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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60Q |
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管理番号 | 1161746 |
審判番号 | 不服2004-1827 |
総通号数 | 93 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2007-09-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-01-26 |
確定日 | 2007-07-04 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第513885号「車両の表示システムおよび測距装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 5年 8月19日国際公開、WO93/15931号、平成 9年 3月31日国内公表、特表平 9-503176号〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、1993年2月5日(パリ条約による優先権主張1992年2月5日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成15年10月22日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成16年1月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 そして、平成18年6月29日付けで当審による拒絶理由が通知され、請求人より、同年12月27日付けで、特許請求の範囲を含む明細書全文を対象とする、手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし16に係る発明は、上記平成18年12月27日付け手続補正書により補正された、明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その特許請求の範囲11(以下、「本願発明」という。)には次のとおりの記載がなされている。 「車両の動きの状態を視覚的に表示する車両表示システムであって、該システムは、 (a)車両の速度の測定値を決定するように動作可能な車両速度測定装置と、 (b)使用中、上記車両に搭載され、上記車両の動きの状態を視覚的に表示するように動作可能な光源列と、 (c)速度の測定値と基準値とを比較する手段と、 (d)前記速度の測定値が前記基準値よりも小さいと決定されたことに応答して、点灯された光源の変化する一連のパターンを生成するために、前記光源の中からいくつかの光源を点灯および消灯する手段と、 (e)上記車両に搭載され、前記車両の後方の予め定められた距離内に更なる車両がいるかどうかを決定するように動作可能な車両距離測定装置と、 (f)前記速度の測定値が前記基準値よりも小さいと決定され、かつ、前記更なる車両が前記予め定められた距離内にいると決定されたことに応答して、点灯された光源の固定されたパターンを維持する手段と を具備することを特徴とする車両表示システム。」 第3 引用例に記載された発明 当審により拒絶の理由に引用された引用例である、英国特許出願公開第2114826号明細書(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の記載がなされている。 (ア)「This invention relates to … indicating the actual operating status of the vehicle for the drivers of other vehicles.」(本発明は、自動車の安全表示システムに関するものであり、特に、自動車の実際の作動状況を、他車両の運転者に対して表示することができるシステムに関するものである。)(第1ページ第3?5行、括弧内は当審による仮訳、以下同様) (イ)「The left hand side in Figure 1 surrounded by a dotted line is … The speed sensitive circuit 2 includes a relay 3」(図1の左半分において破線で囲まれた部分は速度感知回路2であり・・・速度感知回路2は継電器3を有する。)(第2ページ第36?38行) (ウ)「The normally closed contact11 of relay 3 is … red lamps 1 4a, 1 4b connected in series, respectively.」(継電器3の常閉接点11は、赤色点滅灯回路Aに接続される。赤色点滅灯回路Aは、点滅電球などの点滅装置12、すなわち、それぞれ直列に接続した2組の赤色モニターランプ13a、13bと赤色表示灯14a、14bから成る並列回路を有する。)(第2ページ第44?47行) (エ)「The photo interrupter 6 of the speed sensitive circuit 2 is … a speed below a predetermined speed.」(速度感知回路2のフォトインタラプタ6は、図2で示された様式で速度計38に搭載される。速度計38の針39は、図2で示されるように、その自由端に突起すなわち板片40を備えている。