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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1161716
審判番号 不服2003-8880  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-05-19 
確定日 2007-07-30 
事件の表示 特願2000-220784「ゲームシステム、ネットワークゲーム装置、ゲーム装置、クライアント装置、記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 2月 5日出願公開、特開2002- 35428〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.出願の経緯
本願は、平成12年7月21日の出願であって、平成14年5月14日付で手続補正がなされた後、平成15年4月10日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年6月17日付で手続補正がなされたものである。



第2.平成15年6月17日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年6月17日付の手続補正を却下する。

[理由]
[1]補正後の本願発明
平成15年6月17日付の手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は以下のように補正された。
「プレイヤーが使用するクライアント装置にネットワークを介して接続され、該プレイヤーが育成対象を育成するネットワークゲームを実行するネットワークゲーム装置と、
上記ネットワークゲーム装置にネットワークを介して接続され、上記育成対象を用いるゲームを実行する業務用ゲーム装置とを備えたゲームシステムであって、上記ネットワークゲーム装置は、
上記育成対象の育成結果に関する情報である育成結果情報を含む育成対象情報を記録する育成対象情報記録媒体と、
上記ネットワークゲームでプレイヤーが育成した育成対象を特定するための特定情報を、該プレイヤーに対して直接出力する特定情報出力手段と、
上記育成対象情報記録媒体に記録された育成結果情報を、上記特定情報に関連付けた状態でネットワークを介して上記業務用ゲーム装置に出力する育成結果情報出力手段とを有し、
上記業務用ゲーム装置は、
上記プレイヤーから上記特定情報を受け取る特定情報受取手段と、
上記育成結果情報出力手段から出力される育成結果情報をネットワークを介して受け取る育成結果情報受取手段と、
プレイヤーの育成対象の育成結果に関する情報である育成結果情報が記録される育成結果情報記録媒体と、
上記育成結果情報受取手段で受け取った育成結果情報を上記育成結果情報記録媒体に記録する育成結果情報記録手段と、
上記特定情報受取手段で受け取った特定情報に基づいて、上記育成結果情報記録媒体に記録された育成結果情報を読み出す育成結果情報読出手段と、
該育成結果情報読出手段で読み出した育成結果情報に基づいて、上記ゲームを進行するゲーム進行手段と、
該ゲーム進行手段により進行されるゲーム情報を、上記ゲームをプレイしているプレイヤーに提供するゲーム情報提供手段とを有することを特徴とするゲームシステム。」


[2].補正要件(目的)の検討
本件補正は、請求項1に記載された発明を上記「[1]」のように補正することを含む補正であり、しかも、請求項1に係る補正は、本件補正前の請求項1を削除して請求項2を請求項1とすると共に、請求項2に記載した発明を特定するために必要な事項である、ネットワークゲーム装置がプレイヤーに対して直接出力し、業務用ゲーム装置がプレイヤーから受け取る情報を、「育成対象を特定するための特定情報を含む育成対象情報の少なくとも一部」である「育成対象情報」から、「育成対象を特定するための特定情報」に限定したもので、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。


