• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1161838
審判番号 不服2004-1557  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-22 
確定日 2007-08-02 
事件の表示 特願2000-82723「AC型プラズマディスプレイパネルとその駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月5日出願公開、特開2001-272946〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件出願は、平成12年3月23日の出願であって、平成15年12月19日付け(発送日:同月24日)で拒絶査定がされ、これに対し、平成16年1月22日に審判請求がなされるとともに、同日に明細書についてする手続補正(以下「平成16年1月22日付けの手続補正」という。)がなされたものである。

2 平成16年1月22日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年1月22日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
平成16年1月22日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の特許請求の範囲

「【請求項1】 互いに平行に配置された複数の走査電極と共通電極を有する前面基板と、前記複数の走査電極及び共通電極と直交するように配置された複数のデータ電極を有する背面基板と、前記複数の走査電極及び共通電極と前記データ電極の交点に配置されるセルを具備するAC型プラズマディスプレイパネルであって、1画面を構成する時間である1フレームをサブフィールド(以下、SFと称する)に分割し、任意のセルに書込放電を発生させるために各SFにて少なくとも前記走査電極に線順次に走査パルスを印加しつつ選択する前記データ電極に前記走査パルスに同期したデータパルスを印加して選択した選択セルに書込放電を起こし、壁電荷を形成するアドレス期間と、前記アドレス期間に選択的に放電が発生した箇所に維持パルスを供給して維持放電を持続的に発生させる表示放電を行う維持期間とで駆動するAC型プラズマディスプレイの駆動方法において、
前記維持期間の終了後に表示を行った前記選択セルに形成された壁電荷を消去し、プラズマディスプレイパネル内の全セルの状態を均一化する電荷消去パルスを、前記維持パルスのうちの最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間に印加し、前記最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間、前記走査電極と共通電極には実質的に電位差を与えないことを特徴とするAC型プラズマディスプレイの駆動方法。
【請求項2】 表示する画像の平均輝度レベルに応じて前記維持パルスの数を変化させることを特徴とする請求項1に記載のAC型プラズマディスプレイの駆動方法。
【請求項3】 請求項1に記載されたAC型プラズマディスプレイの駆動方法において、前記電荷消去パルスの印加終了後次のサブフィールドのプライミングパルスの印加開始時間を0?200μsとすることを特徴とするAC型プラズマディスプレイの駆動方法。
【請求項4】 請求項3に記載されたAC型プラズマディスプレイの駆動方法において、前記プライミングパルスの印加終了後に供給される電荷調整パルスを、前記プライミングパルスの印加終了後0?50μsに開始することを特徴とするAC型プラズマディスプレイの駆動方法。
【請求項5】 請求項4に記載されたAC型プラズマディスプレイの駆動方法において、前記電荷調整パルスの印加終了後に適用されるアドレス期間の開始時間は、前記電荷調整パルスの印加終了後0?50μsに開始することを特徴とするAC型プラズマディスプレイの駆動方法。
【請求項6】 請求項1乃至5のいずれかに記載されたAC型プラズマディスプレイの駆動方法において、前記1フレーム中のサブフィールド期間を前記維持期間を圧縮して短縮することを特徴とするAC型プラズマディスプレイの駆動方法。
【請求項7】 請求項1乃至5のいずれかに記載されたAC型プラズマディスプレイの駆動方法において、前記アドレス期間の前にプライミング期間を設け、前記維持期間の後に電荷消去期間を設けて前記サブフィールド期間にプライミング期間、アドレス期間、維持期間、電荷消去期間を順次、プライミングパルス、アドレスパルス、維持パルス、電荷消去パルスを印加して繰り返し、駆動することに加え、前記フィールドの最後に電荷消去パルス、前記プライミングパルス、電荷調整パルスを印加することを特徴とするAC型プラズマディスプレイの駆動方法。
【請求項8】 請求項7に記載されたAC型プラズマディスプレイの駆動方法において、さらに次フィールドの先頭のサブフィールドのアドレス期間前に電荷消去パルス、プライミングパルス、電荷調整パルスを印加することを特徴とするAC型プラズマディスプレイの駆動方法。
【請求項9】 互いに平行に配置された複数の走査電極と共通電極を有する前面基板と、前記複数の走査電極及び共通電極と直交するように配置された複数のデータ電極を有する背面基板と、前記複数の走査電極及び共通電極と前記データ電極の交点に配置されるセルを具備し、1画面を構成する時間である1フレームをサブフィールド(以下、SFと称する)に分割し、任意のセルに書込放電を発生させるために各SFにて前記走査電極と前記共通電極とにプライミングパルスを供給するプライミング期間と、少なくとも前記走査電極に線順次に走査パルスを印加しつつ選択する前記データ電極に前記走査パルスに同期したデータパルスを印加して選択した選択セルに書込放電を起こし、壁電荷を形成するアドレス期間と、前記アドレス期間に選択的に放電が発生した箇所に維持パルスを供給して維持放電を持続的に発生させる表示放電を行う維持期間と、前記走査電極と前記共通電極とに維持消去パルスを印加する電荷消去期間とを順次駆動するAC型プラズマディスプレイにおいて、
前記維持期間に前記走査電極と共通電極とに前記維持パルスを印加する維持ドライバと、前記維持期間の終了後の前記電荷消去期間に前記放電・表示を行った前記選択セルに形成された壁電荷を消去し、プラズマディスプレイパネル内の全セルの状態を均一化する電荷消去パルスを前記走査電極に印加する電荷消去ドライバとを備え、前記電荷消去パルスを前記維持パルスのうちの最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間に印加し、前記最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間、前記走査電極と共通電極には実質的に電位差を与えないことを特徴とするAC型プラズマディスプレイ。
【請求項10】 請求項9に記載されたAC型プラズマディスプレイにおいて、更に前記プライミング期間に前記走査電極と前記共通電極とに前記プライミングパルスを印加するプライミングドライバを備え、前記プライミングドライバは、前記電荷消去パルスの印加終了後0?200μsに次のサブフィールドの前記プライミングパルスを印加・開始することを特徴とするAC型プラズマディスプレイ。
【請求項11】 請求項10に記載されたAC型プラズマディスプレイにおいて、前記プライミングパルスの印加終了後に供給される電荷調整パルスを、前記プライミングパルスの印加終了後0?50μsに開始することを特徴とするAC型プラズマディスプレイ。
【請求項12】 互いに平行に配置された複数の走査電極と共通電極を有する前面基板と、前記複数の走査電極及び共通電極と直交するように配置された複数のデータ電極を有する背面基板と、前記複数の走査電極及び共通電極と前記データ電極の交点に配置されるセルを具備し、1画面を構成する時間である1フレームはサブフィールド(以下、SFと称する)に分割され、各SFはプライミング期間、アドレス期間、維持期間、電荷消去期間に分割されるAC型プラズマディスプレイにおいて、
前記維持期間に前記走査電極と前記共通電極とに前記維持パルスを印加する維持ドライバと、前記維持期間の終了後の前記電荷消去期間に前記放電・表示を行った前記選択セルに形成された壁電荷を消去し、プラズマディスプレイパネル内の全セルの状態を均一化する電荷消失パルスを前記走査電極に印加する電荷消去ドライバとを備え、前記電荷消去パルスを前記維持パルスのうちの最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間に印加し、前記最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間、前記走査電極と共通電極には実質的に電位差を与えないことを特徴とするAC型プラズマディスプレイ。」

