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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1161797
審判番号 不服2005-14818  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-04 
確定日 2007-08-02 
事件の表示 平成10年特許願第336408号「記録ヘッド目詰まり検出方法とその装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 6月16日出願公開、特開2000-163723〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年11月27日の出願であって、平成16年12月27日付けで手続補正がなされ、その後平成17年6月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年8月4日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成17年9月5日付けで手続補正がなされたものである。

第2 平成17年9月5日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
平成17年9月5日付け手続補正を却下する。
[理由]
1.本件補正
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前の、
(a)「少なくとも記録ヘッドと前記記録ヘッドよりも大きいギャップ長を有する消去ヘッドとを回転走査して、磁気テープの長手方向に対して斜め方向に記録トラックを形成する、磁気記録再生装置における前記記録ヘッドの目詰まり検出方法であって、
前記記録ヘッドによる情報の記録に先立って、記録トラックにおける前記情報の記録領域を消去する消去ヘッドに対して、前記記録トラック毎または複数の規定数の前記記録トラック毎にあるいは規定時間毎に、前記記録領域の前または後ろの少なくとも一方の区間を前記消去ヘッドがトレースするタイミングで、消去周波数より低い周波数の電流を流してテスト信号を前記磁気テープに記録し、
前記テスト信号を前記記録ヘッドで再生した再生出力の低下により前記記録ヘッドの目詰まりを判定する記録ヘッド目詰まり検出方法。」を、
(b)「少なくとも記録ヘッドと前記記録ヘッドよりも大きいギャップ長を有し、且つ前記記録ヘッドとアジマス角が異なる消去ヘッドとを回転走査して、磁気テープの長手方向に対して斜め方向に記録トラックを形成する、磁気記録再生装置における前記記録ヘッドの目詰まり検出方法であって、
前記記録ヘッドによる情報の記録に先立って、記録トラックにおける前記情報の記録領域を消去する消去ヘッドに対して、前記記録トラック毎または複数の規定数の前記記録トラック毎に、前記記録領域の前または後ろの少なくとも一方の区間を前記消去ヘッドがトレースするタイミングで、消去周波数より低い1MHzから3MHzの周波数の電流を流してテスト信号を前記磁気テープに記録し、
前記テスト信号を前記記録ヘッドで再生した再生出力の低下により前記記録ヘッドの目詰まりを判定する記録ヘッド目詰まり検出方法。」
と補正するものである。

本件補正は、補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「消去ヘッド」について「記録ヘッドとアジマス角が異なる」との限定を付加し、「消去周波数より低い周波数の電流を流してテスト信号を前記磁気テープに記録」する際の「低い周波数」について「1MHzから3MHzの」との限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、補正後における特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「補正後の発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

