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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B
管理番号 1161877
審判番号 不服2004-25812  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-16 
確定日 2007-08-02 
事件の表示 平成 8年特許願第249386号「無線回路」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 4月14日出願公開、特開平10- 98409〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成8年9月20日の出願であって、平成16年11月9日付けで拒絶査定がなされたのに対し、同年12月16日付けで審判請求がなされると共に平成17年1月14日付けで手続補正がなされたが、当審により平成18年12月5日付けで当該手続補正が却下されると共に最後の拒絶理由が通知されたのに対して、平成19年2月9日付けで手続補正がなされ、当審により同年2月23日付けで拒絶理由が通知され、同年4月26日付けで意見書が提出されたものである。

2.本願発明
本願特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記の平成19年2月9日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。

「共用器を介して信号の送信と受信を行う無線回路であって、基準信号に
基き可変の周波数信号を出力する単一の局部発振器と、
前記単一の局部発振器からの出力信号を分周する分周器と、
前記分周器から入力された信号を変調信号で変調して送信中間周波数信号を出力する変調器と、
前記変調器から入力された前記送信中間周波数信号を、前記単一の局部発振器からの出力信号によって送信周波数の信号に周波数変換する送信周波数変換器と、
受信信号を前記単一の局部発振器の出力信号によって受信中間周波数信号に変換する受信周波数変換器と、
前記受信周波数変換器から入力された前記受信中間周波数信号を、前記分周器の出力信号によりベースバンド信号に変換する復調器を備え、
前記単一の局部発振器の出力周波数と前記送信周波数とは異なり、且つ前記単一の局部発振器の出力周波数と受信周波数とは異なっており、
前記単一の局部発振器からの出力信号に基づいて、前記変調器での前記送信中間周波数信号への変換及び前記送信周波数変換器での周波数変換を行い、また、
前記単一の局部発振器からの出力信号に基づいて、前記受信周波数変換器での周波数変換及び前記復調器での前記ベースバンド信号への変換を行うことを特徴とする無線回路。」

3.引用例
これに対して、当審において平成19年2月23日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である昭和53年3月6日に頒布された特開昭53-24220号公報(以下、「引用文献1」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(a)「3、発明の詳細な説明
本発明は主としてAM,SSB兼用トランシーバに用いるPLLシンセサイザーに関する。
AM,SSB(USB,LSB)兼用トランシーバの構成は、種々考えられるが一般的な基本回路構成は第1図の如くである。ここで1はアンテナ、2,10,12は送受切換スイッチ、3は高周波増巾器、4は後述のPLLシンセサイザー9の出力(周波数fVCO)であるローカル信号と高周波増巾器3の出力信号を混合するミキサ、5はミキサAの出力中中間周波数fi帯域(帯域巾B)の信号を帯域増巾するクリスタルフィルタを含む中間周波増巾器、6は中間周波増巾器5の出力を後述のBFO11の出力を用いて(但しAは動作の場合は不要)復調する復調器、7は復調器6の出力を増巾する音声増巾器、8はスピーカであり3?8は受信部となる。9はチャンネル選択スイッチにより出力周波数fVCOを変化させ送受信周波数fR(チャンネル)を決定するPLLシンセサイザー、11はAM動作させるときは前記中間周波数fiをもつ信号を出力し(但し送信時のみ)、SSBとして動作させるときはUSBの場合は周波数fi-△f(fVCO<fRの場合)又はfi+△f(fVCO>fRの場合)、LSBの場合は周波数fi+△f(fVCO<fRの場合)又はfi-△f(fVCO>fRの場合)の信号を出力するバンド周波数発振器BFO、13はマイクロホン、14はマイクロホン13の出力を増巾するマイクアンプ、15はマイクアンプ14の出力でBFO11の出力を振巾変調する変調器、16は変調器15の出力のうち、中間周波数fi帯域(帯域中B)の信号のみを帯域増巾するクリスタルフィルタを含む中間周波増巾器、17は中間周波増巾器16の出力とPLLシンセサイザー出力を混合するミキサ、18はミキサ17の出力中の送信周波数fR帯域の信号のみを帯域増巾する高周波増巾器であり、13?18は送信部となる。」(第1頁左下欄第17行から第2頁左上欄第13行)

