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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1161912
審判番号 不服2004-25868  
総通号数 93 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2007-09-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-12-17 
確定日 2007-08-03 
事件の表示 平成 8年特許願第 84182号「感熱プリンタ」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月21日出願公開、特開平 9-272217〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成8年4月5日の出願であって、平成16年11月9日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年12月17日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正がされたものである。
当審においてこれを審理した結果、平成16年12月17日付け手続補正を却下するとともに、新たに拒絶の理由を通知したところ、請求人は平成19年4月9日付けで意見書及び手続補正書を提出した。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成19年4月9日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「感熱記録紙の一方の側端をガイドするガイド手段と、前記感熱記録紙を前記ガイド手段に押し付ける付勢手段と、複数の発熱素子が感熱記録紙の想定幅よりも少し長くライン状に配列され、一方の端部の発熱素子が前記ガイド手段によってガイドされる感熱記録紙の一方の側端部に一致するように配されたサーマルヘッドと、感熱記録紙の幅方向で前記ガイド手段の反対側に配され、前記サーマルヘッドの発熱素子とほぼ同じピッチで感熱記録紙の側端付近に配置された複数のピクセルからなり、前記サーマルヘッドによる記録中に前記感熱記録紙の側端を検出するCCDラインセンサと、前記CCDラインセンサで検出された側端位置情報に基づき、前記ガイド手段の反対側の感熱記録紙の側端付近の複数の発熱素子に対してサーマルヘッドによる記録中に制御を行い、感熱記録紙の側端よりも外側に位置する発熱素子を強制的にOFF状態にする選択回路とを備えたことを特徴とする感熱プリンタ。」

第2 当審の判断
1.引用刊行物の記載事項
当審における拒絶の理由に引用した特開昭60-190378号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?カの記載が図示とともにある。
ア.「転写紙と記録紙とを重ね合わせこれらをプラテンローラと感熱ヘッド群とで挟持し、前記プラテンローラの回転により前記転写紙と前記記録紙とを移動せしめ前記感熱ヘッド群の駆動による1ライン分の記録(印刷)を順次行なう感熱転写型印刷装置において、前記記録紙の幅と長さとを1ライン分の記録毎に検出して記録紙の幅と長さに合わせて記録範囲を定めるようにしたことを特徴とする記録紙選択装置。」(1頁左下欄5?13行)
イ.「(従来技術)・・・感熱転写記録においては、熱熔融性インクをフィルム上に塗布した転写紙(インクシート)を記録紙と重ね合わせて、プラテンローラと感熱ヘッド群(1ライン分の感熱ヘッドを一列に並べたもの)との間に挟持し、感熱ヘッド(サーマル・ヘッド)に設けられた発熱抵抗体に電流を流して転写紙に塗布されている熱熔融性インクを熔かし記録紙に付着させて所定の信号を記録(印刷)していた。そして、1ライン分の印刷動作毎にプラテンローラを微小角度回転させて、次の1ライン分の記録(印刷)を順次行なつている。
このようにして印刷を行なう場合、記録(印刷)したい記録紙の大きさは転写紙の大きさによって決められて一定であり、例えば、記録紙の大きさが転写紙の大きさより小さい時には、転写紙上に塗布されている熱熔融性インクがプラテンローラに付着してしまう等の問題点があつた。」(1頁左下欄末行?2頁左上欄5行)
ウ.「本発明の目的は、上記した従来技術の問題点を解決して、記録紙の大きさに応じて、その記録紙内の範囲にのみ感熱転写記録を行なうよう記録紙の大ささを自動選択(設定)する記録紙選択装置を提供することにある。」(2頁左上欄7?11行)
エ.「第1図において、記録紙1は紙送りローラ2によりプラテンローラ3へ送られる。また、記録紙1の紙送り方向における紙送りローラ2の手前に発光ダイオード4と受光素子5とを向い合わせてライン状に所定個数(例えば、n個:nは自然数)設けられている(第2図示)。そして、この発光ダイオード4と受光素子5の間を記録紙1が通過する際に、発光ダイオード4をONにして発光させ、この光を受光素子5にて受けるようにして記録紙1の大きさ(幅と長さ)を1ライン分の記録(印刷)毎に検出している。」(2頁右上欄9?19行)
オ.「第3図は本発明になる記録紙選択装置の回路構成の一例を示す図である。
同図において、発光ダイオード4よりの光は受光素子5にて受けられ、このOFF又はONの情報信号は反転回路8を介してデータ選択回路9に供給される。これはライン状に設けられたn個の受光索子5について全て同様である。データ選択回路9は後述する選択パルスが供給されると、記録データのうちの記録紙の範囲を選択するための1ライン分の情報信号を出力する。そして、この出力はメモリー10に供給される。
さらに、同様にして次の選択パルスが供給されると次の1ライン分の記録紙の範囲を選択するための情報信号を出力し、メモリー10に供給する。
一方、サーマル・ヘッドの発熱抵抗体に電流を流して印刷を開始するスタート信号が、サーマル・ヘッドの横方向(X方向)に対応するメモリー10のXアドレスを制御するX方向アドレス信号発生回路11に供給されると、このX方向アドレス信号発生回路11は前記の選択パルスをデータ選択回路9に供給する一方、Xアドレス(1?n)をメモリー10に供給する。」(2頁右下欄15行?3頁左上欄16行)
カ.「メモリー10はXアドレス及びYアドレスによりメモリー10内の記録紙の範囲を選択するための情報信号Dg(ゲートパルス)を1ライン分の記録(印刷)動作毎にNAND回路14の一方の端子に供給する。また、NAND回路14の他方の端子には記録紙に記録(印刷)するための記録データ信号Diが供給される。
NAND回路14は、第4図に示すように、一方の端子に供給される記録データ信号Di(パルスR1?Rx)のうちの情報信号Dgが供給される期間の信号が出力され、この出力は反転回路15を介して記録データ信号Do(パルスR2?RX-1)として出力される。
NAND回路14の出力である記録データ信号Doはシフトレジスタ16に供給される。このシフトレジスタ16の出力はサーマル・ヘッド7の各発熱抵抗体R1-RXにそれぞれ供給され、記録紙の大きさに応じて、その記録紙内の範囲にのみ感熱転写記録(印刷)が行われる。」(3頁右上欄6行?左下欄4行)

