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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) F24F
管理番号 1161376
審判番号 不服2006-10755  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-25 
確定日 2007-07-19 
事件の表示 特願2002- 21728「空気調和機の制御方法及び空気調和システム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月 8日出願公開、特開2003-222371〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 理 由
1.手続の経緯
本件出願は、平成14年1月30日の出願であって、平成18年4月19日付けで拒絶査定がなされ、この査定に対し、平成18年5月25日付けで審判請求がなされるとともに、平成18年6月16日付けで、この審判請求書を補正対象とする手続補正と、明細書を補正対象とする手続補正の2つの手続補正がなされ、その後、特許法第162条による審査がなされ、平成18年8月2日付けで特許庁長官への報告がなされたが、上記平成18年6月16日付けの、明細書を補正対象とする手続補正に対して、平成19年1月11日付けで当審より補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで当審より拒絶理由通知がなされ、その指定期間内である平成19年2月22日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。



2.本件発明
そこで、本件の請求項1ないし9に係る発明は、上記平成19年2月22日付け手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 (a)相互に上限値が異なる能力制御及び相互に制御率が異なる間欠運転を含む複数の制御方法(T1?Tn)から、外気温度(Te)及び外気湿度(He)で計算される指標(D2,A)に対して所定の範囲内に室内温度を設定する運転が可能なもの(D3)を、前記複数の制御方法と前記複数の制御方法を実施したときに前記所定の範囲内に前記室内温度を設定する運転が可能な前記指標との関係に基づいて選択するステップと(S2i,S3i)、
(b)前記ステップ(a)において選択された前記複数の制御方法の前記削減率(Fi(A))を求め、前記ステップ(a)において選択された前記複数の制御方法から、前記消費電力の削減率(Fi(A))が最大となるもの(D4)を選択するステップと(S6i,S7i,S8)、
(c)前記複数の制御方法のうち、前記ステップ(b)において選択されたものに基づいて、制御スケジュール(D5)を生成するステップと
を備え、
前記ステップ(a)においていずれの前記複数の制御方法(T1?Tn)も選択されなかった場合には、ステップ(b),(c)の実行に替えて、
(d)定格能力を上限として前記空気調和機(16)を制御するステップが実行される空気調和機(16)の制御方法。
【請求項2】 前記指標は不快指数(A)である、請求項1記載の空気調和機の制御方法。
【請求項3】 前記不快指数が基づく外気温度(Te)及び外気湿度(He)を所定時間毎に得る、請求項2に記載の空気調和機の制御方法。
【請求項4】 前記不快指数は前記外気温度及び前記外気湿度に基づいて前記所定時間毎に求められる、請求項3に記載の空気調和機の制御方法。
【請求項5】 前記所定時間毎に求められた前記不快指数の平均値を前記不快指数として改めて得る、請求項4に記載の空気調和機の制御方法。
【請求項6】 前記所定の室内温度は、前記空気調和機の室内機への吸い込み温度が採用される、請求項1乃至請求項5のいずれか一つに記載の空気調和機の制御方法。
【請求項7】 相互に上限値が異なる能力制御及び相互に制御率が異なる間欠運転を含む複数の制御方法(T1?Tn)から、外気温度(Te)及び外気湿度(He)で計算される指標(D2,A)に対して所定の範囲内に室内温度を設定する運転が可能であって、かつ消費電力の削減率(Fi(A))が最大となる前記制御方法(D4)を示す制御テーブルを、前記複数の制御方法と前記複数の制御方法を実施したときに前記所定の範囲内に前記室内温度を設定する運転が可能な前記指標との関係、及び前記複数の制御方法の前記削減率(Fi(A))に基づいて作成する制御テーブル作成部(302)と、
前記制御テーブルに示された前記複数の制御方法(T1?Tn)もしくは定格能力を上限とした空気調和機(200)の制御スケジュールを作成する制御テーブル展開部(305)とを備える空気調和システム(300)。
【請求項8】 遠隔監視センター(300a)と、
現地制御システム(300b)とを備え、
前記遠隔監視センターは前記制御テーブル作成部を、前記現地制御システムは前記制御テーブル展開部を、それぞれ有する、請求項7に記載の空気調和システム(300)。
【請求項9】 前記遠隔監視センター(300a)は前記制御テーブルを送信する制御テーブル送信部(303)を有し、
前記現地制御システム(300b)は前記制御テーブルを受信する制御テーブル受信部(309)を有する、請求項8記載の空気調和システム(300)。」



3.引用刊行物
刊行物1:特開昭62-225857号公報
刊行物2:特開2000-145399号公報



4.引用刊行物に記載された発明
(1)刊行物1に記載された発明
《記載事項》
刊行物1には次のa.?h.の記載がなされている。
a.「特許請求の範囲
(1)圧縮機の吸込圧力を検出し、設定値に対する検出圧力の差に応じて圧縮機の運転周波数を変化させ圧縮機の吸込圧力を一定に保つよう制御する冷凍機の能力制御方法において、前記吸込圧力が所定の下限値以下となった場合冷凍機の冷媒回収運転を行った後で圧縮機を停止させる制御を行わせるとともに、前記吸込圧力下限値を冷凍機の外気温に応じて変化させる構成としたことを特徴とする冷凍機の能力制御方法。」(第1頁左下欄4?13行)(なお、下線は当審が付した。以下、同じ。)

