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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C08F
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 C08F
管理番号 1161908
審判番号 不服2004-17874  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-30 
確定日 2007-08-03 
事件の表示 平成 7年特許願第200383号「シクロオレフィンポリマー」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 4月30日出願公開、特開平 8-109222〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続きの経緯
本願は、平成7年7月13日の特許出願であって(パリ条約による優先権主張 1994年7月13日 ドイツ)、平成15年10月30日付けで拒絶理由が通知され、平成16年5月7日に手続補正書及び意見書が提出され、平成16年6月3日付けで拒絶査定がなされ、平成16年8月30日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同日に手続補正書が提出され、次いで、平成16年12月20日付けでに前置報告がなされ、平成17年1月17日と平成18年1月5日に上申書が提出され、平成18年10月13日付けで審尋がなされ、平成19年1月16日に回答書が提出されたものである。

【2】補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成16年8月30日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という)を却下する。
[理由]
1.本件手続補正の内容および補正の適否について
平成16年8月30日付けでした手続補正(以下、「本件手続補正」という。)は、特許請求の範囲について、平成16年5月7日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲における
「【請求項6】 請求項1に記載のシクロオレフィンポリマーを調製する方法であって、メタロセン-アルミノキサン触媒の存在下で、式II、III、IV、V、VI、VII

(式中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、同一又は異なっていて、それぞれ水素原子若しくはC1?C30炭化水素基であるか、又は2種以上の基R4?R11は環状に結合しており、様々な式中における同じ基は異なる意味を有することができる)の1種以上のシクロオレフィン、式IX:【化7】

(式中、R12、R13、R14、R15は同一又は異なっていて、それぞれ水素原子又はC1?C8アルキル基若しくはC6?C8アルキル基又はC6?C14アルキル基である)
の1種以上の非環式オレフィン、及び場合によっては式VIII:
【化8】

(式中、nは2?10の数である)
の非環式オレフィンから構成される第1のオレフィン性反応物質と、モノマーの総量を基準として25mol%未満の少なくとも3個の炭素原子を有する第2のオレフィン性反応物質(調節剤)とを、反応させることを含み、該第2のオレフィン性反応物質がシクロオレフィンである場合には、該第1及び該第2の反応物質は異なるシクロオレフィンである、方法。」を
「【請求項6】
請求項1に記載のシクロオレフィンポリマーを調製する方法であって、メタロセン-アルミノキサン触媒の存在下で、式II、III、IV、V、VI、VII
【化7】






(式中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、同一又は異なっていて、それぞれ水素原子若しくはC1?C30炭化水素基であるか、又は2種以上の基R4?R11は環状に結合しており、様々な式中における同じ基は異なる意味を有することができる)の1種以上のシクロオレフィン、式IX:【化8】

(式中、R12、R13、R14、R15は同一又は異なっていて、それぞれ水素原子又はC1?C8アルキル基若しくはC6?C8アルキル基又はC6?C14アルキル基である)の1種以上の非環式オレフィン、及び場合によっては式VIII:【化9】

(式中、nは2?10の数である)の単環式オレフィンから構成される第1のオレフィン性反応物質と、モノマーの総量を基準として25mol%未満の少なくとも3個の炭素原子を有する、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4-メチルペンテン、ブタジエン、イソプレンなどの直鎖若しくは分枝C3?C18オレフィン類であるか又はシクロペンテン、シクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネン、ビニルシクロヘキセン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、スチレン若しくはα-メチル-スチレンなどの環状オレフィンである第2のオレフィン性反応物質(調節剤)とを、反応させることを含み、該第2のオレフィン性反応物質がシクロオレフィンである場合には、該第1及び該第2の反応物質は異なるシクロオレフィンである、方法。」と補正する事項を含むものである。
本件手続補正により、本件手続補正前の特許請求の範囲請求項6の「モノマーの総量を基準として25mol%未満の少なくとも3個の炭素原子を有する第2のオレフィン性反応物質(調節剤)」が「モノマーの総量を基準として25mol%未満の少なくとも3個の炭素原子を有するプロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4-メチルペンテン、ブタジエン、イソプレンなどの直鎖若しくは分枝C3?C18オレフィン類であるか又はシクロペンテン、シクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネン、ビニルシクロヘキセン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、スチレン若しくはα-メチル-スチレンなどの環状オレフィンである第2のオレフィン性反応物質(調節剤)」に変更された。
当該補正事項は、補正前の請求項6における第2オレフィン性反応物質(調節剤)を、補正前の請求項7に記載されていたものに限定して新請求項6としたものであるから、補正前の特許請求の範囲を減縮するものであって、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものと認める。