[3].補正要件(独立特許要件:特許法第29条第2項)の検討
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(1)引用文献及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された特開平8-829号公報、特開平11-19337号公報、特開昭63-242293号公報、及び周知事項を例示するための刊行物である特開平11-290552号公報、特開平10-333542号公報には、以下の事項が記載されている。
(A).特開平8-829号公報(以下「刊行物A」という。)記載事項。
(A-1).「【0001】「【産業上の利用分野】本発明は、ユーザーが所有するユーザーゲーム装置及びゲームセンター等に設置された業務用ゲーム装置とを通信回線で中央制御装置に接続し、ユーザーゲーム装置で設定されたところのキャラクタに固有のデータに基づいて中央制御装置でゲームを展開し、その展開を業務用ゲーム装置で実現できるようにしたネットワークゲームシステムに関する。」
(A-2).「【0013】また、前記ユーザーゲーム装置は、キャラクタに固有のデータを基にゲームを展開できるゲーム制御部と、キャラクタに固有のデータを作成し、これを前記ゲーム制御部に与え、そのゲーム結果から前記固有のデータを修正できる情報作成部とを備えたことを特徴とする。」
(A-3).「【0016】また、前記中央制御装置は、前記ユーザーゲーム装置に接続される通信回線及び業務用ゲーム装置に接続される通信回線に接続されて情報の転送・受信する情報転送・受信制御部と、前記キャラクタに固有のデータとその他の条件に基づいてゲームを展開動作するゲーム制御部と、その他必要な情報処理を実行する情報処理部とを備えたことを特徴とする。
【0017】前記業務用ゲーム装置は、中央制御装置からのゲーム展開中継データを受信する情報受信部と、当該中継データを基に表示手段を駆動制御するゲーム展開部と、前記ゲーム展開部によりゲーム展開を表示する表示手段とを備えたことを特徴とする。」
(A-4).「【0033】ゲームセンター等ゲーム機設置施設7に設置された業務用ゲーム装置5は、ゲーム機本体51上にゲーム場52を形成し、かつこのゲーム場52の上でゲーム展開を実現する複数の模型53,53,…を移動可能に設置し、かつゲーム機本体51の隅に各模型53,53,…に固有のキャラクタに関するデータを表示できるテレビモニタ54を設置して構成されている。なお、上記各模型53,53,…をゲーム展開通りに移動させたり、テレビモニタ54上に表示される各キャラクタのデータやゲーム展開の状況は、ゲーム機本体51内に設けてあるゲーム制御部(図示せず)により処理されるようになっている。このゲーム制御部は、受信制御部を介して電話回線4に接続されるようになっている。」
(A-5).「【0040】「このような構成のネットワークゲームシステムに競馬ゲームを適用した実施例について、図1及び図2を基に図3ないし図5を参照して説明する。ここで、図3は、同実施例の全体動作を説明するためのフローチャートである。図4及び図5は、同動作の説明図である。
【0041】まず、競争馬のキャラクタには、その固有のデータとして次のようなものがある。すなわち、(i) スタミナ、(ii)スピード、(iii) タイプ、(iv)ランク、及び(v) テクニックの五つである。これらキャラクタの固有のデータは、ユーザーゲーム装置1内に格納されている。」
(A-6).「【0047】各ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nには、上述したような種類と値を持つ各種キャラクタに固有のデータが格納されている。したがって、各家庭等6-1,6-2,…,6-nにおいて、各ユーザーは、各ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nを用いて、それぞれが育てて調教している競走対象キャラクタの固有のデータを作成する(図3のステップ101)。ここで、競走対象キャラクタの固有のデータを作成するということは、例えば競走馬を実際に調教するようにして、各種のデータを作りあげる。このようにしてユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nにおいて作成した競走馬の固有データは、各電話回線2-1,2-2,…,2-nを介して中央制御装置3に転送される(図3のステップ102、図4(a)の矢印201参照)。」
(A-7).「【0050】上記中央制御装置3の情報処理部32は、電話回線2-1 ,2-2 ,…,2-n、情報転送・受信制御部31を介して取り込んだレースデータに対応させて競走対象キャラクタの固有データを登録する(ステップ107)。
【0051】このような処理を終了した中央制御装置3の情報処理部32は、前記レースデータと、これに対応させて登録した競走対象キャラクタの固有データを、情報転送・受信制御部33、電話回線4-1,4-2,…,4-mを介して所定の業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mに転送する(ステップ108、図4(b)の矢印204)。
【0052】各業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mでは、各情報受信部55を介して各情報処理部57に取り込んだレースデータ及びキャラクタに固有のデータとを所定のメモリに記憶させる。これにより、各業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mの各情報処理部57が動作し、必要なデータを各テレビモニタ54に表示する(図4(c)参照)。また、業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mでは、ベットの受付けを開始する(ステップ109、図4(c)参照)。
【0053】そして、一定の時間が経過した際に、中央制御装置3からベット受付終了の信号を各業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mに出し、かつ中央制御装置3のゲーム制御部32は各キャラクタに固有のデータを基にレースを開始する(ステップ110)。そして、中央制御装置3の情報処理部32は、当該レース中継データを、各電話回線2-1,2-2,…,2-nを介してユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nに、各電話回線4-1,4-2,…,4-mを介して業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mに、それぞれ転送する(ステップ111、図5(a)の矢印206、207)。中央制御装置3は、レースの終了を通知する(ステップ112、図5(a)の矢印208、209)。
【0054】これにより、業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mでは、情報処理部57の動作によりメダルの払出し処理が実行される(ステップ113、図5(d)参照)。
【0055】また、ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nでは、中央制御装置3から送出されてくる競走対象キャラクタに関するデータをセーブする(ステップ114、図5(b)参照)。」
(A-8).「【0057】上述したように本実施例では、ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nを用いて競走対象キャラクタに固有のデータを作成し当該キャラクタの能力を向上、調整等により各競走対象の成長を楽しむという世界と、業務用ゲーム装置5-1,5-2,…,5-mによって実際にレース着順予想を行なうという世界とを、共通の場で楽しむことができる。」
(A-9).「【0060】図6は、上記実施例のユーザーゲーム装置の動作を説明するためのフローチャートである。」
(A-10).「【0062】このようにして所定の能力をもった競走馬キャラクタAに達したとユーザーが判断したところで、当該データをユーザーゲーム装置1から中央制御装置3に転送する(ステップ303)。
【0063】そして、ユーザーゲーム装置1は、中央制御装置3から当該競走馬キャラクタAが出場可能なレースに関するデータを受信する(ステップ304)。
