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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01Q |
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管理番号 | 1161500 |
審判番号 | 不服2005-8857 |
総通号数 | 93 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-05-12 |
確定日 | 2007-07-27 |
事件の表示 | 平成 7年特許願第202704号「マルチビームアンテナ」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 2月 7日出願公開、特開平 9- 36655〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成7年7月18日の出願であって、平成17年3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月2日付けで審判請求時の手続補正がなされたものである。 第2.補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年6月2日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.本願発明と補正後の発明 上記手続補正(以下、「本件補正」という。)は補正前の平成16年10月18日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、 「反射鏡と、該反射鏡から該反射鏡の焦点距離だけ離隔して配置され、該反射鏡で集束された電波を受信する複数の給電部とからなり、前記焦点距離と前記反射鏡の中心軸と前記給電部との間隔により、前記複数の給電部と前記反射鏡とで形成されるそれぞれのビームの角度が決定されるマルチビームアンテナであって、 前記複数の給電部の前部に、前記給電部の幅より狭い幅であって、前記反射鏡で集束された電波を受信するホーンアンテナがそれぞれ備えられており、前記複数の給電部の前部間の配置間隔を、該給電部の後部間の配置間隔より狭くするよう前記反射鏡の中心軸を挟んで前記複数の給電部を配置することにより、前記反射鏡の中心軸と前記給電部との間隔を小さくして、前記複数の給電部を平行配置した場合より形成されるビームの角度を小さくしたことを特徴とするマルチビームアンテナ。」 という発明(以下、「本願発明」という。)を、 「反射鏡と、該反射鏡から該反射鏡の焦点距離だけ離隔して配置され、該反射鏡で集束された電波を受信する複数の給電部とからなり、前記焦点距離と前記反射鏡の中心軸と前記給電部との間隔により、前記複数の給電部と前記反射鏡とで形成されるそれぞれのビームの角度が決定されるマルチビームアンテナであって、 前記複数の給電部の前部に、前記給電部の幅より狭い幅であって、前記反射鏡で集束された電波を受信するホーンアンテナがそれぞれ備えられており、前記複数の給電部の前部間の配置間隔を、該給電部の後部間の配置間隔より狭くするよう前記反射鏡の中心軸を挟んで前記複数の給電部を配置することにより、前記反射鏡の中心軸と前記給電部の前部に設けられた前記ホーンアンテナとの間隔を前記複数の給電部を近接して平行配置した場合より小さくして、前記複数の給電部を平行配置した場合より形成されるビームの角度を小さくしたことを特徴とするマルチビームアンテナ。」 という発明(以下、「補正後の発明」という。)に変更することを含むものである。 2.補正の適否 (1)新規事項の有無、補正の目的要件 上記補正は、補正前の「前記反射鏡の中心軸と前記給電部との間隔を小さくして」という構成を、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、「前記反射鏡の中心軸と前記給電部の前部に設けられた前記ホーンアンテナとの間隔を前記複数の給電部を近接して平行配置した場合より小さくして」に限定することにより、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第3項(新規事項)及び第4項第2号(補正の目的)の規定に適合している。 (2)独立特許要件 上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。 [補正後の発明] 上記「1.本願発明と補正後の発明」の項で「補正後の発明」として認定したとおりである。 [引用発明及び周知技術] A.原審の拒絶理由に引用された特開昭63-173404号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 「従来のマルチビームアンテナは、例えば第5図に示すように、複数(例えば3個)の1次放射器21、同22、同23と、これらの1次放射器の放射電波をそれぞれ異なる方向へ反射する1つの回転放物面反射鏡5とからなり、1次放射器21、同22、同23は回転放物面の焦点Fの近傍に適宜距離離隔して配設されている。 なお、各1次放射器には、1次放射器21について例示するように、給電部6と低雑音増幅器7が当該アンテナ軸の軸線方向へ延在する如く配設されている。」(1頁左下欄6?16行目) 上記引用例の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、上記「低雑音増幅器7」を付設した「給電部6」は上記「(回転放物面)反射鏡5」で反射され焦点F近傍に集束した電波を「1次放射器」を介して受信する部材であることは当業者であれば自明のことである。したがって、上記「マルチビームアンテナ」は「反射鏡と、該反射鏡の焦点近傍に適宜距離離隔して配設され、該反射鏡で集束された電波を受信する複数の給電部とから」なるものである。また、上記「アンテナ軸」は、この軸方向へ「1次放射器」に連なる「給電部」が延在し、この軸に沿ってビームが放射されるのであるから、当該「アンテナ軸」は放射される「ビーム」の軸と一致するものであり、上記「1次放射器」を付設した複数の「給電部」は、各給電部の配設位置にそれぞれが放射するビームの放射方向が所望の向き(即ち、角度)になるように配設される(即ち、前記給電部の配設位置及び配設方向により、「前記複数の給電部と前記反射鏡とで形成されるそれぞれのビームの角度が決定される」)ものである。 また、前記「給電部の配設位置及び配設方向」について更に検討すると、第5図に記載されているように、例えば1次放射器21の給電部と他の1次放射器の給電部(1次放射器21の給電部と同様、その軸線は付設した1次放射器と一致している)はこれらの複数の給電部の前部間の配設間隔がこれらの給電部の後部間の配設間隔より狭くなるように配設されており、当該構成は上記ビームの角度に関する構成と符合するものである。 したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が開示されている。 (引用発明) 「反射鏡と、該反射鏡の焦点近傍に適宜距離離隔して配設され、該反射鏡で集束された電波を受信する複数の給電部とからなり、前記給電部の配設位置及び配設方向により、前記複数の給電部と前記反射鏡とで形成されるそれぞれのビームの角度が決定されるマルチビームアンテナであって、 前記複数の給電部の前部に、前記反射鏡で集束された電波を受信する1次放射器がそれぞれ備えられており、前記複数の給電部の前部間の配設間隔を、該給電部の後部間の配設間隔より狭くするよう前記複数の給電部を配設したマルチビームアンテナ。」 B.例えば特開平4-43704号公報(以下、「周知例1」という。)には、図面とともに以下の事項イが記載されており、また特開平3-270404号公報(以下、「周知例2」という。)には、図面とともに以下の事項ロが記載されている。 イ.「次に反射鏡8と第1及び第2の衛星受信用一次放射器10a,10bとの位置関係について詳しく説明する。反射鏡8の背面には取付体42が取付けてある。取付体42の添付片52は略台形形状をなし、幅の狭い端部57aは反射鏡8の支持腕取付部9a側に、また幅の広い端部57bは支持腕取付部9aの反対側にして、反射鏡8に取付けられる。第1の衛星受信用一次放射器10aは押え片58aをもって、また第2の衛星受信用一次放射器10bは押え片58bをもって、夫々支持腕9の先端部に固着される。一次放射器10a及び10bが固着された状態では、第2図に明示される様に、第1の衛星用一次放射器10aのホーン開口部60aと第2の衛星用一次放射器10bのホーン開口部60bとが反射鏡8に向かってほぼ一直線X上に並ぶ。この直線Xが取付体42の傾動体止付片53を含む平面Yと直交する様に、アーム9の持出方向が定められる。そしてこの直線X上には反射鏡8の電気的焦点Fが位置させてあり、第1の衛星用の一次放射器10aは焦点Fよりも反射鏡に近い側に、また第2の衛星用の一次放射器10bは焦点Fよりも反射鏡から遠い側に、互いに焦点Fを挾む位置にして夫々位置決めされる。これら第1及び第2の衛星用一次放射器10a、10bの指向方向は、一次放射器10bの方が一次放射器10aよりも支持腕取付部9a側になる様にされている。 