2.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-307016号公報(以下「引用例1」という。)には、「磁気記録再生装置」に関し、次の事項が記載されている。(なお、下線は当審で付与したものである。)
(ア)「【請求項1】映像信号の記録媒体への記録、記録媒体からの記録情報の再生を行う記録再生兼用ヘッドと消去用の消去ヘッドとを備え、該記録再生兼用ヘッドの記録動作より先行して動作する消去ヘッドへ消去用の信号とパイロット信号とを多重して供給する検出信号記録手段と、
前記消去ヘッドを用いて前記記録媒体へ前記検出信号記録手段からの多重信号を記録後、ビデオ領域の前後においてのみ、後行する前記記録再生兼用ヘッドを用いて該記録信号を再生し、この再生信号から前記パイロット信号のみを検出する検出手段と、
前記検出手段からの出力信号に基づいて、エラー信号を生成するエラー信号生成手段と、を具備したことを特徴とする目詰まり検出装置。」(【特許請求の範囲】)
(イ)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、映像信号の記録・再生ヘッドの目詰まり検出装置に係り、特に、映像信号の記録・再生のヘッドの目詰まりをリアルタイムで検出する目詰まり検出装置に関する。」
(ウ)「【0002】
【従来の技術】VTR等は、映像信号を磁気信号に変換し、磁気テープ上に記録ヘッドを用いて記録し、また、再生ヘッドにより磁気テープから磁気信号を電気信号に変換して、映像信号を再生する。これらの記録ヘッド、再生ヘッドあるいは記録・再生兼用ヘッド(以下、録再ヘッド)は、回転シリンダ上に取り付けられ、映像信号は、回転シリンダの回転およびヘッドの機構で記録・再生されている。回転シリンダの回転は、モータ等で駆動され、サーボループ系などの制御機構で制御されている。」
(エ)「【0005】(略)また、消去ヘッド(以下、イレーズヘッドという)304が消去用の回路301、303とともに搭載されている。
【0006】このようなVTRでは、ヘッドの耐摩耗特性などからヘッドの目詰まりによる記録・再生の不具合が検討項目の一つとして挙げられている。」(従来の技術の項)
(オ)「【0011】
【発明が解決しようとする課題】上記の如く、記録ポーズ時の操作後に検出手順を設け、検出する装置では、記録終了後に目詰まりが検出され、連続記録の場合、記録不良が発生する不具合があり、また別に設けられた再生ヘッドを記録時に再生動作させ、記録ヘッドの目詰まりを検出する装置では、リアルタイム処理が可能となるが、部品数が増え、記録・再生回路がヘッド数だけ必要となり、部品数が増大するとともにコスト高となる問題があった。」
(カ)「【0014】【作用】本発明においては、先行するイレーズヘッドで目づまり検出用のパイロット信号を交流バイアス記録し、後行する録再ヘッドでビデオ領域の前後においてのみ、目詰まり検出用のパイロット信号を検出することができるため、リアルタイムで目詰まりを検出できる。」
(キ)「【0015】
【実施例】図1に本発明の目詰まり検出装置の8mmビデオへの一実施例を示す。(略)この信号を記録アンプ106へ供給し、増幅して録再ヘッド107、108に供給する。
【0016】(略)
【0017】また、ATF分周回路212の出力信号は、バランスドモジュレータ215(以下、B・Mという)にも供給されている。
【0018】一方、前記B・M215には、多重信号用の分周回路(fCLOG)311からの出力信号も供給されている。また、分周回路311の出力信号(fCLOG)は、多重化を行う加算回路302にも供給されており、プリアンプ303を介してイレーズヘッド304へ供給されている。イレーズヘッド304は、消去信号発振回路からの消去信号7MHzを交流バイアスとして加算回路302を介して供給されたパイロット信号fCLOGの記録を行う。このパイロット信号(fCLOG)を目づまり検出用として用いている。
【0019】このように記録された信号の再生は、録再ヘッド107、108により行われる。磁気信号から電気信号に変換された再生信号は、プリアンプ109を介して、信号処理回路100へ接続されるとともにパイロット信号抽出回路200へも供給されている。パイロット抽出手段200は、低域フィルタ201と、アンプ202とから成る。
【0020】(略)