2.独立特許要件について
そこで、本件手続補正後の請求項6に記載されている発明(以下「補正発明6」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるかを判断する。
(1)補正発明6
補正発明6は次のとおりのものである。
「溶液粘度>0.25dl/g(DIN 53 728に準拠して、デカリン中135℃にて測定)を有するシクロオレフィンポリマーであって、
式II、III、IV、V、VI又はVII:【化1】






(式中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、同一又は異なっていて、それぞれ水素原子若しくはC1?C30炭化水素基であるか、又は2種以上の基R4?R11は環状に結合しており、様々な式中における同じ基は異なる意味を有することができる)の少なくとも1種の多環式オレフィンの重合単位を、該シクロオレフィンポリマーの総量を基準として0.1?100wt%と、式VIII:【化2】

(式中、nは2?10の数である)
の少なくとも1種の単環式オレフィンの重合単位を、該シクロオレフィンポリマーの総量を基準として0?45wt%と、
式IX:【化3】

(式中、R12、R13、R14、R15は同一又は異なっていて、それぞれ水素原子又はC1?C8アルキル基若しくはC6?C8アルキル基又はC6?C14アルキル基である)の非環式オレフィンの重合単位を、該シクロオレフィンポリマーの総量を基準として5?80wt%と、を含み、該シクロオレフィンポリマーは、一方若しくは両方の末端に、少なくとも3個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和基を有し、該オレフィン性不飽和基は、式II?VIIのシクロオレフィン類及び式IXの非環式オレフィンとは異なるオレフィンから誘導されたものであり、式I:【化4】


R3(式中、R1、R2、R3は水素原子であってもよいがR1、R2、R3の各々が同時に水素であることはなく、あるいは、R1、R2、R3は同一又は異なっていて、それぞれC1?C16アルキル基、C1?C16アリール基、C1?C16アルケニル基、C1?C16ハロアルキル基若しくはC1?C16ハロアリール基である)を有する、シクロオレフィンポリマーを調製する方法であって、メタロセン-アルミノキサン触媒の存在下で、式II、III、IV、V、VI、VII【化7】






(式中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、同一又は異なっていて、それぞれ水素原子若しくはC1?C30炭化水素基であるか、又は2種以上の基R4?R11は環状に結合しており、様々な式中における同じ基は異なる意味を有することができる)の1種以上のシクロオレフィン、式IX:【化8】

(式中、R12、R13、R14、R15は同一又は異なっていて、それぞれ水素原子又はC1?C8アルキル基若しくはC6?C8アルキル基又はC6?C14アルキル基である)の1種以上の非環式オレフィン、及び場合によっては式VIII:【化9】

(式中、nは2?10の数である)
の単環式オレフィンから構成される第1のオレフィン性反応物質と、モノマーの総量を基準として25mol%未満の少なくとも3個の炭素原子を有する、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4-メチルペンテン、ブタジエン、イソプレンなどの直鎖若しくは分枝C3?C18オレフィン類であるか又はシクロペンテン、シクロヘキセン、ビニルシクロヘキサン、ビニルノルボルネン、ビニルシクロヘキセン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、スチレン若しくはα-メチル-スチレンなどの環状オレフィンである第2のオレフィン性反応物質(調節剤)とを、反応させることを含み、該第2のオレフィン性反応物質がシクロオレフィンである場合には、該第1及び該第2の反応物質は異なるシクロオレフィンである、方法。」

(2)合議体の判断
(i)原審の査定の理由に引用された引用文献1(特開平03-045612号公報)には、以下の点が記載されている。
摘示記載1-1:「1)モノマー全量を基準として0.1?100重量%の式 I 、II、IIIまたはIV