を、

「【請求項1】 互いに平行に配置された複数の走査電極と共通電極を有する前面基板と、前記複数の走査電極及び共通電極と直交するように配置された複数のデータ電極を有する背面基板と、前記複数の走査電極及び共通電極と前記データ電極の交点に配置されるセルを具備するAC型プラズマディスプレイパネルであって、1画面を構成する時間である1フレームをサブフィールド(以下、SFと称する)に分割し、任意のセルに書込放電を発生させるために各SFにて少なくとも前記走査電極に線順次に走査パルスを印加しつつ選択する前記データ電極に前記走査パルスに同期したデータパルスを印加して選択した選択セルに書込放電を起こし、壁電荷を形成するアドレス期間と、前記アドレス期間に選択的に放電が発生した箇所に維持パルスを供給して維持放電を持続的に発生させる表示放電を行う維持期間とで駆動するAC型プラズマディスプレイの駆動方法において、
前記維持期間の終了後に表示を行った前記選択セルに形成された壁電荷を消去し、プラズマディスプレイパネル内の全セルの状態を均一化する電荷消去パルスを、前記維持パルスのうちの最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間に印加し、前記最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間、前記走査電極と共通電極には実質的に電位差を与えないことによって前記電荷消去パルスによる強放電の発生を防止することを特徴とするAC型プラズマディスプレイの駆動方法。
【請求項2】 表示する画像の平均輝度レベルに応じて前記維持パルスの数を変化させることを特徴とする請求項1に記載のAC型プラズマディスプレイの駆動方法。
【請求項3】 請求項1に記載されたAC型プラズマディスプレイの駆動方法において、前記電荷消去パルスの印加終了後次のサブフィールドのプライミングパルスの印加開始時間を0?200μsとすることを特徴とするAC型プラズマディスプレイの駆動方法。
【請求項4】 請求項3に記載されたAC型プラズマディスプレイの駆動方法において、前記プライミングパルスの印加終了後に供給される電荷調整パルスを、前記プライミングパルスの印加終了後0?50μsに開始することを特徴とするAC型プラズマディスプレイの駆動方法。
【請求項5】 請求項4に記載されたAC型プラズマディスプレイの駆動方法において、前記電荷調整パルスの印加終了後に適用されるアドレス期間の開始時間は、前記電荷調整パルスの印加終了後0?50μsに開始することを特徴とするAC型プラズマディスプレイの駆動方法。
【請求項6】 請求項1乃至5のいずれかに記載されたAC型プラズマディスプレイの駆動方法において、前記1フレーム中のサブフィールド期間を前記維持期間を圧縮して短縮することを特徴とするAC型プラズマディスプレイの駆動方法。
【請求項7】 請求項1乃至5のいずれかに記載されたAC型プラズマディスプレイの駆動方法において、前記アドレス期間の前にプライミング期間を設け、前記維持期間の後に電荷消去期間を設けて前記サブフィールド期間にプライミング期間、アドレス期間、維持期間、電荷消去期間を順次、プライミングパルス、アドレスパルス、維持パルス、電荷消去パルスを印加して繰り返し、駆動することに加え、前記フィールドの最後に電荷消去パルス、前記プライミングパルス、電荷調整パルスを印加することを特徴とするAC型プラズマディスプレイの駆動方法。
【請求項8】 請求項7に記載されたAC型プラズマディスプレイの駆動方法において、さらに次フィールドの先頭のサブフィールドのアドレス期間前に電荷消去パルス、プライミングパルス、電荷調整パルスを印加することを特徴とするAC型プラズマディスプレイの駆動方法。
【請求項9】 互いに平行に配置された複数の走査電極と共通電極を有する前面基板と、前記複数の走査電極及び共通電極と直交するように配置された複数のデータ電極を有する背面基板と、前記複数の走査電極及び共通電極と前記データ電極の交点に配置されるセルを具備し、1画面を構成する時間である1フレームをサブフィールド(以下、SFと称する)に分割し、任意のセルに書込放電を発生させるために各SFにて前記走査電極と前記共通電極とにプライミングパルスを供給するプライミング期間と、少なくとも前記走査電極に線順次に走査パルスを印加しつつ選択する前記データ電極に前記走査パルスに同期したデータパルスを印加して選択した選択セルに書込放電を起こし、壁電荷を形成するアドレス期間と、前記アドレス期間に選択的に放電が発生した箇所に維持パルスを供給して維持放電を持続的に発生させる表示放電を行う維持期間と、前記走査電極と前記共通電極とに維持消去パルスを印加する電荷消去期間とを順次駆動するAC型プラズマディスプレイにおいて、
前記維持期間に前記走査電極と共通電極とに前記維持パルスを印加する維持ドライバと、前記維持期間の終了後の前記電荷消去期間に前記放電・表示を行った前記選択セルに形成された壁電荷を消去し、プラズマディスプレイパネル内の全セルの状態を均一化する電荷消去パルスを前記走査電極に印加する電荷消去ドライバとを備え、前記電荷消去パルスを前記維持パルスのうちの最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間に印加し、前記最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間、前記走査電極と共通電極には実質的に電位差を与えないことよって前記電荷消去パルスによる強放電の発生を防止することを特徴とするAC型プラズマディスプレイ。
【請求項10】 請求項9に記載されたAC型プラズマディスプレイにおいて、更に前記プライミング期間に前記走査電極と前記共通電極とに前記プライミングパルスを印加するプライミングドライバを備え、前記プライミングドライバは、前記電荷消去パルスの印加終了後0?200μsに次のサブフィールドの前記プライミングパルスを印加・開始することを特徴とするAC型プラズマディスプレイ。
【請求項11】 請求項10に記載されたAC型プラズマディスプレイにおいて、前記プライミングパルスの印加終了後に供給される電荷調整パルスを、前記プライミングパルスの印加終了後0?50μsに開始することを特徴とするAC型プラズマディスプレイ。
【請求項12】 互いに平行に配置された複数の走査電極と共通電極を有する前面基板と、前記複数の走査電極及び共通電極と直交するように配置された複数のデータ電極を有する背面基板と、前記複数の走査電極及び共通電極と前記データ電極の交点に配置されるセルを具備し、1画面を構成する時間である1フレームはサブフィールド(以下、SFと称する)に分割され、各SFはプライミング期間、アドレス期間、維持期間、電荷消去期間に分割されるAC型プラズマディスプレイにおいて、
前記維持期間に前記走査電極と前記共通電極とに前記維持パルスを印加する維持ドライバと、前記維持期間の終了後の前記電荷消去期間に前記放電・表示を行った前記選択セルに形成された壁電荷を消去し、プラズマディスプレイパネル内の全セルの状態を均一化する電荷消失パルスを前記走査電極に印加する電荷消去ドライバとを備え、前記電荷消去パルスを前記維持パルスのうちの最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間に印加し、前記最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間、前記走査電極と共通電極には実質的に電位差を与えないことよって前記電荷消去パルスによる強放電の発生を防止することを特徴とするAC型プラズマディスプレイ。」