【0021】また、パイロット信号抽出手段200へ供給された再生信号は、まず、低域通過フィルタ202を介してアンプ201で増幅され、B・M215へ供給されている。
【0022】前述の如く、B・M215には分周回路271からのパイロット信号も供給されており、ここで、再生信号と基準用のATF信号およびパイロット信号fCLOGとの差が得られる。(略)
【0023】また、本願の特徴である目詰まり検出用のパイロット信号fCLOGも同様にB・M215に供給され、分周回路271からの出力信号との間で差の信号を得ている。
【0024】この差の信号が次段のfCLOGBPF272を介してDET273へ供給される。このようにして、fCLOGが供給されている間は、DET273から出力は得られないように構成されている。なお、パイロット信号抽出手段200と、B・M215と、分周回路271と、fCLOGBPF272と、DET273とで検出手段を構成している。
【0025】次に、図1の動作を図2を用いて説明する。図2(a)は、8mmビデオ方式のテープパターンであり、図2(b)は磁気テープと録再兼用ヘッドの位置関係である。
【0026】8mmビデオの場合、最も低域にATF制御信号(f1?f4)が各トラックに順に記録されるので、それ以上の周波数で、かつ、低域変換色信号(688KHz)下側に影響の出ない事、また、アジマスロスの少ない周波数(低域)である事、現行装置の改良型としてATF基準信号(5.95Mz)を分周して生成する事などを考慮し、ここでは、パイロット信号用の信号周波数fCLOGを198.3KHzとしている。
【0027】このようなVTRにおいては、イレーズヘッド304は、録再ヘッド107,108に対し、常に先行しており、この動作を本願は利用している。
【0028】このイレーズヘッド304は、通常アジマス0度で消去信号として、7MHZ程度の信号を記録するように動作しており、多重されたパイロット信号をこの消去信号を用いて記録する。このパイロット信号fCLOGのレベルは、消去信号7MHzの高周波で交流バイアス記録されるため、低振幅レベルで良く、ロータリトランスの各チャネル間に設けられたシールド用のショートリングによるクロストークの40db以上の抑圧効果を考慮すれば、他のヘッドへの影響は、ほとんどない。このようなパイロット信号を目づまり検出用の信号として用いて、リアルタイムで目づまりを検出する動作を以下詳細に説明する。
【0029】まず、パイロット信号fCLOGを、先行するイレーズヘッド304を用いて、トラック全面に記録する。この先行するイレーズヘッド304にて、全面記録した後、後行する録再ヘッドでオーバーライトして記録を行う。ビデオ領域では、記録用のヘッドとして録再へッドを用いて、ビデオ領域71とPCM領域72の境界(VPガード領域)のみ再生モードへ切り替える。現在、この領域は、タイムコードなどの記録エリア(TC)として一部が利用されているが、このTC領域以外のVPガード領域73を本実施例では、目づまり検出領域として用いている。
【0030】なお、録再兼用ヘッドのアジマス角度は、イレーズヘッドのそれとは異なるが、低周波数で記録しているため、損失はほとんどない。また、録再兼用ヘッドの瞬時切り替えも現在タイムコードの切り替えで実用化されており技術的にはなんの問題もない。(略)
【0031】この記録信号は、ビデオ領域71では、録再ヘッド107の記録信号にオーバーライトされ、ビデオ信号のみとなり、ビデオ領域直前のVP領域73への多重信号のみ記録される。これを、後行する録再ヘッド107で読み取り、この録再ヘッド107は、ビデオ領域71へ移行する際、記録ヘッドに切り替えられる。
【0032】このVP領域73の再生期間のみ、B・M215が目詰まり検出用のパイロット信号fCLOGを供給する分周回路311からの信号との比較動作となり、他の期間は通常のATF動作を行う。目詰まり検出信号fCLOGは、パルス状の信号のため、ラッチ信号によりラッチ、図示しない制御回路で処理する構成としている。この信号を用いて警告信号を生成し、LEDなどで表示する。(略)」(実施例の項)
(ク)「【0034】以上、8mmビデオを例に説明したが、VHS等のVPガード領域を持たないシステムの場合ではVPガード領域73の代わりにCTL(コントロールトラック領域)、または、リニアオーディオ領域を利用する構成としても良い。」