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は互いに同義でもまたは異義でもよく、水素原子または炭素原子数1?8のアルキル基を意味し、但し種々の式中の同じ基が異なる意味を有してもよい。]で表されるモノマーの少なくとも一種、モノマー全量を基準として0?99.9重量%の式V

[式中、nは2?10の数である。]で表されるシクロオレフィンおよび
モノマー全量を基準として0?99.9重量%の式IV(VIの誤記である)


[式中、R9、R10、R11およびR12は互いに同義であるかまたは異義であり、水素原子または炭素原子数1?8のアルキル基を意味する。]で表される非環式1-オレフィンの少なくとも一種類を溶液状態で、懸濁状態で、モノマー溶融状態でまたは気相において78?150℃の温度、0.5?64barの圧力のもとで、遷移金属成分としてのメタロセンと式VII(式省略)[式中、R13は炭素原子数1?6のアルキル基、フェニル基またはベンジル基を意味しそしてnは2?50の整数である。]で表される線状の種類および/または式(VIII)(式省略)[式中、R13およびnは上記の意味を有する。]で表される環状の種類のアルミノキサンとより成る触媒の存在下に重合することによってシクロオレフィン系ポリマーを製造するに当たって、重合を、式(IX)(式及び式中の記号の説明省略)で表される化合物を遷移金属成分とする触媒の存在下に実施することを特徴とする、上記シクロオレフィン系ポリマーの製造方法。」(請求項1)
摘示記載1-2:「本発明の課題は、多環式オレフィンと非環式オレフィンとの共重合において20cm3/gより大きい粘度数および100℃を超えるガラス転移温度を持つポリマーを得ることを可能とする方法を見出すことであった。」(3頁右下欄1?5行)
摘示記載1-3:「C)多環式オレフィン(I?IV)、単環式オレフィン(V)およびl-オレフィン(Vl)から形成されるポリマーの場合には、多環式オレフィンと単環式オレフィンと1-オレフィンとのモノマーとしてのモル比が93:5:2から5:93:2まで5:5:90までである。即ち、このモル比は角が93:5:2、5:93:2および5:5:90のモル比で規定される混合物三角形内にある。」(5頁右下欄4?11行)
摘示記載1-4:「d)上記のa)、b)およびc)において、多環式オレフィン、単環式オレフィンおよび1-オレフィンは個々の種類の二種以上のオレフィンの混合物も意味する。」(5頁右下欄12?15行)
摘示記載1-5:「実施例12
攪拌機を備えた浄化された且つ乾燥した・・・ノルボルネンを溶解した溶液を導入する。次に反応器を攪拌下に20℃の温度にし、1barのエチレンを圧入する。・・・平行してメタロセンAをメチルアルミノキサンの10cm3(濃度および品質は上記参照)に溶解しそして15分間放置して予備活性化する。次いで錯塩のこの溶液を反応器に配量供給する。その後に重合を攪拌(750回転/分)下に20℃で1時間実施する。・・・この生成物の粘度数VNは244cm3/gと測定されそしてガラス転移温度Tgは32°Cと測定された。」(実施例12)
摘示記載1-6:「実施例23
実施例12と同様に重合を実施するが、94.16gのノルボルネンと84.16gの4-メチル-1-ペンテンとの混合物をノルボルネンの代わりに用いる点が相違する。更に実施例12を、62.2mgのメタロセンAを使用しそして重合時間を3時間とする変更をする。55℃のガラス転移温度を有する11.8gの生成物が得られる。」(実施例23)

