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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1161456
審判番号 不服2006-5720  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-29 
確定日 2007-07-23 
事件の表示 平成9年特許願第282788号「鉄強化食物繊維類含有飲食品及び飼料」拒絶査定不服審判事件〔平成11年4月20日出願公開、特開平11-103824〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯・本件発明

本件出願は、平成9年9月29日の特許出願であって、その請求項1に係る発明は、平成19年4月23日付け手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。(以下、「本件発明」という。)
「【請求項1】鉄剤として、重炭酸イオンを介してラクトフェリンに鉄が結合した鉄-ラクトフェリン、あるいは、炭酸及び/又は重炭酸-鉄-ラクトフェリン複合体を配合することを特徴とする鉄分を有効に利用できる鉄強化食物繊維類含有飲食品又は飼料。」

2.引用刊行物記載事項

これに対して、当審における平成19年2月13日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本件出願日前に頒布された下記刊行物(1)乃至(2)(以下、「引用例1乃至2」という。)には、以下の事項が記載されている

(1)特開昭54-147978号公報
(a)1.食餌用植物繊維と天然プロテイン酸金属塩との混合物を含むことを特徴とする食用組成物。2.当該植物繊維が穀類繊維であることを特徴とする特許請求の範囲第1項の食用組成物。3.当該プロテイン酸金属塩がカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛又はコバルトのプロテイン酸塩であることを特徴とする特許請求の範囲第1項又は2項の食用組成物。4.当該プロテイン酸金属塩が牛肉のアルブミン,牛乳カゼイン等の如き天然蛋白質より得られたものであることを特徴とする特許請求の範囲第1項ないし3項のいずれかの食用組成物。・・・(特許請求の範囲)
(b)かかる食物上の欠陥には自覚して植物繊維の摂取量を、特にリグニンより多糖類に富んでいるので野菜や果物よりも有益である穀類繊維の摂取量を増すべきだと強調される。こうすれば、便通の量と粘度が増大し、腸内及び腹内圧が減少し、胆汁酸塩の代謝を促進し、炭水化物と脂肪の吸収を遅延減少させる。しかしながら、かかる好都合な作用には2次的な望ましくない作用が伴い、特に蛋白質とミネラルが減耗する。(公報第2頁左上欄第6?15行)
(c)脱ミネラル化の原因は、カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛等を捕捉する繊維のフィチン酸のキレート性によるとされてきたが、不都合なことには、脱フィチン化反応を行っても、金属塩の低下はなくならない。金属減耗を誘発させているには繊維質そのものだからである・・・この発明によれば、食用植物繊維を天然のプロテイン酸金属塩と混合した場合には、消化器通過効果及び脂質代謝効果の如き繊維投与の利点を蛋白ミネラル系の欠点なく得ることができることができることが見出された。すなわち、この発明は、植物繊維、望ましくは穀類繊維(小麦麩の如き)と天然の蛋白質(牛乳、牛肉の如き)の金属塩(カルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛 、コバルト、等の塩)との混合物を含む食用組成物を得るものである。(公報第2頁右上欄第1行?左下欄第1行)

(2)特開平9-84522号公報
(d)【請求項1】ラクトフェリン類1分子当たり鉄を少なくとも3原子を保持した鉄-ラクトフェリンを配合してなる安定な鉄強化食用油脂類。 【請求項2】 鉄-ラクトフェリンが、ラクトフェリン類に炭酸及び/または重炭酸と鉄とが結合した鉄-ラクトフェリン結合体及び/または鉄-ラクトフェリン複合体である請求項1記載の鉄強化食用油脂類。 【請求項3】 鉄-ラクトフェリン結合体が、ラクトフェリン類1g当たり、15mg以上の炭酸及び/または重炭酸と、10?700mg の鉄とが結合した、鉄-ラクトフェリン結合体である請求項2に記載の鉄強化食用油脂類。 【請求項4】鉄-ラクトフェリン複合体が、ラクトフェリン類1g当たり、35?400mg の炭酸及び/または重炭酸と、40?500mg の鉄とが結合した、鉄-ラクトフェリン複合体である請求項2記載の鉄強化食用油脂類。 【請求項5】請求項1?4に記載の鉄強化食用油脂類を含有せしめた安定な鉄強化食品。(【特許請求の範囲】)
(e)(【課題を解決するための手段】ラクトフェリンは、通常は、その1分子当たり鉄を2原子キレート結合する能力を有する。これは、ラクトフェリン1g 当たり鉄14mgを結合することに相当する。本発明で使用する鉄-ラクトフェリンは、ラクトフェリンに特定の処理をほどこすことによって鉄-ラクトフェリン1分子当たり鉄を少なくとも3原子安定に保持できるようにしたものである。このようにすることによって、多量の鉄を強化することができる。このような鉄-ラクトフェリンは従来知られている。例えば、ラクトフェリン溶液に鉄塩を添加し、アルカリを加えて溶液のpHを上げて得られる鉄を安定に保持するラクトフェリン粉末 (特開平7-17825 号公報) 、ラクトフェリンのアミノ基に重炭酸イオンを介して鉄が結合した耐熱性ラクトフェリン-鉄結合体 (特開平6-239900号公報) あるいは炭酸、重炭酸及びラクトフェリンを含む溶液に鉄を含有する溶液を混合して得られる炭酸または重炭酸-鉄-ラクトフェリン複合体(特願平7-86023 号) 等が知られている。本発明における鉄-ラクトフェリンは、これらのいずれのものでも用いられる。鉄-ラクトフェリンは鉄とラクトフェリンとが結合した状態のものであって、鉄とラクトフェリンとが直接結合していてもあるいは他の物質を介して結合した状態のものであっても良く、いわゆる、鉄がイオンの状態で存在していないものであれば良い。特に、ラクトフェリン類に炭酸及び/または重炭酸と鉄とが結合した鉄-ラクトフェリン結合体または複合体を例示することができ、これらの鉄化合物を用いることが好ましい。これらの鉄-ラクトフェリン結合体や鉄-ラクトフェリン複合体は、耐熱性を有しているので、食用油脂類を殺菌や溶解などの加熱処理に付してもこれらの鉄化合物の変性や沈澱は起こらない。また、これらの鉄-ラクトフェリン結合体や鉄-ラクトフェリン複合体は、従来の鉄剤にあったような鉄の収斂味や金属味などの欠点も無いという特徴をも有するので、風味の点でもより好ましいといえる。(段落【0009】)

