を開く(ステップS2)。そして、保持具昇降部20により基板保持具19を上昇させ、基板搬送ロボット6のアーム11から基板を一括して受け取る。なおこのとき、ダンパー52,53はともに閉じている。基板保持具19で基板を受け取ると、保持具昇降部20を下降させることにより保持具19を下降させ、基板を所定の位置に配置する。そして基板及び保持具19を各クランプ装置21,22によりクランプする(ステップS3)。クランプが完了すると、エアシリンダ39を退入させ、位置決めリング38と位置決め部材39aとの係合を解除し、ロータ16をロック状態からアンロック状態にする(ステップS4)。」(段落【0019】)

カ.「そしてモータ17に所定の電流を流し、ロータ16を1速(たとえば1000rpm)で回転させる(ステップS5)。続いて、排気ダンパー52,53を共に開く(ステップS6)。また、ガス供給弁55を開き、ラビリンスシール44の周囲に窒素ガスを供給する(ステップS7)。またこれより僅かに遅れて、静電気除去装置27をONする(ステップS8)。 ここでは、ガス供給弁55が開くことで、ガス供給口46を介して加圧空間45に加圧された窒素ガスが充満し、さらに連絡孔48からラビリンスシール44側へ侵入する。侵入した窒素ガスは、ラビリンスシール44の外周に沿って、一部が排気空間49にまた他の一部が軸排気チャンバ36に流れる。排気空間49に流れた窒素ガスは、ガス排出口50を介してガス排気ダクト51に排出される。そして槽排気ダクト28に合流し、槽排気ダンパー52を介して設備排気ダクトに排出される。また軸排気チャンバ36に流れた窒素ガスは、チャンバ内部の空気とともに、軸排気ダクト37に排出される。そして軸排気ダンパー53及びブロア54を介して設備排気ダクトに排出される。」(段落【0020】?【0021】)

キ.「所定時間経過後、2速(たとえば1200rpm)でロータ16を回転させ(ステップS9)、さらに所定時間後に3速(たとえば1500rpm)で回転させる(ステップS10)。所定の乾燥時間が経過すると、ロータ16を位置決め速度(たとえば10rpm)に減速する(ステップS11)と共に、静電気除去装置27をOFFする(ステップS12)。次に、槽排気ダクト28をダンパー52により閉じる(ステップS13)。そして、フォトインタラプタ41が検出ドッグ40を検出すると(ステップS14)、モータ17を停止してロータ16の回転を停止する(ステップS15)。続いて軸排気ダクト37をダンパー53により閉じ(ステップS16)、ガス供給弁55を閉じて窒素ガスの供給を停止する(ステップS17)。これにより、チャンバ内が大気圧と略同圧になる。そしてエアシリンダ39を進出し、位置決めリング38に位置決め部材39aを係合させる。これによりロータ16が基準位置でロック状態となる(ステップS18)。」(段落【0022】)

ク.「ロータ16が基準位置でロックされると開閉蓋18を開き(ステップS19)、各クランプ装置21,22によりクランプされた基板及び保持具19の保持を解除する。そして保持具昇降部20を上昇させることにより、保持具19を所定の受渡し位置まで上昇させる(ステップS20)、基板搬送ロボット6のアーム11に基板を一括して渡す。」(段落【0023】)

ケ.「乾燥が終了した基板は、基板搬送ロボット6によりさらに基板移載装置3に搬送され、この基板移載装置3において基板がキャリアC内に収納される。キャリアCは、基板移載ロボット10によって基板移載装置3から搬入・搬出部2に搬送される。ここでは、ラビリンスシール44の外周側から加圧された窒素ガスを供給しているので、軸受34a,34bで発生したパーティクルは、チャンバ15側へは流れない。また、基板の出入りの際には、槽排気ダクト28及び軸排気ダクト37をともにダンパー52,53により閉じて排気を停止しているので、チャンバ15内が略大気圧となる。この結果、基板出入口23から外気がチャンバ15内に流入しにくい。したがって外気に含まれるパーティクルがチャンバ内に入りにくい。」(段落【0024】)

これらの記載事項及び図面の記載内容からして、公知刊行物には、次の発明(以下、「公知刊行物記載の発明」という。)が記載されていると認める。

「基板を保持する回転保持部と、
開閉可能な基板出入口を有しかつ前記回転保持部を覆うチャンバと、
前記チャンバ内を排気する排気部とを備え、
前記チャンバが、基板を出し入れする開閉可能な基板出入口と、基板出入口を閉じた状態でも内部と外部が連通して外気を吸い込む吸気口とを有する基板回転乾燥装置であって、
制御部を備え、
前記基板出入口が開いているとき、前記排気部による排気を停止する停止手段を備えた基板回転乾燥装置。」