【0064】このデータが受信されると、ユーザーゲーム装置1は、当該データをテレビモニター15に表示するので、ユーザーは、これを参照して出場レースを決定する。そして、ユーザーゲーム装置1のコントローラ13を操作して、当該レースに対して前記競走馬キャラクタAを出場させる旨のデータを中央制御装置3に転送する(ステップ305)。これにより、競走馬キャラクタAは、当該レースに出馬登録がされたことになる。
【0065】ついで、ユーザーゲーム装置1は、出馬レースの時間がくるまで(ステップ306;NO)、例えば競走馬キャラクタBの調教し(ステップ307)、当該データをユーザーゲーム装置1から中央制御装置3に転送する(ステップ303)。」
(A-11).「【0068】図7は、上記実施例の内の中央制御装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【0069】中央制御装置3は、各ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nからのキャラクタの固有データを受信すると(ステップ401)、競走対象キャラクタの固有データを分析する(ステップ402)。
【0070】そして、中央制御装置3は、ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nから特定のレースデータを要求されているときには(ステップ403;YES)、当該特定レースデータを要求のあったユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nに送出する(ステップ404)。
【0071】また、中央制御装置3は、特定レースデータの要求のないときには(ステップ403;NO)、中央制御装置3で判断した出場可能レースデータを、特定レースデータを要求しなかったユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nに送出する(ステップ405)。
【0072】そして、中央制御装置3は、ユーザーゲーム装置1-1,1-2,…,1-nからの競走馬の出馬登録を待つ(ステップ406)。そして、中央制御装置3は、出馬登録のデータを受信すると、当該競走馬キャラクタの固有データを予定レースに登録する(ステップ407)。」
(A-12).「【0092】さらに、本発明では、各装置が通信回線で接続されているので、データの交換や修正が用意であり、かつゲーム結果をキャラクタの固有のデータに直ちに反映させることができる。」
(A-13).「【0095】また、前記ユーザーゲーム装置では、前記中央制御装置で展開実行されたゲームが終了した結果、当該キャラクタに付与されたデータを受信できるようにしてあるので、当該キャラクタに固有のデータをさらによいものに修正することができる。」
(A-14).「図4(c)には、テレビモニタ54に表示される必要なデータとして、「2.ベガ」等キャラクタの固有データ以外のデータが表示されている。」
(A-15).上記記載事項、及び、CPUを用いた処理における、情報・データには、当該情報・データ記憶手段、及び読出手段等が具備されることは周知の技術的事項であることを勘案すれば、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「ユーザーが所有するユーザーゲーム装置及びゲームセンター等に設置された業務用ゲーム装置とを通信回線で中央制御装置に接続し、ユーザーゲーム装置で設定されたところのキャラクタに固有のデータに基づいて中央制御装置でゲームを展開し、その展開を業務用ゲーム装置で実現できるようにしたネットワークゲームシステムであって、
前記ユーザーゲーム装置は、育てて調教している競争対象キャラクタの固有のデータを、固有のデータ作成手段にて作成する育成ゲームと、当該競争対象キャラクタの固有のデータを前記ゲーム制御部に与え、そのゲーム結果から前記固有のデータを修正できる情報作成部を備え、
かつ、
(i).当該競争対象キャラクタの固有のデータが、作成、記憶され、(ii).当該固有のデータが中央制御装置に通信回線で転送され、(iii).出馬登録のデータを中央制御装置に転送するものであるから、当該装置には、(i).当該キャラクタの固有のデータを記憶する「競走対象キャラクタの固有のデータ記録媒体」、(ii).当該キャラクタの固有のデータを中央制御装置に出力する、「競走対象キャラクタの固有のデータ出力手段」、(iii).「出馬登録データ記録媒体」、及び当該「出馬登録データ出力手段」、を具備することは明らかであり、
また、前記中央制御装置は、前記ユーザーゲーム装置に接続される通信回線及び業務用ゲーム装置に接続される通信回線に接続されて情報の転送・受信する情報転送・受信制御部と、前記競争対象キャラクタの固有のデータとその他の条件に基づくゲーム、すなわち、育成ゲーム結果利用ゲームを展開動作するゲーム制御手段と、その他必要な情報処理を実行する情報処理部を備え、
しかも、中央制御装置では、ユーザーゲーム装置から転送される、「競走対象キャラクタの固有のデータ」、「出馬登録データ」に各々対応する「競走対象キャラクタの固有のデータ受取手段」、「出馬登録データ受信手段」と、ゲーム展開中継データをユーザーゲーム装置及び業務用ゲーム装置に送出する「ゲーム展開中継データ転送手段」とを具備し、さらに当該育成ゲーム結果利用ゲームは、キャラクタの固有のデータとその他の条件に基づいて行われるものであるから、キャラクタの固有のデータが記憶される「育成ゲーム結果利用ゲームの展開動作に要するキャラクタの固有のデータ記録媒体」、「育成ゲーム結果利用ゲームの展開動作に要するキャラクタの固有のデータ記録手段」、当該「育成ゲーム結果利用ゲームの展開動作に要するキャラクタの固有のデータ読出手段」を具備することは明らかであり、
さらに、
前記業務用ゲーム装置は、中央制御装置からのゲーム展開中継データを受信する情報受信部と、当該中継データを基に表示手段を駆動制御するゲーム展開部と、前記ゲーム展開部によりゲーム展開の表示、及び、固有のキャラクタに関するデータの表示を行う表示手段、取り込んだレースデータ及びキャラクタに固有のデータが記憶される所定のメモリを備え、
上記の手段、装置により、
各ユーザーは、ユーザーゲーム装置を用いて、それぞれが育成している競走対象キャラクタA、Bの固有のデータを固有のデータ作成手段にて作成し、当該競走対象キャラクタの固有のデータを通信回線を介して中央制御装置3に情報転送・受信部、すなわち、送受信手段にて送出し、
中央制御装置3は、競争対象キャラクタの固有のデータを情報転送・受信部、すなわち、送受信手段にて受信すると、当該競争対象キャラクタの固有のデータを分析し、各ユーザーゲーム装置から特定のレースデータを要求されているときは、当該レースデータを要求のあったユーザーゲーム装置に前記送受信手段にて送出し、特定のレースデータの要求のないときは、中央制御装置で判断した出場可能レースのデータを、特定レースデータを要求しなかったユーザーゲーム装置に前記送受信手段にて送出し、ユーザーゲーム装置からの競走馬の出馬登録を待ち、出馬登録のデータを受信すると、当該競争キャラクタの固有のデータを予定レースに登録し
前記レースデータと、これに対応させて登録した競走対象キャラクタの固有データを所定の業務用ゲーム装置に前記送受信手段にて送出し、
業務用ゲーム装置では、取り込んだレースデータ及び競走対象キャラクタの固有のデータとを所定のメモリに記憶手段にて記憶させ、「2.ベガ」等の必要なデータをテレビモニタ54に表示してベットの受付けを開始し、
その後、一定の時間が経過すると、中央制御装置3からベット受付終了の信号を業務用ゲーム装置に前記送受信手段にて送出し、かつ中央制御装置3のゲーム制御部32は当該競走対象キャラクタの固有のデータを基にレースを開始し、当該レース中継データを、通信回線を介してユーザーゲーム装置、業務用ゲーム装置に、それぞれ前記送受信手段にて送出し、レースの終了を通知し、
業務用ゲーム装置は、レースの終了の通知によりメダルの払出し処理を実行し、
ユーザーゲーム装置1は、中央制御装置3からのレース中継データを受信手段にて受信し、これをテレビモニター15に表示し、レースが終了した時点で、中央制御装置3から送られてくるレース結果を記憶手段にセーブする競馬ゲームを、前記業務用ゲーム装置、中央制御装置、ユーザーゲーム装置等に配設された、前記各種の手段、記録媒体等にて行うことにより、各競走対象の成長を楽しむという育成ゲームと、育成ゲーム結果を利用して実際にレース着順予想を行なう育成ゲーム結果利用ゲームを共通の場で行うネットワークゲームシステム。」