と補正することを含むものである。
なお、アンダーラインは、補正箇所を示すために請求人が付したものである。

(2)本件補正の適否について
本件補正による特許請求の範囲の補正は、請求項1、9及び12において、補正前の請求項1、9及び12に係る発明を特定するために必要な事項である「前記最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間、前記走査電極と共通電極には実質的に電位差を与えないこと」について、それによって「前記電荷消去パルスによる強放電の発生を防止する」という限定を付加するものである。
しかしながら、本件出願の願書に最初に添付した明細書又は図面には、最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間走査電極と共通電極に実質的に電位差を与えないことによって、電荷消去パルスによる強放電の発生を防止することについて記載されておらず、また、それらの記載から自明の事項であるともいえない。
したがって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてなされたものではないから、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、平成18年改正前特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明
平成16年1月22日付けの手続補正は上記のとおり却下したので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成15年10月6日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものである。(上記2(1)の「補正前の特許請求の範囲」の請求項1を参照。)

4 引用例
(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願の出願前に頒布された刊行物である特開平10-207419号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】 本発明は、メモリ機能を有する表示素子(セル)の集合によって構成されたマトリクス型表示パネル、特に、AC型プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel ; PDP)に係り、高品質な画像表示を可能とするその駆動方法に関する。」

イ 「【0002】
【従来の技術】従来のAC型プラズマディスプレイパネルにおいては、特開平6-186927号公報に示されるように、1フィールド期間が2以上のサブフィールドに分割され、それらサブフィールド夫々に全書込及び消去放電期間とアドレス放電期間と維持放電期間とが設定されている。
【0003】各サブフィールドの維持放電期間は、例えば、2進符号で1:2:4:8:……:128の比として重み付けされた維持放電の繰り返し回数で決定され、1フィールド期間内でこれら発光回数を選択して組み合わせることにより、各階調を表示するようにしている。
【0004】また、各サブフィールドの全書込及び消去放電期間では、全セルに対して全書込放電及び消去放電を行なって電荷の均一化を図り、アドレス放電期間では、そのサブフィールドで維持放電をさせたいセル(選択セル)のみにアドレス放電を行なってY電極近傍に正の電荷を蓄積し、その電荷を利用して維持放電を行なっている。そして、維持放電期間では、X電極及びY電極に同じ電圧の維持放電パルスが時間的に交互に等間隔で印加される。X電極1個及びY電極1個の維持放電パルスを1組とし、この組み合わせが各サブフィールドの重み付けに応じて繰り返し各電極に印加される。
【0005】この維持放電期間の最後の維持放電パルスの印加が終わると、次のサブフィールドの全書込放電時に陽極となる電極に正の電圧が印加されて全書込放電及び消去放電が行なわれ、さらにアドレス放電期間,維持放電期間と続いて次のサブフィールドが繰り返される。」

