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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1161547
審判番号 不服2004-19086  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-09-16 
確定日 2007-07-26 
事件の表示 平成 9年特許願第208784号「ネットワーク接続イメージスキャナ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 2月26日出願公開、特開平11- 53527〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年8月4日の出願であって、平成16年8月3日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年9月16日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年10月15日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年10月15日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年10月15日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)本願補正発明
平成16年10月15日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「装置に内蔵したプログラムに基き動作及び接続制御する主制御部と、イメージ読み取りデータをフォーマット変換するフォーマット変換部と、ネットワークに接続して外部記憶装置に上記フォーマット変換後のデータを転送するネットワーク制御部とを備えて、上記主制御部は、上記外部記憶装置を出力先に設定する工程と、複数の異なるフォーマットを選択する工程と、1回の読み取り動作で読み取ったイメージデータを上記複数の異なるフォーマットに変換指示する工程と、上記フォーマット変換後の複数の異なるフォーマットのデータを上記設定した上記外部記憶装置へ該外部記憶装置毎に設定されたフォーマットで転送蓄積指示する工程と、を備えたことを特徴とするネットワーク接続イメージスキャナ装置。」と補正された。

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「フォーマット変換後の複数の異なるフォーマットのデータを設定した外部記憶装置へ転送蓄積指示する工程」について、具体的な限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平8-289067号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。

(a)「本発明は、スキャナシステムに関し、詳細には、通信ネットワークに接続され、読み込んだ画像データをスキャナシステムで指定された通信ネットワークの装置に送信可能なスキャナシステムに関する。」(段落【0001】)

(b)「図1は、本発明のスキャナシステムの第1実施例を適用した通信ネットワークのシステム構成図である。
図1において、通信ネットワーク1は、LANケーブル2に、ワークステーションWS1、WS2、サーバS、ネットワークプリンタNP及びネットワークスキャナNS等が接続されており、サーバSには、記憶装置3が接続されている。」(段落【0026】?【0027】)

(c)「ネットワークスキャナNSは、CPU10、ROM11、RAM12、LAN/IF13、スキャナ制御部14及びオペレーションパネル15等を備えており、これら各部は、バス16により接続されている。」(段落【0034】)

(d)「CPU(通信制御手段)10は、ROM11内のプログラムに基づいてRAM12をワークメモリとして利用しつつ、ネットワークスキャナNSの各部を制御して、ネットワークスキャナNSとしての処理を実行するとともに、上記通信処理を実行する。」(段落【0036】)

(e)「LAN/IF13は、LANケーブル2に接続され、CPU10の制御下で、LANケーブル2に接続された他の端末との間で通信制御信号の交換を行うとともに、データの授受を行う。」(段落【0038】)

(f)「スキャナ制御部14は、ADFから読取部に搬送されてきた原稿を読取部で走査して、原稿の画像データを読み取り、スキャナ制御部14で読み取られた画像データは、オペレーションパネル15で指定されたフォーマット形式にデータフォーマットされ、あるいは、そのままRAM12に格納される。」(段落【0040】)

(g)「いま、説明を簡単にするために、図1のワークステーションWS1の利用者が、ネットワークスキャナNSで読み取った原稿の画像データをサーバSの記憶装置3に送信させるものとして、図4に示すシーケンス図に基づいて、以下、説明する。
ワークステーションWS1の利用者は、上記第1実施例と同様に、ネットワークスキャナNSの設置されている場所に行き、図4に示すように、ネットワークスキャナNSの読取部、あるいは、ADFに読み取りたい情報の記載された原稿をセットし、オペレーションパネル15から通信ネットワーク1でユーザが資源の共有を許可されている記憶装置、例えば、サーバSの記憶装置3の選択をサーバ接続指示キー21により指示する。」(段落【0066】?【0067】)