(b)「以上の如く本発明によれば、AM,SSB兼用トランシーバにおいて、PLLシンセサイザー内の混合信号発生回路を、BFO出力信号をNT倍する逓倍回路に置換えることにより(但しディジタルミキサの場合は不要)混合信号発生用発振回路および水晶振動子数を増加させず、かつ位相比較器への参照信号周波数をチャンネル間隔fSと一致させることにより可変分周器分周比を大巾に増加させることなく(従ってPLLシンセサイザー出力の安定度を低下させることなく)動作できるPLLシンセサイザーを構成することができる。」(第4頁左上欄第17行から同頁右上欄第7行)

ここで、上記(a)には、送受切換スイッチ2を介して送受信を行うAM,SSB(USB,LSB)兼用トランシーバは、チャンネル選択スイッチにより出力周波数fVCOを変化させローカル信号を出力するPLLシンセサイザー9と、可変の周波数の信号を出力するバンド周波数発振器BFO11とを備え、前記BFO11から入力された信号をマイクロホン13の出力に基づいた信号で変調して中間周波数fi帯域の信号を含む信号を出力する変調器15と、前記変調器15から出力された信号に基づいて抽出された中間周波数fi帯域の信号と、前記PLLシンセサイザー9の出力であるローカル信号とを混合して送信周波数帯域の信号を含んだ出力を得るミキサ17とからなる送信部と、高周波増巾器3の出力信号と前記PLLシンセサイザー9の出力であるローカル信号とを混合して、中間周波数fi帯域の信号を含んだ信号を出力するミキサ4と、前記ミキサ4から出力された信号に基づいて抽出された中間周波数fi帯域の信号を、前記BFO11の出力を用いて復調器6により復調することで、前記復調器6の出力信号を増巾した信号をスピーカ8に入力した受信部とからなることが記載されている。
また、上記(a)は、送受信周波数fRと前記PLLシンセサイザー9の出力周波数fVCOとが、fVCO<fR、あるいはfVCO>fRの場合について、つまり、前記PLLシンセサイザー9の出力周波数と送信周波数とは異なり、且つ前記PLLシンセサイザー9の出力周波数と受信周波数とは異なっている場合について、記載したものである。
さらに、上記(b)には、PLLシンセサイザー内の混合信号として、BFO出力信号を逓倍回路によりNT倍した信号を使用することで、混合信号発生用発振回路および水晶振動子数を増加させずにPLLシンセサイザーを構成できることが記載されている。
してみると、引用文献1には、発振回路や水晶振動子数を増加させることなく発振器の出力により周波数を変換することで通信を行う装置として、以下の発明(以下、「引用文献1記載の発明」という。)が記載されている。

送受切換スイッチ2を介して信号の送信と受信を行うトランシーバであって、出力周波数fVCOを変化させローカル信号を出力する出力するPLLシンセサイザーと、
前記PLLシンセサイザー内の混合信号を生成する逓倍回路へ可変の周波数の信号を出力するバンド周波数発振器BFOと、
前記BFOから入力された信号をマイクロホンの出力に基づいた信号で変調して中間周波数fi帯域の信号を含む信号を出力する変調器と、
前記変調器から出力された信号に基づいて抽出された中間周波数fi帯域の信号と、前記PLLシンセサイザーの出力であるローカル信号とを混合して送信周波数帯域の信号を含んだ出力を得る送信用ミキサと、からなる送信部と
高周波増巾器の出力信号と前記PLLシンセサイザーの出力であるローカル信号とを混合して、中間周波数fi帯域の信号を含んだ信号を出力する受信用ミキサと、
前記ミキサ4から出力された信号に基づいて抽出された中間周波数fi帯域の信号を、前記BFOの出力により復調することで、スピーカ入力の基となる信号とする復調器を備える受信部とを有し、
前記PLLシンセサイザーの出力周波数と送信周波数とは異なり、且つ前記PLLシンセサイザーの出力周波数と受信周波数とは異なっており、
前記PLLシンセサイザーと前記BFOの出力信号に基づいて、前記変調器での前記マイクロホンの出力に基づいた信号から前記送信中間周波数信号への変換及び前記送信用ミキサでの中間周波数fi帯域の信号から送信周波数帯域の信号を含んだ出力を得る周波数変換を行い、また、
前記PLLシンセサイザーと前記BFOの出力信号に基づいて、前記受信用ミキサでの高周波増巾器の出力信号から中間周波数fi帯域の信号を含んだ信号への周波数変換、及び前記復調器での中間周波数fi帯域の信号からスピーカ入力の基となる信号への変換を行うことを特徴とするトランシーバ。