ウ 「【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来技術での維持放電期間では、同じ電圧の維持放電パルスがX電極及びY電極に等時間間隔で繰り返し印加され、最後の維持放電パルスが印加された直後に、次のサブフィールドの全書込放電時に陽極となる電極に電圧が印加されて全書込放電がなされ、その後、消去放電が行なわれている。
【0007】このようなプラズマディスプレイパネルの駆動方法では、特に高精細化に伴うセルの微細化により、このプラズマディスプレイパネル内の全セルの中には、全書込放電及び消去放電が確実に行なわれないセルが存在し、維持放電をさせない非選択セルの誤放電や発光(選択)セルの放電失敗などの誤動作が起こる場合がある。その原因としては、この全書込及び消去放電期間の1つ前のサブフィールドでの維持放電などで空間電荷が過剰に生じて存在し、かつ、電極上の壁電荷の不足乃至全書込放電時の実行電圧を低下させるような電荷が付着したことによるものであると考えられる。」

エ 「【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施形態を図面を用いて説明する。まず、図2により、本発明を適用可能なAC型プラズマディスプレイパネルの構造について説明する。但し、4は前面ガラス基板、5aはX透明電極、5bはXバス電極、6aはY透明電極、6bはYバス電極、7は保護膜、8a,8bは誘電体層、9は隔壁、10R,10G,10Bは蛍光体、11はアドレス電極、12は背面ガラス基板、13は放電空間である。また、X透明電極5aとXバス電極とを含めてX電極5といい、Y透明電極6aとYバス電極6bとを含めてY電極6という。
【0016】なお、以下の説明では、先行のサブフィールドの維持放電期間において、最後の維持放電パルスはY電極6に印加され、これに続く後続のサブフィールドの全書込及び消去放電期間の全書込放電の陽極はX電極とするが、本発明がこれにのみ限定されるものでないことは明らかである。
【0017】図2において、背面ガラス基板12上には、アドレス電極11が複数本互いに平行に配置されており、それらアドレス電極11を完全に覆う形で誘電体層8bが形成されている。この誘電体層8b上には、アドレス電極11を挟む位置に、隔壁9がアドレス電極11と平行に形成されており、これら隔壁9で仕切られるアドレス電極11に平行な方向に伸延した空間が形成されている。そして、これら各空間では、その隔壁9の壁面と誘電体層8bの表面とに紫外線照射によって色光を発光する蛍光体が塗布されており、2つおきの空間に塗布されている蛍光体10Rは赤色光を、他の2つおきの空間に塗布されている蛍光体10Gは緑色光を、さらに他の2つおきの空間に塗布されている蛍光体10Bは青色光を夫々発光する。
【0018】一方、前面ガラス基板4上には、背面ガラス基板12上に形成されているアドレス電極11とは直交する方向に、X透明電極5aとY透明電極6aとが交互にかつ互いに平行に形成されており、さらに、X透明電極5aとY透明電極6aとの上には夫々、Xバス電極5b,Yバス電極6bが形成されている。ここで、隣り合う1つずつのX透明電極5aとY透明電極6aとを1つの電極対とすると、同じ電極対において、Xバス電極5bはX透明電極5aでのY透明電極6aとは反対側の端部に形成され、また、Yバス電極6bはY透明電極6aでのX透明電極5aとは反対側の端部に形成されている。そして、これらX透明電極5a,Y透明電極6aとXバス電極5b,Yバス電極6bとを完全に覆うように誘電体層8aが形成されており、さらに、この誘電体層8a上にMgOなどからなる保護膜7が形成されている。
【0019】このように各電極などが設けられた背面ガラス基板12と前面ガラス基板4は矢印で示すように突き合わされて、背面ガラス基板12の隔壁9上に前面ガラス基板4上の保護膜7が接するようにして、ブラズマディスプレイパネルが構成される。
【0020】そして、保護膜7と蛍光体10R,10G,10Bが塗布された隔壁9や誘電体層8bで形成される空間内には、所定のガスが封入されており、また、同じ電極対でのXバス電極5bとYバス電極6bと隣り合う2つの隔壁9とで区切られる空間が1つの放電セルの放電空間13を形成している。
【0021】図3は図2に示したプラズマディスプレイパネルでの各電極の配線を示す図であって、A1,……,Al(但し、lは1以上の整数)は図2に示したアドレス電極11、X1,X2,……,Xm(但し、mは1以上の整数)は図2に示したX透明電極5aとXバス電極5bとからなるX電極5、Y1,Y2,……,Ymは図2に示したY透明電極6aとYバス電極6bとからなるY電極6である。
【0022】同図において、夫々がm個のX電極X1,X2,……,XmとY電極Y1,Y2,……,Ymとは互いに平行に、かつ交互に配置されており、これらX電極X1,X2,……,Xmの一端は共通に接続されて同じ駆動電圧が印加されるが、Y電極Y1,Y2,……,Ymは互いに独立に設けられて夫々に異なる駆動波形が印加される。また、l個のアドレス電極A1,……,Alが互いに独立に、かつ、X電極X1,X2,……,XmとY電極Y1,Y2,……,Ymと直交するように配置され、これらに異なる駆動波形が印加される。」