b.「[発明の目的]
(産業上の利用分野)
本発明は圧縮機の吸込圧力を一定に制御するために能力の加減を行う冷凍機の能力制御方法に係り、特に冷凍機の外気温変化による能力余裕を考慮した運転を可能とするものに関する。
(従来の技術)
従来、能力を可変するため運転周波数を制御して圧縮機回転数を変化させる冷凍機であって、圧縮機の吸込圧力を一定に保つことにより適正な能力とサイクルを負荷に供給するものでは、次のような能力制御を行っていた。第4図及び第5図に示す如く、吸込圧力の設定値に対する検出圧力Psの差に応じて圧縮機の運転周波数を変化させるゾーンを設け、ゾーン毎の異なった周波数変化によって吸込圧力を一定にするための能力の加減を行うようにし、吸込圧力が下がり過ぎて下限値を超えた場合は冷媒回収を行っている。
しかし、上記した能力制御では、吸込圧力の下限値が一定であるため、下記のような欠点がある。冬期等の軽負荷の際、例えばショーケース多分岐サイクルにおいて一台のみのショーケース運転となった場合、吸込圧力が下がり過ぎるため冷却運転よりも冷媒回収に入ることが多くなる。
また、夏期には、設定値よりも低い圧力での運転は圧縮比との関係で出来るだけ短くする必要があるが、高負荷運転となる場合が多いので、吸込圧力が下限値を超すことは希で低い圧力での運転時間が長くなる。
(発明が解決しようとする問題点)
上記のように吸込圧力の下限値が一定である従来のものでは、冬期にはエネルギ消費の無駄が多く、また夏期には圧縮機の負担が多くなるという欠点があった。
したがって、本発明の目的は、時期に関らず省エネルギー化が図れると共に圧縮機を有効に保護することが可能な冷凍機の能力制御方法を提供することである。」(第1頁右下欄4行?第2頁右上欄1行)

c.「[発明の構成]
(問題点を解決するための手段)
上記目的に沿う本発明は、冷凍機の外気温を検出し、検出された外気温に応じて吸込圧力の下限値を自動的に変化させるようにしたものである。
(作 用)
外気温が低いと吸込圧力の下限値を低くして、冷媒回収に入る機会を少なくし、外気温が高いと吸込圧力の下限値を高くして、設定値よりも低い圧力での運転を出来るだけ短くする。
(実施例)
本発明の実施例を第1図?第14図に基づいて説明すれば以下の通りである。
まず、第1図?第3図の実施例について述べる。
第2図は本発明の冷凍機の能力制御方法を実施するための能力制御装置例の構成を示す。冷凍機本体は、圧縮機1,凝縮器2,受液器3及び気液分離器4より構成され、このように構成された本体に、ショーケース等の負荷が、冷媒の凝縮した液ライン及び蒸発ガスの通るガスラインを介して接続される。
圧縮機1の回転数を制御する周波数制御回路10は温度感知部5,制御部6,電源部7より構成され、第4図の周波数変化のための信号は、吸込管に取付けた吸込圧力センサ8によって感知される圧力の高低を入力される制御部6によって形成される。形成されたこの信号に基づいて制御される電源部7によって、圧縮機1はその吸込圧力を設定値に保つように周波数変化させられる。
そして、特に凝縮器2に凝縮温度を検出する凝縮温度センサ9が取付けてあり、周波数制御回路10の温度感知部5にその検出信号を送って、これに基づき制御部6は圧縮機1の吸込圧力の下限値を変化するように構成されている。」(第2頁右上欄2行?左下欄16行)

d.「さて、上記のような構成における作用について述べる。
外気温が低いと、凝縮温度センサ9で検出され周波数制御回路10の温度感知部5で感知される凝縮温度も低くなるため、制御部6は第1図に示す如く吸込圧力の下限値を低くしてやる。同じように、凝縮温度が高ければ下限値を高く、凝縮温度が中位であれば下限値を中間値に変更し、下限値を固定にしない。
そして、このように凝縮温度に応じて下限値を決めた上で、吸込圧力センサ8で検出した吸込圧力Psがその下限値よりも大きいか否かを判断し、大きいときは第4図に示す周波数制御を圧縮機1に施し、否のときは冷媒回収を行うが、この冷媒回収を下限値よりも小さく、且つ最低能力値で運転している場合に行うようにしてもよい。最低能力値で運転していなければ下限値を上廻る可能性があるからである。
ところで、外気温等の低い冬期のような場合、例えば冷凍機負荷が多分岐ショーケースサイクルでは、ショーケース廻りの温度も比較的低いため、全体的に負荷も小さい。さらに、多分岐ショーケースではショーケース個々がその膨張弁の弁開度を制御するため、例えばショーケース1台のみの運転になると負荷は極めて小さくなり、その結果圧縮機1の吸込圧力も下がる。
したがって、起動の際などに一度圧力がバランスしてから運転に入ると、ある程度高い周波数で運転してしまい、急激に吸込圧力が低下し吸込圧力の設定値に対して設けた下限値を超えてしまう。
しかし、下限値を超えてしまうのは過渡的な現象であるため、ここでは冷媒回収して停止すると無駄が多くなる。
そこで、上述したように凝縮温度センサ9からの信号を受けて、この下限値を下げてやり無益に冷媒回収に入らないようにする。下限値を下げることによって、運転状態は低圧側が低いものになるが、負荷が大きくないので高圧側もそれ程高くならず過熱等の危険はない。
逆に、外気温等の高い夏期のような場合、全体的に負荷が大きいため、下限値以下になる可能性は少なくなるが、上述したように下限値を引き上げてやると、吸込圧力の低い状態で高圧側が高い運転をすることが無くなると同時に、停止回数が増えて少しでも間欠運転が多くなり省エネルギー効果を出すことができる。
このような、凝縮温度に応じた下限値の変化量は、例えば第3図に示す程度が適切である。
以上、第1図?第3図に示す実施例によれば、冬期と夏期での負荷変動に対応でき、省エネルギー化と圧縮機保護が凝縮温度の検出によって行うことができる。」(第2頁左下欄17行?第3頁右上欄9行)

