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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1161882
審判番号 不服2005-744  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-13 
確定日 2007-08-02 
事件の表示 特願2000- 14023「ミリ波レーダ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月27日出願公開、特開2001-201557〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年1月19日を出願日とする出願であって、平成16年12月1日付(発送日:同月14日)で拒絶査定がされ、これに対し平成17年1月13日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに平成17年2月14日付で手続補正がなされたものである。

2.平成17年2月14日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年2月14日付の手続補正を却下する。

[理由]
2-1.本件補正の内容
本件補正は、以下の(1)に示される本件補正前の特許請求の範囲の請求項1?9を、以下の(2)に示される本件補正後の特許請求の範囲の請求項1?5のそれぞれに補正することを含むものである。

(1)「【請求項1】 送受信アンテナと、前記送受信アンテナを固定するケーシングと、前記ケーシングに取り付けられた遮蔽部材とを備え、前記遮蔽部材を前記送受信アンテナ前方下部に突出するように構成した車載用ミリ波レーダ。
【請求項2】 送受信アンテナと、前記送受信アンテナを固定するケーシングと、前記ケーシングと同一部材で一体に成形された遮蔽部材とを備え、前記遮蔽部材を前記送受信アンテナ前方下部に突出するように構成した車載用ミリ波レーダ。
【請求項3】 送受信アンテナと、前記送受信アンテナを固定するケーシングと、前記送受信アンテナの前面に取り付けられたレドームとを備え、前記レドーム表面のうち、前記送受信アンテナ前方下部に突出する部分に金属メッキ処理または電波吸収材の貼付けを行うことを特徴とする車載用ミリ波レーダ。
【請求項4】 請求項1において、前記遮蔽部材に代えて、搭載される車両の一部を遮蔽部材として利用することを特徴とする車載用ミリ波レーダ。
【請求項5】 請求項1乃至3のいずれかに記載の車載用ミリ波レーダを、車両の内部に設置することを特徴とするミリ波レーダ搭載車両。
【請求項6】 請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記遮蔽部材を暖めるための手段を備えたことを特徴とする車載用ミリ波レーダ。
【請求項7】 請求項1乃至3のいずれかにおいて、前記遮蔽部材にスリットを設けることを特徴とする車載用ミリ波レーダ。
【請求項8】 請求項1において、前記遮蔽部材は、前記ケーシングを車体に取り付けるブラケットの一部であることを特徴とする車載用ミリ波レーダ装置。
【請求項9】 請求項1において、前記遮蔽部材は、前記ケーシングの底面に別部材を取り付ける構成であることを特徴とする車載用ミリ波レーダ装置。」

(2)「【請求項1】 送受信アンテナと、前記送受信アンテナを固定するケーシングと、前記ケーシングに取り付けられた遮蔽部材とを備え、前記遮蔽部材は、前記ケーシングを車体に取り付けるブラケットの一部であり、前記遮蔽部材を前記送受信アンテナ前方下部に突出するように構成した車載用ミリ波レーダ。
【請求項2】 請求項1に記載の車載用ミリ波レーダを車両の内部に設置したミリ波レーダ搭載車両。
【請求項3】 請求項1に記載の車載用ミリ波レーダであって、前記遮蔽部材を暖めるための手段を備えた車載用ミリ波レーダ。
【請求項4】 請求項1に記載の車載用ミリ波レーダであって、前記遮蔽部材にスリットが設けられた車載用ミリ波レーダ。
【請求項5】、 送受信アンテナと、前記送受信アンテナを固定するケーシングと、前記ケーシングに取り付けられた遮蔽部材とを備え、前記遮蔽部材は、前記ケーシングの底面に別部材を取り付ける構成であり、前記遮蔽部材を前記送受信アンテナ前方下部に突出するように構成した車載用ミリ波レーダ。」(下線はそれぞれ、請求人が手続補正書提出時に補正箇所に対して付したものである。)

2-2.本件補正の適否について
〈1〉 本件補正後の請求項1は、本件補正前の請求項8と同一のものである。
〈2〉 本件補正後の請求項5は、本件補正前の請求項9と同一のものである。
〈3〉 本件補正前の請求項2?4は削除された。
〈4〉 本件補正後の請求項2?4は、本件補正前の請求項8の構成にそれぞれ本件補正前の請求項5?7の特徴事項の限定を付加し、補正後の請求項1を引用する形式で記載したものである。ゆえに本件補正後の請求項2?4は、本件補正前の請求項5?7の請求項1を引用する発明に、発明を特定するために必要な事項である「遮蔽部材」について「ケーシングを車体に取り付けるブラケットの一部」であるとの限定を付加するものとなっている。

したがって、上記手続補正は、請求項の削除および特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められ、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号および第2号の規定に該当するものである。
そうすると、「特許請求の範囲」全体についての減縮があったことになるから、「特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明」について独立特許要件の判断が必要となるものである(*注)。