摘示記載1-1?1-3をまとめると、引用文献1には、式 I 、II、IIIまたはIVで表される多環式オレフィンのモノマーの少なくとも一種、式Vで表される単環式シクロオレフィンおよび式VIで表される非環式1-オレフィンの少なくとも一種類を、多環式オレフィンと単環式シクロオレフィンと非環式1-オレフィンとのモノマーとしてのモル比が角が93:5:2、5:93:2および5:5:90のモル比で規定される混合物三角形内にある比率で、特定のメタロセン触媒の存在下に重合することによって、20cm3/gより大きい粘度数を有するシクロオレフィン系ポリマーを製造する方法が記載されており、その際に、2種以上の1-オレフィンを用いて製造を行うことが教示されており(摘示記載1-4)、実施例においてもエチレンと4-メチル-1-ペンテンの2種類の1-オレフィンを用いることが記載されている(摘示記載1-5,1-6)から、当該方法において、2種以上の1-オレフィンを用いることが記載されていると認める。
すなわち、引用文献1には、式 I 、II、IIIまたはIVで表される多環式オレフィンのモノマーの少なくとも一種、式Vで表される単環式シクロオレフィンおよび式VIで表される非環式1-オレフィンの少なくとも一種類を、多環式オレフィンと単環式シクロオレフィンと非環式1-オレフィンとのモノマーとしてのモル比が角が93:5:2、5:93:2および5:5:90のモル比で規定される混合物三角形内にある比率で、特定のメタロセン触媒の存在下に重合することによって、20cm3/gより大きい粘度数を有するシクロオレフィン系ポリマーを製造する方法において、2種類の非環式1-オレフィンを用いることが記載されている(以下、「引用発明」という。)。
(ii)対比・判断
引用発明と補正発明6とを対比すると、前者の「シクロオレフィン系ポリマー」は後者の「シクロオレフィンポリマー」に相当し、前者の「式I、II、III、IVで表される多環式オレフィンモノマーの少なくとも一種」は、後者の「式II、III、IV、Vの少なくとも1種の多環式オレフィンの重合単位」と「式II、III、IV、Vの1種以上のシクロオレフィン」に相当し、前者の「式Vで表される単環式シクロオレフィン」は後者の「式VIIIの少なくとも1種の単環式オレフィンの重合単位」と「式VIIIの単環式オレフィン」に相当し、前者の「遷移金属成分としてのメタロセンと式VII・・・アルミノキサンとより成る触媒の存在下に」は、後者の「メタロセン-アルミノキサン触媒の存在下で」に相当する。また、引用発明の「式VIで表される非環式1-オレフィン」は補正発明6の「式IXの非環式オレフィンの重合単位」と「式IXの1種以上の非環式オレフィン」(以下、これを「式IXの非環式オレフィン」という。)と「少なくとも3個の炭素原子を有する、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4-メチルペンテン、ブタジエン、イソプレンなどの直鎖若しくは分枝C3?C18オレフィン類である第2のオレフィン性反応物質(以下「第2のオレフィン性反応物質」という。)に相当し、引用発明の非環式1-オレフィンは二種類なので、補正発明6の「式IXの非環式オレフィン」と「第2のオレフィン性反応物質」の混合物に相当すると認める。そうすると、引用発明の「多環式オレフィンと単環式オレフィンと1-オレフィンとのモノマーとしてのモル比が角が93:5:2、5:93:2および5:5:90のモル比で規定される混合物三角形内にあること」における1-オレフィンの量は、補正発明6の「式IXの非環式オレフィン」と「第2のオレフィン性反応物質」の合計量であることからすると、「式IXの非環式オレフィン」と「第2のオレフィン性反応物質」それぞれの量は、当然1-オレフィンの量よりも小さい値になるから、上記引用発明の量についての記載は、補正発明6の「第2のオレフィン性反応物質」の量についての記載である「モノマーの総量を基準として25mol%未満」や、「式IXの1種以上の非環式オレフィンの重合単位を、該シクロオレフィンポリマーの総量を基準として5?80wt%」と重複一致している。また引用発明の上記量に関する記載は、補正発明6の「多環式オレフィンの重合単位を、該シクロポリマーの総量を基準として0.1?100wt%」や、「単環式オレフィンの重合単位を、該シクロオレフィンポリマーの総量を基準として0?45wt%」とも重複一致している。
してみれば両者は、「式II、III、IV、V、VI又はVIIの少なくとも1種の多環式オレフィンの重合単位を、該シクロオレフィンポリマーの総量を基準として0.1?100wt%と、式VIIIの少なくとも1種の単環式オレフィンの重合単位を、該シクロオレフィンポリマーの総量を基準として0?45wt%と、式IXの非環式オレフィンの重合単位を、該シクロオレフィンポリマーの総量を基準として5?80wt%とを含むシクロオレフィンポリマーを調製する方法であって、メタロセン-アルミノキサン触媒の存在下で、本願式II、III、IV、Vの1種以上のシクロオレフィン、式IXの1種以上の非環式オレフィン、及び場合によっては式VIIIの単環式オレフィンと、少なくとも3個の炭素原子を有する、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4-メチルペンテン、ブタジエン、イソプレンなどの直鎖若しくは分枝C3?C18オレフィン類である第2のオレフィン性反応物質とを反応させる方法において、当該直鎖もしくは分岐C3?C18オレフィン類である第2のオレフィン性反応物質をモノマーの総量を基準として25mol%未満とすること。」である点で一致し、下記の点で一応相違する。
(ア)補正発明6ではシクロオレフィンポリマーの溶融粘度を「溶液粘度>0.25dl/g(DIN 53 728に準拠して、デカリン中135℃にて測定)」と記載しているのに対し、引用発明にはそのような記載はない点
(イ)補正発明6では、シクロオレフィンポリマーの「一方若しくは両方の末端に、少なくとも3個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和基を有し、該オレフィン性不飽和基は、式II?VIIのシクロオレフィン類及び式IXの非環式オレフィンとは異なるオレフィンから誘導されたものであり、式I(式省略)を有する」と記載されているのに対し、引用発明にはそのような記載はない点。
(ウ)補正発明6では「少なくとも3個の炭素原子を有する、プロピレン、ブテン、イソブチレン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4-メチルペンテン、ブタジエン、イソプレンなどの直鎖若しくは分枝C3?C18オレフィン類であるオレフィン性反応物質」が調節剤であることが記載されているのに対し、引用発明ではそのような記載はない。
(エ)補正発明6では「式II、III、IV、Vの1種以上のシクロオレフィン、式IXの1種以上の非環式オレフィン、及び場合によっては式VIIIの非環式オレフィンから構成される第1のオレフィン性反応物質」と記載されており、第1のオレフィン性反応物質を第2のオレフィン性反応物質と区別しているのに対し、引用発明ではそのような記載はない。
(オ)補正発明6では「該第2のオレフィン性反応物質がシクロオレフィンである場合には、該第1及び該第2の反応物質は異なるシクロオレフィンである、」と記載されているが、引用発明ではそのような記載はない。