e.「次に、第6図?第8図の実施例について述べる。この実施例は能力可変式冷凍機において過励磁等による能力の無駄を少なくする制御方法を提示するものである。
従来、冷凍機の能力を可変するため運転周波数を制御して圧縮機回転数を変化させるもので、吸込圧力を一定に保つことで適正な能力とサイクルを供給する冷凍機では、他方で、外気温が低くなるとファンコントロールなどの制御を加味して省エネルギー化の効果をアップさせるような方式を採用している。そして、更に間欠運転の効果を高めるため、起動時には遅延タイマなどによって遅延時間を持たせ過渡運転の不安定さを吸収している。
しかし、このような方式のものでは次のような欠点がある。
(1) 吸込圧力感知のため再起動時は、圧力バランスしていると高い周波数に上昇するが、負荷が小さい場合、吸込圧力が下がりすぎる傾向がある(第9図)。
(2) 外気低温時等負荷自体が少ない場合、高い周波数により圧縮機が過励磁気味になると電流値が上がりエネルギーが無駄となる。
そこで、このような事情を考慮して、本実施例では、ファンコントロールに使用する温度センサの信号を利用して、出力周波数の上限値を可変し、もって省エネルギー効果の高い冷凍機を得ている。
その要旨とするところは、凝縮器の温度が高いときは周波数の上限を高くし、逆に低いときはこれを低くしたものである。
これを、第6図?第8図について詳しく説明する。
11は圧縮機、12は凝縮器、13は受液器、50はショーケース等の負荷、51は蒸発器、14は気液分離器、53は凝縮器12を冷却するためのファンモータである。
凝縮器12の冷媒配管には凝縮温度センサ19が密着して取付けられ表面温度や間接的に凝縮圧力等を感知する。この凝縮温度センサ19は、その検出信号を周波数制御回路20の温度感知部15を介して制御部16に送ると共に、ファンモータ53をON/OFFさせるファンコントロール部にも供給する。また、吸込管に圧力センサ18が取付けられ圧縮機11の吸込圧力を感知する。この圧力センサ18の検出信号も制御部16に送られ、検出信号に応じて吸込圧力を一定にするための周波数上昇・下降命令を電源部17に送り、電源部17はその周波数出力を圧縮機11に供給してこれを可変制御する。本実施例の要部となる周波数の上限命令を決定する上限決定部は制御部16内にあり、上記凝縮温度センサ19の検出信号に応じてその決定をなす。」(第3頁右上欄10行?第4頁左上欄2行)

f.「さて、上記のような構成における作用について述べる。
第6図に示す如く、制御部16は凝縮温度が高ければ周波数の上限を高く、逆に凝縮温度が低ければ周波数の上限を低く抑えて電源部17より圧縮機11に出力する。
ところで、外気温が高く凝縮器温度も高い場合は、負荷的にもショーケース等の負荷部分の外気が高くなり、過負荷状態に近くなる。したがって、この場合は圧縮機11の能力を十分発揮できるように電源部17から高出力を供給してやる必要がある。本実施例ではこの場合、上述したように周波数の上限値が高くなるので、圧縮機能力が十分発揮される。
逆に、外気が低く凝縮器温度も高い場合は、負荷的に小さく、圧縮機能力は小さくも十分対応できる。したがって、高周波数で余分な運転をさせてプルダウンを早くするよりも、周波数の上限値を下げた状態での運転が望ましい。この場合でも本実施例では、上述したように周波数の上限値が低くなるので無駄な運転がなくなる。
このような動作は外気ないし凝縮器12の温度を感知し制御部16に伝えることで行われるが、外気ないし凝縮温度に応じた上限能力値の変化量は、例えば第8図に示す程度が適当である。
なお、外気温が低くても負荷が高く高周波運転を必要とする場合には、当然凝縮圧力が上昇するため凝縮温度も上昇する結果、制御部16への命令は周波数上限を上げる方向へ向かうことになり不都合はない。
以上、第6図?第8図に示す実施例によれば、凝縮温度センサが低温を感知したときは出力周波数の上限値を低く、逆に高温を感知したときは上限値を高く変化させるように構成したので、外気温による省エネルギー効果を上げることができ、特に冬期等の全体的な負荷の低下時に対応して必要最小限の能力供給を行って省エネルギー効果を十分引き出すことができる。
また、凝縮温度センサ19が冷媒配管に密着して取付けられ、間接的に凝縮圧力を検出できるため、外気温が低い場合でも高負荷のときには、周波数が低下することなく十分高速回転させることができる。
更に、ファンコントロールシステムで使用している凝縮温度センサを利用すれば、特にセンサを必要としないので構造の簡素化も図れる。」(第4頁左上欄3行?左下欄8行)

g.「[発明の効果]
以上要するに本発明によれば、外気温に応じて運転下限圧力値を変化させることにより、外気温による負荷全体の変動に対応できるので、時期に関らず、省エネルギー化が図れると共に圧縮機を過負荷運転から有効に保護することができるという優れた効果を発揮する。」(第5頁右下欄2?8行)

h.「【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の冷凍機の能力制御方法の実施例を示すフローチャート、第2図は第1図の方法を実施するための制御装置例を示す系統図、第3図は第1図の下限値の変化の具体例を示す温度特性図、第4図及び第5図は従来例の説明図、第6図は本発明の別な実施例を示すフローチャート、第7図は第6図のフローを実施するための装置例を示す系統図、第8図は第6図の周波数上限の変化の具体例を示す能力特性図、第9図は従来例の能力特性図、・・・」(第5頁右下欄9?19行)


《発明の認定》
したがって、刊行物1には、
「圧縮機の吸込圧力を検出し、設定値に対する検出圧力の差に応じて圧縮機の運転周波数を変化させ圧縮機の吸込圧力を一定に保つよう制御するショーケース用冷凍機の制御方法において、外気温(外気ないし凝縮温度)の検出値に応じて圧縮機の吸込圧力の下限値を自動的に変化させ、外気温が低い場合は吸込圧力の下限値を下げて間欠運転を少なくし、外気温が高い場合は吸込圧力の下限値を引き上げて間欠運転を多くし、外気温が中間の場合は吸込圧力の下限値を中間値に変更し、また、外気温が高い場合は周波数の上限値を高く、外気温が低い場合には周波数の上限値を低くした状態で運転し、負荷変動に対応し、省エネルギー化を図る、ショーケース用冷凍機の制御方法。」
という発明が記載されている。