また、同じく当審において平成19年2月23日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である平成4年11月24日に頒布された特開平4-336715号公報(以下、「引用文献2」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(c)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 送信周波数のN/(N+1)倍またはN/(N-1)倍の局部周波数を発生する周波数発生器と、この周波数発生器からの局部周波数をN分周する分周回路と、この分周回路からの分周出力をベースバンド信号で変調する変調回路と、この変調回路からの変調出力と前記周波数発生器からの局部周波数により送信周波数を出力するアップコンバータと、前記周波数発生器または前記分周器の出力に基づいて受信用ローカル周波数を抽出する周波数抽出回路とから構成されることを特徴とする変調装置の周波数分配回路。」

上記(c)における周波数発生器は、送信周波数のN/(N+1)倍またはN/(N-1)倍の局部周波数を発生するので、可変の局部周波数を出力しており、また、この周波数発生器から発生した可変の局部周波数について、該局部周波数を分周回路で分周した出力を変調回路へ入力してベースバンド信号で変調し、前記局部周波数をアップコンバータへ入力して前記変調回路からの変調出力を送信周波数として出力し、前記局部周波数または前記分周回路の出力を受信用ローカル周波数信号としても使用することが記載されている。
してみると、引用文献2には以下の発明が記載されている。

可変の局部周波数を発生する周波数発生器と、この周波数発生器からの入力された局部周波数を分周する分周回路とからなり、該分周回路で分周した出力を変調回路へ入力してベースバンド信号を変調し、前記局部周波数をアップコンバータへ入力して前記変調回路からの変調出力を送信周波数として出力すると共に、前記局部周波数または前記分周回路の出力を受信用ローカル周波数信号としても使用する周波数分配回路。

また、同じく当審において平成19年2月23日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願の日前である昭和63年10月25日に頒布された実願昭62-54372号(実開昭63-163037号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献3」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

(d)「2.実用新案登録請求の範囲
マイクロ波通信装置において、1つの発振器と、この発振器により生成される周波数を分周する分周器とを含み、これら分周器の出力周波数を高周波回路,中間周波回路,低周波回路等に用いることを特徴とするマイクロ波通信装置。」

そして、上記(d)の技術は、マイクロ波通信装置に限らず、使用する周波数の関係が互いに整数倍の関係にあるような全ての通信装置に適用可能であることは、当業者にとって自明である。
してみると、引用文献3には以下の発明が記載されている。

