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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F25D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25D
管理番号 1161454
審判番号 不服2005-25034  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-26 
確定日 2007-07-23 
事件の表示 特願2001-263269「ガラス管ヒータおよびガラス管ヒータを備えた冷蔵庫」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月12日出願公開、特開2003- 75053〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件審判請求に係る出願は、平成13年8月31日の出願であって、平成17年12月5日付けで拒絶査定(発送日:同年12月13日)がなされたところ、平成17年12月26日に拒絶査定不服審判が請求され、平成18年1月18日に手続補正がなされたものである。

第2 平成18年1月18日付けの手続補正について
[結論]
平成18年1月18日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 平成18年1月18日付手続補正による発明
平成18年1月18日付手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「可燃性冷媒を適用した冷凍サイクルの冷却器近傍に配置され、ガラス管と、ヒータと、前記ガラス管の両端面に設けたキャップと、リード線からなるガラス管ヒータにおいて、前記ガラス管全面を覆うように可燃性冷媒の着火による危険防止のための金属メッシュの保護部材を取り付けたことを特徴とするガラス管ヒータ。」
と補正された(以下、「本件補正発明」という。)。
なお、平成18年1月18日付手続補正書の請求項1に記載された「請求項1記載の」は誤記であり、同じく「特徴とするガラス管ヒータ」は「特徴とするガラス管ヒータ。」の誤記と認めて、上記のように認定した。
本件補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「保護部材」を「可燃性冷媒の着火による危険防止のための金属メッシュの保護部材」と限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、又、当該事項は、本願の願書に最初に添付した明細書(以下、「当初明細書」という。)の【0026】、【0027】に記載された事項であるから、当初明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
そこで、本件補正発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、即ち、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か、について検討する。

2 引用例に記載された事項
原査定における拒絶の理由に引用された特開平11-257831号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。
A.「【発明の属する技術分野】この発明は、冷媒に可燃性冷媒を用いた冷蔵庫に関する。」(【0001】)
B.「炭化水素系冷媒は、強可燃性であるため、冷蔵庫の冷媒として使用した場合、安全対策を施す必要がある。
特に、何らかの原因で可燃性冷媒が冷蔵庫内部に漏洩した場合には、冷蔵庫の庫内は、密閉状態にあるために高い濃度で滞留しやすい。冷蔵庫内に発火源があると、引火・爆発を起こす可能性があり、前記した除霜用ガラス管ヒータが発火源となり易い。
・・・中略・・・。しかしながら、運転中は、ヒータによってガラス管内の空気が加熱されることにより、管内圧力が上昇する。このため、ガラス管が破裂し、漏洩冷媒がヒータによって引火・爆発する危険性がある。
また、ガラス管の表面温度が、何等かの要因で炭化水素系冷媒であるR290やR600aなどの発火温度(400?500℃)以上となった時に、ガラス管の表面で引火し、爆発する可能性もある。
そこで、この発明は、可燃性冷媒が万一漏洩したとしても引火・爆発の恐れのない除霜用ガラス管ヒータを用いた冷蔵庫を提供することを目的としている。」(【0006】?【0010】)
C.「【課題を解決するための手段】前記目的を達成するために、この発明は、圧縮機から吐出された冷媒が凝縮器、絞り装置、蒸発器を通り、再び圧縮機に戻る冷凍サイクルを備え、冷媒に可燃性冷媒を用いた冷蔵庫において、前記蒸発器の霜取りを行なう除霜用ガラス管ヒータのガラス管内を、真空にする。
これにより、ヒータに通電しても管内の気圧が上昇することがないので、ガラス管の破裂を防止できると共に、さらにガラス管内空気を介してガラス管が加熱されるのを防止するため、ガラス管の表面温度を低く抑えることができる。
・・・中略・・・
また、この発明にあっては、ガラス管の破損を検知する手段を擁し、ガラス管の破損を検知したときにヒータの通電を停止する。これにより、ガラス管破損によりヒータが露出したとき、冷媒漏れによる引火・爆発を未然に防げる。
また、この発明にあっては、ガラス管内の気圧を検知する手段を擁し、ガラス管内気圧の過度の上昇を検知したときにヒータの通電を停止する。これにより、ガラス管内気圧の上昇によるガラス管表面温度上昇、ガラス管破損によるヒータ露出による、漏洩冷媒の引火・爆発を防止する。
また、この発明にあっては、ガラス管の表面温度を検知する手段を擁し、ガラス管表面の過熱を検知したときにヒータの通電を停止する。これによりガラス管表面温度上昇による漏洩冷媒の引火・爆発を防止する。」(【0011】?【0018】)
D.「蒸発器11の下部には、蒸発器11に着霜した霜を取除く除霜用ガラス管ヒータ19が配置されている。」(【0023】)
E.「除霜用ガラス管ヒータ19は、図1に示す如く、円筒状のガラス管21と、ガラス管21の両端を密封するキャップ23と、ガラス管21内に配置されたヒータ25とから成り、ヒータ25は、制御部27によって制御されるようになっている。」(【0024】)