(2)刊行物2に記載された発明
《記載事項》
刊行物2には次のa.?c.の記載がなされている。
a.「【特許請求の範囲】
【請求項1】 回転速度による送風量調節に加えて翼角度による送風量調節も行える送風機をトンネル内の換気用に複数台設置し、これら複数台の送風機の運転状態をトンネル内の空気の汚染状況に応じて制御するトンネル換気制御方法において、
トンネルの交通量や空気透明度それに有害ガス濃度などから得た空気の汚染状況に基づいて得られたトンネル内の換気に必要な全体送風量に対し、候補となる運転パターンを、運転させる送風機の台数、各運転送風機の回転速度及び各運転送風機の翼角度の各パラメータの組み合わせによる運転パターンから抽出し、前記により抽出された候補運転パターンから最適運転パターンとして決定することを含むことを特徴とするトンネル換気制御方法。
【請求項2】 上記最適運転パターンの決定は、前記により抽出された候補運転パターンから、換気のためのエネルギーが最小で且つ、各送風機における運転累積時間に偏りが無く、送風機の停止/運転の切換え頻度及び運転中での回転速度の切換え頻度が最小である運転パターンを最適運転パターンとして決定するものとしたトンネル換気制御方法。」

b.「【0002】
【従来の技術】図4に、トンネル換気設備の一例について、それを構成する送風機の設置状態を簡略化して示す。・・・
【0003】トンネル内の・・・空気汚染状況は、・・・常に変化している。したがって徒にエネルギーを消費することなくトンネル換気設備による必要な換気を行なうためには、トンネル内の空気汚染状況に応じた制御が必要となる。・・・最近ではより高度制御も取り入れられつつある。例えばニューラルネット・・・等の・・・制御であり、このような制御を行なうことで、過剰換気の状況となることを少なくして省エネ化を進めることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしこのような制御も未だ十分とはいえない。・・・つまり省エネという観点からすると、送風量の切換えは回転速度の切換えによるよりも翼角度の切換えによるのが有利な場合が多く、したがって送風量の切換えは回転速度による切換えと、翼角度の切換えとで電力消費量が少ない運転方法を選択するような制御を行えるようにすることが望ましいことになるが、この点で従来の制御は不十分であった。
・・・・・
【0008】本発明は以上のような従来の事情を背景になされたものであり、トンネル換気について、省エネ・・・などについて、よりきめ細かな制御を可能とするトンネル換気制御方法及び装置の提供を目的としいる。
・・・・・
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態について図を参照しながら説明する。図1に一実施形態によるトンネル換気制御方法を実行するための制御系のブロック図を示す。運転指令出力部1は、図外の測定系により計測された交通量、空気透明度、有害ガス濃度等に基づいて、最適な必要全体送風量(送風機運転換気量)を求め、これに対応した運転指令を出力する。この場合の送風量値は、トンネル換気設備全体の最大能力に対するパーセント値とするのが通常である。指令値入力部2は、運転指令出力部1からの運転指令を取得して運転パターン候補抽出部8へ出力する。
【0014】運転状態検出部3は、現在運転している送風機の台数、各送風機の回転速度及び各送風機の翼角度を検出し、これを運転状況入力部4から運転パターン候補抽出部8へ出力する。
【0015】故障検出部5は、送風機の故障の有無を検出し、故障が発生した場合にはそのことを運転可能風量演算部6へ入力する。これに応じて運転可能風量演算部6は、故障送風機を除いた残りの送風機で可能な送風量を演算し、それに基づいた送風機換気量の指令を運転パターン候補抽出部8へ出力する。この場合の送風量値も故障発生時点で運転していた換気量に対するパーセント値とするのが通常である。
【0016】運転時間演算部7は、運転中送風機の現在までの継続運転時間と各送風機の設置後からの累計運転時間を求め、その結果を運転決定部9へ出力する。
【0017】運転パターン候補抽出部8は、必要全体送風量に関し候補となる運転パターンを、現在の運転状況の下で、運転可能である送風機から運転させる送風機の台数、各運転送風機の回転速度及び各運転送風機の翼角度の各パラメータの組み合わせによる運転パターンから抽出する。次いで抽出した候補運転パターンについて、運転中送風機の回転速度の高速から低速への切換えを含む運転パターンを検索する。そして該当運転パターンが探し出されたならば、当該運転パターンについて、回転速度の高速から低速への切換えのために必要な送風機の一時停止の時間を考慮した上での送風能力を求める。回転速度の切換えを含む運転パターンについてこのような処理を行なうことで、以降においてなす最適運転パターンの選択をより実効性のあるものとすることができる。
【0018】運転決定部9は、運転状況入力部4から得られる現在運転中の送風機の台数、各送風機の回転速度及び各送風機の翼角度、それに運転時間演算部7から得られる継続運転時間、累計運転時間に関するデータを用いて、上記の候補運転パターン、つまり運転パターン候補抽出部8で抽出され且つ回転速度の切換えに伴う一時停止時間を考慮した上での送風能力が求められた候補運転パターンから最適な運転パターンを選択して決定する。その選択には、換気のための消費電力、各送風機における運転累積時間、送風機の停止/運転の切換え頻度、及び運転中での回転速度の切換え頻度をファクターとし、消費電力が最小で且つ、各送風機における運転累積時間に偏りが無く、また送風機の停止/運転の切換え頻度及び運転中での回転速度の切換え頻度が最小である運転パターンを最適運転パターンとして選択する。この選択に際してはファジイ推論を用いるのが有効である。