(2)本願補正発明と引用発明との対比
(ア).対応関係1
(i).引用発明における「ユーザー」は本願補正発明における「プレイヤー」に相当し、以下同様に、「通信回線」は「ネットワーク」に各々対応する。
(ii).引用発明における「競走対象キャラクタ」、「競争対象キャラクタの固有のデータ」は、本願補正発明における「育成対象」、「育成結果情報」に各々対応し、当該「競走対象キャラクタ」、「競争対象キャラクタの固有のデータ」は、育成ゲームにおける育成対象のキャラクタ、育成結果のデータであり、当該育成結果のデータは育成対象を用いるゲームに用いられるので、当該ゲームへの出力手段が存在することは明らかであるから、引用発明における「競争対象キャラクタの固有のデータ出力手段」は、それが奏する機能において本願補正発明における「育成結果情報出力手段」に対応する。
(iii).引用発明における「ユーザーゲーム装置」は、プレイヤーが育成対象を育成する際に使用する端末であるから、本願補正発明における「クライアント装置」に対応する。
(iv).引用発明における「業務用ゲーム装置」はゲームセンターなどに配置されるゲーム装置であるから、本願発明の「業務用ゲーム装置」に対応する。
(v).引用発明における「中央制御装置」は、「ユーザーゲーム装置」と「業務用ゲーム装置」とにネットワークにて接続される装置であるから、同様に本願補正発明において、「クライアント装置」と「業務用ゲーム装置」にネットワークにて接続される「ネットワークゲーム装置」に対応する。
(vi).引用発明において中央制御装置が受信した「出馬登録データ」は、ユーザーゲーム装置から送出され、中央制御装置に記憶されている競争キャラクタA、Bを特定して如何なるレースに出場させるのか否かを示すものでありさらに、当該中央制御装置に見られるようなネットワークに記憶されているデータを利用する場合には、当該データを特定するためのIDを用いることが周知であることを勘案すると、当該「出馬登録データ」は、競争キャラクタA、Bを特定するためのデータを含むことは明らかであるから、引用発明における「出馬登録データ」中の競争キャラクタA、Bを特定するためのデータは、本願補正発明において、プレイヤーが育成した「育成対象」を特定する「特定情報」に対応する。
(vii).引用発明において、「育成ゲーム結果利用ゲームを展開動作するゲーム制御部」、「競走対象キャラクタの固有のデータ受取手段」、「出馬登録データ受信手段」、「ゲーム展開中継データ転送手段」、「ゲーム展開用のキャラクタの固有のデータ記憶媒体」、「育成ゲーム結果利用ゲーム展開用のキャラクタの固有のデータ記録手段」、「育成ゲーム結果利用ゲーム展開用のキャラクタの固有のデータ読出手段」は、育成ゲームの結果を利用して行うゲームの実行に際して要する手段であり、
それらが奏する機能において本願補正発明において、同様に育成ゲームのゲーム結果を利用するゲームの実行に際して要する手段である「ゲーム進行手段」、「育成結果情報受取手段」、「特定情報受取手段」、「ゲーム情報提供手段」、「育成結果情報記録媒体」、「育成結果情報記録手段」、「育成結果情報読出手段」に各々対応するから、当該ゲームに際して要する前記各種手段を具備した、引用発明と本願補正発明における、育成ゲームの結果を利用して行うゲームは、「育成ゲーム結果利用ゲーム手段」で共通する。
(viii).引用発明において、業務用ゲーム装置に取込まれた、レースデータ、及び競争対象キャラクタの固有のデータが所定のメモリに記憶され、図4(c)の、テレビモニターに表示される「「2.ベガ」等の必要なデータ」は「競争対象キャラクタの固有のデータ」以外、すなわち、「育成結果情報」以外の「ゲーム関連データ」となるから、前記「所定のメモリに記憶された」データは、それが奏する機能において、本願補正発明の「育成対象情報」に対応し、当該「メモリ」は「育成対象情報記録媒体」に対応する。
(ix).引用発明における、「競争対象キャラクタの固有のデータ」、及び当該「競争対象キャラクタの固有のデータ出力手段」「レースデータ、及び競争対象キャラクタの固有のデータ」、「出馬登録データ」は、育成ゲームにて得たキャラクタの固有のデータを利用する「育成ゲーム結果利用ゲーム手段」に送信するための、各種手段、データであり、それらが奏する機能において、本願補正発明においても同様に育成ゲーム結果利用ゲーム手段に送信するための、手段、データである、「育成結果情報」、及び「育成結果情報出力手段」「育成対象情報」、「特定情報」に各々対応するから、当該育成ゲームに際して要する前記各種手段を具備した両者の育成ゲームは、「育成ゲーム手段」で共通する。