3.対比判断
(1)対比
補正後の発明と引用例1に記載された発明とを対比する。
上記2で摘示した記載事項、特に(ア)(ウ)(エ)(カ)(キ)(下線部参照)によれば、引用例1には、
「映像信号の記録媒体への記録、記録媒体からの記録情報の再生を行う記録再生兼用ヘッドと消去用の消去ヘッドとを備えるVTRにおいて、先行する消去ヘッドで目詰まり検出用のパイロット信号を交流バイアス記録し、後行する記録再生兼用ヘッドでビデオ領域の前後においてのみ、目詰まり検出用のパイロット信号を検出する方法であって、
記録再生兼用ヘッドのアジマス角度は、消去ヘッドのそれとは異なり、
パイロット信号用の信号周波数はアジマスロスの少ない低域の周波数である、方法。」
の発明が記載されている。

引用例1に記載された発明の「記録再生兼用ヘッド」「記録媒体」「パイロット信号」は、それぞれ補正後の発明の「記録ヘッド」「磁気テープ」「テスト信号」に相当している。
引用例1に記載された発明は、「VTR」に関する方法であるので、記録再生兼用ヘッドと消去ヘッドとを、回転シリンダ上に取り付け回転走査して、磁気テープの長手方向に対して斜め方向に記録トラックを形成する磁気記録再生装置に関する方法であることが明らかである(上記(ウ)及び図2参照)。
引用例1に記載された発明は、「先行する消去ヘッドで目詰まり検出用のパイロット信号を交流バイアス記録し、後行する記録再生兼用ヘッドでビデオ領域の前後においてのみ、目詰まり検出用のパイロット信号を検出する」ので、補正後の発明の「記録ヘッドによる情報の記録に先立って、記録トラックにおける情報の記録領域を消去する消去ヘッドに対して、記録トラック毎に、」所定の周波数の電流を流してテスト信号を磁気テープに記録する構成を実質的に備えている。
引用例1に記載された発明は、「後行する記録再生兼用ヘッドでビデオ領域の前後においてのみ、目詰まり検出用のパイロット信号を検出する」ものであって、パイロット信号が検出されないと目詰まりであるとして警告信号を作成することが例示されている(上記(キ)の段落22?24、32参照。)から、補正後の発明の「テスト信号を記録ヘッドで再生した再生出力の低下により記録ヘッドの目詰まりを判定する」に実質的に相当する構成を備えている。
よって、補正後の発明と引用例1に記載された発明との一致点及び相違点は以下のとおりである。

(一致点) 「少なくとも記録ヘッドと記録ヘッドとアジマス角が異なる消去ヘッドとを回転走査して、磁気テープの長手方向に対して斜め方向に記録トラックを形成する、磁気記録再生装置における記録ヘッドの目詰まり検出方法であって、
記録ヘッドによる情報の記録に先立って、記録トラックにおける情報の記録領域を消去する消去ヘッドに対して、記録トラック毎に、所定の周波数の電流を流してテスト信号を磁気テープに記録し、
テスト信号を記録ヘッドで再生した再生出力の低下により記録ヘッドの目詰まりを判定する記録ヘッド目詰まり検出方法。」

(相違点1) 「消去ヘッド」について、補正後の発明は、「記録ヘッドよりも大きいギャップ長を有し」と特定しているのに対して、引用例1に記載された発明は、そのように特定していない点。
(相違点2) テスト信号を記録するために消去ヘッドに対して、所定の周波数の電流を流すことについて、補正後の発明は、「記録領域の前または後ろの少なくとも一方の区間を消去ヘッドがトレースするタイミング」で、「消去周波数より低い1MHzから3MHzの周波数」の電流を流すと特定しているのに対して、引用例1に記載された発明は、そのように特定していない点。