次にコンバータ付きの一次放射器10a及び10bの取付けについて詳しく説明する。コンバータ付き一次放射器10a,10bの取付状態を示す第5図において、61a,61bは夫々一次放射器10a,10bに設けられた凹部、62a,62bは夫々支持腕9の先端部に設けられた凸部を示す。-次放射器10a,10bは、自体の凹部61a,61bを支持腕9の先端の凸部62a,62bにのせて、押え片58a、58bを夫々被せた後、ねじ棒66をねじ孔67に螺合させ、締め付けて固定される。68は透孔を示す。」(周知例1、4頁右上欄2?左下欄17行目) ロ.「このパラボラアンテナ2は、第3図及び第4図に示すようにオフセットパラボラ反射鏡4と、この反射鏡4の焦点位置の両側の近傍に支持アーム6、6、6によって同一水平面上に位置するように支持された2つの一次放射器8、10を有している。これら一次放射器8、10には、導波管を介してコンバータ7、9が結合されている。一次放射器8、10は、第5図に示すように反射鏡4の焦点Fを通る直線aを静止衛星B、Cの丁度中間を指向するように配置した状態において、それぞれ衛星Bを一次放射器8か指向するように、衛星Cを一次放射器10が指向するように直線aに対して所定の角度θ2をなすように設けられている。この角度θ2を横方向ビームチルト角という。」(周知例2、2頁右下欄1?14行目) 即ち、例えば上記周知例1、2に開示されているように「反射鏡の焦点(即ち、反射鏡の中心軸上で該反射鏡から該反射鏡の焦点距離だけ離隔した点)の両側に前記中心軸を挟んで該中心軸から適宜距離離隔した位置に給電部を配置した反射型アンテナの給電部の構造」は周知である。 C.例えば特開平6-61733号公報(以下、「周知例3」という。)には、図面とともに以下の事項イが記載されており、また実願平1-69649号の願書に添付された明細書と図面を撮影したマイクロフィルム(実開平3-10608号参照、以下、「周知例4」という。)には、図面とともに以下の事項ロが記載されている。 イ.「【0007】一体型の給電部28の例を図7乃至図9に示す。一体型の給電部28は、図7に示すようにオフセットパラボラ反射鏡30の焦点位置に配置され、オフセットパラボラ反射鏡30から延びたアーム32によって支持されている。このアーム32は、図9に示すように給電部28の正面に設けた取り付け金具34にボルト36、36によって固定されている。 【0008】給電部28は、図8に示すようにホーン部38と、これに連なる導波管40とを有し、この導波管40内にはプローブ42が設けられており、このプローブ42で受信された衛星通信信号を直接一体化したマイクロストリップラインを介して周波数変換するコンバータ(図示せず)が、この給電部28の内部に設けられている。なお、図8では、図9に示してあるレドーム44の図示を省略している。」(周知例3、2頁2欄?3頁3欄、段落7?8) ロ.「第1図は本考案の実施例の図で、(a)は側面図、(b)は支持装置を分離した形で示す斜視図、第2図は、本考案の作用を説明する正面図である。 第1図において、受信用リフレクタアンテナ1は、反射鏡2の俯抑角及び方位角が調整可能に、主アーム3Aの下部をスタンド1A上に取付けてある。 円錐ホーン51と周波数変換部52とが結合された給電部5は、反射鏡2を支持する主アーム3Aから枝分かれした分岐アーム3Bのアーム先端基板3B-1上で、反射鏡2の焦点位置に設置される。 給電部5は同軸ケーブルを介して受信装置(図示省略)に接続してある。 なお、給電部5は第2図に示すように、円錐ホーン空洞51A後部に、周波数変換部52の前面の方形の周波数変換部開口52Aが連通している。」(周知例4、8頁5?19行目) 即ち、例えば上記周知例3、4に開示されているように「給電部の前部に、前記給電部の幅より狭い幅であって、前記反射鏡で集束された電波を受信するホーンアンテナを備えた反射型アンテナの給電部の構造」は周知である。 [対比・判断] 補正後の発明と引用発明とを対比するに、引用発明の「配設」と補正後の発明の「配置」の間に実質的な差異はない。 また、引用発明の「該反射鏡の焦点近傍に適宜距離離隔して配設され」という構成は、引用例の第5図及び例えば上記周知例1、2に開示されている周知の「反射鏡の焦点(即ち、反射鏡の中心軸上で該反射鏡から該反射鏡の焦点距離だけ離隔した点)の両側に前記中心軸を挟んで該中心軸から適宜距離離隔した位置に給電部を配置した反射型アンテナの給電部の構造」に即して考察すると、「反射鏡から該反射鏡の焦点距離だけ離隔し、中心軸から適宜距離離隔した位置」に給電部が配設されることであるから、当該構成と補正後の発明の「該反射鏡から該反射鏡の焦点距離だけ離隔して配置され」という構成の間に実質的な差異はなく、同様に補正後の発明の「前記焦点距離と前記反射鏡の中心軸と前記給電部との間隔により」という構成は、補正後の発明の「間隔」が実質的に平行配置から平行でない配置への方向調整を含むものであるから、引用発明の「前記給電部の配設位置及び配設方向により」という構成と補正後の発明の前記構成との間にも実質的な差異はない。 