【0019】最適切換方法決定部10は、運転決定部9で決定された最適運転パターンによる運転にそれまでの運転を切り換えるについて最適な方法を選択する。例えば運転の切換えが全送風機の停止状態からの複数台を起動する場合であれば、起動の必要な複数台を同時に起動させることによる起動負荷の増大を防ぐために1台ごと、あるいは適宜な台数ごとに順序起動させる方法を選択する。また切換え後の運転パターンが運転中の複数の送風機について回転速度の切換えを含むものである場合に、全台について同時的に回転速度の切換えを行なう(図3の場合)か、あるいは全台同時でなく1台ごとないしに適宜な台数ごとに順次的に回転速度の切換えを行なう(図2の場合)かの選択をする。この場合に何れを選ぶかは、空気汚染の変化傾向(トレンド)を基準にする。すなわち空気汚染の回復が緩やかである場合には、順次的な切換えとし、空気汚染の回復が急速である場合には、全台一斉切換えとする。
【0020】このように空気汚染のトレンドに応じて切換え方法を変えることで、省エネを図りつつなお且つ、より機動的な対応が可能となる。すなわち、先ず機動的な対応を考えた場合、例えば換気量を少なくする方向に切換える場合であれば、回転速度を高速から低速に切り換えることになるが、その切換え途中で急に空気の汚染状況が悪化し、それに応じて換気量を急遽増大させる必要のある場合には、全台一斉切換え方式によっていると、高速から低速への切換えには上述のように送風機の一旦停止を伴うことから、換気量の増大に対し迅速に対応することができなくなる。一方、順次的な切換え方式によっていれば、その時点で切換えのための停止に入っていない送風機を利用することで、迅速な対応が可能となる。次に、省エネを考えた場合、空気の汚染状況の急な悪化が起こりそうもないトレンドである空気汚染の回復が急速である状況で、順次的な切換え方式とすると、過剰換気の状態を招きやすくなり、それだけエネルギーを浪費する可能性が高くなる。
【0021】以下に、上記の順次的な切換えについて具体的な例を挙げて説明する。図2に、2台の送風機(1号機、2号機)について回転速度を順次的に切換える場合の各送風機の運転状況と時間の関係を示す。高速運転から低速運転へ移行するについて、高速運転→停止指令→運転保護状態→低速運転開始と、一度停止動作が入る場合には、先ず運転指令(必要換気量A)が入ると1台(例えば1号機)を停止させ、その間運転している送風機(2号機)のみにてトンネル内必要換気量Aの運転を行なう。なお参考のために2台の送風機について回転速度を全台一斉に切換える場合の同様の図を図3に示してある。
【0022】各送風機はその運転中に同じ速度、翼角度で運転されているとすれば、必要換気量Aに対して1台当りの換気量K1は、全体運転台数をSUMDとして、次式(数1)で表される。
【数1】K1=(A/SUMD)
【0023】これに対して1度に停止状態となれる台数TDは、1台当りの最大運転換気量をMAX1として、次式(数2)を満足させる値である。
【数2】(SUMD-TD)×MAX1-A≧0
【0024】また、TD台停止時の残りの送風機の各運転換気量K2は、次式(数2)で得られ、運転台数の変化に伴い、随時切り換わる。
【数3】K2=A/(SUMD-TD)
【0025】なお、回転速度の切換えを必要とせずに、翼角度の切換えだけで風量の切換えに対応する場合には、当然に上記のような演算を必要としない。
【0026】最適切換方法決定部10で決定する必要のある事項としては上記のような事項の他に、トンネル換気設備が複数の地区、例えばA地区とB地区に分かれており、各地区ごとに電源の制御盤が設けられているように場合に、これら各地区について同時に切換えを行なうのか、あるいは何れかを優先させて切換えるかなどの選択がある。例えばA地区を先に切換える場合、先ずA地区に対して運転切換指令を出力すると共に、A、B両地区の電力量を計測し、電力量が一定値を超えることのないよう、一定時間B地区の運転切換タイミングを遅らせる。次にA地区の切換えが終了し、電力変化に影響がないことを確認してから、B地区に対して運転切換指令を出力し、これら両地区が同時に切換え動作となることのないようにインターロックをかける。
【0027】送風機出力部11は、以上により決定された各送風機の運転方法を各送風機に対して適切なタイミングによる制御信号として出力する。
【0028】以上のような制御により運転中に何れかの送風機に故障が生じた場合には、それが故障検出部5で検出され、これに応じて故障送風機を除いた残りの送風機で可能な送風量を運転可能風量演算部6が演算し、それに基づいた送風機換気量の指令が運転パターン候補抽出部8へ出力され、これに応じてあらためて候補運転パターンの抽出以降の処理がなされる。このため、全台が運転中に故障機が発生して代替機のない場合でも、残りの運転可能な送風機について抽出できる候補運転パターンから最適運転パターンを選択することで最適な対応を行なうことができる。」

c.「【0030】
【発明の効果】本発明によると、送風量の切換えに際して回転速度の切換えと翼角度の切換えとを最適に使い分けることができ、また回転速度の切換えを必要とする場合でも、空気汚染のトレンドに応じた切換え方法を選択することができ、また運転中の送風機に故障が発生した場合の対応をより的確に行なうことができる等々、よりきめの細かい制御が可能となり、さらに一層省エネを図りつつ、トンネル内の換気状態をより適切に且つ安定的に制御することが可能となる。」


《発明の認定》
したがって、刊行物2には、
「 回転速度による送風量調節に加えて翼角度による送風量調節も行える送風機をトンネル内の換気用に複数台設置し、これら複数台の送風機の運転状態をトンネル内の空気の汚染状況に応じて制御するトンネル換気制御方法であって、
トンネルの交通量や空気透明度それに有害ガス濃度などから得た空気の汚染状況に基づいて得られたトンネル内の換気に必要な全体送風量に対し、候補となる運転パターンを、運転させる送風機の台数、各運転送風機の回転速度及び各運転送風機の翼角度の各パラメータの組み合わせによる運転パターンから抽出する運転パターン候補抽出部8、
この候補運転パターンから、換気のためのエネルギー(消費電力)が最小である運転パターンを最適運転パターンとして選択し決定する運転決定部9、
この最適運転パターンによる運転に、それまでの運転を切り換えるについて最適な方法、例えば起動負荷の増大を防ぐために1台ごと、あるいは適宜な台数ごとに順序起動させる等の方法を選択する最適切換方法決定部10、
により省エネルギーを図るトンネル換気制御方法。」
という発明が記載されている。




