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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1161896
審判番号 不服2005-9849  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-05-26 
確定日 2007-08-02 
事件の表示 平成 7年特許願第130245号「テープフィーダー」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年12月13日出願公開、特開平 8-330785〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.経緯
この出願は、平成7年5月29日に出願されたもので、平成17年1月13日付け拒絶理由通知書が送付され、願書に添付した明細書又は図面についての同年3月17日付け手続補正書が提出されたものの、同年4月21日付けで拒絶査定されたものである。
そして、本件審判は、この拒絶査定を不服として請求されたものであって、平成17年6月28日付け手続補正書(方式)により補正された同年5月26日付け審判請求書が提出されたものである。

2.原査定
原査定の拒絶の理由は、以下のとおりであると認める。

「この出願の各請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された特開平6-135623号公報に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」

なお、特開平6-135623号公報を、以下、「引用文献」という。

3.当審の判断

3-1.本件に係る発明
この出願の請求項2に係る発明(以下、「本件発明2」という。)は、願書に添付した明細書又は図面の記載から見て、その特許請求の範囲請求項2に記載されたものであって、請求項2の記載は、以下のとおりのものと認める。

「【請求項2】 一定間隔おきに多数の部品を収納したテープと、このテープを導出するテープ導出部と、このテープ導出部から導出されたテープを部品の取出しが可能な状態に保持する部品取出し部と、この部品取出し部で上記テープから部品が取り出されるにつれて一定量ずつテープを移動させる繰り出し機構とを備え、上記部品取出し部に、テープ通過部分の上方に位置して所定箇所に部品取出し用の開放部を有するテープ保護部材と、部品取出し時以外は上記開放部の少なくとも一部を閉塞し、部品取出し時には非閉塞位置にスライドするシャッター部材とが設けられ、このシャッター部材に当接する状態でその上方に板状の補助部材が重ねられ、ピン部材がこれらシャッター部材および補助部材を貫通して前記テープ保護部材に固定されることにより前記シャッター部材および補助部材がテープ保護部材に対して取付けられるとともに、シャッター部材における前記ピン部材の貫通孔が長孔に形成されることにより前記シャッター部材がテープ保護部材および補助部材に対して相対的にスライド可能に設けられていることを特徴とするテープフィーダー。」

3-2.引用文献の記載及び記載された発明

1)引用文献には、以下の記載A?Dが認められる。

A;「【特許請求の範囲】
【請求項1】 一定間隔おきに多数のチップ部品を収納しているテープと、このテープを導出するテープ導出部と、このテープ導出部から導出されたテープをチップ部品の取出しが可能な状態に保持する部品取出し部と、この部品取出し部で上記テープからチップ部品が取出されるにつれて一定量ずつテープを移動させる繰り出し機構とを備え、上記部品取出し部に、テープ通過部分の上方に位置して所定箇所に部品取出し用の開放部を有するテープ保護部材と、部品取出し時以外は上記開放部の少なくとも一部を閉塞し、部品取出し時には非閉塞位置にスライドするシャッター部材とが設けられているテープフィーダーであって、上記テープ保護部材に、上記開放部に連なる一定幅の細長いシャッター部材ガイド用の切り抜き部が形成され、この切り抜き部に、厚さがこの切り抜き部の幅よりも小さいシャッター部材の側辺縁部が挿入されるとともに、上記シャッター部材の外部に設けられた補助部材に、シャッター部材の側辺縁部と上記切り抜き部の側辺との間の間隙に挿入されるスペーサ部分が設けられていることを特徴とするテープフィーダー。」
B;「【0025】図4乃至図7は、上記部品取出し部11の構造を示している。これらの図において、部品取出し部11は、フィーダープレート2の上端部に形成されたベース部分51と、その上方に設けられたテープ保護部材54、シャッター部材60およびカバー部材(補助部材)65を備えている。」並びに【図4】?【図7】
C;「【0027】・・・(審決注;「・・・」は、記載の省略を示す。以下、同様。)。このシャッター部材60の一側部には、下向きに屈曲した縁部61が設けられ、この縁部61が上記切り抜き部58に係合している。さらに、シャッター部材60には、後記連結軸61を挿通するための長穴62が形成されるとともに、カバー部材65の後記長穴に挿入される凸部63が設けられている。
【0028】上記カバー部材65は、シャッター部材60の上面側に配置され、連結ピン66により上記テープ保護部材54に連結され、固定されており、また、上記凸部63を挿入してこれを前後方向に案内する長穴67が設けられている。このカバー部材65の一側辺部には、下向きに屈曲した縁部からなるスペーサ部分68が、一体に設けられている。そして、このスペーサ部分68が、シャッター部材60の側辺縁部61と上記切り抜き部58の側辺との間の間隙に挿入されて、この間隙を埋めている。」
D;「【0030】・・・。このため、先にも述べたように、上記切り抜き部58にシャッター部材60の側辺縁部61が挿入されるだけでは、この側辺縁部61と上記切り抜き部58の側辺との間に間隙が残されて、テープ収納部8c内のチップ部品9が小サイズであれば、繰り出し時等における振動で上記間隙からチップ部品9が外部に飛び出したり間隙に入り込んだりする懸念がある。これに対し、上記カバー部材65に設けられたスペーサ部分68が上記間隙に挿入されると、上記間隙が塞がれて、チップ部品9の飛び出し等が確実に防止される。」

