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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 F25B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F25B
管理番号 1161585
審判番号 不服2005-20250  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-20 
確定日 2007-07-26 
事件の表示 平成11年特許願第201823号「冷凍装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 1月30日出願公開、特開2001- 27458〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件の出願(以下、「本願」という。)は、平成11年7月15日の出願であって、平成17年9月15日付けで拒絶査定(発送日:同月20日)がなされ、これに対し、同年10月20日付けで審判請求がなされるとともに手続補正がなされたものである。

2.平成17年10月20日付け手続補正について
平成17年10月20日付け手続補正は、補正前の請求項4、9、14、19、24、29、31?58、71?85を削除したものと認められ、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号の、同法第36条第5項に規定する請求項の削除に該当する。

3.本願発明
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年10月20日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認められる。

「低圧ドーム式の圧縮機(121)を備えると共に、直動式電動膨張弁(Z)を備え、熱源側熱交換器(123)と利用側熱交換器(131)とが一対一に構成された冷凍装置であって、HFCを主体とする冷媒が用いられる一方、上記直動式電動膨張弁(Z)の定格トルク相当摩擦係数Eが0.31以上で且つ0.62未満に設定されている冷凍装置。」

4.原査定の拒絶の理由の概要
原査定は、本願について、平成16年11月29日付け拒絶理由通知書に記載した理由2及び3によって拒絶査定するというものであるが、原査定の拒絶の理由の概要は、次のとおりである。

《理由2》
この出願は、特許請求の範囲の請求項1を含む各請求項の記載が不備で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

《理由3》
この出願の請求項1を含む各請求項に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された特開平8-189735号公報(以下、「引用例」という。)に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.当審の判断

(1)《理由2》について
特許請求の範囲の請求項1には、「直動式電動膨張弁(Z)の定格トルク相当摩擦係数Eが0.31以上で且つ0.62未満に設定されている」と記載されている。

一方、明細書の発明の詳細な説明には、直動式電動膨張弁の長期耐久試験について記載されており(段落【0085】?【0127】を参照。)、そこには、「直動式電動膨張弁の定格トルク相当摩擦係数E」は、直動式電動膨張弁の口径d、ネジ有効径D、ネジのフランク角A、ネジのリード角B、差圧Δp、及び、ネジ面の摩擦力に打ち勝つトルクT0から導き出される旨の記載がされている。
そして、「0.31以上で且つ0.62未満」という数値範囲は、口径dを0.18[cm]、ネジ有効径Dを0.56[cm]、ネジのフランク角Aを15°、ネジのリード角Bを1.5°とした直動式電動膨張弁を用い、また、冷媒や用途によって異なる差圧△pを、空調用空冷の用途において冷媒にR407Cを用いたときの差圧△p=2.59[MPa]とした条件の下にネジ面の摩擦力に打ち勝つトルクT0を実際に測定し、そこから、式 E=2.461・T0/(d2・△p・D) (段落【0109】を参照。)より、下限値「0.31」を算出し、また、下限値に安全率「2」を掛けて、上限値「0.62」を算出し、導いたものである。
即ち、「0.31以上で且つ0.62未満」という数値範囲は、口径dやネジ有効径D等の構成要素の具体的数値が上記のように特定された直動式電動膨張弁を上記特定冷媒の特定用途の下に使用した際のトルクT0を実際に測定して、導き出されたものである。

したがって、「0.31以上で且つ0.62未満」という数値範囲により、発明の詳細な説明に記載された本願発明の課題が解決できるのは、上記具体的数値で各構成要素を規定した直動式電動膨張弁を用い、空調用空冷を用途として冷媒にR407Cを用いた場合に限定されるのであって、それ以外の場合について前記課題が解決できるか否かは発明の詳細な説明に記載されていない。

よって、本願の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。

(2)《理由3》について

(2-1)引用例
引用例には,図面とともに次のの記載がある。

ア.「図2に示すように、(10)は、所謂セパレートタイプに構成された空気調和装置であって、一台の室外ユニット(20)に対して一台の室内ユニット(30)が接続されて成る冷媒循環回路(11)を備えている。
上記室外ユニット(20)には、インバータにより運転周波数が可変に調節されるスクロールタイプの圧縮機(21)と、冷房運転サイクル時には図中実線の如く、暖房運転サイクル時には図中破線の如く切換わる四路切換弁(22)と、冷房運転時に凝縮器として、暖房運転時に蒸発器として機能する熱源側熱交換器である室外熱交換器(23)と、冷媒を減圧するための膨脹機構を構成する電動膨張弁(24)とが設けられている。一方、上記室内ユニット(30)には、冷房運転時に蒸発器として、暖房運転時に凝縮器として機能する利用側熱交換器である室内熱交換器(31)が設けられている。更に、上記室外熱交換器(23)には室外ファン(2F)が設けられる一方、上記室内熱交換器(31)には室内ファン(3F)が設けられている。」(段落【0024】,【0025】)