5.対比・判断
(1)本件発明1について
イ.対比
本件の請求項1に係る発明(以下、「本件発明1」という。)と、刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明における、
「外気温が高い場合は周波数の上限値を高く、外気温が低い場合には周波数の上限値を低くした状態で運転し、」、及び、
「外気温が低い場合は吸込圧力の下限値を下げて間欠運転を少なくし、外気温が高い場合は吸込圧力の下限値を引き上げて間欠運転を多くし、外気温が中間の場合は吸込圧力の下限値を中間値に変更し、」は、
本件発明1における、
「相互に上限値が異なる能力制御」、及び、
「相互に制御率が異なる間欠運転」、
にそれぞれ相当する。
また、刊行物1に記載された発明における「外気温(外気ないし凝縮温度)」は、本件発明1における「外気温度(Te)及び外気湿度(He)で計算される指標(D2,A)」と、「外気の状況を示す指標」である点では共通性を持つ。
さらに、本件発明1では、「外気温度(Te)及び外気湿度(He)で計算される指標(D2,A)に対して所定の範囲内に室内温度を設定する運転が可能なもの(D3)を、前記複数の制御方法と前記複数の制御方法を実施したときに前記所定の範囲内に前記室内温度を設定する運転が可能な前記指標との関係に基づいて選択する」とされている。これに対して、刊行物1に記載された発明は、「・・・ショーケース用冷凍機の制御方法。」であり、冷凍機を有するショーケースでは、ショーケース内に収蔵される物品を所定の温度範囲に冷却することを前提として運転することは自明である。そして、刊行物1には、間欠運転について、「ところで、外気温等の低い冬期のような場合、・・・起動の際などに・・・急激に吸込圧力が低下し・・・下限値を超え・・・冷媒回収して停止すると無駄が多くなる。そこで、・・・この下限値を下げてやり無益に冷媒回収に入らないようにする。逆に、外気温等の高い夏期のような場合、全体的に負荷が大きいため、下限値以下になる可能性は少なくなるが、上述したように下限値を引き上げてやると、・・・停止回数が増えて少しでも間欠運転が多くなり省エネルギー効果を出すことができる。このような、凝縮温度に応じた下限値の変化量は、例えば第3図に示す程度が適切である。」(上記引用箇所4.(1)d.中程以降)と記載されている。また、刊行物1には、周波数の上限値を変更する運転について、「ところで、外気温が高く凝縮器温度も高い場合は、・・・上述したように周波数の上限値が高くなるので、圧縮機能力が十分発揮される。 逆に、外気が低く凝縮器温度も高い場合は、負荷的に小さく、圧縮機能力は小さくも十分対応できる。したがって、・・・周波数の上限値を下げた状態での運転が望ましい。・・・周波数の上限値が低くなるので無駄な運転がなくなる。・・・外気ないし凝縮温度に応じた上限能力値の変化量は、例えば第8図に示す程度が適当である。」(上記引用箇所4.(1)f.前半)と記載されている。このように、刊行物1に記載された発明において、間欠運転は例えば第3図に示すような外気温(外気ないし凝縮温度)との関係で、また、周波数の上限値を変更する運転は、例えば第8図に示すような外気温(外気ないし凝縮温度)との関係で、それぞれの運転が選択される。そして、この選択が、ショーケース内に収蔵される物品を所定の温度範囲に冷却することを前提として行われるのは言うまでもない。そこで、両発明は、「外気の状況を示す指標に対して所定の範囲内に温度を設定する運転が可能なものを、前記複数の制御方法と前記複数の制御方法を実施したときに前記所定の範囲内に前記温度を設定する運転が可能な前記指標との関係に基づいて選択する」点では一致する。
なお、刊行物1における、外気温と凝縮温度との関係は、「外気温が低いと、凝縮温度センサ9で検出され周波数制御回路10の温度感知部5で感知される凝縮温度も低くなるため、制御部6は第1図に示す如く吸込圧力の下限値を低くしてやる。」を参照(上記引用箇所4.(1)d.冒頭)。

ロ.一致点
したがって、両発明は
「相互に上限値が異なる能力制御及び相互に制御率が異なる間欠運転を含む複数の制御方法から、外気の状況を示す指標に対して所定の範囲内に温度を設定する運転が可能なものを、前記複数の制御方法と前記複数の制御方法を実施したときに前記所定の範囲内に前記温度を設定する運転が可能な前記指標との関係に基づいて選択するステップを備える制御方法。」
で一致する。

ハ.相違点
そして、両発明は下記のA?Eの5点で相違する。
相違点A:本件発明1では、「空気調和機(16)の」制御方法であって、所定の範囲内に「室内温度」を設定する運転が可能としている。
これに対し、刊行物1に記載された発明は、ショーケース用冷凍機の制御方法であり、同発明では、ショーケース内に収蔵される物品が所定の温度範囲に冷却されるのは自明であるが、「室内温度」を所定の範囲内に設定していない。

相違点B:本件発明1では、制御にあたって、「外気温度(Te)及び外気湿度(He)で計算される指標(D2,A)」に対して制御を選択する。
これに対し、刊行物1に記載された発明では、外気温(外気ないし凝縮温度)に対して制御(運転)を選択する。

相違点C:本件発明1は「(b)前記ステップ(a)において選択された前記複数の制御方法の前記削減率(Fi(A))を求め、前記ステップ(a)において選択された前記複数の制御方法から、前記消費電力の削減率(Fi(A))が最大となるもの(D4)を選択するステップと(S6i,S7i,S8)、」を備えている。
これに対し、刊行物1に記載された発明では、本件発明1の上記(b)のようなステップを備えていない。