(h)「次に、利用者は、スキャナ制御部14で読み取った画像データを格納するためのフォーマット形式、例えば、PICT、TIFF、あるいは、BMP等をフォーマット指定キー23により指定し、CPU10は、フォーマット形式が指定されると、指定されたフォーマット形式をディスプレイ33に表示する。」(段落【0070】)

(i)「利用者は、フォーマット形式の指定を完了すると、開始キー28を投入し、CPU10は、開始キー28が投入されると、スキャナ制御部14によりセットされた原稿の読み取りを開始して、読み取った原稿の画像データを、一旦、RAM12に格納するとともに、ROM11内のフォーマット変換用プログラムにより、RAM12に格納した画像データを指定されたフォーマット形式にデータ変換する。
次に、CPU10は、LAN/IF13を介してサーバSにファイルオープンを要求して、指定されたフォーマット形式に変換した画像データのサーバSへの送信を開始する。」(段落【0071】?【0072】)

(j)「ネットワークスキャナNSのCPU10は、スキャナ制御部14にセットされた全ての原稿の画像データの読み取り、読み取った原稿の画像データの指定されたフォーマット形式への変換及びフォーマット形式の変換後の画像データのサーバSへの送信を完了すると、原稿の読み取り、フォーマット形式の変換及び画像データの送信処理を終了する。
サーバSは、第1実施例と同様に、送信されてきた指定フォーマット形式でフォーマットされた画像データを受信し、ネットワークスキャナNSにより指定されたファイル名でサーバS内の記憶装置3に格納する。」(段落【0073】?【0074】)

(3)対比
(ア)引用例に記載された発明(以下、「引用発明」という。)の「CPU(通信制御手段)10」は、ROM11内のプログラムに基づいてネットワークスキャナNSの各部を制御するとともに、LAN/IF13を制御して、LANケーブル2に接続された他の端末との間で通信制御信号の交換及びデータの授受を行わせており(前掲(d)、(e))、本願補正発明の「装置に内蔵したプログラムに基き動作及び接続制御する主制御部」に相当する。

(イ)引用発明において、ネットワークスキャナNSに備えられたスキャナ制御部14で読み取られた原稿の画像データは、指定されたフォーマット形式にデータフォーマットされており(前掲(c)、(f))、したがって引用発明は、本願補正発明の「イメージ読み取りデータをフォーマット変換するフォーマット変換部」に相当する構成を備えている。

(ウ)引用発明の「LAN/IF13」は、LANケーブル2に接続され、CPU10の制御下で、該LANケーブル2に接続された他の端末との間で通信制御信号の交換及びデータの授受を行っている(前掲(e))。
さらに、前記CPU10は、前記LAN/IF13を介してサーバSにファイルオープンを要求し、指定されたフォーマット形式に変換した画像データをサーバSに送信し、該送信が完了すると、前記サーバSは、送信されてきた画像データを記憶装置3に格納している(前掲(i)、(j))。
したがって、前記「CPU10」及び「LAN/IF13」を合わせたものが、本願補正発明の「ネットワークに接続して外部記憶装置にフォーマット変換後のデータを転送するネットワーク制御部」に相当する。

(エ)引用発明においては、LANケーブル2に接続されたワークステーションWS1の利用者が、ネットワークスキャナNSで読み取った原稿の画像データをサーバSの記憶装置3に送信させる際、ユーザが資源の共有を許可されている記憶装置である、例えば前記サーバSの記憶装置3の選択をサーバ接続指示キー21により指示する処理を行っており(前掲(b)、(g))、したがって引用発明は、本願補正発明の「外部記憶装置を出力先に設定する工程」に相当する構成を備えている。

(オ)引用発明においては、スキャナ制御部14で読み取った画像データを格納するためのフォーマット形式、例えばPICT、TIFF、あるいはBMP等をフォーマット指定キー23により指定しており(前掲(h))、したがって引用発明は、本願補正発明の「フォーマットを選択する工程」に相当する構成を備えている。