2)引用文献には、記載Aによれば、「一定間隔おきに多数のチップ部品を収納しているテープと、このテープを導出するテープ導出部と、このテープ導出部から導出されたテープをチップ部品の取出しが可能な状態に保持する部品取出し部と、この部品取出し部で上記テープからチップ部品が取出されるにつれて一定量ずつテープを移動させる繰り出し機構とを備え、上記部品取出し部に、テープ通過部分の上方に位置して所定箇所に部品取出し用の開放部を有するテープ保護部材と、部品取出し時以外は上記開放部の少なくとも一部を閉塞し、部品取出し時には非閉塞位置にスライドするシャッター部材とが設けられているテープフィーダーであって、上記テープ保護部材に、上記開放部に連なる一定幅の細長いシャッター部材ガイド用の切り抜き部が形成され、この切り抜き部に、厚さがこの切り抜き部の幅よりも小さいシャッター部材の側辺縁部が挿入されるとともに、上記シャッター部材の外部に設けられた補助部材に、シャッター部材の側辺縁部と上記切り抜き部の側辺との間の間隙に挿入されるスペーサ部分が設けられているテープフィーダー」についての発明が記載されていると認められる。
ここで、この発明における補助部材、シャッター部材及びテープ保護部材について、更に、引用文献の記載内容を見てみることにする。
記載B、特に【図4】から【図6】によれば、補助部材65(審決注;引用文献においては、カバー部材65とも称している。)は、板状といえるものであって、シャッター部材60の上方に重ねられていることが見て取れる。
また、記載Cにおける「シャッター部材60には、後記連結軸61を挿通するための長穴62が形成される」との記載は、その前後の文脈からして「シャッター部材60には、後記連結ピン66を挿通するための長穴62が形成される」の誤記であると認められる。そして、記載Cによれば、連結ピン66は、シャッター部材60の長穴62を挿通、即ち、シャッター部材60を貫通し、テープ保護部材54に固定され、また、記載Bの【図4】、【図5】及び【図7】を併せ見れば、連結ピン66は、補助部材65を貫通していることが見て取れる。そして、この連結ピン66が、これらシャッター部材60及び補助部材65を貫通してテープ保護部材54に固定されることにより、シャッター部材60及び補助部材65がテープ保護部材54に対して取付けられているということができる。
更に、上記発明におけるシャッター部材は、部品取出し時以外はテープ保護部材に設けられた開放部の少なくとも一部を閉塞し、部品取出し時には非閉塞位置にスライドするものであり、そして、連結ピン66は、上述したように、シャッター部材60の長穴62を挿通するもので、長穴62は、連結ピン66の貫通孔といえるものであって、連結ピン66の貫通孔が長穴62であることによりシャッター部材60がスライド可能とされていること、更に、そのスライド可能が、テープ保護部材54及び補助部材65に対して相対的なものであることは明らかである。

3)以上のことを踏まえると、引用文献には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「一定間隔おきに多数のチップ部品を収納しているテープと、このテープを導出するテープ導出部と、このテープ導出部から導出されたテープをチップ部品の取出しが可能な状態に保持する部品取出し部と、この部品取出し部で上記テープからチップ部品が取出されるにつれて一定量ずつテープを移動させる繰り出し機構とを備え、上記部品取出し部に、テープ通過部分の上方に位置して所定箇所に部品取出し用の開放部を有するテープ保護部材と、部品取出し時以外は上記開放部の少なくとも一部を閉塞し、部品取出し時には非閉塞位置にスライドするシャッター部材とが設けられているテープフィーダーであって、上記テープ保護部材に、上記開放部に連なる一定幅の細長いシャッター部材ガイド用の切り抜き部が形成され、この切り抜き部に、厚さがこの切り抜き部の幅よりも小さいシャッター部材の側辺縁部が挿入されるとともに、上記シャッター部材の外部に設けられた補助部材に、シャッター部材の側辺縁部と上記切り抜き部の側辺との間の間隙に挿入されるスペーサ部分が設けられているテープフィーダーにおいて、シャッター部材60の上方に板状の補助部材65が重ねられ、連結ピン66がシャッター部材60及び補助部材65を貫通してテープ保護部材54に固定されることによりシャッター部材60及び補助部材65がテープ保護部材54に対して取付けられるとともに、シャッター部材60における連結ピン66の貫通孔が長穴62として形成されることによりシャッター部材60がテープ保護部材54及び補助部材65に対して相対的にスライド可能に設けられている上記テープフィーダー」