また、引用発明の「前記反射鏡で集束された電波を受信する1次放射器」と補正後の発明の「前記給電部の幅より狭い幅であって、前記反射鏡で集束された電波を受信するホーンアンテナ」はいずれも「前記反射鏡で集束された電波を受信するアンテナ」であるという点で一致している。 また、「複数の給電部」の配置に関し、引用発明の「前記複数の給電部の前部間の配設間隔を、該給電部の後部間の配設間隔より狭くするよう前記複数の給電部を配設した」構成と補正後の発明の「前記複数の給電部の前部間の配置間隔を、該給電部の後部間の配置間隔より狭くするよう前記反射鏡の中心軸を挟んで前記複数の給電部を配置することにより、前記反射鏡の中心軸と前記給電部の前部に設けられた前記ホーンアンテナとの間隔を前記複数の給電部を近接して平行配置した場合より小さく」する構成はいずれも「前記複数の給電部の前部間の配置間隔を、該給電部の後部間の配置間隔より狭くするよう前記複数の給電部を配置した」構成である点で一致している。また、補正後の発明が備えている「前記複数の給電部を平行配置した場合より形成されるビームの角度を小さくし」という構成を引用発明が備えているか否かは不明である。 したがって、補正後の発明と引用発明は以下の点で一致ないし相違する。 (一致点) 「反射鏡と、該反射鏡から該反射鏡の焦点距離だけ離隔して配置され、該反射鏡で集束された電波を受信する複数の給電部とからなり、前記焦点距離と前記反射鏡の中心軸と前記給電部との間隔により、前記複数の給電部と前記反射鏡とで形成されるそれぞれのビームの角度が決定されるマルチビームアンテナであって、 前記複数の給電部の前部に、前記反射鏡で集束された電波を受信するアンテナがそれぞれ備えられており、前記複数の給電部の前部間の配置間隔を、該給電部の後部間の配置間隔より狭くするよう前記複数の給電部を配置したマルチビームアンテナ。」 (相違点1)「アンテナ」に関し、補正後の発明は「前記給電部の幅より狭い幅」の「ホーンアンテナ」であるのに対し、引用発明は給電部に対する大きさが不明の「1次放射器」である点。 (相違点2)「複数の給電部」の配置に関し、補正後の発明は「前記複数の給電部の前部間の配置間隔を、該給電部の後部間の配置間隔より狭くするよう前記反射鏡の中心軸を挟んで前記複数の給電部を配置することにより、前記反射鏡の中心軸と前記給電部の前部に設けられた前記ホーンアンテナとの間隔を前記複数の給電部を近接して平行配置した場合より小さく」しているのに対し、引用発明は「前記複数の給電部の前部間の配置間隔を、該給電部の後部間の配置間隔より狭くするよう前記複数の給電部を配設した」構成である点。 (相違点3)補正後の発明は「前記複数の給電部を平行配置した場合より形成されるビームの角度を小さくし」という構成を備えているのに対し、引用発明はその点の構成が不明である点。 そこで、まず、上記相違点1の「アンテナ」について検討するに、例えば上記周知例3、4に開示されているように「給電部の前部に、前記給電部の幅より狭い幅であって、前記反射鏡で集束された電波を受信するホーンアンテナを備えたアンテナ」は周知であるところ、引用発明の「1次放射器」も図面から判断すると「ホーン形の1次放射器」であるから、当該周知技術を引用発明に適用する上での阻害要因は何ら見あたらない。したがって、引用発明の「1次放射器」を補正後の発明のような「前記給電部の幅より狭い幅」の「ホーンアンテナ」とする程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。 ついで、上記相違点2の「複数の給電部」の配置について検討するに、上記したように、引用発明の「該反射鏡の焦点近傍に適宜距離離隔して配設され」という構成は、当該引用例の第5図及び例えば上記周知例1、2に開示されている周知構造に即して考察すると、「反射鏡の焦点(即ち、反射鏡の中心軸上で該反射鏡から該反射鏡の焦点距離だけ離隔した点)の両側に前記中心軸を挟んで該中心軸から適宜距離離隔した位置に給電部を配置する」ことであるから、引用発明の「前記複数の給電部」は「反射鏡の中心軸を挟んで」配置されるものであり、「前記複数の給電部」間の配置間隔は各給電部と前記中心軸との相対距離の和として表現が可能なものである。