(カ)引用発明においては、スキャナ制御部14により読み取られた原稿の画像データを、フォーマット変換用プログラムにより、指定されたフォーマット形式にデータ変換している(前掲(i))。
前記原稿の読み取りが、1回の動作で行われることは自明であるから、引用発明は、本願補正発明の「1回の読み取り動作で読み取ったイメージデータを」選択された「フォーマットに変換指示する工程」に相当する構成を備えている。

(キ)引用発明においては、ワークステーションWS1の利用者が、ネットワークスキャナNSで読み取った原稿の画像データをサーバSの記憶装置3に送信させる際、ユーザが前記サーバSの記憶装置3の選択をサーバ接続指示キー21により指示し、スキャナ制御部14で読み取られた原稿の画像データを指定されたフォーマット形式へ変換した後、サーバSへ送信し、該サーバSにおいて、前記送信されてきた画像データを前記サーバS内の記憶装置3に格納しており(前掲(g)、(j))、したがって引用発明は、本願補正発明の「フォーマット変換後のデータを設定した外部記憶装置へ設定されたフォーマットで転送蓄積指示する工程」に相当する構成を備えている。

(ク)引用発明は、通信ネットワークに接続され、読み込んだ画像データを指定された前記通信ネットワークの装置に送信可能なスキャナシステムに関するものであるから(前掲(a))、「ネットワーク接続イメージスキャナ装置」であるといえる。

以上を踏まえ、本願補正発明と引用発明を対比すると、両者は、
「装置に内蔵したプログラムに基き動作及び接続制御する主制御部と、イメージ読み取りデータをフォーマット変換するフォーマット変換部と、ネットワークに接続して外部記憶装置に上記フォーマット変換後のデータを転送するネットワーク制御部とを備えて、上記主制御部は、上記外部記憶装置を出力先に設定する工程と、フォーマットを選択する工程と、1回の読み取り動作で読み取ったイメージデータを上記フォーマットに変換指示する工程と、上記フォーマット変換後のデータを上記設定した上記外部記憶装置へ設定されたフォーマットで転送蓄積指示する工程と、を備えたことを特徴とするネットワーク接続イメージスキャナ装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点]
本願補正発明が、読み取られたイメージデータの変換に関し、「複数の異なるフォーマットを選択」し、「1回の読み取り動作で読み取ったイメージデータを複数の異なるフォーマットに変換指示」し、「フォーマット変換後の複数の異なるフォーマットのデータ」を「外部記憶装置毎に設定されたフォーマットで転送蓄積指示」しているのに対し、引用発明においては、フォーマット変換の際に指定されるフォーマット形式は1つであり、読み取られた1つの画像データを複数の異なるフォーマット形式に変換するような指定を行っておらず、また前記指定されたフォーマット形式が、変換された画像データの送信先である記憶装置毎に設定されたものであるか否か明らかでない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。