2.引用例1記載の発明の認定
引用例1の記載エにおいて、第2図を参照すれば、所定個数(n個)の発光ダイオードと受光素子が、記録紙の幅方向に設けられていることは明らかである。
記載ア?カを含む引用例1の全記載及び図示によれば、引用例1には次のような感熱転写型印刷装置が記載されていると認めることができる。
「転写紙と記録紙とを重ね合わせこれらをプラテンローラと感熱ヘッド群とで挟持し、前記プラテンローラの回転により前記転写紙と前記記録紙とを移動せしめ前記感熱ヘッド群の駆動による1ライン分の記録を順次行なう感熱転写型印刷装置において、
記録紙の幅方向に所定個数の発光ダイオード及び受光素子を設け、受光素子の受光信号に基づいて記録紙の範囲を選択するための1ライン分の情報信号を出力し、前記1ライン分の情報信号と記録データ信号のNAND回路出力をシフトレジスタに供給し、前記シフトレジスタの出力を感熱ヘッド群の各発熱抵抗体に供給するよう構成された感熱転写型印刷装置。」(以下「引用発明1」という。)

3.本願発明と引用発明1との一致点及び相違点の認定
引用発明1の「記録紙」は「感熱記録紙」ではないが、「記録紙」の限度では本願発明の「感熱記録紙」と一致する。
引用発明1の「発熱抵抗体」は本願発明の「発熱素子」に相当し、それが複数存し、記録紙の幅方向にライン状に配列されていることは明らかである。本願発明の「サーマルヘッド」に相当するのは引用発明1の「感熱ヘッド群」である。
引用例1の記載カ及び第4図によれば、「1ライン分の情報信号」は、発光ダイオードと受光素子間に記録紙が存在する部分を定める出力であるから、引用発明1における所定個数の受光素子と本願発明の「CCDラインセンサ」は、サーマルヘッドによる記録中に記録紙の側端を検出する(ここでは、側端が両端であるか片端であるかは問わない。)センサの点で一致する。
引用発明1では、1ライン分の情報信号と記録データ信号のNAND回路出力をシフトレジスタに供給しており、1ライン分の情報信号を出力する手段(実施例では、記載カの「データ選択回路9」又は「メモリー10」がこれに当たる。)が存在し、同手段とNAND回路を併せたものは、本願発明の用語を用いれば、「センサで検出された側端位置情報に基づき、複数の発熱素子に対してサーマルヘッドによる記録中に制御を行い、記録紙の側端よりも外側に位置する発熱素子を強制的にOFF状態にする選択回路」であるということができる。
本願発明は「感熱プリンタ」であるが、この用語は「感熱記録紙」を用いる場合に限られず、引用発明1の「感熱転写型印刷装置」も「感熱プリンタ」といえる。
したがって、本願発明と引用発明1とは、
「複数の発熱素子が記録紙の幅方向にライン状に配列されたサーマルヘッドと、前記サーマルヘッドによる記録中に前記記録紙の側端を検出するセンサと、前記センサで検出された側端位置情報に基づき、複数の発熱素子に対してサーマルヘッドによる記録中に制御を行い、記録紙の側端よりも外側に位置する発熱素子を強制的にOFF状態にする選択回路とを備えた感熱プリンタ。」の点で一致し、以下の各点で相違する。
〈相違点1〉本願発明の記録紙は「感熱記録紙」であるのに対し、引用発明1のそれは「感熱記録紙」ではなく、転写紙と重ね合わせて記録する記録紙である点。
〈相違点2〉本願発明の「サーマルヘッド」が「複数の発熱素子が記録紙の想定幅よりも少し長くライン状に配列され」たのに対し、引用発明1が同構成を有するかどうか明確でない点。
〈相違点3〉本願発明が「記録紙の一方の側端をガイドするガイド手段と、前記記録紙を前記ガイド手段に押し付ける付勢手段」を備え、「サーマルヘッド」につき「一方の端部の発熱素子が前記ガイド手段によってガイドされる記録紙の一方の側端部に一致するように配された」と特定しているのに対し、引用発明1はこれら特定を有さない点。