(*注)知財高裁判決(平成18年2月16日言渡:平成17年(行ケ)第10266号)は、以下のように判示している。
<<改正前(当審注:「平成6年改正前」)特許法17条の2第3項は,「前項において準用する前条第2項に規定するもののほか,第1項第4号及び第5号に掲げる場合において特許請求の範囲についてする補正は,次に掲げる事項を目的とするものに限る。」と規定した上,その2号において,「特許請求の範囲の減縮(前号に規定する一の請求項に記載された発明(‥‥‥以下この号において「補正前発明」という。)と産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一である発明の構成に欠くことができない事項の範囲内において,その補正前発明の構成に欠くことができない事項の全部又は一部を限定するものに限る。)」と規定している。そして,同条4項は,「第126条第3項の規定は,前項の場合に準用する。この場合において,同条3項中『第1項ただし書第1号』とあるのは,『第17条の2第3項第2号』と読み替えるものとする。」と規定し,改正前(当審注:「平成6年改正前」)特許法126条3項は,「第1項ただし書第1号の場合は,訂正後における特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものでなければならない。」
と規定している。
上記によれば,改正前(当審注:「平成6年改正前」)特許法17条の2第3項2号において問題とされているのは,「特許請求の範囲」全体について減縮があったか否かであって,「特許請求の範囲」全体に減縮があれば,同条4項により,「特許請求の範囲に記載されている事項により構成される発明」について独立特許要件の判断が必要となるものと解するのが相当である。独立特許要件の判断の要否を「特許請求の範囲」に含まれる個々の請求項ごとに考えるべきである旨の原告の主張は,採用できない(原告の指摘する同条3項2号括弧書きの規定は,補正が許される場合を,「特許請求の範囲の減縮」のうち一定の場合に限定することを規定したにすぎず,原告の上記主張を裏付けるものではない。)。>>

2-3.独立特許要件について
そこで、本件補正後の請求項1?5に係る発明のうち、請求項5に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-3-1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平10-126146号公報(以下,「引用例1」という。)には図面と共に,以下の(A)?(C)の事項が記載されている。

(A)「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は例えば自動車の前面に取り付けられ、先行車との車間距離を測定するなど車の安全制御に用いられるミリ波帯平面アンテナに関するものである。」
(B)「【0008】また、自動車の前面に搭載する場合を考えると、自動車が走行することによる、風雨、小石等の衝突からアンテナを保護するためには、レドームの設置が不可欠である。レドームの厚さは低周波数帯では波長に比べて小さいがミリ波帯では波長程度となりその影響が大きくなる。このレドームをアンテナの前面に設置すると、アンテナから放射された電波は、レドームにより減衰する。また、一部は反射することにより多重反射が生じるため、放射効率が低下、励振分布の乱れが生じ、サイドローブの上昇、交差偏波の上昇等の影響を及ぼす。その結果、車車間の判別に誤りを生じたり、正確な車間距離などの測定が不可能になる問題点がある。
【0009】また、先行車との車間距離を測定するなどレーダとして用いる場合にはFM-CWレーダが簡易な構成となり低コスト化が可能であり、近距離の測定にも対応できる。しかし、送信と受信のアイソレーションを大きくする必要があるため、送信用アンテナと受信用アンテナを分離し、2つ並べることで実現できる。しかし、2つのアンテナ間で電気的に結合すると、送信、受信間のアイソレーションが上昇し、受信機が飽和するため正確な車間距離などの測定が不可能になるという問題点がある。
【0010】そこでレドームを装着した際でも高利得で低サイドローブで低交差偏波なアンテナ特性が得られることと、さらに、送信アンテナと受信アンテナを並べた場合にも、送信、受信間のアイソレーションの良好なアンテナ特性が得られることを目的とする。」
(C)「【0038】実施の形態10.図13はこの発明の実施の形態10を示す概略構成図である。図において、30はアンテナ周囲に設けた金属壁あるいは吸収体である。車載レーダとして用いる場合、隣接車線にトラック、バス等の大型車両がある場合は距離が接近しており、さらに大型車両のレーダ散乱断面積が大きい。この車両での反射を広角でのサイドローブが受信してしまうことになる。そこで、アンテナの周囲に金属壁30を設け、アンテナのサイドローブを直接外部に洩らさないようにし、周囲環境の影響を小さくすることで、干渉を抑圧するものである。さらに、金属壁30に吸収体を取り付けて、サイドローブを吸収することにより、より一層干渉の低減を図ることができる。」

引用例1の上記記載から、以下の[1]?[3]の事項が認められる。

[1] 上記(B)における段落【0008】の記載からみて、アンテナは何らかの取り付け手段により自動車に取り付けられることは明らかである。
[2] 引用例1の明細書の記載全体からみて、上記[1]の事項も併せて考慮すると、上記(C)記載の「実施の形態10.」については、上記(A)および(B)に記載されている「レドーム」により保護されるとともに取り付け手段により車載される「ミリ波帯平面アンテナ」に係る一実施例であると解することは、当業者にとって自然なものである。
[3] 上記(C)の記載からみて、アンテナの周囲に吸収体が取り付けられた金属壁を配置してサイドローブを吸収する点が記載されている。