1つの発振器により生成された周波数を分周器によって分周した出力周波数を高周波回路,中間周波回路,低周波回路等に用いる通信装置。

4.対比
本願発明と引用文献1記載の発明とを対比すると、引用文献1記載の発明における「送受切換スイッチ」、「トランシーバ」は、本願発明の「共用器」、「無線回路」にそれぞれ相当する。
さらに、引用文献1記載の発明では、PLLシンセサイザーが、ローカル信号の周波数が出力周波数fVCOである関係において、該出力周波数fVCOを変化させローカル信号を出力しており、また、PLLシンセサイザーが基準信号に基づき信号を出力することは自明であるから、引用文献1記載の発明における「PLLシンセサイザー」は、本願発明の「局部発振器」と、基準信号に基づき可変の周波数信号を出力する局部発振器である点で一致する。
さらに、引用文献1記載の発明では、前記PLLシンセサイザー内の混合信号として逓倍回路へ可変の周波数の信号を出力するバンド周波数発振器BFOを設けていることから、前記PLLシンセサイザーは前記BFOと逓倍回路を介して接続しているので、引用文献1記載の発明における「バンド周波数発振器BFO」は、本願発明の「前記単一の局部発振器からの出力信号を分周する分周器」と、局部発振器に接続する回路である点で一致する。
さらに、引用文献1記載の発明における「変調器」は、前記BFOから入力された信号をマイクロホンの出力に基づいた信号で変調して中間周波数fi帯域の信号を含む信号を出力しているのであるから、本願発明の「局部発振器に接続する回路から入力された信号を変調信号で変調して送信中間周波数信号を出力する変調器」に相当する。
さらに、引用文献1記載の発明では、「送信用ミキサ」によって中間周波数fi帯域の信号とPLLシンセサイザーの出力であるローカル信号とを混合して送信周波数帯域の信号を含んだ出力を得ているが、これはPLLシンセサイザーの出力であるローカル信号によって中間周波数fi帯域の信号を送信周波数帯域の信号に周波数変換する機能を包含しているので、引用文献1記載の発明における「送信用ミキサ」は、本願発明の「送信周波数変換器」と、変調器から入力された送信中間周波数信号を、局部発振器からの出力信号によって送信周波数信号に周波数変換する機能を有する点で一致する。
さらに、引用文献1記載の発明では、「受信用ミキサ」によって、高周波増巾器3の出力信号と前記PLLシンセサイザーの出力であるローカル信号とを混合することで中間周波数fi帯域の信号を含んだ信号を出力しているが、これは高周波増巾器3の出力信号である受信信号を局部発振器の出力信号によって受信中間周波数信号に変換する機能を包含しているから、引用文献1記載の発明における「受信用ミキサ」は、本願発明の「受信周波数変換器」と、受信信号を局部発振器の出力信号によって受信中間周波数信号に変換する機能を有する点で一致する。
さらに、引用文献1記載の発明における「復調器」は、前記受信用ミキサから出力された信号に基づいて抽出された中間周波数fi帯域の信号を、前記BFOの出力により復調することで、スピーカ入力の基となる信号、すなわちベースバンド信号を得ており、これは復調器によって受信中間周波数信号をベースバンド信号に変換することであるから、引用文献1記載の発明における「復調器」は、本願発明の「復調器」と、受信周波数変換器から入力された受信中間周波数信号を、局部発振器に接続する回路の出力信号によりベースバンド信号に変換する機能を有する点で一致する。
さらに、引用文献1記載の発明における「PLLシンセサイザーの出力周波数」は、送信周波数、受信周波数のいずれとも異なっているから、引用文献1記載の発明における「PLLシンセサイザーの出力周波数」は、本願発明の「単一の局部発振器の出力周波数」と、送信周波数とは異なり、且つ受信周波数とは異なっている点で一致する。
さらに、引用文献1記載の発明における「PLLシンセサイザー」と「バンド周波数発振器BFO」の各出力信号は、上述したとおり、両発振器からのいずれかの出力信号に基づいて変調器における変換、及び送信用ミキサで周波数変換と、受信用ミキサにおける周波数変換、及び復調器での変換とをそれぞれ行っているから、引用文献1記載の発明における「PLLシンセサイザー」と「バンド周波数発振器BFO」の各出力信号により行われる変換は、本願発明の「単一の局部発振器からの出力信号に基づいて」行われる変換と、発振器からの出力信号に基づいて行われる変換である点で一致している。
してみると、引用文献1記載の発明と本願発明とは、