〈相違点4〉「センサ」につき、本願発明が「前記サーマルヘッドの発熱素子とほぼ同じピッチで記録紙の側端付近に配置された複数のピクセルからなり、前記サーマルヘッドによる記録中に前記記録紙の側端を検出するCCDラインセンサ」としているのに対し、引用発明1のセンサは発光ダイオードと対向配置された所定個数の受光素子であり、受光素子ピッチと発熱素子ピッチの関係も不明な点。
〈相違点5〉「選択回路」につき、本願発明が「記録紙の側端付近の複数の発熱素子に対して、記録紙の側端よりも外側に位置する発熱素子を強制的にOFF状態にする」としているのに対し、引用発明1では側端付近の発熱素子とそれ以外の発明素子を特段区別していない点。

4.相違点についての判断及び本願発明の進歩性の判断
(1)相違点1について
感熱プリンタでの記録対象(記録紙)を「感熱記録紙」とすることは周知である。
引用発明1は、転写紙上に塗布されている熱溶融性インクがプラテンローラに付着してしまう等の問題点(記載イ参照。)を解決するために、所定個数の発光ダイオード及び受光素子、NAND回路等を設けたものであるから、記録紙を感熱記録紙とした場合には、引用例1の記載のみからは、上記各手段等を設ける必要がないとの主張があるかもしれない。しかし、当審における拒絶の理由に引用した特開平4-244864号公報(以下、拒絶理由での番号に合わせて「引用例3」という。)に「供給された用紙の幅からはみ出した発熱素子の発熱禁止手段を設けて、発熱素子の空焼きによるサーマルプリンタのプラテンロールとかサーマルヘッドの寿命短縮を防ぐ」(段落【0003】)とあるように、記録紙外の発熱素子を発熱させることには、引用例1の記載イ以外にも問題点があり、引用例3で指摘された問題点は、「感熱記録紙」を用いる場合にも当然当てはまる。
そうである以上、引用発明1の記録紙を感熱記録紙とする(転写紙は省略する。)、すなわち、相違点1に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(2)相違点2について
当審における拒絶の理由に引用した特開平6-55749号公報(以下「引用例2」という。)には、「記録紙面上に画像を小さく記録して余白があることよりも、記録紙面上に画像を大きく記録して(余白を無くし)画像の端が若干欠ける位の方が見た目に望ましいため、サーマルヘッドと記録紙の中心位置を合わせて、サーマルヘッドの発熱抵抗体の記録に用いる一列分の長さ(全幅)を記録紙の幅よりも長くしておくことにより、記録紙の搬送ずれなどにより発生することのある余白をも吸収して紙の全幅に(余白無しに)記録することができる。」(段落【0012】)との記載があり、「サーマルヘッドの発熱抵抗体の記録に用いる一列分の長さ(全幅)を記録紙の幅よりも長くしておくこと」と「複数の発熱素子が記録紙の想定幅よりも少し長くライン状に配列」が相違すると認めることはできない。引用例2には「少し長く」とは記載されていないが、感熱プリンタで印刷可能な最大サイズを考えれば、それよりも相当程度長くすることには意味がなく、印刷可能な記録紙が1種類であれば、その幅を少し超える程度で十分なことは自明であるから、問題とするほどではない。さらに、請求人も引用例2に「発熱素子を記録紙の想定幅よりも少し長くライン状に配列したサーマルヘッド」が記載されていることは認めている。
そして、引用発明1も、記録紙の範囲を選択し、記録紙外の記録紙の側端よりも外側に位置する発熱素子を強制的にOFF状態にするのであって、一部の発熱素子は記録紙外にはみだすことが予定されているのだから、引用例2記載の技術同様、「紙の全幅に(余白無しに)記録する」ことを目的として「複数の発熱素子が記録紙の想定幅よりも少し長くライン状に配列」とすること、すなわち相違点2に係る本願発明の構成を採用することは設計事項というべきである。