オ 「【0026】図5は図4におけるn番目(但し、n=1,2,……,8)のサブフィールドSFnの構成を示す図である。しかし、このサブフィールドSFnについての説明は全てのサブフィールドについて同様である。
【0027】 同図において、サブフィールドSFnは全書込及び消去放電期間1とアドレス放電期間2と維持放電期間3とから構成されている。全書込及び消去放電期間1及びアドレス放電期間2は夫々、全てのサブフィールドSFnで同じ時間長が必要であり、例えば、アドレス期間2の時間長はY電極数m(図3)と各Y電極6に順番に印加されるスキャンパルスの周期で決まる。また、維持放電期間3は、パルス列をなす維持放電パルスのパルス周期とパルス数とで決まる。
【0028】また、全書込及び消去放電期間1では、全セルについて、X電極5とY電極6との間で放電を行ない、荷電粒子を生成させて壁電荷を形成する。アドレス期間2では、維持放電期間3中に維持放電を行なうべきセルでのY電極6とアドレス電極11との間で放電を行ない、維持放電期間3中に維持放電を行なう放電セルを選択する。そして、選択されたセルでは、サブフィールドの維持放電期間3に印加される維持放電パルス数だけ放電が繰り返し行なわれる。ここでは、図4に示したように、1フィールドでのサブフィールド数を8としており、上記のように、これらサブフィールドSF1,SF2,……,SF8の維持放電期間3で維持放電パルス数には、例えば、2進符号で表わされる重み付けがなされている。いま、サブフィールドSF1,SF2,……,SF8の維持放電期間3で印加される維持放電パルスのパルス数(即ち、維持放電回数)をNSF1?NSF8とすると、これら維持放電回数の比は上記重み付けの比、即ち、2進符号で形成されるNSF1:NSF2:……:NSF8=1:2:4:8:……:128となり、維持放電期間3で維持放電が行なわれるサブフィールドの組み合わせにより、256種の階調表示が可能となる。例えば、ある放電セルにおいて、低輝度から数えて10番目(階調0を除く)の階調を表示する場合には、維持放電パルス数の相対比が夫々2と8に相当するサブフィールドSF2,SF4をアドレス放電によって選択し、夫々の維持放電期間3で維持放電を行なわせればよい。
【0029】図6はかかる構成のプラズマディスプレイパネルの従来の駆動方法の一例の駆動波形の一部を示す図であって、横軸は時間を、縦軸は上から順にX電極5に印加する電圧、Y電極6に印加する電圧、アドレス電極11に印加する電圧を夫々表わしている。ここでは、全てのX電極X1?Xmには同じ電圧が印加され、Y電極6については、Y電極Y1,Ymに印加される電圧を示し、アドレス電極11については、アドレス電極A1に印加される電圧を示している。
【0030】図6に示す例は、先行のサブフィールドSFnの維持放電期間3で電圧Vsの最後の維持放電パルス17の印加が終了すると、Y電極6に正の電圧が印加されることなく、次の後続のサブフィールドSF(n+1)の全書込及び消去放電期間1において、全書込放電時に陽極となるX電極5に正の電圧Vwの全書込放電パルス19が印加され、全書込放電を行なうものである。このような駆動方法では、先に説明したように、全書込放電と消去放電とが確実に行なわれない放電セルが存在し、誤動作が発生することになる。」

カ 上記摘記事項エを参照しつつ図面の図2及び図3をみると、複数のX電極5とY電極6とは互いに平行に配置されていること、複数のアドレス電極11はX電極5及びY電極6と直交するように配置されていること、及び、1つの放電セルの放電空間13は、同じ電極対のY電極6及びX電極5と、アドレス電極11との交点に形成されることになることがみてとれる。

キ 図面の図6からは、アドレス放電期間2において、Y電極Y1?Ymに印加されるスキャンパルス29は線順次となっていること、及び、アドレス電極に印加されるアドレスパルス30は上記スキャンパルス29と同期して印加されることがみてとれ、また、維持放電期間3において、維持放電パルス17のうちの最終の維持放電パルスの終了後、後続するサブフィールドまでの期間、Y電極Y1?Ymの電位とX電極の電位はいずれもGNDであることから、当該期間において、Y電極とX電極には実質的に電位差を与えないことがみてとれる。

これらの事項によると、引用例1には、

「互いに平行に形成された複数のY電極とX電極を有する前面ガラス基板と、前記複数のY電極及びX電極と直交するよう配置された複数のアドレス電極を有する背面ガラス基板と、前記複数のY電極及びX電極と前記アドレス電極との交点に配置される放電セルを具備するAC型プラズマディスプレイパネルであって、1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割し、維持放電をさせたい放電セルのみにアドレス放電を行うために各サブフィールドにて前記Y電極に線順次にスキャンパルスを印加しつつ選択する前記アドレス電極に前記スキャンパルスに同期したアドレスパルスを印加して選択した選択セルにアドレス放電を起こし、前記Y電極近傍に正の電荷を蓄積するアドレス期間と、前記アドレス期間に選択的に放電が発生した箇所に維持放電パルスを供給して維持放電を繰り返し行わせる維持放電期間とで駆動するAC型プラズマディスプレイの駆動方法において、
前記維持放電期間における最終の維持放電パルスの終了後、後続するサブフィールドまでの期間、前記Y電極とX電極には実質的に電位差を与えないAC型プラズマディスプレイの駆動方法。」