3.対比・判断

本件発明は、鉄剤として重炭酸イオンを介してラクトフェリンに鉄が結合した鉄-ラクトフェリン、あるいは、炭酸及び/又は重炭酸-鉄-ラクトフェリン複合体を食物繊維含有の飲食品又は飼料に含有させて、鉄分が食物繊維に吸着されることなく、鉄分を有効に利用できることによって、健康維持のために鉄分と食物繊維を同時に安定的に摂取できるものである。
これに対して、引用例1には、上記記載事項(a)乃至(c)によれば、「食餌用植物繊維とカルシウム、マグネシウム、鉄、亜鉛等天然プロテイン酸金属塩との混合物を含む食用組成物」(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。
本件発明と引用発明とを対比すると、前者の「重炭酸イオンを介してラクトフェリンに鉄が結合した鉄-ラクトフェリン、あるいは、炭酸及び/又は重炭酸-鉄-ラクトフェリン複合体」は、天然プロテイン酸金属塩といえるから、
両者は「天然プロテイン酸金属塩を配合したミネラル(金属)を有効に利用できるミネラル(金属)強化食物繊維類含有飲食品」である点で一致しており、
前者が、ミネラルを鉄と特定し、天然プロテイン酸金属塩について「重炭酸イオンを介してラクトフェリンに鉄が結合した鉄-ラクトフェリン、あるいは、炭酸及び/又は重炭酸-鉄-ラクトフェリン複合体」と特定しているのに対して、後者にそのような特定がない点で相違している。
そこで、上記相違点について検討する。
引用例1には、ミネラルとして鉄が挙げられ、天然蛋白質として、牛乳が挙げられている(上記記載事項(c))ことから、引用発明において、乳由来の天然プロテイン鉄塩を使用することは当業者が当然に想起するところである。
ここで、引用例2に記載されたように、乳由来のラクトフェリンと鉄を反応させて得た重炭酸イオンを介してラクトフェリンに鉄が結合した鉄-ラクトフェリン、あるいは、炭酸及び/又は重炭酸-鉄-ラクトフェリン複合体は、鉄補給用食品の鉄供給源として、鉄を多量かつ安定に保持し得ることは周知のことである。(上記記載事項(e))
そうすると、引用発明も引用例2に記載された周知発明も共に鉄を強化した食品に関するものであることから、引用発明において、鉄強化食品として天然プロテイン鉄塩を使用する際に、食品中で他の鉄化合物より鉄を多量かつ安定に保持し得る鉄供給源である、周知の重炭酸イオンを介してラクトフェリンに鉄が結合した鉄-ラクトフェリン、あるいは、炭酸及び/又は重炭酸-鉄-ラクトフェリン複合体を使用することに格別の困難性はなく、それにより、当業者が予期し得ない効果を奏するものでもない。

そして、本件発明の明細書記載の効果は、引用例1乃至2から当業者が予測しうる程度のものにすぎない。

したがって、本件発明は、上記刊行物1乃至2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4. むすび

以上のとおり、本件請求項1に係る発明は、当審で通知した上記拒絶理由通知に引用したその出願前に頒布された上記刊行物1乃至2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-17 
結審通知日 2007-05-22 
審決日 2007-06-04 
出願番号 特願平9-282788
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 飯室 里美  
特許庁審判長 河野 直樹
特許庁審判官 鵜飼 健
鈴木 恵理子
発明の名称 鉄強化食物繊維類含有飲食品及び飼料  
代理人 児玉 喜博  
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