(3)相違点3について
引用例3には、「用紙をプリンタの一側に片寄せて供給する型と、プリンタの幅の中央に位置させて供給する型とあるが、この実施例は後者の型である。」(段落【0005】)、「図1は縁検出手段5および駆動機構6の詳細を示す。縁検出手段5は左右にあって水平ガイド51に沿って摺動せしめられ、相互の対向側はフォーク形状になっており、一方の縁検出手段に光電的な物体センサ52が取付けられている。Pは用紙で図の紙面に垂直の方向に送られる。縁検出手段はガイド51に沿い左右互いに反対方向に移動し、用紙を左右から挟むように動いて、フォーク部のセンサ52が用紙の縁を検出した所で移動が停止せしめられる。このようにして供給用紙をプリンタの幅方向の中央に位置規制すると共に用紙の縁の検出信号を発信する。」(段落【0006】)及び「上述実施例は用紙をプリンタの幅の中央に位置させるようになっているが、用紙を片寄せる型のプリンタでも本発明が適用できることは云うまでもなく、この場合縁検出手段5は片側にだけあればよい。」(段落【0010】)との各記載がある。
すなわち、用紙の供給に当たっては、プリンタの一側に片寄せて供給する型と、プリンタの幅の中央に位置させて供給する型とがあり、上記段落【0006】では用紙を左右から挟むように動くことにより中央に位置させて供給しており、プリンタの一側に片寄せて供給する場合に縁検出手段を片側(当然、片寄せした側と反対側である。)だけに設けることが引用例3に記載されている。引用例3記載の「プリンタの一側に片寄せて供給する型」を引用発明1に採用できない理由はないから、そのようにすること自体は当業者にとって想到容易である。その場合に、「記録紙の一方の側端をガイドするガイド手段と、前記記録紙を前記ガイド手段に押し付ける付勢手段」を備えることは設計事項というよりない。
また、用紙をプリンタの一側に片寄せて供給すれば、片寄せした側の用紙位置が規制されるから、同規制位置の外側に発熱素子を配することには意味がなく、「紙の全幅に(余白無しに)記録する」(引用例2参照)のであれば、同規制位置ぎりぎりまで発熱素子を配する必要があることは自明である。そうである以上、「一方の端部の発熱素子が前記ガイド手段によってガイドされる記録紙の一方の側端部に一致するように配された」とすることは、引用発明1に引用例3記載の技術を適用する上での設計事項というべきである。
以上のとおりであるから、相違点3に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易である。