の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)引用例2
原査定の拒絶の理由に引用され、本件出願の出願前に頒布された特開平6-259034号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0002】
【従来の技術】従来、この種の中間調画像表示方法には、JAPAN DISPLAY’92の605から608までに「S16-2 A Full Color AC Plasma with 256 Gray Scale」として記載された方法が知られていた。
【0003】すなわち、8ビット、256階調で中間調を表示の場合には、図3の(a)、(b)に示すように、各画素についての1フィールド表示期間1F(例えば約16.6ms)を8つのサブフィールド期間SF1?SF8に時分割し、各サブフィールド期間SF1、…、SF8をさらにアドレス期間APと表示期間SPに時分割し、この表示期間SPに1:2:4:8:…:128の比率の重み付けをする。
【0004】例えば、サブフィールド期間SF1の表示期間SPに2個の表示パルスを割り当てたとすると、サブフィールド期間SF3、SF8の表示期間SPには8(=2×4)、256(=2×128)個の表示パルスを割り当てる。また、アドレス期間APはサブフィールド期間SF1、…、SF8に関係なく一定(例えば1.5ms)で、ディスプレイパネルによって決まり、ステップ1、2、3、4の期間からなる。
【0005】ステップ1の期間では、直前の表示期間の影響を排除して全ての放電ドットを同じ状態にするために、ドットマトリックス型のPDPのX Sustain電極に消去パルスが加えられる。ステップ2の期間では、前記PDPのX Sustain電極とY1、Y2、…、Y480 Sustain電極の間に書き込みパルスを加え、0Vに維持されているアドレス電極によって螢光体の表面にイオンの一部が積み重ねられる。ステップ3の期間では、壁電荷を除去するためにX Sustain電極に消去パルスが加えられる。ステップ4の期間では、前記PDPのアドレス電極にスキャンパルスが加えられる。」

5 対比
本願発明と引用例1発明とを対比する。

(1)引用例1発明の「Y電極」、「X電極」、「前面ガラス基板」、「アドレス電極」、「背面ガラス基板」、「放電セル」、「AC型プラズマディスプレイパネル」、「サブフィールド」、「維持放電をさせたい放電セル」、「アドレス放電」、「スキャンパルス」、「アドレスパルス」、「選択セル」、「維持放電パルス」及び「維持放電」は、それぞれ、本願発明の「走査電極」、「共通電極」、「前面基板」、「データ電極」、「背面基板」、「セル」、「AC型プラズマディスプレイパネル」、「サブフィールド(以下、SFと称する)」、「任意のセル」、「書込放電」、「走査パルス」、「データパルス」、「選択セル」、「維持パルス」及び「維持放電」に相当する。

(2)引用例1発明の「1フィールド期間」が1つの画面を構成する期間であることは自明であるから、本願発明の「1画面を構成する時間である1フレーム」に相当する。

(3)引用例1発明の「前記Y電極近傍に正の電荷を蓄積する」ことは、引用例1発明が「AC型プラズマディスプレイパネル」に係るもの、具体的には、Y電極が誘電体層及び保護膜により覆われているもの(上記4(1)の引用例1についての摘記事項「エ」の段落0018の記載を参照。)であることから、本願発明の「壁電荷を形成する」ことに相当する。
そうすると、引用例1発明の「維持放電をさせたい放電セルのみにアドレス放電を行うために各サブフィールドにて前記Y電極に線順次にスキャンパルスを印加しつつ選択する前記アドレス電極に前記スキャンパルスに同期したアドレスパルスを印加して選択した選択セルにアドレス放電を起こし、前記Y電極近傍に正の電荷を蓄積するアドレス期間」は、上記相当関係を考慮すると、本願発明の「任意のセルに書込放電を発生させるために各SFにて少なくとも前記走査電極に線順次に走査パルスを印加しつつ選択する前記データ電極に前記走査パルスに同期したデータパルスを印加して選択した選択セルに書込放電を起こし、壁電荷を形成するアドレス期間」に相当する。

(4)引用例1発明の「維持放電を繰り返し行わせる」ことは、当該維持放電により放電セルが発光して画像表示が行われることから、本願発明の「維持放電を持続的に発生させる表示放電を行う」ことに相当する。
そうすると、引用例1発明の「前記アドレス期間に選択的に放電が発生した箇所に維持放電パルスを供給して維持放電を繰り返し行わせる維持放電期間」は、上記相当関係を考慮すると、本願発明の「前記アドレス期間に選択的に放電が発生した箇所に維持パルスを供給して維持放電を持続的に発生させる表示放電を行う維持期間」に相当する。

(5)引用例1発明の「前記維持放電期間における最終の維持放電パルスの終了後、後続するサブフィールドまでの期間、前記Y電極とX電極には実質的に電位差を与えない」ことと、本願発明の「前記最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間、前記走査電極と共通電極には実質的に電位差を与えないこと」とは、どちらも「最終維持パルスの終了後の所定期間、前記走査電極と共通電極には実質的に電位差を与えないこと」で共通する。

してみると、本願発明と引用例1発明とは、

「互いに平行に配置された複数の走査電極と共通電極を有する前面基板と、前記複数の走査電極及び共通電極と直交するように配置された複数のデータ電極を有する背面基板と、前記複数の走査電極及び共通電極と前記データ電極の交点に配置されるセルを具備するAC型プラズマディスプレイパネルであって、1画面を構成する時間である1フレームをサブフィールド(以下、SFと称する)に分割し、任意のセルに書込放電を発生させるために各SFにて少なくとも前記走査電極に線順次に走査パルスを印加しつつ選択する前記データ電極に前記走査パルスに同期したデータパルスを印加して選択した選択セルに書込放電を起こし、壁電荷を形成するアドレス期間と、前記アドレス期間に選択的に放電が発生した箇所に維持パルスを供給して維持放電を持続的に発生させる表示放電を行う維持期間とで駆動するAC型プラズマディスプレイの駆動方法において、
前記維持パルスのうちの最終維持パルスの終了後の所定期間、前記走査電極と共通電極には実質的に電位差を与えないことを特徴とするAC型プラズマディスプレイの駆動方法。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点 本願発明では「前記維持期間の終了後に表示を行った前記選択セルに形成された壁電荷を消去し、プラズマディスプレイパネル内の全セルの状態を均一化する電荷消去パルスを、前記維持パルスのうちの最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間に印加」するのに対し、引用例1発明では電荷消去パルスが印加されておらず、また、「走査電極と共通電極には実質的に電位差を与えない」期間である「最終維持パルスの終了後の所定期間」として、本願発明では「0μs?200μsの間」であるのに対し、引用例1発明ではこれが明確ではない点。