(ア)について検討する。
引用発明には、シクロオレフィン系ポリマ20cm3/gより大きい粘度数を有すると記載されているのであるから、この粘度数と実質的に重複一致するものであると認める。
よって、(ア)について引用発明と補正発明6との間に差異はない。

(イ)について検討する。
本願発明の詳細な説明中において「【0019】本発明に従うシクロオレフィンポリマーを調製するために、重合を開始させる前に、モノマー混合物中に調節剤を投入する。」(段落【0019】)と記載されており、この記載からすると、調節剤であるオレフィン性反応物質を他の反応物質と一緒に重合反応させることにより、補正発明6のシクロオレフィンポリマーが製造できるのであるから、引用発明においてもそのように行っている以上、当然補正発明6と同様に「一方若しくは両方の末端に、少なくとも3個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和基を有する」シクロオレフィンポリマーが製造されているものと認められる。
よって、(イ)の点について引用発明と補正発明6との間に差異はない。

(ウ)について検討する。
物が同じである以上その物質がどのような機能を有しているかについて規定したとしても、実質的な差異は生じないので、(ウ)の点についても、引用発明と補正発明6の間に差異はない。

(エ)補正発明6では第1のオレフィン性反応物質と第2のオレフィン性反応物質と区別しているが、すべてのオレフィン性反応物質を同時に重合しているのであるから、そのように区別していない引用発明の方法と同じである。
よって、(エ)の点についても、引用発明と補正発明6の間に差異はない。
(オ)補正発明6の「該第2のオレフィン性反応物質がシクロオレフィンである場合には、該第1及び該第2の反応物質は異なるシクロオレフィンである、」の記載は第2のオレフィン性反応物質がシクロオレフィンである場合についての記載であって、そのような場合について引用発明には記載がなくても引用発明との間に差異が生じないことは明かである。
よって、(オ)の点についても、引用発明と補正発明6の間に差異はない。
(iii)まとめ
以上のとおり、補正発明6は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項3号に該当し、独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。