3.対比
本件補正発明と公知刊行物記載の発明を対比する。
公知刊行物記載の発明の「回転保持部」は、基板を保持するのみならず回転させるものでもあるから、本件補正発明の「基板回転保持手段」に相当する。
公知刊行物記載の発明の「排気部」は、チャンバの周壁下部に備わるものである(公知刊行物の摘記事項「ウ.」参照)から、本件補正発明の「チャンバ排気部」に相当する。
そうしてみると、両者の一致点及び相違点は、次のとおりである。

〈一致点〉
「基板を保持して回転する基板回転保持手段と、
前記基板回転保持手段を囲むチャンバと、
前記チャンバの周壁下部に備わり前記チャンバ内を排気するチャンバ排気部とを備え、
前記チャンバが、基板を出し入れする開閉可能な基板出入口と、基板出入口を閉じた状態でも内部と外部が連通して外気を吸い込む吸気口とを有し、制御部を備えた基板回転乾燥装置。」

〈相違点〉
本件補正発明では、制御部が時間をカウントするタイマー部を内部に有しており、チャンバ排気部による排気を停止させてからチャンバ内外の気圧差がない状態が実現されるまでに要する所定時間が経過したと前記制御部が判断した後に、前記チャンバの基板出入口が開くようにしたのに対して、公知刊行物記載の発明では、基板出入口が開いているときチャンバ排気部による排気を停止する停止手段を設けた点。

4.判断
上記相違点について検討する。

公知刊行物の摘記事項「キ.」、「ク.」からすると、公知刊行物記載の発明は、チャンバ排気部による排気を停止させてチャンバ内が大気圧と略同圧になってから、基板回転保持手段のロータをロックし、次いで基板開閉口の開閉蓋を開くといった動作を順に実施するものということができる。
ところで、本件補正発明も公知刊行物記載の発明も、チャンバ内の実際の圧力の大きさを検知するセンサのような手段を用いて、チャンバ内外の圧力差がないことを確認してからチャンバの基板出入口を開けるものではない。本件補正発明も公知刊行物記載の発明も、それぞれの制御部が基本的にタイミングチャートに沿って動作を自動的に進行させていくものと理解できる。タイミングチャートに沿って動作を進行させていく場合に、他のセンサ等からの信号がなければ「所定時間」が経過すると次の動作を開始させることは、当業者が適宜採用する技術的事項である。
また、公知刊行物記載の発明は、公知刊行物の摘記事項「キ.」に「所定時間」経過後に次のステップに移行することが記載されていること等からみても、その制御部に本件補正発明と同様のタイマー部が備えられていると解することができる。
そうしてみると、公知刊行物記載の発明において、チャンバ排気部による排気を停止させてから「所定時間」が経過したと制御部が判断した後にチャンバの基板出入口が開くようにすること自体に、当業者にとっての格別の創意工夫が見いだせるものではない。
そして、公知刊行物記載の発明も、基板出入口が開いて基板が出入りする際に、チャンバ内が負圧であることに起因して外気がチャンバ内に流入することに対処したものであるから、「所定時間」としてチャンバ排気部による排気を停止させてからチャンバ内外の気圧差がない状態が実現されると目される時間を設定することも、当業者が通常発揮する範囲内の創作行為といえる。

したがって、本件補正発明の構成は、公知刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものである。
しかも、本件補正発明の構成により、公知刊行物記載の発明から予期される以上の格別顕著な効果がもたらされるということもできない。

よって、本件補正発明は、公知刊行物記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上をふまえると、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
平成17年3月1日付け手続補正書による補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1、2に係る発明は、平成16年10月15日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「基板を保持して回転する基板回転保持手段と、
前記基板回転保持手段を囲むチャンバと、
前記チャンバ内を排気するチャンバ排気部とを備え、
前記チャンバが、基板を出し入れする開閉可能な基板出入口と、基板出入口を閉じた状態でも内部と外部が連通して外気を吸い込む吸気口とを有する基板回転乾燥装置であって、
時間をカウントするタイマー部を内部に有する制御部を備え、
チャンバ排気部による排気を停止させてからチャンバ内外の気圧差がない状態が実現されるまでに要する所定時間が経過したと前記制御部が判断した後に、前記チャンバの基板出入口が開くようにしたことを特徴とする基板回転乾燥装置。」

1.刊行物
公知刊行物に記載された事項及び公知刊行物記載の発明は、既に前記「第2.2.」で述べたとおりのものである。

2.対比・判断
本願発明は、前記「第2.」で検討した本件補正発明からその発明を特定するために必要な事項たる「チャンバ排気部」についての「チャンバの周壁下部に備わり」なる事項を省いたものである。
そうすると、本願発明を特定するために必要な事項を全て含み、さらに他の事項を発明を特定するために必要な事項として付加したものに相当する本件補正発明が、前記「第2.」に記載したとおり、公知刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、公知刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、公知刊行物記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、 結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-17 
結審通知日 2007-05-22 
審決日 2007-06-04 
出願番号 特願平11-196848
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金丸 治之  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 関口 哲生
今井 義男
発明の名称 基板回転乾燥装置  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 吉田 茂明  

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