6 判断
以下の検討に当たり、参照される周知例及びその記載事項は次のとおりである。

(1)周知例1
本件出願の出願前に頒布された、“S16-2 A Full Color AC Plasma Display with 256 Gray Scale”, Japan Display ’92 PROCEEDINGS OF THE 12TH INTERNATIONAL DISPLAY RESEARCH CONFERENCE, 1992, p.605-608(以下「周知例1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア “Addressing is performed by the newly developed procedure as follows.
(1)Whole-screen erasing
(2)Whole-screen writing
(3)Whole-screen erasing
(4)and Sequential addressing by writing into display line.
--- 3us * 480 lines ---
Figure 3 shows the driving waveform. The whole-screen erasing of first step (1) is executed in order to make the all discharge dots into the same state without influence of last sustain period.”(第606頁右欄第5行?第16行、「アドレッシングは以下の新たに開発された手順により実行される。(1)全画面消去(2)全画面書込み(3)全画面消去(4)画面のラインへの書込みによる連続アドレッシング ---3μs×480ライン--- 図3は駆動波形を示す。最初のステップ(1)の全画面消去は、直前の維持期間の影響をなくし全ての放電ドットを同じ状態にするために実行される。」)

イ 第606頁の図3の記載から、アドレス期間(Address Period)は、ステップ1(step 1)?ステップ4(step 4)の各期間が連続したものから構成されること、維持期間(Sustain Period)における維持パルス(Sustain Pulse)の最終パルスはY電極(Y1?Y480 Sustain Electrode)に印加されること、及び、上記アドレス期間のうちの上記ステップ1の期間において消去パルス(Erase Pulse)がX電極(X Sustain Electrode)に印加されることがみてとれる。

ウ 第606頁の図2の記載から、1フレーム(1 Frame)は、期間が16.6msであり、連続する8つのサブフィールド(SF1?SF8)に分割されていることがみてとれる。

エ “Figure 4 shows the characteristic of dynamic margin, under driving condition of 3 us address cycle time per a line.・・・The period of sustain cycle is 8 us and its width is 3.5 us.”(第607頁左欄第2行?第9行、「図4は、1ライン当たり3μsのアドレスサイクルでの駆動条件における動的マージンの特性を示す。・・・維持サイクルの周期は8μs、幅は3.5μsである。」)

オ “Each sub-field is formed by address period and sustain period. Each address period takes 1.5 ms, then accumulated time for one frame takes 12 ms. The residual 4 ms of the frame period is assigned for sustain period. The total of 510 sustain cycles can be generated and assigned into 8 sub-fields, sustain cycle of the first subfield SF1 to be 2 cycles, SF2 to be 4 cycles ,,,the 8th SF8 to be 256 cycles.”(第607頁左欄第14行?第21行、「各サブフィールドはアドレス期間と維持期間とにより構成される。各アドレス期間は1.5msであり、それ故1フレームでの積算時間は12msとなる。1フレーム期間の残余の4msは維持期間として割り当てられる。全部で510の維持サイクルが生成されるとともに8つのサブフィールドに割り当てられる。すなわち、維持サイクルは、最初のサブフィールドSF1は2サイクル、SF2は4サイクル、・・・8番目のSF8は256サイクルとされる。」)

(2)周知例2
本件出願の出願前に頒布された特開平6-289811号公報(以下「周知例2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0025】図1に本発明の第1の実施例の駆動波形を示す。図1において、波形(A)は維持電極S1,S3,・・・.Sm-2,Smに印加する電圧波形、波形(B)は、最初の走査電極S2に印加する電圧波形、波形(C)は、次の走査電極S4に印加する電圧波形、波形(D)は、最後の走査電極Sm-1に印加する電圧波形、波形(E)は、列電極Dj に印加する電圧波形、である。維持電極S1,S3,・・・,Sm-2,Smには、維持パルス1(パルス幅2.5μ秒、周期6μ秒、電圧-160V)を印加する。また、走査電極S2,S4,・・・,Sm-3,Sm-1には、これらの電極に共通した維持パルス2(パルス幅、周期、電圧は維持パルス1に同じ)のほかに、各走査電極に独立したタイミングで走査パルス3を印加している。消去パルス4は、パルス幅は広い(50μ秒)が電圧の低い(-100V)、いわゆる太幅消去パルスを用いた。もちろん、このような消去パルスでなく、・・・なまった波形の消去パルス・・・でも良い。」

イ 上記摘記事項アを参照しつつ図面の図1をみると、最終の維持パルス2が走査電極に印加された後に、消去パルス4が維持電極に印加されていることがみてとれる。

(3)周知例3
本件出願の出願前に頒布された特開平10-319900号公報(以下「周知例3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0014】
【発明が解決しようとする課題】かかる従来のプラズマディスプレイ装置の不都合な点は、表示行の大幅な増大要求(例えば、480行→768行)に応じることができないことである。今、妥当な値で、1サスティン時間を6μs、1フレームあたりの全サスティン数を510サイクル、1アドレス時間を3μsとし、1フレームの時間を16.6ms(1/60フィールド)とすると、1フレーム内の全サスティン期間の割当時間は6μs×510サイクル=3.06msとなるから、1フレーム内の全リセット期間と全アドレス期間の割当時間は16.6ms-3.06ms=13.54msとなる。この時間(13.54ms)内で、8回(但し、図7のサブフィールド構成の場合)のリセット期間とアドレス期間を無事に終わらせなければならない。すなわち、1回のリセット期間とアドレス期間を13.54ms÷8≒1.7msで終わらせなければならない。
【0015】表示行に関係するのはアドレス期間である。例えば、480行の場合は1サブフィールドあたり3μs×480行≒1.5msである。したがって、1回のリセット期間の割当時間は1.7ms-1.5ms≒200μsとなり、この時間は妥当な値であるから、480本程度の表示行の場合は何ら支障ない。」