【3】本件審判請求について
1.本願発明について
平成16年8月30日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1?7に係る発明は、平成16年5月7日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?7に記載されたとおりのものであるが、その請求項6に係る発明(以下、「本願発明6」という。)は次のとおりである。
「溶液粘度>0.25dl/g(DIN 53 728に準拠して、デカリン中135℃にて測定)を有するシクロオレフィンポリマーであって、
式II、III、IV、V、VI又はVII:【化1】






(式中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、同一又は異なっていて、それぞれ水素原子若しくはC1?C30炭化水素基であるか、又は2種以上の基R4?R11は環状に結合しており、様々な式中における同じ基は異なる意味を有することができる)の少なくとも1種の多環式オレフィンの重合単位を、該シクロオレフィンポリマーの総量を基準として0.1?100wt%と、式VIII:【化2】

(式中、nは2?10の数である)
の少なくとも1種の単環式オレフィンの重合単位を、該シクロオレフィンポリマーの総量を基準として0?45wt%と、
式IX:【化3】

(式中、R12、R13、R14、R15は同一又は異なっていて、それぞれ水素原子又はC1?C8アルキル基若しくはC6?C8アルキル基又はC6?C14アルキル基である)の非環式オレフィンの重合単位を、該シクロオレフィンポリマーの総量を基準として5?80wt%と、を含み、該シクロオレフィンポリマーは、一方若しくは両方の末端に、少なくとも3個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和基を有し、該オレフィン性不飽和基は、式II?VIIのシクロオレフィン類及び式IXの非環式オレフィンとは異なるオレフィンから誘導されたものであり、式I:【化4】


R3(式中、R1、R2、R3は水素原子であってもよいがR1、R2、R3の各々が同時に水素であることはなく、あるいは、R1、R2、R3は同一又は異なっていて、それぞれC1?C16アルキル基、C1?C16アリール基、C1?C16アルケニル基、C1?C16ハロアルキル基若しくはC1?C16ハロアリール基である)を有する、シクロオレフィンポリマーをシクロオレフィンポリマーを調製する方法であって、メタロセン-アルミノキサン触媒の存在下で、式II、III、IV、V、VI、VII

(式中、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10及びR11は、同一又は異なっていて、それぞれ水素原子若しくはC1?C30炭化水素基であるか、又は2種以上の基R4?R11は環状に結合しており、様々な式中における同じ基は異なる意味を有することができる)の1種以上のシクロオレフィン、式IX:【化7】

(式中、R12、R13、R14、R15は同一又は異なっていて、それぞれ水素原子又はC1?C8アルキル基若しくはC6?C8アルキル基又はC6?C14アルキル基である)の1種以上の非環式オレフィン、及び場合によっては式VIII:【化8】

(式中、nは2?10の数である)の非環式オレフィンから構成される第1のオレフィン性反応物質と、モノマーの総量を基準として25mol%未満の少なくとも3個の炭素原子を有する第2のオレフィン性反応物質(調節剤)とを、反応させることを含み、該第2のオレフィン性反応物質がシクロオレフィンである場合には、該第1及び該第2の反応物質は異なるシクロオレフィンである、方法。」

2.拒絶理由の概要
原審における拒絶査定の理由とされた、平成15年10月30日付け拒絶理由通知書に記載した理由1は概略、以下のとおりである。
理由1:この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項3号に該当し、特許を受けることができない。
・請求項1?6
<引用文献一覧>
1.特開平03-045612号公報
2.特開平04-328109号公報