したがって、引用例には次の発明(以下,「引用例発明」という。)が記載されている。

「圧縮機(21)を備えると共に、電動膨張弁を備え、熱源側熱交換器(23)と利用側熱交換器(31)とが一対一に構成された冷凍装置。」

(2-2)対比
本願発明と引用例発明とを対比すると、両者は、

「圧縮機を備えると共に、電動膨張弁を備え、熱源側熱交換器と利用側熱交換器とが一対一に構成された冷凍装置。」

の点で一致し,次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では、「低圧ドーム式の圧縮機」を備えているのに対し、引用例発明では、圧縮機を備えてはいるが、低圧ドーム式であるか否か不明な点。

[相違点2]
本願発明では、「直動式電動膨張弁を備え」、「HFCを主体とする冷媒が用いられる一方、直動式電動膨張弁の定格トルク相当摩擦係数Eが0.31以上で且つ0.62未満に設定されている」のに対し、引用例発明では、これらの点が不明な点。

(2-3)判断
相違点1について
冷凍装置において、低圧ドーム式の圧縮機は、当業者にとって従来周知の技術(例えば、特開平8-233414号公報、特開平9-21569号公報、国際公開第97/24415号を参照。)である。
したがって、引用例発明において、冷凍装置に組み込む圧縮機として低圧ドーム式を選択することは、当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。

相違点2について
冷凍装置において、オゾン層破壊防止の観点から、代替冷媒として塩素を含まないHFC冷媒を用いることは、従来より普通に行われていることである。
また、直動式の電動膨張弁は従来周知のものであり、また、圧縮機を備えると共に直動式電動膨張弁を備え、熱源側熱交換器と利用側熱交換器とが一対一に構成された冷凍装置において、HFC冷媒を用いた場合、スラッジが発生し易くなり直動式電動膨張弁に付着して駆動を阻害することは、従来周知の事項である(例えば、特開平9-42510号公報、特開平9-273824号、特開平11-37620号公報を参照。)。

そして、そのようなスラッジ付着にもかかわらず適正に作動する定格トルクを有する直動式電動膨張弁を選択することは、当業者が当然になすべきことであり、適正に作動する直動式電動膨張弁の選択に際し、実際に耐久試験を行い、経済性も考慮して、選択すべき直動式電動膨張弁の、定格トルクの適正範囲を設定することは、当業者の通常の創作能力の発揮にすぎない。

さらに、定格トルク相当摩擦係数Eは、定格トルクに正比例するものであり(本願明細書の段落【0109】を参照。)、耐久試験の結果により得られた定格トルクの数値範囲を、対応する定格トルク相当摩擦係数Eで表すことに格別な技術的意義はなく、直動式電動膨張弁の能力の範囲を、定格トルク相当摩擦係数Eで規定することは、当業者が必要に応じて適宜なし得たことである。

したがって、引用例発明において、HFCを主体とする冷媒を用い、また、直動式電動膨張弁の定格トルク相当摩擦係数Eを0.31以上で且つ0.62未満に設定し、上記相違点2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことである。

しかも、本願発明の効果は,引用例に記載された事項及び周知技術から当業者が予測できた範囲内のものである。

したがって、本願発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

6.むすび
以上のとおり、本願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないので、拒絶されるべきものであり、また、本願発明は、引用例発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-25 
結審通知日 2007-05-29 
審決日 2007-06-11 
出願番号 特願平11-201823
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F25B)
P 1 8・ 537- Z (F25B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 篠原 将之石川 好文  
特許庁審判長 水谷 万司
特許庁審判官 長浜 義憲
関口 哲生
発明の名称 冷凍装置  
代理人 原田 智雄  
代理人 竹内 祐二  
代理人 嶋田 高久  
代理人 関 啓  
代理人 前田 弘  
代理人 藤田 篤史  
代理人 今江 克実  
代理人 二宮 克也  
代理人 竹内 宏  
代理人 杉浦 靖也  
代理人 井関 勝守  
代理人 小山 廣毅  

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