(イ).引用発明と本願補正発明との 一致点
プレイヤーが使用するクライアント装置にネットワークを介して接続される、ネットワークゲーム装置と、
上記ネットワークゲーム装置にネットワークを介して接続される、業務用ゲーム装置とを備え、該プレイヤーが育成対象を育成するゲーム、すなわち育成ゲーム手段、上記育成対象を用いるゲーム、すなわち、育成ゲーム結果利用ゲーム手段等を実行するゲームシステムであって、
育成ゲーム手段は、
上記育成対象の育成結果に関する情報である育成結果情報を含む育成対象情報を記録する育成対象情報記録媒体と、
プレイヤーが育成した育成対象を特定するための特定情報と、
上記育成対象情報記録媒体に記録された育成結果情報を、上記特定情報に関連付けた状態でネットワークを介して育成ゲーム結果利用ゲーム手段に出力する育成結果情報出力手段とを有し、
育成ゲーム結果利用ゲーム手段は、
上記プレイヤから上記特定情報を受け取る特定情報受取手段と、
上記育成結果情報出力手段から出力される育成結果情報をネットワークを介して受け取る育成結果情報受取手段と、
プレイヤーの育成対象の育成結果に関する情報である育成結果情報が記録される育成結果情報記録媒体と、
上記育成結果情報受取手段で受け取った育成結果情報を上記育成結果情報記録媒体に記録する育成結果情報記録手段と、
上記特定情報受取手段で受け取った特定情報に基づいて、上記育成結果情報記録媒体に記録された育成結果情報を読み出す育成結果情報読出手段と、
該育成結果情報読出手段で読み出した育成結果情報に基づいて、上記ゲームを進行するゲーム進行手段と、
該ゲーム進行手段により進行されるゲーム情報を、上記ゲームをプレイしているプレイヤーに提供するゲーム情報提供手段とを備えたゲームシステム。