3.当審の判断
(1)引用文献の記載事項
原査定の拒絶理由に引用された引用文献1には【2】3(i)に記載したように、下記の発明が記載されている。
「式 I 、II、IIIまたはIVで表される多環式オレフィンのモノマーの少なくとも一種、式Vで表される単環式シクロオレフィンおよび式VIで表される非環式1-オレフィンの少なくとも一種類を、多環式オレフィンと単環式シクロオレフィンと非環式1-オレフィンとのモノマーとしてのモル比が角が93:5:2、5:93:2および5:5:90のモル比で規定される混合物三角形内にある比率で、特定のメタロセン触媒の存在下に重合することによって、20cm3/gより大きい粘度数を有するシクロオレフィン系ポリマーを製造する方法において、2種類の非環式1-オレフィンを用いること」(以下、「引用発明」という。)。

(2)対比・判断
引用発明と本願発明6とを対比すると、前者の「シクロオレフィン系ポリマー」は後者の「シクロオレフィンポリマー」に相当し、前者の「式I、II、III、IVで表される多環式オレフィンモノマーの少なくとも一種」は、後者の「式II、III、IV、Vの少なくとも1種の多環式オレフィンの重合単位」と「式II、III、IV、Vの1種以上のシクロオレフィン」に相当し、前者の「式Vで表される単環式シクロオレフィン」は後者の「式VIIIの少なくとも1種の単環式オレフィンの重合単位」と「式VIIIの非環式オレフィン(これは「単環式オレフィン」の誤記である)」に相当し、前者の「遷移金属成分としてのメタロセンと式VII・・・アルミノキサンとより成る触媒の存在下に」は、後者の「メタロセン-アルミノキサン触媒の存在下で」に相当する。また、引用発明の「式VIで表される非環式1-オレフィン」は本願発明6の「式IXの非環式オレフィンの重合単位」と「式IXの1種以上の非環式オレフィン」(以下、これを「式IXの非環式オレフィン」という。)と「少なくとも3個の炭素原子を有する第2のオレフィン性反応物質(以下「第2のオレフィン性反応物質」という。)に相当し、引用発明の非環式1-オレフィンは二種類なので、本願発明6の「式IXの非環式オレフィン」と「第2のオレフィン性反応物質」の混合物に相当すると認める。そうすると、引用発明の「多環式オレフィンと単環式オレフィンと1-オレフィンとのモノマーとしてのモル比が角が93:5:2、5:93:2および5:5:90のモル比で規定される混合物三角形内にあること」における1-オレフィンの量は、本願発明6の「式IXの非環式オレフィン」と「第2のオレフィン性反応物質」の合計量であることからすると、「式IXの非環式オレフィン」と「第2のオレフィン性反応物質」それぞれの量は、当然1-オレフィンの量よりも小さい値になるから、上記引用発明の量についての記載は、本願発明6の「第2のオレフィン性反応物質」の量についての記載である「モノマーの総量を基準として25mol%未満」や、「式IXの1種以上の非環式オレフィンの重合単位を、該シクロオレフィンポリマーの総量を基準として5?80wt%」と重複一致している。また引用発明の上記量に関する記載は、本願発明6の「多環式オレフィンの重合単位を、該シクロポリマーの総量を基準として0.1?100wt%」や、「単環式オレフィンの重合単位を、該シクロオレフィンポリマーの総量を基準として0?45wt%」とも重複一致している。
してみれば両者は、「式II、III、IV、V、VI又はVIIの少なくとも1種の多環式オレフィンの重合単位を、該シクロオレフィンポリマーの総量を基準として0.1?100wt%と、式VIIIの少なくとも1種の単環式オレフィンの重合単位を、該シクロオレフィンポリマーの総量を基準として0?45wt%と、式IXの非環式オレフィンの重合単位を、該シクロオレフィンポリマーの総量を基準として5?80wt%とを含むシクロオレフィンポリマーを調製する方法であって、メタロセン-アルミノキサン触媒の存在下で、本願式II、III、IV、Vの1種以上のシクロオレフィン、式IXの1種以上の非環式オレフィン、及び場合によっては式VIIIの単環式オレフィンと、少なくとも3個の炭素原子を有する第2のオレフィン性反応物質とを反応させる方法において、当該直鎖もしくは分岐C3?C18オレフィン類であるオレフィン性反応物質をモノマーの総量を基準として25mol%未満とすること。」である点で一致し、下記の点で一応相違する。