複数の外部装置とネットワークで接続された画像読み取り装置において、読み取られた画像データの出力先の外部装置を前記複数の外部装置の中から指定し画像データを出力すること、及び画像データを送る場合、どういうフォーマットで送るかを各種フォーマットの中から選択することは、当業者に周知の技術である。
例えば、特開平9-51397号公報には、「上記目的を達成するために本発明の請求項1の画像読み取り装置は、複数の外部装置から成るネットワークに接続する接続手段を備えた画像読み取り装置において、画像を読み取り画像データとして入力する画像読み取り手段と、前記入力された画像データの出力先の外部装置を前記複数の外部装置の中から指定する出力先指定手段と、前記入力された画像データの出力を指示する出力指示手段と、該指示に応じて前記入力された画像データを前記指定された外部装置へ複数のパケットとして不連続に出力する出力手段とを備えたことを特徴とする。」、「次に、画面33では、画像データを読み込んだ後、コンピュータに送る場合に、どういうフォーマットで送るかを選択する。(途中省略)画像のフォーマットにはこの他に各種存在するものを採用してもよい。このように、画面33では各種のフォーマットのうちの1つを選択する。」、及び「画面35で「5:一覧表示」を選択すると画面36に移り、現在ネットワークに接続されている装置の一覧が表示され、その中からスキャンした画像を送る相手先のコンピュータを選択する。(以下省略)」(段落【0009】、【0040】、【0043】)と記載されている。
さらに、通信回線で接続された複数の装置間で、1つの装置の記憶装置に格納された画像データを共通利用可能にするシステムにおいて、前記画像データの仕様(例えば、画素数、表色系、表示フォーマット)を、利用しようとするすべての装置に対して適合させるための変換処理、すなわち前記各装置毎に定められた所定の仕様に変換する処理を、前記1つの装置において行い、各装置へ転送することも、当業者に周知の技術である。
例えば、特開平7-220051号公報には、「本発明は、表示解像度、表色系、表示方式が異なるクライアントが通信回線で接続されている場合でも、サーバの記憶装置に格納した圧縮画像データをクライアント間で共通利用可能にする画像データ変換処理システムに関する。」、「従って、異なる表示解像度、表色系、表示フォーマットを有するクライアント間で、画像圧縮した圧縮画像データを共通利用するには、記憶装置に格納された圧縮画像データの画素数、表色系、表示フォーマットを、利用しようとするクライアントの表示解像度、表色系、表示フォーマットに適合させるため画素数および表色系変換、表示フォーマット変換を行う必要がある。」、及び「これを回避するために処理速度の早いサーバがすべてのクライアントに対する画素数変換、および、表色系変換、表示フォーマット変換の手段を持ち、前記変換処理を行い、クライアントへ転送する方式が考えられる。(以下省略)」(段落【0001】、【0008】、【0010】)と記載されている。
引用発明においても、読み取られた画像データの送信先として、ユーザが資源の共有を許可されている記憶装置(例えばサーバSの記憶装置3)を選択する処理が行われているから(前掲(g))、画像データの送信先となり得る記憶装置が複数存在することは明らかであり、引用発明に上記各周知技術を適用して、画像データの送信先となる複数の記憶装置に対して、前記画像データを、前記各記憶装置毎に定められた複数の異なるフォーマットに変換し、それぞれに送信するように構成することは、当業者が容易に想到し得たものと認められる。

そして、本願補正発明の奏する作用効果も、引用発明の奏する作用効果から当業者が予測できる以上の格別のものともいえない。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は特許法第17条の2第5項で準用する第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成16年10月15日付の手続補正は以上のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成16年3月25日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「装置に内蔵したプログラムに基づき動作及び接続制御する主制御部と、イメージ読み取りデータをフォーマット変換するフォーマット変換部と、ネットワークに接続して外部記憶装置に上記フォーマット変換後のデータを転送するネットワーク制御部とを備えて、上記主制御部は、上記外部記憶装置を出力先に設定する工程と、複数の異なるフォーマットを選択する工程と、1回の読み取り動作で読み取ったイメージデータを上記複数の異なるフォーマットに変換指示する工程と、上記フォーマット変換後の複数の異なるフォーマットのデータを上記設定した上記外部記憶装置へ転送蓄積指示する工程と、を備えたことを特徴とするネットワーク接続イメージスキャナ装置。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から、「フォーマット変換後の複数の異なるフォーマットのデータを設定した外部記憶装置へ該外部記憶装置毎に設定されたフォーマットで転送蓄積指示する工程」について具体的な限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(3)及び(4)の対比、判断に記載したとおり、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-24 
結審通知日 2007-05-29 
審決日 2007-06-11 
出願番号 特願平9-208784
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G06T)
P 1 8・ 121- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲広▼島 明芳  
特許庁審判長 関川 正志
特許庁審判官 伊知地 和之
井上 健一
発明の名称 ネットワーク接続イメージスキャナ装置  
代理人 溝井 章司  

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