相違点D:本件発明1では、制御にあたって、「(c)前記複数の制御方法のうち、前記ステップ(b)において選択されたものに基づいて、制御スケジュール(D5)を生成するステップと」
を備えている。
これに対し、刊行物1に記載された発明では、制御スケジュールを生成していない。

相違点E:本件発明1では、制御にあたって、「前記ステップ(a)においていずれの前記複数の制御方法(T1?Tn)も選択されなかった場合には、ステップ(b),(c)の実行に替えて、
(d)定格能力を上限として前記空気調和機(16)を制御する」ようにしている。
これに対し、刊行物1に記載された発明では、このような制御を行なっていない。



ニ.相違点の検討
《相違点Aについての検討》
刊行物1に記載された発明は、「圧縮機の吸込圧力を一定に保つよう制御するショーケース用冷凍機の制御方法」に関するものであるが、こうした、圧縮機の吸込圧力が一定になるように制御される冷凍機を空気調和機に用いることは、周知の技術である。(もし、周知文献が必要であれば、例えば、
*特開昭59-131845号公報
「本発明は、・・・その目的とするところは、冷凍サイクルの変動の少い運転を可能として、快適な空調による効率向上を図り、・・・とするものである。」(第2頁左下欄7?12行)
「したがって、吐出圧力Pは最小設定圧P0と最大設定圧P1との間の適正圧力範囲内に極めて長い時間留り、設定温度に近い暖房運転を得る。・・・なお、上記実施例においては、特に圧力センサ14の吐出圧力P検知にもとづいて圧縮機11の回転数を制御するようにしたが、これに限定されるものではなく、・・・吸込圧力検知などにより、負荷状態を検知して圧縮機11の回転数を制御するようにしてもよい。」(第3頁左上欄18行?左下欄6行)
*特開平7-158937号公報
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、冷凍サイクル制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】・・・・
【0003】次に動作について説明する。冷房運転時、圧縮機1の周波数は、インバータ4によって吸込圧力センサ7の検出する吸込圧力がほぼ一定になるまで制御される。次いで、圧縮機1の吸込圧力が安定したときに、インバータ4の入力電流を電流センサ12が検出し、この検出した電流値が更に小さくなるように、送風機制御部10が凝縮器側送風機9の回転数を制御して、送風量を変化させる。この制御の繰り返しによって、制御部8が、圧縮機1の吸込圧力がほぼ一定状態での、外気温度変化に対応した各凝縮温度毎のインバータ4の最小入力(圧縮機1と凝縮器側送風機9との最小入力和)を実現する凝縮器側送風機9の回転数を決定し、この回転数で制御する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の送風機の制御方法は以上のように構成されているので、圧縮機の周波数制御と凝縮器側送風機の回転数とを互いに関連させずに制御して、インバータの入力電流を下げるため、・・・圧縮機の吸込圧力がなかなか安定せず、・・・インバータ入力(圧縮機と凝縮器側送風機の総消費電力)がなかなか最小値にならないばかりか、冷凍サイクルも安定しない。・・・という問題があった。
【0005】この発明は、係る問題点を解決するためになされたもので、・・・冷凍システムの総消費電力を最小にする信頼性の高い冷凍サイクル制御装置を得ることを目的とする。」
「【0006】・・・常に室内温度がスピーディに快適な冷・暖房温度になり、冷凍サイクルをスピーディに安定させ、冷凍システムの総消費電力を最小にする信頼性の高い冷凍サイクル制御装置を得ることを目的とする。」
等を参照。)
そうすると、刊行物1に記載された発明の「・・・ショーケース用冷凍機の制御方法」に、上記の周知技術を組み合わせ、これを空気調和機用のものとするとともに、所定の温度範囲に設定されるものを、所定の室内温度範囲に設定されるものとして、相違点Aにおける本件発明1の特定事項に到達することは当業者であれば容易である。
なお、審判請求人は、平成19年2月22日付け意見書第3頁37?41行において、「しかしながら刊行物1ではその第3頁右下欄第16行乃至第19行に記載されていますように、周波数を可変とするのは室内環境ではなく、吸い込み圧力を一定にするためのものです。かかる刊行物1に対して室内環境に基づいて制御してしまえば、刊行物1の技術を損なってしまいます。即ち相違点Aは刊行物1についての阻害要因になると思料します。」
と述べている。
しかし、上記周知文献の下線を付した箇所の記載からも明らかなように、空気調和機の冷凍サイクル制御において、吸込圧力を一定にすることと、室内環境を快適なものとする(室内温度を所定の範囲内に保つ)ことが両立することは周知の事項であり、吸込圧力を一定にするために周波数を可変とする刊行物1に記載された発明を、更に、室内環境を快適にするものとすることは十分可能であり、請求人の言うように「刊行物1の技術を損なってしま」うことはなく、「阻害要因になる」との指摘は当を得たものとは言えない。