したがって、これらの周知事項に基づいて、引用発明の「前記複数の給電部の前部間の配置間隔を、該給電部の後部間の配置間隔より狭くするよう前記複数の給電部を配設した」構成を、反射鏡の中心軸を加味した構成とすることにより、補正後の発明のような「前記複数の給電部の前部間の配置間隔を、該給電部の後部間の配置間隔より狭くするよう前記反射鏡の中心軸を挟んで前記複数の給電部を配置する」構成とする程度のことは当業者であれば適宜なし得ることである。 一方、上記相違点1で検討したように、引用発明の「1次放射器」を「前記給電部の幅より狭い幅」の「ホーンアンテナ」とすることは当業者であれば適宜なし得ることであるところ、当該構成を採用することにより、所望ビームの焦点に位置すべきホーンアンテナの位置を、各給電部を近接させた場合でも給電部の大きさによる制限を超えて、ホーンアンテナ間隔に余裕のある限り、適宜調整できることは当業者には自明のことであり、当該周知の「前記給電部の幅より狭い幅」の「ホーンアンテナ」の採用に伴う必然的な前記作用効果を補正後の発明のような「前記反射鏡の中心軸と前記給電部の前部に設けられた前記ホーンアンテナとの間隔を前記複数の給電部を近接して平行配置した場合より小さく」する構成として付加する程度のことも当業者であれば適宜なし得ることである。 ついで、上記相違点3について検討するに、上記相違点2の項で検討したとおり、「前記反射鏡の中心軸と前記給電部の前部に設けられた前記ホーンアンテナとの間隔を前記複数の給電部を近接して平行配置した場合より小さく」する程度のことは当業者であれば適宜なし得ることであるところ、ホーンアンテナから放射されるビームはホーンアンテナの配置位置を当該ビームの焦点とするビームとして形成されるものであるから、手段の如何を問わずその位置を最適化することにより(補正後の発明の場合は「給電部の前部が後部よりも中心軸に近くなる」ように構成することにより)、最適化されていない「平行配置」の場合よりも形成されるビームの角度が最適化される(即ち、例えば小さくなる)ことは当業者であれば自明のことである。 したがって、引用発明の構成に補正後の発明のような「前記複数の給電部を平行配置した場合より形成されるビームの角度を小さくした」という単なる最適化処理の有無に関する比較例を付加する程度のことも当業者であれば適宜なし得ることである。 以上のとおりであるから、補正後の発明は引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3.結語 以上のとおり、本件補正は、補正後の発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項の規定により準用する特許法第126条第5項の規定に適合していない。 したがって、本件補正は、特許法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願発明について 1.本願発明 平成17年6月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は上記「第2.補正却下の決定」の項中の「1.本願発明と補正後の発明」の項で「本願発明」として認定したとおりである。 2.引用発明及び周知技術 引用発明及び周知技術は、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項中の「[引用発明及び周知技術]」で認定したとおりである。 3.対比・判断 そこで、本願発明と引用発明とを対比するに、本願発明は上記補正後の発明から当該補正に係る限定を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成に当該補正に係る限定を付加した補正後の発明が、上記「第2.補正却下の決定」の項中の「(2)独立特許要件」の項で検討したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により、容易に発明できたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-05-16 |
結審通知日 | 2007-05-22 |
審決日 | 2007-06-06 |
出願番号 | 特願平7-202704 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 右田 勝則、新川 圭二 |
特許庁審判長 |
石井 研一 |
特許庁審判官 |
富澤 哲生 山本 春樹 |
発明の名称 | マルチビームアンテナ |
代理人 | 武山 吉孝 |
代理人 | 祖父江 栄一 |
代理人 | 鈴木 隆盛 |
代理人 | 高橋 英生 |
代理人 | 浅見 保男 |