共用器を介して信号の送信と受信を行う無線回路であって、基準信号に基き可変の周波数信号を出力する局部発振器と、
前記局部発振器に接続する回路と、
前記局部発振器に接続する回路から入力された信号を変調信号で変調して送信中間周波数信号を出力する変調器と、
前記変調器から入力された前記送信中間周波数信号を、前記局部発振器からの出力信号によって送信周波数の信号に周波数変換する送信周波数変換器と、
受信信号を前記局部発振器の出力信号によって受信中間周波数信号に変換する受信周波数変換器と、
前記受信周波数変換器から入力された前記受信中間周波数信号を、前記局部発振器に接続する回路の出力信号によりベースバンド信号に変換する復調器を備え、
前記局部発振器の出力周波数と前記送信周波数とは異なり、且つ前記局部発振器の出力周波数と受信周波数とは異なっており、
発振器からの出力信号に基づいて、前記変調器での前記送信中間周波数信号への変換及び前記送信周波数変換器での周波数変換を行い、また、
発振器からの出力信号に基づいて、前記受信周波数変換器での周波数変換及び前記復調器での前記ベースバンド信号への変換を行うことを特徴とする無線回路。

の点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点)
変調器や復調器で行われる変換、及び送信周波数変換器、受信周波数変換器でそれぞれ行われる周波数変換に使われる周波数信号を発生する局部発振器と前記局部発振器に接続する回路とが、本願発明では単一の局部発振器と、前記単一の局部発振器からの出力信号を分周する分周器であるのに対し、引用文献1記載の発明では、逓倍回路を介して接続されたPLLシンセサイザーとバンド周波数発振器BFOであって、単一の局部発振器と分周器とを使用することは示されていない点。

5.判断
そこで、上記相違点について以下で検討する。

引用文献1記載の発明におけるトランシーバでは、送信部における変調器での送信中間周波数信号への変換と受信部における復調器でのベースバンド信号への変換とでそれぞれ用いられる信号を1つのバンド周波数発振器BFOが兼用して発生しており、また、前記送信部における送信周波数変換器での周波数変換と前記受信部における受信周波数変換器での周波数変換でそれぞれ用いられる信号はPLLシンセサイザーを兼用することで発生している。
また、引用文献2には、可変の局部周波数を発生する単一の周波数発生器と、この周波数発生器からの入力された局部周波数を分周する分周回路とからなり、該分周回路で分周した出力を変調回路へ入力してベースバンド信号を変調し、前記局部周波数をアップコンバータへ入力して前記変調回路からの変調出力を送信周波数として出力すると共に、前記局部周波数は前記分周回路を介して受信用にも使用する発明が記載されており、前記可変の局部周波数を発生する単一の周波数発生器から発生した局部周波数に基づく出力信号は送信用、受信用として兼用されている。
そして、単一の周波数発振器から発生した元の周波数に基づいた周波数信号を分周器によって分周することにより、前記元の周波数に対する整数分の一の周波数信号を得て、前記単一の周波数発振器から発生した元の周波数に基づいた周波数信号及び分周された整数分の一の周波数信号を使用して通信装置の高周波回路や中間周波回路、低周波回路等を動作させることにより、必要な発振器の数を減らすことは、引用文献2,3に記載されているごとく、本出願前において周知である。
上述のごとく、局部発振回路やBFOなどの発振回路を送信用と受信用とで兼用することにより、発振回路の数を減らすことや、単一の周波数発振器と分周器とを組み合わせることにより、互いに整数倍関係にある複数の周波数信号を生成することにより発振回路の数を減らすことは当業者にとって周知であるので、引用文献1記載の発明において、変調器や復調器で行われる変換、及び送信周波数変換器、受信周波数変換器でそれぞれ行われる周波数変換に使われる周波数信号を発生する局部発振器と前記局部発振器に接続する回路を、可変の周波数信号を出力する単一の局部発振器と、前記単一の局部発振器からの出力信号を分周する分周器で構成することは、当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明の作用効果も、引用文献1に記載の発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用文献1に記載の発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-30 
結審通知日 2007-06-05 
審決日 2007-06-18 
出願番号 特願平8-249386
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 畑中 博幸伏本 正典  
特許庁審判長 井関 守三
特許庁審判官 青木 重徳
長島 孝志
発明の名称 無線回路  
代理人 松田 正道  

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