そして、図2において、板片40は、速度計が既定速度未満の速度を示す場合には、板片40はフォトインタラプタ6の光感知ダイオード7と発光ダイオード9の間の光路内に配置されることとなる。)(第3ページ第11?15行) (オ)「While the needle 39 of speedometer 38 (Figure 2) is …the monitor lamps on the instrument panel flash on and off.」(速度計38(図2)の針39が0Km/hrの位置を示している間は、板片40はフォトインタラプタ6内にとどまる。このため、発光ダイオード9が発する光は、光感知ダイオード7に到達し得ない。・・・中略・・・このようにトランジスタ5が非導電状態にあるときは、トランジスタ5によって、継電器3のコイル4は電源から切断されている。従って電流は、バッテリー1の正極から継電器3の常閉接点11を経由して赤色点滅灯回路Aへと流れる。直列に接続した2組のモニターランプ13a、13bと表示灯14a、14bは、点滅装置12によって切り換えられる。換言すれば、車両の前部と後部に搭載された赤色表示灯、ならびに計器盤に搭載されたモニターランプが点滅するのである。)(第3ページ第26?36行) (カ)「When the vehicle is put into first gear,… The operation of red intermittent light circuit A ceases.」(車両のギアをローに入れて始動させ、アクセルを踏んで車両を加速する時、赤色点滅灯は、速度計38の針39が車両の走行速度により既定の角度回転して、板片40がフォトインタラプタ6の光路外に移動するまで、変化しない。 車両の速度がある一定速度(例えば2Km/hr)に達すると、針39の回転により、板片40がフォトインタラプタ6の外へ移動する。2Km/hrという速度は非常な低速で、車両をわずかに加速すれば容易に到達しうるということに留意すべきである。板片40がフォトインタラプタ6の光路外に移動すると、発光ダイオード9の光は光感知ダイオード7に投射されることとなる。従って光感知ダイオード7のレジスタンスは低下し、トランジスタ5はバイアス電流が流れて導通する。 継電器3のコイル4にこのように電圧がかかると、常開接点16はバッテリー1の正極に接続する。赤色点滅灯回路Aは作動停止する。)(第3ページ第39?50行) 上記記載事項を総合すると、引用例には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「自動車の実際の作動状況を、他車両の運転者に対して表示することができる、自動車の安全表示システムであって、該システムは、 速度感知回路2と、 該速度検知回路2の継電器3の常閉接点11に接続された、赤色点滅灯回路Aとを有し、 上記速度感知回路2は、フォトインタラプタ6を備え、 該フォトインタラプタ6は、発光ダイオード9及び光感知ダイオード7よりなっており、 上記赤色点滅灯回路Aは、速度計38の針39の自由端に備えられた板片40が、0Km/hrから一定速度(例えば2Km/hr)の位置を指す間は、上記フォトインタラプタ6内にとどまり、上記発光ダイオード9の発する光が、上記光感知ダイオード7に到達しないため、バッテリー1の正極から電流が流れ、車両の前部と後部に搭載された、赤色表示灯14a、14bを点滅させるものである、 自動車の安全表示システム。」 第4 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、その技術的意義、機能及び構成等からみて、 後者の「自動車の実際の作動状況を、他車両の運転者に対して表示することができる、自動車の安全表示システム」は、前者の「車両の動きの状態を視覚的に表示する車両表示システム」に相当する。 引用発明は、速度計38を有しているのであるから、「車両の速度の測定値を決定するように動作可能な車両速度測定装置」を有していることは自明である。 また、引用発明の「赤色表示灯14a、14b」は、「車両の前部と後部に搭載され」、「0Km/hrから一定速度(例えば2Km/hr)の位置を指す間」は「点滅」するのであるから、「使用中、上記車両に搭載され、上記車両の動きの状態を視覚的に表示するように動作可能な光源」であるといえる。 そして、引用発明の「速度感知回路2」及び「速度計38の針39の自由端に備えられた板片40」は、「0Km/hrから一定速度(例えば2Km/hr)の位置を指す間は、上記フォトインタラプタ6の内側にとどまり、上記発光ダイオード9の発する光が、上記光感知ダイオード7に到達しない」ことからみて、車両の速度を「基準値」(一定速度(例えば2Km/hr))と比較していることは明らかであるから、両者併せて「速度の測定値と基準値とを比較する手段」を成しているといえる。 さらに、引用発明の「赤色点滅灯回路A」は、「0Km/hrから一定速度(例えば2Km/hr)の位置を指す間は、上記フォトインタラプタ6の内側にとどまり、上記発光ダイオード9の発する光が、上記光感知ダイオード7に到達しないため、バッテリー1の正極から電流が流れ、車両後部と前部に搭載された、赤色表示灯14a、14bを点滅させる」のであるから、「前記速度の測定値が前記基準値よりも小さいと決定されたことに応答して、前記光源を点灯および消灯する手段」であるといえる。 したがって、本願発明と引用発明の一致点を、本願発明の用語を用いて表すと、次のとおりである。 