(ウ).引用発明と本願補正発明との相違点
(i).相違点1
育成ゲーム結果利用ゲーム手段が具備する「ゲーム進行手段」、「育成結果情報受取手段」、「特定情報受取手段」、「ゲーム情報提供手段」、「育成結果情報記録媒体」、「育成結果情報記録手段」等の配設箇所が、本願補正発明は「業務用ゲーム装置」であるのに対し、引用発明では「中央制御装置」、すなわち、本願補正発明における「ネットワークゲーム装置」である点、
(ii).相違点2
育成ゲーム手段に関して、当該ゲームの実行が、本願補正発明は、「クライアント装置」と「ネットワークゲーム装置」とにて行われるネットワークゲームであり、当該育成結果が「育成結果情報を含む育成対象情報」としてネットワークゲーム装置に記憶されるのに対し、引用発明は、ユーザーゲーム装置、すなわち、本願補正発明における「クライアント装置」にて行われる育成ゲームであり、当該ゲーム結果が「クライアント装置」に記憶されるが、「「2.ベガ」等の必要なデータ」の具体的記憶構成は不明である点、
(iii).相違点3
特定情報に関して、本願補正発明は、当該特定情報が「ネットワークゲーム装置」からプレイヤに対して出力されのに対し、引用発明は当該「特定情報」が存在することは明らかであるが、何処から出力されるのか不明である点