3-3.対比判断

1)本件発明2と引用発明とを対比すると、両者は、
「一定間隔おきに多数の部品を収納したテープと、このテープを導出するテープ導出部と、このテープ導出部から導出されたテープを部品の取出しが可能な状態に保持する部品取出し部と、この部品取出し部で上記テープから部品が取り出されるにつれて一定量ずつテープを移動させる繰り出し機構とを備え、上記部品取出し部に、テープ通過部分の上方に位置して所定箇所に部品取出し用の開放部を有するテープ保護部材と、部品取出し時以外は上記開放部の少なくとも一部を閉塞し、部品取出し時には非閉塞位置にスライドするシャッター部材とが設けられ、このシャッター部材の上方に板状の補助部材が重ねられ、ピン部材がこれらシャッター部材および補助部材を貫通して前記テープ保護部材に固定されることにより前記シャッター部材および補助部材がテープ保護部材に対して取付けられるとともに、シャッター部材における前記ピン部材の貫通孔が長孔に形成されることにより前記シャッター部材がテープ保護部材および補助部材に対して相対的にスライド可能に設けられているテープフィーダー」で一致し、
「シャッター部材の上方に板状の補助部材が重ねられる構成において、本件発明2は、シャッター部材に当接する状態で補助部材が重ねられている」点(以下、「相違点A」という。)で相違しているものと認められる。

2)そこで、相違点Aについて検討すると、相違点Aは、以下に詳述するように、当業者が容易に設計し得るものであって、本件発明2は、この出願前に当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたといえる。

2-1)引用発明においては、補助部材にスペーサ部分が設けられており、該スペーサ部分は、シャッター部材の側辺縁部とシャッター部材ガイド用の切り抜き部の側辺との間の間隙に挿入されるものであって、記載Dには、スペーサ部分がこのように挿入されることにより、上記間隙が塞がれて、チップ部品の間隙からの飛び出しやチップ部品の間隙への入り込みが防止されるとの作用効果が記載されている。そして、該作用効果をより確実なものとするとの目的から、スペーサ部分の板厚を上記間隙を塞ぐに必要十分なものとするなどし、その結果として、補助部材のスペーサ部分をシャッター部材の側辺縁部に当接するよう構成することは、当業者が容易に設計し得るもので、更に、記載Bの【図6】においてスペーサ部分68が側辺縁部61に対して接触しているが如くに記載されていることからも、補助部材のスペーサ部分をシャッター部材の側辺縁部に当接するよう構成することは、当業者が容易に設計し得るものといえる。
してみると、相違点Aは、当業者が容易に想到し得るものである。

2-2)また、引用発明においては、シャッター部材60の上方に板状の補助部材65が重ねられているのであるが、記載Bの【図6】においてシャッター部材60と補助部材65との、それぞれの上下方向に重なり合った部分が互いに接触しているが如くに記載されていること、そして、これら重なり合った部分が当接してはならない理由が引用文献の記載から窺えないことから、これら重なり合った部分が当接するよう構成することは、当業者が容易に設計し得るものといえる。
してみると、このことからも、相違点Aは、当業者が容易に想到し得るものである。

3)これに対し、請求人は、審判請求書において、要するに、引用文献にはシャッター部材の浮き上がりを防止する技術的思想がないから、本件発明2は、この出願前に当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができるとはいえない、と主張するので、検討する。
引用文献には、シャッター部材の浮き上がりの防止についての記載を見ることはできない。しかしながら、本件発明2は、先に「1)」で述べたことから明らかなように、引用発明とは、相違点Aで相違するに過ぎず、そして、相違点Aは、先に「2)」で述べたように、容易に想到し得、本件発明2は、この出願前に当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたといえるのであって、請求人の主張に理由はない。

4.結び
本件発明2は、この出願前に当業者が引用発明に基いて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることはできない。
よって、原査定は、妥当であって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-05-31 
結審通知日 2007-06-05 
審決日 2007-06-18 
出願番号 特願平7-130245
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 奥村 一正  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 平塚 義三
井上 猛
発明の名称 テープフィーダー  
代理人 小谷 悦司  
代理人 伊藤 孝夫  
代理人 樋口 次郎  

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