(4)周知例4
本件出願の出願前に頒布された特開2000-75835号公報(以下「周知例4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。

「【0071】図5は、本発明の第3実施例を示す波形図であり、前サブフィールドにおける維持放電期間の最終パルスと次サブフィールドにおけるリセット期間とを示している。本実施例においては、第1及び第2の放電の際にY電極に印加するパルスを単位時間当たりの電圧変化量が変化する鈍りパルスとしており、この点では第1実施例と共通である。しかしながら本実施例では、前サブフィールドの維持放電期間における最終維持パルスの立ち下がりから次サブフィールドのリセット期間でのパルス印加までに十分な時間を空けるようにしている。
【0072】維持パルスの印加により維持放電が生じると、放電の終了と共に、所定量の壁電荷が蓄積される。そして放電の終了からある程度の時間が経過すると、形成された壁電荷が放電空間に存在する空間電荷と中和を開始する。従って、最終維持パルスの印加から十分な時間を空けた後にリセット放電を行うようにすれば、維持放電期間終了時に残留していた壁電荷をある程度消去することが可能である。この結果、続くリセット放電を、残留壁電荷のより少ない状態で実施することができ、安定なリセット放電が可能となる。なお、最終維持パルスの立ち下がりから次のリセット放電の開始までの時間t1は、少なくとも1μsより長くすることが適当であり、好ましくは10μsである。
【0073】また本実施例では、リセット期間における第1の放電の際に、X電極への負極性のパルスとY電極への正極性のパルスとをタイミングを異ならせて印加するようにしている。
【0074】第1実施例のようにX電極への負極性パルスとY電極への正極性のパルスとを同時に印加した場合、鈍りパルスを用いているにも関わらず、強放電が生じる可能性がある。そこで本実施例では、X電極への負極性のパルスとY電極への負極性のパルスとをタイミングを異ならせて印加するようにしている。
【0075】前述したように、第1の放電の際にX電極に印加する負極性のパルスは、アドレス電極上に残留する壁電荷を消去する効果を有しているが、この消去放電を先行させた場合、アドレス電極上の壁電荷が消去されるのに伴い、負極性パルスを印加しているX電極上には正の壁電荷が形成される。この状態でY電極に対して正極性の第2のパルスを印加すると、X-Y電極間の実効電圧が低下して、強放電を防止することができるのである。なお、単に強放電を防止するためということであれば、X電極に印加する負極性の電圧を低くするという方法もあるが、この場合はアドレス電極との間で行う消去放電を十分に行うことが困難となるので好ましくない。
【0076】なお、X電極へのパルス印加からY電極へのパルス印加までの遅延時間t2は、少なくとも5μs程度とすることが適当である。」

そこで、上記相違点について検討する。
維持期間の終了後に表示を行った選択セルに形成された壁電荷を消去し、プラズマディスプレイパネル内の全セルの状態を均一化する電荷消去パルスを印加することは、例えば引用例2(上記4(2)の摘記事項を参照。)、周知例1(上記6(1)の摘記事項ア及びイを参照。)又は周知例2(上記6(2)の摘記事項ア及びイを参照。)に記載されているとおり周知技術に過ぎない。
ここで、上記電荷消去パルスを印加するタイミングについて検討すると、例えば、周知例3(上記6(3)の摘記事項参照。)には、アドレス期間及び維持期間(サスティン期間)の割当時間から、「1回のリセット期間の割当時間は・・・200μs」であることが記載されているし、また、維持期間における維持サイクル周期が長い(8μsである)点で周知例3と異なる周知例1(上記6(1)の摘記事項ア?オを参照。)では、上記アドレス期間及び維持期間以外の割当時間が周知例3の「200μs」よりも更に短いものとなるといえるように、1フレームが8つのサブフィールドに分割され、かつ、アドレス期間と維持期間とが分離された周知のAC型プラズマディスプレイパネルの駆動においては、あるサブフィールドの最終維持パルスから次のサブフィールドのアドレス期間まで、せいぜい200μs程度の時間しかなく、その間に電荷消去パルス等の所要のパルスを印加する必要があることは周知の事項であるといえる。
また、周知例4には、最終維持パルスの立ち下がりから次サブフィールドでのリセット期間でのパルス印加までの時間として、「十分な時間を空ける」としつつも「好ましくは10μsである」(上記6(4)の摘記事項を参照。)と記載されており、これも本願発明の数値範囲のものとなっている。
そうすると、上記電荷消去パルスを最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間に印加するように設定することは、当業者であれば周知技術に基づいて容易に行い得た事項であると認められる。
なお、この点に関し、請求人は、平成19年3月13日付けのファクシミリにおいて『「0?200μs」とは、APL(入力信号の平均輝度レベル)に拘わらず、200μs以下という趣旨です。』(第2頁下から第7行?下から第6行)と主張しているが、本願発明は、APLに関する事項を発明特定事項とするものではないから、この主張は採用できない。
また、上記周知技術を引用例1発明に適用して上記電荷消去パルスを最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間に印加すると、上記電荷消去パルスが印加されるまでの間、すなわち、上記最終維持パルスの終了後0μs?200μsの間、走査電極と共通電極に実質的に電位差を与えないことになることは自明である。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1の記載及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用例1発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7 むすび
以上のとおりであるから、本件出願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-29 
結審通知日 2007-06-05 
審決日 2007-06-18 
出願番号 特願2000-82723(P2000-82723)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴野 幹夫  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 中村 直行
小川 浩史
発明の名称 AC型プラズマディスプレイパネルとその駆動方法  
代理人 藤巻 正憲  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