(ア)本願発明6ではシクロオレフィンポリマーの溶融粘度を「溶液粘度>0.25dl/g(DIN 53 728に準拠して、デカリン中135℃にて測定)」と記載しているのに対し、引用発明にはそのような記載はない点

(イ)本願発明6では、シクロオレフィンポリマーの「一方若しくは両方の末端に、少なくとも3個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和基を有し、該オレフィン性不飽和基は、式II?VIIのシクロオレフィン類及び式IXの非環式オレフィンとは異なるオレフィンから誘導されたものであり、式I(式省略)を有する」と記載されているのに対し、引用発明にはそのような記載はない点。

(ウ)本願発明6では「少なくとも3個の炭素原子を有する第2のオレフィン性反応物質」が調節剤であることが記載されているのに対し、引用発明ではそのような記載はない。

(エ)本願発明6では「式II、III、IV、Vの1種以上のシクロオレフィン、式IXの1種以上の非環式オレフィン、及び場合によっては式VIIIの非環式(これは「単環式」の誤記である)オレフィンから構成される第1のオレフィン性反応物質」と記載されており、第1のオレフィン性反応物質を第2のオレフィン性反応物質と区別しているのに対し、引用発明ではそのような記載はない。

(オ)本願発明6では「該第2のオレフィン性反応物質がシクロオレフィンである場合には、該第1及び該第2の反応物質は異なるシクロオレフィンである、」と記載されているが、引用発明ではそのような記載はない。

(ア)について検討する。
引用発明には、シクロオレフィン系ポリマ20cm3/gより大きい粘度数を有すると記載されているのであるから、この粘度数と実質的に重複一致するものであると認める。
よって、(ア)について引用発明と補正発明6との間に差異はない。

(イ)について検討する。
本願発明の詳細な説明中において「【0019】本発明に従うシクロオレフィンポリマーを調製するために、重合を開始させる前に、モノマー混合物中に調節剤を投入する。」(段落【0019】)と記載されており、この記載からすると、調節剤であるオレフィン性反応物質を他の反応物質と一緒に重合反応させることにより、補正発明6のシクロオレフィンポリマーが製造できるのであるから、引用発明においてもそのように行っている以上、当然補正発明6と同様に「一方若しくは両方の末端に、少なくとも3個の炭素原子を有するオレフィン性不飽和基を有する」シクロオレフィンポリマーが製造されているものと認められる。
よって、(イ)の点について引用発明と本願発明6との間に差異はない。

(ウ)について検討する。
物が同じである以上その物質がどのような機能を有しているかについて規定したとしても、実質的な差異は生じないので、(ウ)の点についても、引用発明と本願発明6の間に差異はない。

(エ)本願発明6では第1のオレフィン性反応物質と第2のオレフィン性反応物質と区別しているが、すべてのオレフィン性反応物質を同時に重合しているのであるから、そのように区別していない引用発明の方法と同じである。
よって、(エ)の点についても、引用発明と本願発明6の間に差異はない。
(オ)本願発明6の「該第2のオレフィン性反応物質がシクロオレフィンである場合には、該第1及び該第2の反応物質は異なるシクロオレフィンである、」の記載は第2のオレフィン性反応物質がシクロオレフィンである場合についての記載であって、そのような場合について引用発明には記載がなくても引用発明との間に差異が生じないことは明かである。
よって、(オ)の点についても、引用発明と本願発明6の間に差異はない。
(3)まとめ
以上のとおりであるから、本願発明6は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項3号に該当し、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-03-08 
結審通知日 2007-03-09 
審決日 2007-03-26 
出願番号 特願平7-200383
審決分類 P 1 8・ 113- Z (C08F)
P 1 8・ 575- Z (C08F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中島 庸子  
特許庁審判長 井出 隆一
特許庁審判官 石井 あき子
渡辺 陽子
発明の名称 シクロオレフィンポリマー  
代理人 富田 博行  
代理人 小林 泰  
代理人 増井 忠弐  
代理人 千葉 昭男  
代理人 細川 伸哉  
代理人 富田 博行  
代理人 増井 忠弐  
代理人 細川 伸哉  
代理人 小林 泰  
代理人 千葉 昭男  
代理人 社本 一夫  
代理人 社本 一夫  

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