3 引用例に記載された発明
上記摘記事項及び図1?図3、図6?図9等の記載からみて、引用例には次のような発明(以下、「引用例発明」という。)が記載されていると認められる。
可燃性冷媒を適用した冷凍サイクルの蒸発器の下部に配置され、円筒状のガラス管と、ヒータと、ガラス管の両端面に設けたキャップとからなる除霜用ガラス管ヒータ。

4 対比・判断
本件補正発明と引用例発明とを対比する。
引用例発明の「蒸発器」は、本件補正発明の「冷却器」に相当し、又、引用例記載のヒータにリード線が接続されることは言うまでもないことである。更に、本件補正発明の「ガラス管ヒータ」も除霜のために使用されるものである。
したがって、両発明は、次の一致点、相違点を有するものである。
[一致点]
可燃性冷媒を適用した冷凍サイクルの冷却器近傍に配置され、ガラス管と、ヒータと、前記ガラス管の両端面に設けたキャップと、リード線からなるガラス管ヒータ。
[相違点]
本件補正発明では、ガラス管全面を覆うように可燃性冷媒の着火による危険防止のための金属メッシュの保護部材を取り付けているのに対して、引用例発明では、そのような保護部材を取り付けていない点。

上記相違点について検討する。
本件補正発明の金属メッシュの保護部材は、何らかの要因で可燃性冷媒が庫内に漏れ、可燃性冷媒に着火してガラス管が破損した場合、破損したガラス管が、多方面に飛散することを防止するためのものである(平成15年1月31日付全文補正明細書【0008】、【0009】参照)。
ところで、可燃性冷媒を用いた冷蔵庫においては、可燃性雰囲気の引火・爆発の危険性のあること、そのための対策(防爆対策)として、火元或いは相当部を防爆金網で覆うこと(所謂、防爆構造)は、従来周知の技術的課題、及び、解決手段である(例えば、特開平8-200944号公報【0031】等参照)。
他方、ヒータと同様に、ガラス管からなるランプにおいて、何らかの原因でガラス管が破損することがあり、そのような場合に、ガラスの飛散防止のために、該ガラス管の全面を覆うように、金網を取り付けることも、周知の技術手段(例えば、特開平5-217554号公報、特開平5-325897号公報等参照)である。
してみると、引用例発明においても、可燃性冷媒が漏洩し引火・爆発の恐れがあることは自明の課題であり、万一引火・爆発が発生すれば、破損したガラス管が多方面に飛散して危険であることも自明であるから、何らかの危険防止手段を講じることは、当業者が、普通に採用する技術事項であるところ、上記のとおり、ガラス管が破損した場合のガラスの飛散防止のために、ガラス管を覆うように金網(金属メッシュ)を取り付けることは周知の技術手段であるから、引用例発明のヒータにおいても、周知の技術手段を採用して、カラス管を覆うように金属メッシュを取り付けること、即ち、上記相違点の構成とすることは、当業者が容易に想到し得る設計事項である。
[作用効果について]
本件補正発明の奏する作用効果も、引用例発明及び周知の技術手段の奏する作用効果から、当業者が予測できる範囲のものであって、格別なものではない。
以上のとおり、本件補正発明は、引用例発明及び周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5 むすび
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
上記のとおり、本件補正は却下されたので、本願の請求項1に係る発明は、平成15年1月31日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「可燃性冷媒を適用した冷凍サイクルの冷却器近傍に配置され、ガラス管と、ヒータと、前記ガラス管の両端面に設けたキャップと、リード線からなるガラス管ヒータにおいて、前記ガラス管全面を覆うように保護部材を取り付けたことを特徴とするガラス管ヒータ。」

2 引用例に記載された事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記「第22」に記載したとおりである。

3 引用例に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例に記載された発明は、上記「第23」に記載したとおりである。

4 対比・判断
本願発明は、上記「第2 1」に記載した本件補正発明から、「保護部材」について「可燃性冷媒の着火による危険防止のための金属メッシュの保護部材」と限定する事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、さらに構成要件を限定したものに相当する本件補正発明が、上記「第2 4」に記載したとおり、引用例発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様の理由により、引用例発明及び周知の技術手段に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-08 
結審通知日 2007-05-15 
審決日 2007-05-29 
出願番号 特願2001-263269(P2001-263269)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25D)
P 1 8・ 575- Z (F25D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 上原 徹丸山 英行  
特許庁審判長 岡 千代子
特許庁審判官 佐野 遵
間中 耕治
発明の名称 ガラス管ヒータおよびガラス管ヒータを備えた冷蔵庫  
代理人 本田 紘一  
代理人 本田 紘一  

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