(2)相違点についての判断
(相違点1について)
十分に消去するために、消去ヘッドのギャップ長を、記録ヘッドのギャップ長より大きくすることは、本願の明細書(段落21)において、「一般に」と記載されているように、一般的な技術であって、例えば、特開平6-309626号公報や、原審の拒絶査定で例示された特開平2-76109号公報等に記載されている。
よって、引用例1に記載された発明の消去ヘッドのギャップ長が記録ヘッドのそれよりも大きいとすることは、当業者が普通になし得ることにすぎない。
(相違点2について)
引用例1に記載された発明において、目詰まり検出用のパイロット信号は、「後行する記録再生兼用ヘッドでビデオ領域の前後においてのみ」検出されるものであり、その具体例として、記録用ヘッドを、ビデオ領域とPCM領域の境界(VPガード領域)のみ再生モードへ切り替えてビデオ領域直前のVPガード領域のパイロット信号を検出すること(上記(キ)段落29、30参照。)が記載され、VPガード領域を持たないシステムの場合では、CTL(コントロールトラック領域)やリニアオーディオ領域を利用しても良い旨が記載されている(上記(キ)段落34)ことから、引用例1に記載された発明におけるパイロット信号が、ビデオ記録領域の前や、コントロールトラックやオーディオトラックが通常設けられる記録トラックの前や後の少なくとも一方の区間である検出個所に、消去ヘッドによって記録されていれば足りることが、示唆されている。
そして、目詰まり検出用のテスト信号を、記録トラック全面ではなく、記録トラックの前や後の少なくとも一方の区間に記録して、これを再生する方法は、周知の技術であり、例えば、原審において周知例として示された、特開昭61-61220号公報、特開昭60-76014号公報、及び特開昭54-109820号公報等に記載されているとおりである。
してみれば、引用例1に記載された発明において、パイロット信号であるテスト信号を、記録トラック全面に、交流バイアス記録するのにかえて、検出個所として例示されているような、記録領域の前や後の区間にのみ、再生に適した周波数により記録することは当業者が容易に想到しうることであって、その周波数の範囲1MHzから3MHzは、当業者が適宜選択し得る程度の値にすぎない。
ところで、「1MHzから3MHz」の周波数を特定した理由について、明細書に明確な記載がない。当該理由について、請求人は、請求の理由で、明細書の段落21を根拠に主張している。しかしながら、明細書には、「短波長のテスト信号を用いた場合、アジマスロスにより記録ヘッドで再生したテスト信号のレベルが低下する。高周波化による出力の向上とアジマスロスによる出力の低下を考慮して、テスト信号の波長はアジマスロスによる出力ゼロの波長の次の出力ゼロの波長より長いことが望ましい。」(段落21)との記載があるのみで、当該記載は、段落22におけるテスト信号の波長の選定の理由の根拠であって、テスト信号の周波数に適する上限があることを示すのみで、周波数の上限値3MHzについて記載したものでもない。また、下限値1MHzについても臨界値としての理由が示されているものでもない。
なお、請求人の主張する、(サ)高周波化による出力の向上、(シ)アジマスロスによる出力の低下について検討する。引用例1には、テスト信号として、アジマスロスの少ない低域の周波数が望ましいことが示されており、テスト信号の周波数を選択するに当たり、アジマスロスの観点から上限を考慮すべきことが示されている。また、磁気記録において、その再生出力の向上のためには、損失が問題にならない程度の高域の周波数が望ましいことは、技術常識であるから、テスト信号の周波数の下限を、出力向上の観点から選定すべきであることは当然のことである。してみれば、引用例1に記載された発明において、テスト信号の周波数を、上記(サ)(シ)の観点から選定することは、当業者が適宜なし得ることにすぎない。

そして、上記相違点を総合的に検討しても、補正後の発明の効果は、引用例1に記載された発明及び周知の事項から当業者であれば予測される範囲内であるので、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものである。

4.むすび
以上のとおり、補正後の発明は、本願出願前に頒布された引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成17年9月5日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至4に係る発明は、平成16年12月27日付け手続補正書によって補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に記載された発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】上記「第2の1の(a)」のとおり。」

1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1の記載事項は、上記「第2の2」に記載されたとおりである。

2.対比判断
本願発明は、上記「第2の3」で検討した補正後の発明から、「消去ヘッド」の構成についての限定事項である「記録ヘッドとアジマス角が異なる」という構成を省き、「低い周波数」についての限定事項である「1MHzから3MHzの」という構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する補正後の発明が、上記「第2の3」に記載したとおり、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願発明は、本願出願前に頒布された引用例1に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。他の請求項を検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-31 
結審通知日 2007-06-05 
審決日 2007-06-20 
出願番号 特願平10-336408
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 石坂 博明富澤 哲生  
特許庁審判長 小林 秀美
特許庁審判官 吉村 伊佐雄
中野 浩昌
発明の名称 記録ヘッド目詰まり検出方法とその装置  
代理人 森本 義弘  
代理人 原田 洋平  
代理人 板垣 孝夫  
代理人 笹原 敏司  

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