《相違点Bについての検討》
外気温度及び外気湿度で計算される指標(例えば不快指数あるいは外気エンタルピー)に基づいて制御することは周知の技術にすぎない。(もし、周知文献が必要であれば、例えば、
*特開平1-296035号公報
「この発明は、・・・空調負荷に応じて圧縮機を能力制御運転する空気調和装置に関するものである。」(第1頁右下欄4?8行)
「なお、上記実施例では、外気温を検出して、入力調整手段4aが気温のみによって人力調整をしたが、この他に人の快、不快に関係のある、例えば、湿度等の外気状態を検出し、その検出値に基づいて不快指数を算出し、その値が所定値を超えたときにコンバータの入力を減少させるようにすれば、さらに、適切な運転制御ができる。」(第4頁左下欄1?7行)
*特開2000-257941号公報
「【0003】・・・従来、建物の利用時間帯にあって空調環境条件を損なわない範囲で、強制的に空調機を間欠的に停止させる間欠運転制御が行われている。」
「【0011】なお、外部環境条件としては、外気温度または外気温度および外気湿度から求める外気エンタルピーを用いるが、その他の外部環境要因を用いてもよい。」
*特開昭57-155045号公報
「本発明は・・・外気条件に応じて前記電動圧縮機の能力を制御することにより補正し、室内の冷暖房負荷に適合するようにして、居住者の快適感の一層の向上、消費電力の低減をはかろうとするものである。」(第2頁左上欄6?12行)
「以上は冷房の場合について説明したが、暖房の場合も同様である。また外気温度の上下により制御するとしたが、暖房の場合は、外気温度、湿度を測定して外気エンタルピを求め、その大小に応じて上記制御論理を実行するようにすれば、より効果的である。」(第3頁右上欄8?13行)
等を参照。)
したがって、刊行物1に記載された発明、及び上記の周知技術に基づいて、相違点Bにおける本件発明1の特定事項に到達することは当業者であれば容易である。


《相違点Cについての検討》
刊行物2に記載された発明では、上記4.(2)《発明の認定》の項で認定されているように、まず、候補となる運転パターンが「運転パターン候補抽出部8」により抽出され、次いで、この運転パターン候補の内から「運転決定部9」により、エネルギー(消費電力)が最小であるものが決定される。
他方、刊行物1に記載された発明では、外気温(外気ないし凝縮温度)との関係から、周波数の上限値を変更する運転、及び、吸込圧力の下限値を変更することによる間欠運転がそれぞれ、例えば第3図及び第8図に図示される関係から選択される(上記「イ.対比」の項中程参照)。そうすると、このように選択された2つの運転の内から、省エネルギー達成の程度により、どのようにして1つを決定するのかという課題が、同発明に存在するのは自明である。しかるに、刊行物2に記載された発明には、上記のように、この課題を解決するための手段(運転決定部9)が示されている。
このように、刊行物1及び2に記載された発明には課題の共通性があり、刊行物1に記載された発明において選択された2つの運転の内からから1つを決定するに際し、刊行物2に記載された発明の「運転決定部9」を採用し、エネルギー(消費電力)が最小であるように決定し、よって、相違点Cにおける本件発明1の特定事項に到達することは当業者であれば容易である。


《相違点Dについての検討》
空気調和機の制御にあたって、制御スケジュールに基づいて行なうことは、周知の技術にすぎない。(もし、周知文献が必要であれば、例えば、
*特開平3-291439号公報
「本発明は地域冷暖房のための冷水、温水等を発生するのに好適な熱源プラントの運転制御装置に関する。」(第1頁右下欄15?17行)
「本発明は・・・運転制御装置を提供しようとするものであって、その要旨とするところは、負荷に応して複数の機種及び台数の冷・温熱発生機の運転台数を制御する熱源プラントの運転制御装置において、予測負荷データの入力手段と、・・・運転モード候補を運転コストの低い順に複数組選出する運転モード選出手段と、選出された運転モード候補の中から一組づつ運転モードを選択してこれを時系列順に並べる運転パターン作成手段と、・・・一日の運転スケジュールを作成する運転スケジュール作成手段とを備えていることを特徴とする熱源プラントの運転制御装置にある。」(第2頁左上欄17行?左下欄9行)
*特開平6-131323号公報
「【0058】・・・このように、入力要因として外気温,外気温の変化量,不快指数,熱負荷及び熱負荷の変化量の各データを同時に考慮して数時間後の空調負荷を予測するモデルを生成することで、現象の正確な把握が可能になり、この結果、正確な負荷予測を行うことが可能になる。
【0059】・・・その結果として、この予測値を基にオペレーションや制御を行う場合、正確なスケジューリングやパラメータの設定等を行うことができる。即ち、空調負荷予測においては、多数の冷凍機等の熱供給機器の発停(スケジューリング)を正確なタイミングで行えることになり、またビルの空調コントローラに対しては適切なパラメータを設定することができる。」
等を参照。)
したがって、刊行物1に記載された発明、及び、上記の周知技術に基づいて、相違点Dにおける本件発明1の特定事項に到達することは当業者であれば容易である。


《相違点Eについての検討》
刊行物1に記載された発明では、ショーケース内に収蔵される物品が所定の温度範囲に冷却されるという前提で、周波数の上限値を変更する運転、又は、吸込圧力の下限値を変更することによる間欠運転のいずれかの運転を行なう(上記「イ.対比」の項中程参照)のであるから、負荷が冷凍機の最大能力を超えるほど大きい場合、冷凍機を、運転周波数の上限値が最大であり、間欠運転も起こらないような最大能力運転とし、よって、(たとえ不十分ではあっても)可能な限り最も負荷に近い運転とすることは当業者が通常採用する制御であると認められる。
したがって、相違点Eにおける本件発明1の特定事項のようにすることは、当業者が必要に応じて容易に行えた事項である。


ホ.本件発明1の効果についての検討
本件発明1の効果は、刊行物1及び2に記載された発明、及び上記の周知技術から当業者により容易に推測されたものである。


ヘ.まとめ
このように、本件発明1は、本願の出願前に国内において頒布された刊行物1及び2に記載された発明、及び上記の周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。



6.むすび
以上のように、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものである。
したがって、本件の請求項2ないし9に係る発明については検討するまでもなく、本件出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-18 
結審通知日 2007-05-22 
審決日 2007-06-06 
出願番号 特願2002-21728(P2002-21728)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (F24F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩本 正義  
特許庁審判長 新海 岳
特許庁審判官 会田 博行
佐野 遵
発明の名称 空気調和機の制御方法及び空気調和システム  
代理人 吉竹 英俊  
代理人 有田 貴弘  
代理人 吉田 茂明  
代理人 福市 朋弘  

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