してみると、これらの記載から引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。
「アンテナと、前記アンテナを固定する取り付け手段と、吸収体が取り付けられた金属壁とを備え、前記吸収体が取り付けられた金属壁は、前記アンテナの周囲に別部材を取り付ける構成であり、前記吸収体が取り付けられた金属壁を前記アンテナ前方に突出するように構成した車載用ミリ波帯平面アンテナ。」

2-3-2.対比・判断
そこで,本願補正発明と引用発明とを対比すると,引用発明の「アンテナ」、「取り付け手段」、および「ミリ波帯平面アンテナ」は,それぞれ本願補正発明の「送受信アンテナ」、「ケーシング」、および「ミリ波レーダ」に相当する。
また、引用発明の「吸収体が取り付けられた金属壁」と本願補正発明の「遮蔽部材」とは、共にサイドローブを遮断する「遮蔽部材」である点で共通する。
してみると、両者は
「送受信アンテナと、前記送受信アンテナを固定するケーシングと、遮蔽部材とを備え、前記遮蔽部材は、別部材を取り付ける構成であり、前記遮蔽部材を前記送受信アンテナ前方に突出するように構成した車載用ミリ波レーダ。」
の点で一致し,以下の点で相違している。

本願補正発明においては、「遮蔽部材」が送受信アンテナ前方下部に突出するように、ケーシングの底面に別部材として取り付けられているのに対して、引用発明では「吸収体が取り付けられた金属壁」が「アンテナ」前方の周囲全体に突出するように設けられており、「取り付け手段」との関係については明示されていない点。

そこで、上記相違点について検討する。

「遮蔽部材」の突出方向については、引用発明における「吸収体が取り付けられた金属壁」の下方以外の側面は、それぞれの方向に対するサイドローブの遮断のために設けられたものであって、下方へのサイドローブに対して重畳的な作用を奏するものではないと認められるから、本願補正発明の「遮蔽部材」も、引用発明の「吸収体が取り付けられた金属壁」も共に送受信アンテナ前方下部に突出している点で一致している。
また、サイドローブを遮断するために「遮蔽部材」をアンテナを固定するケーシングの底面に別部材として取り付けることは、たとえば特開昭56-717号公報(特に、第2頁左下欄第3行?右下欄第2行および第5図における「レーダー装置2」、「遮蔽カバー9」および「電波吸収板10」について参照)に示されているとおり周知のことであり、引用発明にこのような従来周知の技術を適用して、相違点に係る構成とすることは当業者が容易に想到し得たものといえる。

そして、本願補正発明の効果も引用例1および上記周知事項から当業者が予測しうる範囲内のものである。
したがって、本願補正発明は引用発明および上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

2-4.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、特許法159条第1項の規定において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
3-1.本願発明
平成17年2月14日付の手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項に係る発明は平成16年4月12日付手続補正書により補正された明細書および図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?9に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1および9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」および「本願発明9」という。)は,次のとおりのものである。
「【請求項1】 送受信アンテナと、前記送受信アンテナを固定するケーシングと、前記ケーシングに取り付けられた遮蔽部材とを備え、前記遮蔽部材を前記送受信アンテナ前方下部に突出するように構成した車載用ミリ波レーダ。
【請求項9】 請求項1において、前記遮蔽部材は、前記ケーシングの底面に別部材を取り付ける構成であることを特徴とする車載用ミリ波レーダ装置。」

3-2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物およびその記載事項は、前記「2-3-1」に記載したとおりのものである。

3-3.対比・判断
本願発明9は、前記「2-2」で検討したとおり上記本願補正発明と同一のものである。
してみると、本願発明9と同一のものである本願補正発明が前記「2-3-2」に記載したとおり、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明9も同様の理由により、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
また、本願発明1は上記本願補正発明から「遮蔽部材」について、「前記ケーシングの底面に別部材を取り付ける構成」であるとの限定を省いたものである。
してみると、本願発明1の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が前記「2-2-3」に記載したとおり、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明1も同様の理由により、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願発明1および本願発明9は共に特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そして、本願発明1および本願発明9が特許を受けることのできないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく本願は拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-31 
結審通知日 2007-06-05 
審決日 2007-06-20 
出願番号 特願2000-14023(P2000-14023)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01S)
P 1 8・ 572- Z (G01S)
P 1 8・ 571- Z (G01S)
P 1 8・ 575- Z (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮川 哲伸  
特許庁審判長 上田 忠
特許庁審判官 上原 徹
中村 直行
発明の名称 ミリ波レーダ  
代理人 井上 学  

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