〔一致点〕 「車両の動きの状態を視覚的に表示する車両表示システムであって、該システムは、 車両の速度の測定値を決定するように動作可能な車両速度測定装置と、 使用中、上記車両に搭載され、上記車両の動きの状態を視覚的に表示するように動作可能な光源と、 速度の測定値と基準値とを比較する手段と、 前記速度の測定値が前記基準値よりも小さいと決定されたことに応答して、前記光源を点灯および消灯する手段と、 を具備する車両表示システム。」 そして、両者の相違点は次のとおりである。 〔相違点1〕 本願発明は、車両に搭載される光源が「光源列」であり、該光源は、速度の測定値が基準値よりも小さいと決定されたことに応答して、「点灯された光源の変化する一連のパターンを生成するために、前記光源の中からいくつかの光源を点灯および消灯する」ものであるのに対し、引用発明は車両に搭載される光源(赤色表示灯14a、14b)が、列状のものではなく、該光源は、速度の測定値が基準値よりも小さいと決定されたことに応答して「点滅」するものである点。 〔相違点2〕 本願発明は、「上記車両に搭載され、前記車両の後方の予め定められた距離内に更なる車両がいるかどうかを決定するように動作可能な車両距離測定装置と、前記速度の測定値が前記基準値よりも小さいと決定され、かつ、前記更なる車両が前記予め定められた距離内にいると決定されたことに応答して、点灯された光源の固定されたパターンを維持する手段」を具備するのに対し、引用発明はそれらを具備していない点。 上記相違点1について検討する。 車両に搭載される光源を「光源列」とし、これにより車両の動きの状態を視覚的に表示する際に、「点灯された光源の変化する一連のパターンを生成するために、前記光源の中からいくつかの光源を点灯および消灯する」ことは、特開平1-145247号公報(第3ページ左下欄第13行?同ページ右下欄第17行、第6図参照)、及び実願平1-84883号(実開平3-24938号)のマイクロフィルム(第1ページ、実用新案登録請求の範囲参照)等に記載の如く周知であるから、本願発明の上記相違点1に係る発明特定事項は、当業者による設計的事項にすぎない。 次に上記相違点2について検討する。 車両の動きの状態を視覚的に表示する車両表示システムにおいて、「車両の後方の予め定められた距離内に更なる車両がいるかどうかを決定するように動作可能な車両距離測定装置」を有し、「更なる車両が前記予め定められた距離内にいると決定されたことに応答して」、光源の点灯または点滅を行うことは、例えば、実願昭61-52815号(実開昭62-165139号)のマイクロフィルム(第11ページ第14行?第12ページ第6行参照)、実願平1-25650号(実開平2-116400号)のマイクロフィルム(第1ページ、実用新案登録請求の範囲参照)、及び実願平1-149878号(実開平3-88861号)のマイクロフィルム(第4ページ第9行?第9ページ第6行参照)等に記載の如く周知である。しかも、これらの文献に記載されるように、車両速度測定装置と車両距離測定装置とを併用し、該車両速度測定装置の測定結果及び該車両距離測定装置の測定結果に基づいて、車両の動きの状態を、より細分化して視覚的に表示することも周知(上記各文献に付された参照箇所を参照)である。 そうすると、引用発明の車両表示システムに、「車両の後方の予め定められた距離内に更なる車両がいるかどうかを決定するように動作可能な車両距離測定装置」を付加し、「速度の測定値が前記基準値よりも小さいと決定され、かつ更なる車両が前記予め定められた距離内にいると決定されたことに応答して」、光源の点灯または点滅を行うようにすることは、当業者が容易になし得ることである。 そして、点灯された光源の変化する一連のパターンを表示する機能を有する光源列に、点灯された光源の固定されたパターンを維持する機能を併せ持たせることも周知である(上記周知例として挙げた文献のうち、特開平1-145247号公報〔第4ページ右上欄第4?8行[ブレーキランプ2aと同時又は遅れて点灯し、その後・・・第6図(F)に示すようなジグザグに点灯順の変化等を行わせ]参照〕、及び実願平1-84883号(実開平3-24938号)のマイクロフィルム〔第5ページ第9?17行[ブレーキ操作によりその発光ダイオード3夫々が一斉に点灯するよう制御されている。・・・発光ダイオード3夫々が方向指示方向に順次点滅する]参照〕)ことから、光源の点灯または点滅のパターンとして「点灯された光源の固定されたパターンを維持する」ものを選択することは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。 また、そのような表示パターンとしたことによって、引用発明及び周知技術から、当業者が予測し得ない格別の作用効果を奏するものとも認められない。 上記相違点1及び2を総合しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から、当業者が予測し得る程度のものであって格別のものではない。 よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易になし得たものである。 第5 むすび 本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-02-02 |
結審通知日 | 2007-02-06 |
審決日 | 2007-02-20 |
出願番号 | 特願平5-513885 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B60Q)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 仁木 浩 |
特許庁審判長 |
阿部 寛 |
特許庁審判官 |
芦原 康裕 稲村 正義 |
発明の名称 | 車両の表示システムおよび測距装置 |
代理人 | 志賀 正武 |