(エ).相違点の検討
(i).相違点1の検討
引用発明における、業務用ゲーム装置は、キャラクタの固有データを基に中央制御装置で展開された育成ゲーム結果利用ゲームであるレース中継データを受信して表示するととともに、当該ゲームに際して行われる、ベットの受付、ベットの賭率、メタル精算等、ゲーム関連処理の一翼を担っているものである。
一方、業務用ゲーム装置において、ゲーム展開、及びゲーム展開表示等ゲームの実行に係る処理一切を業務用ゲーム装置が行うことは、例えば、刊行物Cに見られるように周知の事項である。
してみると、引用発明において、育成ゲーム結果利用ゲームの実行に際して、その処理の一翼担持に代えて、一切の処理を業務用ゲーム装置に担わせることは、前記周知事項を鑑みれば、当業者が適宜為し得る程度の事項である。
(ii).相違点2の検討
ゲーム実行手段として、ユーザーゲーム装置と当該ユーザーゲーム装置と接続されたネットワークにて育成ゲームを行うこと、及び当該ゲーム結果をネットワークに記憶することは、刊行物B(「B-6)参照、)刊行物D,Eに示されるようにネットワークゲームにおいては周知のゲーム実行手段であり、関連事項を纏めておくことは、例えば、図書館資料の分類法として用いられている、日本十進分類法(NDC、社団法人日本図書館協会作成)に示されるように周知の整理手段である。
してみると、
引用発明において、育成ゲーム実行に際して、前記周知のゲーム実行手段を採用すること、及びその際に、育成ゲーム結果利用ゲーム手段の実行に際して用いられる、前記育成ゲーム結果、及び関連データを前記周知の整理手段を勘案してネットワークに記憶させることは、当業者が容易になし得ることである。
(iii).相違点3の検討
ネットワークシステムにおいては、データ等の特定手段としてのIDの付与については、例えば、IPアドレス(インターネットプロトコルアドレス)に見られるように、同一のIDが重複存在複数存在しないように、ユーザー側ではなく、ネットワーク側提示とすることは周知の事項であり、しかも、ネットワークゲームにおいても同様であることは、前記刊行物B(「(B-1)」参照)にも示されているから、引用発明において、その「特定情報」をネットワーク側であるネットワークゲーム装置から出力させることは、ネットワークゲームを採用したことにより、当業者が適宜行う設計的事項である。