(4)相違点4について
相違点3については前項で述べたとおりである。引用発明1に引用例3記載の技術を適用し、用紙をプリンタの一側に片寄せて供給すれば、片寄せした側の用紙位置が規制されるから、「記録紙の範囲を選択する」必要性がなくなる可能性がないわけではない。しかし、当審における拒絶の理由に引用した実願昭63-123994号(実開平2-46770号)のマイクロフィルムに「用紙自体の幅が±2mm程度の誤差を有している。」(2頁13?14行)と記載があるとおり、記録紙幅の誤差は避けられず、記録紙の一方の側端位置を規制したとしても、他方の側端位置は必ずしも一定にはならないから、依然として「記録紙の範囲を選択する」必要性は残る。
引用例3には、上記のとおり「用紙を片寄せる型のプリンタでも本発明が適用できることは云うまでもなく、この場合縁検出手段5は片側にだけあればよい。」(段落【0010】)との記載があり、要するにこの記載は、記録紙の一方の側端位置を規制した場合には、他方の側端位置のみを検出すればよいということである。
引用例3に記載された縁検出手段自体は、ガイドに沿い移動し、フォーク部のセンサが用紙の縁を検出した所で移動が停止するものであるが、引用発明1のように移動しない手段であっても差し支えないことはいうまでもない。そうであれば、引用発明1のセンサ(受光素子)を記録紙の側端付近のみに配置することは設計事項というべきである。
次に、引用発明1では、記録紙端部位置を受光素子ピッチの分解能でしか検出できず、受光素子ピッチが発熱素子ピッチよりも大きければ、記録紙内の範囲にのみ感熱転写記録を行なうためには、端部近傍の発熱素子の発熱を禁止せざるを得ず、それでは受光素子ピッチ程度の余白が生じることは避けられない。
他方、「紙の全幅に(余白無しに)記録する」(引用例2参照)ことの有用性は再三指摘したとおりであり、記録紙の全幅に(余白無しに)記録し、かつ記録紙外の発熱素子を発熱させないためには、センサの分解能を発熱素子ピッチと同程度以上にしなければならないことは当然である。
また、用紙端部等を検出するセンサとしてCCDラインセンサは例を挙げるまでもなく周知であって、CCDラインセンサであれば、それを構成する複数のピクセルのピッチ(それが分解能になる。)を小さくできることも技術常識というべきである。そうであれば、引用発明1のセンサに代えて、周知のCCDラインセンサを記録紙の側端付近に配置し、CCDラインセンサのピクセルピッチを発熱素子ピッチ以下とすることは当業者にとって想到容易である。さらに、いたずらにCCDラインセンサの分解能を高くすることにも意味がないから、CCDラインセンサのピクセルピッチを発熱素子ピッチと同程度とすることも設計事項である。
以上のとおりであるから、相違点3に係る本願発明の構成を採用することを前提とした上で、相違点4に係る本願発明の構成を採用することは設計事項であり、引用発明1を出発点とした場合には当業者にとって想到容易である。

(5)相違点5について
引用例1の第2図にあるとおり、引用発明1では、記録紙の全幅にわたって受光素子が配されており、そのため、側端付近の発熱素子とそれ以外の発明素子を特段区別せず、記録紙の側端よりも外側に位置する発熱素子を強制的にOFF状態にしている。
しかし、相違点4に係る本願発明の構成(特に「記録紙の側端付近に配置された複数のピクセルからな」るとの構成)を採用した場合には、そもそも、センサが配されていない部分は常に記録紙内であることが前提であり、センサが配される部分のみ、発熱素子が記録紙側端の外側かどうかを検出できる。
そして、相違点4に係る本願発明の構成を採用する場合には、センサが記録紙の側端付近に配されるから、記録紙側端の外側かどうかを検出できる発熱素子のみを制御対象とすることは設計事項というべきである。
すなわち、相違点4に係る本願発明の構成を採用することを前提とした上で、相違点5に係る本願発明の構成を採用することは設計事項であり、引用発明1を出発点とした場合には当業者にとって想到容易である。

(6)本願発明の進歩性の判断
相違点1?5に係る本願発明の構成を採用することは設計事項であるか当業者にとって想到容易であり、これら構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は、引用発明1、引用例2,3記載の技術及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

第3 むすび
本願発明が特許を受けることができないから、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-06-01 
結審通知日 2007-06-06 
審決日 2007-06-19 
出願番号 特願平8-84182
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桐畑 幸▲廣▼立澤 正樹  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 島▲崎▼ 純一
尾崎 俊彦
発明の名称 感熱プリンタ  
代理人 小林 英了  
代理人 飯嶋 茂  
代理人 小林 和憲  

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