(v).相違点のまとめ
引用発明における、ネットワークゲーム装置を介して接続される、複数のユーザーゲーム装置、及び業務用ゲーム装置において、ゲーム実行に要する各種手段、データを、本願補正発明のように配設することは、当該装置がネットワークで接続されてデータの交換が適宜為し得るもの(「(A-12)」参照)であることを勘案すれば、実行するゲームの種類に応じて当業者が適宜配設する程度の事項であり、しかも、その効果も予測の範囲内の事項である。
しかも、ネットワークシステムにおける周知のデータ特定手段を採用する点に困難性は認められないから、前記各相違点を総合的に判断しても、本願補正発明は、前記刊行物Aに記載された発明、及び刊行物B、C、D、Eに例示されるような周知事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際に、独立して特許を受けることができないものである。

(オ).むすび
したがって、平成15年6月17日付の手続補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。



第3.本願発明に関する検討
[1].本願発明
平成15年6月17日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成14年5月14日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「プレイヤーが使用するクライアント装置にネットワークを介して接続され、該プレイヤーが育成した育成対象を用いる育成するネットワークゲームを実行するネットワークゲーム装置と、
上記ネットワークゲーム装置にネットワークを介して接続され、上記育成対象を用いるゲームを実行する業務用ゲーム装置とを備えたゲームシステムであって、上記ネットワークゲーム装置は、
上記育成対象の育成結果に関する情報である育成結果情報を含む育成対象情報を記録する育成対象情報記録媒体と、
上記ネットワークゲームでプレイヤーが育成した育成対象を特定するための特定情報を含む育成対象情報の少なくとも一部を、該プレイヤーに対して直接出力する育成対象情報出力手段特定情報出力手段と、
上記育成対象情報記録媒体に記録された育成結果情報を、上記特定情報に関連付けた状態でネットワークを介して上記業務用ゲーム装置に出力する育成結果情報出力手段とを有し、
上記業務用ゲーム装置は、
上記プレイヤーから上記育成対象情報特定情報を受け取る育成対象情報受取手段特定情報受取手段と、
上記育成結果情報出力手段から出力される育成結果情報をネットワークを介して受け取る育成結果情報受取手段と、
プレイヤーの育成対象の育成結果に関する情報である育成結果情報が記録される育成結果情報記録媒体と、
上記育成結果情報受取手段で受け取った育成結果情報を上記育成結果情報記録媒体に記録する育成結果情報記録手段と、
上記育成対象情報受取手段特定情報受取手段で受け取った育成対象情報に含まれる特定情報に基づいて、上記育成結果情報記録媒体に記録された育成結果情報を読み出す育成結果情報読出手段と、
該育成結果情報読出手段で読み出した育成結果情報に基づいて、上記ゲームを進行するゲーム進行手段と、
該ゲーム進行手段により進行されるゲーム情報を、上記ゲームをプレイしているプレイヤーに提供するゲーム情報提供手段とを有することを特徴とするゲームシステム。」


[2].引用文献、及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、および、その記載事項は、前記「第2.[3].(1)」に記載したとおりである。


[3].引用発明と本願発明との対比・判断
本願発明は、本願補正発明における、ネットワークゲーム装置がプレイヤーに対して直接出力し、業務用ゲーム装置がプレイヤーから受け取る情報である「育成対象情報」を「育成対象を特定するための特定情報」だけにするという限定を省いたものであるから、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件が付加された本願補正発明が、前記「第2.[3]」に記載したとおり、
刊行物Aに記載された発明、及び刊行物B、C、D、Eに例示される周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。



第4.むすび
本願発明は、刊行物Aに記載された発明、及び刊行物B、C、D、Eに例示される周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-28 
結審通知日 2007-06-01 
審決日 2007-06-14 
出願番号 特願2000-220784(P2000-220784)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 榎本 吉孝松川 直樹  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 植野 孝郎
宮本 昭彦
発明の名称 ゲームシステム、ネットワークゲーム装置、ゲーム装置、クライアント装置、記録媒体  
代理人 黒田 壽  

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